給料差し押さえは無視できる?差し押さえまでの流れや期間、回避方法について解説!

給料差し押さえは無視できる?差し押さえまでの流れや期間、回避方法について解説!
給料差し押さえは無視できる?差し押さえまでの流れや期間、回避方法について解説!
  • 「給料差し押さえは無視しても大丈夫?」
  • 「差し押さえまでの流れや回避方法が知りたい」

税金や借金の支払いを滞納して給与が差し押さえられたとき、果たして無視していても大丈夫なのでしょうか?こちらの記事では給料差し押さえまでの流れや期間などを通して、給料の差し押さえが無視できるのかについて詳しく解説。また税金の滞納による差押えは、通常と手順や差し押さえられる金額が異なるということについても注意点と共に紹介していきます。

財産が差し押さえられると会社や家族に迷惑がかかります。差し押さえを回避する方法や、差し押さえまで行っても解除する方法を紹介するので、いざというときの参考にしましょう。

 

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給料差し押さえを無視してもいい?

給料の差し押さえとは、お金を借りている債務者の給料の一部が、本人ではなくお金を貸している債権者に直接支払われることを指します。果たして給料差し押さえを無視していても問題ないのでしょうか?

給料差し押さえは無視できない

給料など財産の差し押さえが裁判所に認められると、決して無視することはできません。給料の差し押さえを求める「債権差押え通知書」は勤務先に直接届くため、本人が拒否しても給料の差し押さえを止めることは不可能です。

また勤務先も、裁判所の命令を無視して給料を支払うことが法的に禁止されます。もしあなたの手元に債権者から「差し押さえ予告通知書」が届いているなら、給料の差し押さえが目前に迫っている状況だということを理解しましょう。

給料は差し押さえ対象になりやすい

給料は他の財産と比べると差し押さえ対象になりやすい性質があります。というのも手続きの手間がそれほどかからず、定職に就いてまじめに働いている債務者なら、一番確実に債権を回収できるからです。また給料は一度差し押さえられると、債権名義で認められた金額まで継続して差し押さえができます。

もちろん給料の他に預貯金が十分にある場合は、1回の差し押さえで回収できます。しかし通常差し押さえを受ける程切羽詰まった債務者の預貯金については、期待できないことがほとんど。さらに銀行口座の預金の差し押さえの効力は1回限りなので、差し押さえた時点で残高が不足していたらそれで差し押さえは終了となります。

このような理由から、差し押さえで最初にターゲットになるのが給料だということが分かります。

雇用形態・支払い方法は関係ない

働いた対価として得られる給料なら、アルバイトでも派遣社員でも雇用形態は問わず差し押さえられます。また給料の支払い方法が銀行振り込みでも手渡しでも関係ありません。さらに給料には毎月決まった日に支払われる月給だけでなく、日払いや10日ごとなど様々な支払い方法がありますが、決められた上限内で差し押さえらえることに変わりはありません。

差し押さえを無視したら起こること

実際に差し押さえを無視したらどのようなことが起こるのでしょうか。

会社に差し押さえが知られる

給料が差し押さえられる前には、会社宛てに裁判所から差押え通知書が届くため、間違いなく勤務先に知られることになります。また勤務先では差し押さえ分の給料を分けて、その分を債権者に直接払うなどの手間をかけなければいけません。給料を差し押さえられたことで直接解雇されることはありませんが、このような理由から会社に居づらくなることが考えられます。

また周囲に差し押さえされたことを知られると「お金にだらしない人」という悪いイメージが付くことも。派遣社員やアルバイトなどは給料の差し押さえを受けると、次の契約更新のときにマイナスとなる恐れがあります。

2020年4月1日には、第三者からの情報取得手続が開始されました。この制度のおかげでたとえ転職しても債権者は債務者の転職先を調べられるようになり、転職先でも給料が差し押さえられる可能性があるということを覚えておきましょう。

