法テラスの審査は落ちることもある!審査基準や落ちた時の対処法を解説

法テラスの審査は落ちることもある!審査基準や落ちた時の対処法を解説
法テラスの審査は落ちることもある!審査基準や落ちた時の対処法を解説

  • 「債務整理で法テラスを使いたいけど、審査に通るには?」
  • 「法テラスの審査に落ちたらどうしよう」

日本司法支援センター「法テラス」は国によって設立された、法的トラブルを解決するための支援組織です。法テラスによる民事法律扶助制度を利用することにより、債務整理にかかる弁護士費用を立て替えてもらうことができます。

しかし民事法律扶助制度には審査があり、状況によっては審査に落ちることも。民事法律扶助制度の審査基準審査落ちの原因について、詳しく解説を行います。手続きの流れや審査に落ちた後の対処法についても紹介します。

 

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法テラスの民事法律扶助制度とは

民事法律扶助制度とは、経済的に余裕がない方が法的なトラブルに遭ったとき、無料相談を行った上で弁護士への依頼費用の立て替えを行う制度です。具体的には以下の3つの援助に分けられます。

法律相談援助
無料の法律相談
代理援助
各事件に関する手続、もしくは交渉等に必要な費用の立て替え
書類作成援助
裁判所等の提出する書類の作成代理費用の立て替え

もともと国民が持つ「裁判を受ける権利」を保障するために設けられた制度ですが、裁判所を通さない任意整理手続にも利用可能です。債務整理をしたいにも関わらず弁護士に依頼するお金を用意できない方にとって強い味方となる制度です。

手続の流れ

では実際に法テラスにおいて民事法律扶助制度を利用する手順を確認していきましょう。おおまかな流れは以下の通りです。

  1. 無料相談
  2. 審査
  3. 手続開始
  4. 立て替え分の支払い

無料相談

制度を利用するためには、まず法テラスの無料相談に申込をする必要があります。法テラスのサポートセンターに電話をするか、メールで問い合わせを行いましょう。法テラスのホームページから自分の近くの法テラスを確認し、直接連絡しても問題ありません。

相談制度を利用できるかどうか収入や資産の状況、家族構成などの確認を行い、条件に該当した場合は相談日時を決定します。相談は法テラスと契約をしている弁護士・司法書士が実施します。

原則として相談は法テラスの事務所もしくは担当の弁護士の法律事務所で行いますが、電話など非対面で相談ができる場合もあります。法テラスでの相談は以下のように回数・時間の規定がありますので要注意。

  • 一回の相談時間は30分程度
  • 相談は一つの問題につき3回まで

審査

相談の結果債務整理が必要であり民事法律扶助制度が利用できると判断された場合、必要書類を提出し審査の申込を行います。

資力を証明する書類のほか住民業の写し、口座が分かるもの、債務に関する書類などを準備する必要があります。具体的な提出書類については後ほど解説を行います。

援助開始

法テラスと提携をしている弁護士・司法書士のもとで債務整理を実施します。法テラスで立て替えを行う費用は、援助開始の際に法テラスの規程によって決まります。手続き開始後にかかる実費(印紙代など)、手続完了後の報酬金についても立て替えをしてもらえます。

立て替え分の支払い

立て替えの費用は、援助を開始することが決まった後から分割で支払いを行います。債務整理の手続き中は1カ月10,000円、もしくは5,000円ずつの返済ですが、債務整理が終わった後は3年以内に完済ができるよう分割で支払いを行います。

生活保護受給中の方、収入が一定以下であり今後も収入を得られる見込みがない場合は支払を免除してもらえる可能性があります。

民事法律扶助の審査基準

民事法律扶助は収入に困っている人なら誰でも利用できるわけではありません。日本国内に住所がある方限定で、法人や組合などの団体、在留資格がない外国人は利用できません。また以下の条件を全て満たす必要があります。

  • 民事法律扶助の趣旨に適すること
  • 勝訴の見込みがあること
  • 収入が一定以下であること

民事法律扶助は費用面で弁護士に依頼ができず困っている方向けの制度です。宣伝や営利目的など、制度の趣旨に反する目的では利用できません。またあくまでも費用を立て替える制度ですので、立て替え分の償還意思がない方も利用不可です。

また2つ目の「勝訴の見込み」については、債務整理では自己破産において免責が許可される見込みがあることを指します。借金の原因が浪費や投資であるなど免責不許可事由に該当する場合、破産手続が失敗する恐れがあるため民事法律扶助を利用できない可能性があります。

免責不許可事由が気になる方は以下のページも併せてお読みください。
自己破産の免責不許可事由の11項目を解説!免責が下りなかったときの対処法とは?