参考:情報取得手続がはじまります!|裁判所

財産が差し押さえられる

差し押さえを無視していると、給料を含めた財産が差し押さえられます。差し押さえられる財産には次のようなものがあります。

給料の1/4・ボーナス・退職金

給料の差し押さえを受けると、勤務先からの給料が受け取れなくなります。とはいえ給料は生活する上での原資になるため、全額差し押さえてしまうと生活できなくなります。そこで裁判所では、次のような基準を設けて給料の差し押さえを行っています。

  • 手取り金額の1/4
  • 手取り金額が44万円を超える場合は、33万円を引いた残りの金額

給料の他にボーナスや退職金も差し押さえの対象です。ただし差し押さえの原因が子どもの養育費や別居家族の婚姻費用といった生活にかかわるお金の場合は、手取り金額の1/2が差し押さえ対象になります。

また自営業者や会社役員の場合は、サラリーマンの給料とは異なる取り扱いになり、基本的に全額が差し押さえ可能となります。取引先に対する売掛金なども給料ではないので全額差し押さえられます。特に保険外交員は、勤務先との契約によっては手取りの全額が差し押さえされることも。

預貯金全額

銀行や郵便局の口座に入っている預貯金は全額差し押さえの対象になります。銀行口座の預貯金は、お金の出し入れによって絶えず変動があります。差し押さえとなるのは金融機関に差押命令が送達されたときの預貯金残高です。差し押さえられた預貯金は別口座に移され、口座名義人は引き出せなくなります。

差押債権の金額よりも預貯金の残高が少なければ口座は0円になりますが、逆の場合は口座に残ったお金は自由に引き出せます。ここで注意したいのが銀行振込で入金された給料の取り扱いです。給料は手取りの1/4までと決められていますが、預貯金には制限がないので、給料が振り込まれてしまうと全額を預貯金として差し押さえられるケースも。

この場合は裁判所に「差押債権の範囲の変更申立て」を行えば、1/4を超える金額の差し押さえは解除されます。ただしこの手続きは差し押さえから1週間以内に行わなければなりません。この期間を過ぎると差し押さえは解除されないので、十分に注意しましょう。

車や不動産

債務者名義の車や家などの不動産も差し押さえの対象となります。家に担保権を設定している場合は、その担保権を実行して債権者は不動産を競売にかけます。担保権を設定していない場合でも、債権者は不動産を競売にかけることが可能です(強制競売)。競売によって落札されると、そのお金は借金の返済にあてられます。

また車も同様に差し押さえの対象となる財産です。ただし車をローンで購入している場合は、ローン会社に所有権があるので差し押さえられて売却となる心配はないでしょう。

住宅ローンが強制解約になる

給料の差し押さえを無視し続けると、住宅ローンが強制的に解約になる可能性があります。というのも差し押さえられた口座のある金融機関で住宅ローンを組んでいる場合、借り入れ(住宅ローン)が残っている銀行口座の預貯金が他の債権者から差し押さえられると、差し押さえられた口座がある金融機関の借り入れも強制解約となってしまうからです。

口座が凍結される

上で説明したような状況で住宅ローンが強制解約されてしまうと、ローン残額を相殺するために銀行口座が凍結されて、その口座に入っている貯金が引き出せなくなります。口座が凍結されるとお金を引き出せないのはもちろん、お金を入金するのも不可能に。ローン解約による銀行口座の凍結は、ローンが完済できなければ数カ月続くこともあります。

凍結された口座が給与振り込みや公共料金振替に使われていると、日常生活にも大きな影響が出るので注意が必要です。

家族に借金のことがバレる

給料が差し押さえられると、手取り額が減るため家族に借金を滞納していたことがバレてしまいます。また税金を滞納していた場合は、銀行口座が差し押さえされると通帳に摘要欄に「サシオサエ」と記入されてしまいます。給料の差し押さえだけでは債権が無くならない場合は、住んでいる家や車を手放さなければならないケースも。

住む家を引っ越さなければならず、子どもの送り迎えに車が使えなくなるなど、家族にも大きな影響が出てしまいます。

給料が差し押さえられるまでの流れ

カードローンやクレジットカードの返済を滞納しても、いきなり給料や預貯金を差し押さえされてしまうわけではありません。給料が差し押さえられるまでには、裁判所の手続きを踏まなければららず、給料の差し押さえを回避できるターニングポイントがいくつかあります。

①債権者から一括請求の通知が届く

クレジットカードや消費者金融からの借金を返済しないままでいると、債権者から一括返済を求める通知が届きます。一括請求とは「借金の残金と遅延損害金を一括で支払うように」という内容の通知です。

「今まで分割で返済できていたのにどうして?」と思われるかもしれませんが、あなたが借金を滞納していたことで分割返済できていた権利である「期限の利益」が喪失したためです。金融機関にもよりますが、一括請求が届くのは滞納してから2カ月前後。すぐに何らかの対処をすれば給料を差し押さえられることはありません。

一括請求までの流れや一括請求が届いてからの解決方法については、こちらの記事を参考にしましょう。

クレジットカード会社からの一括請求を無視するとどうなる?主な流れと解決方法を紹介!

②債権者から差押予告通知書が届く

一括請求と同時期に債権者から「差押予告通知書」が届く場合があります。差し押さえ予告通知書とは「期限までに返済がなければ裁判で強制執行により財産を差し押さえます」という通知です。これは債権者が訴訟や支払督促といった法的措置を取る一歩手前の段階だと覚えておきましょう。

債権者からの差押予告通知書に対して何のリアクションもしないと、債権者に訴訟を起こされてしまいます。差し押さえ予告通知書は「残金を一括で返済しなければ財産を差し押さえます」と、一括請求と同じタイミングで来ることもあります。

③裁判所から支払督促が届く

一括請求や差し押さえ予告通知書を無視して放置していると、いよいよ債権者は支払督促や貸金請求訴訟を裁判所に申し立てます。裁判所は債権者の代わりに、債務者に対して「支払督促」という形で金銭の支払いを命じてきます。通常は「特別送達」という郵便で書類が届くので、必ず中身をチェックしてください。

支払督促には借金の内容や支払期日などが明記されています。もし内容に不服がある場合は、同封されている「異議申立書」に必要事項を記入して送付元の裁判所へ郵送または直接提出します。異議申し立てがない場合はそのまま手続きが進み、強制執行を受けてしまうことになります。

④裁判所から仮執行宣言付支払督促が届く

支払督促を送達されてから2週間以内に異議申し立てがない場合は、その後30日以内までに裁判所から仮執行宣言が発せられます。仮執行宣言とは支払督促に執行力を持たせる裁判のことで、仮執行宣言付支払督促が債務者に届いた後は、債権者は執行文の付与なしに強制執行をすることができます。

これにより支払督促が確定する前でも強制執行が認められ、債務者はいつ差し押さえられてもおかしくない状態に。仮執行宣言付支払督促を止めるには、2週間以内に異議申し立てを行う必要があります。また債権者による強制執行を止めるためには、裁判所に対して新たに執行停止の申立てをしなければなりません。

⑤差し押さえが実行

その後、債権者が裁判の判決書や仮執行宣言付支払督促に基づいて、裁判所に給料の差し押さえを求める申し立てをすると、実際に給料が差し押さえられます。債権者からの差押予告通知書が届いてから、早ければ1~2カ月後に給料を差し押さえれらてしまうことも。

債権者が裁判所に債権差押命令を申立ててから勤務先に差押命令が送られてくるまでの手続きは、債務者には一切知らされず、ある日突然給料が差し押さえられることが明らかになります。ここまで来てしまうと債務者に打つ手はほぼないでしょう。最悪の事態を防ぐには、裁判所からの書類は当然のことながら、債権者からの督促も決して無視したりせず、すぐに弁護士などに相談しましょう。

差し押さえはいつまで続く?