収入の基準については、収入だけでなく所有財産にも基準があり、両方の条件を満たさないと制度は利用できません。

収入の基準

民事法律扶助制度を利用するためには、本人と配偶者の手取り月収が基準以下でないといけません。同居している家族がいる場合、家計にどれくらい貢献しているかにより収入を合算します。

基準となる月収は同居人数によって定められており、生活保護法第8条第2項に基づいた生活保護一級地(東京・大阪など)とそれ以外で異なります。

同居人数 手取り月収額 生活保護一級地の月収額
単身 182,000円 200,200円
2人 251,000円 276,100円
3人 272,000円 299,200円
4人 299,000円 328,900円
5人以上 一人につき30,000円加算 一人につき33,000円加算

家賃や住宅ローンを負担している場合、上記の基準に以下の負担額を加算することができます。

同居人数 生活保護一級地以外 生活保護一級地
単身 41,000円 53,000円
2人 53,000円 68,000円
3人 66,000円 85,000円
4人 71,000 92,000円

家賃以外にも教育費医療費など生活の上でやむを得ない支出がある場合、その分を収入から控除できるケースもあります。

資産の基準

制度の申込者、配偶者に不動産などの資産・財産がある場合、その合計額が一定以下でないと制度を利用できません。月収と同様、同居家族の人数によって金額の基準が異なります。

人数 資産合計額
単身 180万円以下
2人 250万円以下
3人 270万円以下
4人以上 300万円以下

無料相談の段階では申込者本人の現金・預貯金の金額のみで判断しますので、不動産などの財産があっても相談自体は可能です。しかし制度利用時には財産・資力に関する書類を提出して審査を行うため、その時点で審査落ちすることもあります。

法テラスの審査に必要な書類

法テラスの制度を利用するには、無料相談の後に財産や資力、世帯などに関連する書類を提出し審査を受けなくてはいけません。必要な書類は以下の通り。

  • 収入を証明する書類
  • 資力申告書
  • 世帯全員の住民票の写し
  • 返還用の口座が分かるもの
  • 事件に関係する書類

収入を証明する書類

法テラスの無料相談を利用する際には、手取り月収が基準以下であるかの確認が行われます。無料相談を行った後に制度に申し込むことが決まった場合、収入が実際に基準以下かどうかを確認するために以下の書類で審査を実施します。

  • 直近2カ月分の給与明細
  • 直近の課金証明書
  • 確定申告書の写し
  • 生活保護受給証明書
  • 年金証書(通知書)の写し
  • その他収入を証明する書類

生活保護受給証明書は生活保護を受けている方のみ対象ですが、上記の中で準備ができる書類はできるだけ用意してください。内縁を含み配偶者がいる場合、本人だけでなく配偶者の所得に関する書類も必要です。

資力申告書

生活保護受給中の方以外は所定の資力申告書を記入し、審査の際に提出する必要があります。法テラスの民事法律扶助のページに「資力申告書(審査用)」の型式が用意されていますので、印刷をして使用しましょう。

資力申告書に記載する事柄は以下の通り。内縁含み配偶者がいる場合は配偶者の給与や財産についても申告を行います。

  • 現金、預貯金の金額
  • 不動産の有無と金額
  • 生命保険の解約返戻金見込額
  • 有価証券の金額

世帯全員の住民票の写し

資力申告書に記載した同居人数に相違がないか確認するため世帯全員の住民票が必要です。本籍や筆頭者、続柄の記載がされているものに限ります。マイナンバーの記載がないものを提出しましょう。

返還用の口座が分かるもの

立て替えをしてもらった費用は銀行口座からの引き落としにより返還を行います。振替に利用する口座番号などが分かる以下の書類を提出してください。

  • 通帳、キャッシュカード、web口座画面など口座番号が分かる資料の写し
  • 自動払込利用申込書兼預金口座振替依頼書の写し

事件に関係する書類

ここでの「事件」とは弁護士を利用する目的となる事柄を指します。債務整理を目的として制度に申込をする場合は債務一覧表の提出が必要です。債務一覧表の型式は民事法律扶助のページに用意されています。