それでは給料の差し押さえは一体いつまで続くのでしょうか?勤務先にも迷惑がかかるし、会社でも肩身の狭い思いをしなければならないので、なるべく早く終わってほしいと思うでしょうが、給料の差し押さえは一定の金額になるまで続くことになります。

「債務名義」で認められた金額になるまで

給料の差し押さえの効力は「債務名義」で認められた金額を完済するまでずっと続きます。例えば債権者が債務名義に基づいて、50万円請求できるという場合では、債務者の給料が手取り20万円なら1/4の毎月5万円差し押さえられ、50万円が完済される10カ月後まで続くことになります。

債務名義とは

給料の差し押さえは債務名義で認められた金額が終わるまで続くと解説しましたが、債務名義とは債権者が強制的に債権を回収するために、裁判所に発行してもらう公文書のことを指します。債務名義を発行してもらい差し押さえ手続きに必要な書類を集めれば、いつでも債権者は給料の差し押さえができるようになります。いわば水戸黄門の印籠のようなものです。

通常借金を延滞しただけですぐに給料を差し押さえられることはありません。強制的に差し押さえるには債務名義が必要で、債務名義を取得するためには、下のいくつかの手段のいずれかをとらなければなりません。

  • 裁判の確定判決
  • 仮執行の宣言付きの判決
  • 仮執行の宣言付きの損害賠償命令
  • 仮執行の宣言付きの支払督促
  • 執行証書(強制執行する旨の公正証書)
  • 調停証書

債務名義を作成する手続きとして最もよく用いられるのが仮執行の宣言付支払督促です。支払督促は債務者に送達され、2週間以内に異議申し立てがなければ差し押さえに有効な債務名義になってしまいます。給料を差し押さえられるには、その前段階で必ず債権者から訴訟を起こされたり、裁判所から支払督促が届いているはずです。

また債権者と支払いについて話し合い裁判で和解したり、公正証書を作成していることもあるかもしれません。「ある日突然給料が差し押さえられた」という人もいますが、差し押さえ以前に必ず回避できる方法はあったはずです。

遅延損害金も含まれる

給料差し押さえで気を付けたいのは、遅延損害金の存在です。遅延損害金とは契約などで決められた期日までに借金を返済できないときに発生するペナルティのようなもの。債務名義は遅延損害金も含んだ金額で認められているので、予想よりも多い金額を差し押さえされる可能性も。遅延損害金の利率は利息制限法が定める上限金利に基づいて、次のように決められています。

借入金額 10万円未満 10万円~100万円 100万円以上
遅延損害金 29.2% 26.28% 21.9%
利息 20% 18% 15%

遅延損害金は返済期日以降の残金に日割りで加算されますが、通常の利息と二重で請求されることはありません。とはいえ通常の利息と比べるとはるかに金利が高いので、借金を滞納してから差し押さえまでの期間が長かったり、返済すべき元本が高額だったりすると遅延損害金はより高くなります。

税金の滞納は要注意!

借金や養育費などの滞納で給料が差し押さえられますが、税金を滞納しても差し押さえられてしまいます。借金の返済が滞っている人の多くは、払うべき税金を滞納していることもままあります。ただ税金の滞納は、クレジットカードなどの返済を滞納したときと差し押さえまでの流れは少し異なりますので注意が必要です。

裁判所を通さずに差し押さえ可能

税金の滞納は裁判所の手続きを通さずに、徴収機関が直接給料の差し押さえすることができます。この徴収機関による差し押さえのことを「滞納処分」といい、次のような流れで給料が差し押さえられます。

  1. 税金を滞納後、国税は50日以内、地方税は20日以内に督促される
  2. 滞納者の元に督促状が送られてくる
  3. 督促後10日以降に給料を差し押さえられる