全ての借金に対し最初の借入日と最終弁済日、借入金額、使途の記載が必要です。最初の借入日が分からない場合は金融機関に問い合わせをして確認をしておいてください。

審査までにかかる期間

法テラスに相談の申込をしてから実際に債務整理が開始されるまでには日数がかかります。スムーズに手続きが進んだ場合でも2週間以上、混雑具合や日程の都合によっては1カ月以上かかることも。民事法律扶助が決定するまでは債務整理を行えないため、それまで返済を続けることになります。

返済を続けられる余裕があれば問題はありませんが、既に延滞をしている方は要注意。長い期間滞納をしている場合、債務整理が決定する前に法的措置を取られる恐れもあります。法的措置を取られ強制執行となった場合、財産や給与が差し押さえられ家族や勤務先に借金がバレるため注意してください。

どれくらいの延滞で給与が差し押さえられるかについては、以下の記事で詳しくまとめています。長く延滞している方は併せてお読みください。
給料差し押さえは無視できる?差し押さえまでの流れや期間、回避方法について解説!

返済を続ける余裕がない方、既に一括請求の書類が届いている方は法テラスを介さず直接弁護士へ相談することをお勧めします。
お住まいの地域で、債務整理に詳しい弁護士を見つける>>

相談~審査申込までの目安

手続きの流れの項目で解説をした通り、制度を利用するには最初に法テラスに問い合わせを行い無料相談に申し込む必要があります。地域によって混雑具合が異なるため、どれくらいの日数で利用ができるかについては一概には言えません。

法テラス東京の場合、予約状況をホームページで確認できます。管轄地域や内容によっては相談までに2週間以上かかることもあるようです。(2022年6月現在)
参考:法テラス東京

審査申込~結果までの目安

審査申込から結果が出るまでは2週間程度が目安です。しかし審査は申込順に行うため、連休明けや年始など時期によっては1カ月以上待つこともあります。

審査に通る見込みが高い場合、法テラスによる審査結果が出る前に債務整理を開始してくれる弁護士もいます。しかしあくまでも事務所の方針によって異なり、多くの弁護士は審査完了後でないと着手を行わないため、余裕を持った申込が必要です。

民事法律扶助制度のメリットとデメリット

民事法律扶助制度を利用すると、弁護士費用がすぐに捻出できない方でも債務整理を行えます。しかし制度にはメリットだけでなくデメリットもあることも理解した上で申込をしましょう。

メリットは費用の立て替えをしてもらえる点

債務整理を弁護士に依頼する際には費用がかかりますが、民事法律扶助制度を利用すると費用を立て替えてもらえます。

立て替え分の支払いは援助が決まってから始まりますが、債務整理中の支払いは月10,000円または5,000円で済むため、まとまった金額が用意できない方でも心配無用です。手続完了後はかかった金額の総額を3年かけて分割で支払います。

弁護士に依頼する上でどうしても気がかりなのが依頼費用の捻出方法ですが、制度を利用することで心理的な負担を解消して債務整理を行うことができます。

民事法律扶助制度にはデメリットもある

法テラスの制度を利用することにより債務整理の費用の立て替えをしてもらえる点は魅力ですが、以下のようなデメリットもあります。

  • 弁護士を選べない
  • 日数がかかる
  • 審査の基準が厳しい

弁護士を選べない

民事法律扶助の利用にあたり法テラスに無料相談を申し込むと、法テラスと契約をしている弁護士・認定司法書士を紹介してもらえます。各地の法テラス事務所には元々常勤の弁護士がいることが多く、自動的にその方が受任する形式を取っている事務所が大半です。

法テラスが受付する問題は債務整理だけでなく離婚や交通事故、賠償問題など様々ですので、担当弁護士が必ずしも債務整理が得意とは限りません。

債務整理の中でも金融機関との交渉を行う「任意整理」は弁護士の手腕によって成果に差が生じる手続きです。交渉にあたる弁護士が任意整理を得意としていない場合、もしくは実績がない場合、せっかく債務整理をしても債務者に有利な交渉ができず、借金をあまり軽減できないことも。

債務整理における弁護士選びの重要性は、以下のページに詳しくまとめています。
【相談前・相談時】債務整理を依頼する弁護士の選び方を解説!失敗しない6つの注意点も紹介

持ち込み方式で弁護士を選べる

法テラスの無料相談を利用する前に自分で法テラスと契約している弁護士を探し、その事務所の無料相談を利用した後、その法律事務所を通して法テラスに申し込むこともできます。

いわゆる持ち込み方式と呼ばれる手順で、この方法で制度を利用する方が増えています。法テラスと契約している弁護士・司法書士はホームページの地方事務所から検索ができます。

日数がかかる

法テラスを利用した場合、債務整理開始までにはどうしても日数がかかります。審査の結果が出て債務整理が開始されるまでは返済を続けるか督促連絡に対応をしなくてはいけません。

先に解説をした通り、既に一括請求を受けている場合は審査の結果が出る前に法的措置に移行し、差し押さえを受ける恐れもあります。

しかし法テラスを介さない場合、弁護士への無料相談のあと契約を交わすことですぐに債務整理手続きに入ることができます。委任契約を交わすと弁護士事務所から各債権者に介入通知(受任通知)が発送され、それが債権者の元に到着した時点で返済が一時的にストップし、督促もストップします。

審査の基準が厳しい

法テラスを利用するためには、収入・資産が両方とも基準以下である必要があります。手取り月収が低いから利用できるだろうと思っていても、審査に必要な書類を準備していたら基準を満たさないことに気づいたというケースが後を絶ちません。

財産については不動産が含まれるため、自分名義の土地や持ち家がある方は生活が苦しくても審査には通らない可能性が高いです。また有価証券生命保険の解約返戻金見込額も財産へ加算されます。現在収入が少なく生活が苦しかったとしても、これらの財産を合算して基準を超える場合は制度の利用はできません。

法テラスの審査に落ちたときは

先述の通り法テラスの審査は落ちることもあります。しかし民事法律扶助制度に頼れないのでは債務整理ができない、と思い込んではいけません。元々債務整理は金銭的に困っている方向けの制度です。今お金が準備できない方でも債務整理は可能です。

法律事務所の無料相談を活用

法テラスと契約を行っていない法律事務所の多くは無料相談を設置しています。メールや入力フォーム等から自分の都合のよい時間に相談ができる事務所も増えており、電話が苦手だという方、平日や日中は時間が取れないという方でも気軽に利用ができます。

法テラスの無料相談は時間と回数に制限が設けられていますが、法律事務所の中には相談に関して特に制限を設けていないところも増えています。

相談時に料金の支払について確認を

法テラスを使えない時に気になるのが実際に支払う料金です。弁護士に依頼をする以上どうしても費用はかかるのですが、そもそも債務整理はお金に困った方が行う手続きであり、その事は事務所側も当然理解しています。そのため実際には分割払い・後払いに対応してくれる事務所が大半です。

無料相談の段階で料金について相談を行えば、実際の支払い金額や支払計画の見積もりを出してもらうこともできます。事務所によっては民事法律扶助制度を利用した時と変わらない負担で支払いができることもあります。

実際に支払う費用の目安は?

債務整理に限らず、弁護士に支払う報酬は以下の二つに分けることができます。

着手金
手続きを開始する時に支払う費用
報酬金
手続きが成功した時に支払う費用

 
着手金は弁護士が問題にとりかかる事に対しての報酬であり、本来であれば債務整理の手続き開始時にも着手金を支払うことになっています。しかし任意整理については着手金を取らない事務所も増えているため、ここでは着手金と報酬金を合算した費用を算出しています。

債務整理の種類 費用の目安
任意整理 一社あたり3~10万円
個人再生 30万円~70万円
自己破産 20万円~50万円

弁護士に支払う報酬の金額には明確な決まりがありません。事務所によって金額が異なるため、無料相談の段階でいくら費用がかかるのかを問い合わせしましょう。

まとめ

法テラスの民事法律扶助を利用すると、債務整理にかかる費用を立て替えてもらうことができます。しかし実際に制度を利用するには収入・資産が共に基準以下でないといけません。そのため生活が苦しい状況でも審査に通過しないことがあります。

また民事法律扶助は申込から債務整理の手続き開始までに日数がかかります。早ければ2週間程度で審査が終わりますが、混み合っている場合は1カ月以上かかることも。また無料相談の段階で混雑していたり、審査に必要な書類を揃えるために日数がかかったりした場合は更に債務整理が先延ばしになります。

民事法律扶助を利用しなくても多くの法律事務所が費用の後払いや分割払いに応じてくれます。そもそも債務整理はお金に困った方のための手続きですので、支払いの面については融通を利かせてくれる弁護士が大半です。自分で弁護士に依頼をすることですぐに債務整理手続きを開始でき、返済や督促に追われる生活から解放されることができます。

早く債務整理をしたい方、民事法律扶助が利用できる条件に当てはまりそうにない方は、積極的に弁護士の無料相談を利用していきましょう。

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