借金の返済が滞納しているときは滞納してもしばらく猶予があり、裁判所を通じて債務名義を発行してもらう必要がありますが、税金は支払期限を一日でも過ぎてしまうと滞納となり、裁判所を介さずに差し押さえが可能です。

税金の種類によっては、一度の督促状の送付だけですぐに差し押さえられることは少ないでしょう。ただし税務署など徴収機関から連絡がきたときは、「まだまだ時間があるから大丈夫」とのんびりせず、速やかに納付について相談するようにしましょう。

税金で差し押さえを受ける範囲

税金を滞納したことによる給料の差し押さえでは、借金のケースの「手取りの1/4」とは異なり、給料の額面から次のものを差し引いた金額となります(国税徴収法第76条第1項)。場合によっては借金の差し押さえよりも範囲が広くなる可能性があるので気を付けましょう。

  1. 所得税
  2. 住民税
  3. 社会保険料
  4. 10万円
  5. 扶養家族1人につき45,000円
  6. 給与額面から1~3を差し引いた金額×0.2(20%)

税金は債務整理できない

返済できない借金を減額したり免責できる債務整理ですが、税金や社会保険料などは一切減免できないので注意が必要です。借金を免責できる自己破産でも、税金などは「非免責債権」とされ、自己破産が認められ免責が許可されても滞納した税金はなくなりません。

また税金を滞納したまま債務整理しようと思っても、役所から銀行口座や給料を差し押さえられることで、和解に基づいて返済していく任意整理ができなくなったり、債権者との交渉が上手くいかない場合も。もし債務整理をお考えなら、税金の滞納はなるべく早めに解消することをおすすめします。

返済が難しいときは役所に相談

税金を滞納してしまい、手元にお金がなく税金の支払いが思うように行かないときは役所に支払い方法を相談しましょう。役所では支払い方法について相談にきてくれた人に対しては、話し合いに応じてくれることがほとんどです。自分の状況を正直に話し、払う意思があることを示せれば、月々に払える金額で分割払いに合意してくれるでしょう。

差し押さえは回避・解除できる?

給料が差し押さえされると、手取りが少なくなるだけでなく職場にも迷惑がかかってしまいます。何とか差し押さえを事前に回避したり、差し押さえを解除できる方法はないのでしょうか。

差し押さえの回避方法

給料の差し押さえを事前に回避するためには、早め早めの行動がカギとなります。

弁護士に相談

すでに債権者から差押予告通知書が届いているようなときは、差し押さえまでの時間は限られます。すぐに返済ができないような状況なら、早めに弁護士に相談しましょう。

このような警告の段階で弁護士に依頼できると、債権者からの取り立てを全てストップできます。弁護士が債務者の代理人になることで、今後の交渉は全て弁護士を通して行われるからです。債務者は借金の取り立てから解放されて、精神的な負担を減らすことができます。

借金の状況によっては債務整理を勧められることも。適切な債務整理方法を選ぶことができ、弁護士が適切な対処をすることが債権者にも伝わり、訴訟に持ち込むのを避けられる可能性も。裁判を起こされる一歩手前の段階でストップできるので、債務者にとっては大きなメリットとなるでしょう。

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分割払いの交渉

債権者に直接分割払いの交渉をするという方法があります。債権者から支払督促が届いたら決して無視せず、督促状に書いてある連絡先へ連絡してみましょう。支払う意思があることを示せれば分割払いに応じてくれる可能性があります。債権者としても差し押さえをするのは時間や手間、お金がかかります。債務者が返済してくれるのであれば分割払いも検討してくれるはずです。

債務整理

債務整理の手続きを開始することで、差し押さえを回避できます。債務整理には次の3種類あり、それぞれの手続きの特徴が異なります。

債務整理 手続きの内容
任意整理 これから発生する利息や過去の遅延損害金をカットできる手続きで返済期間の延長も可能
裁判所を通さず債権者と直接交渉する手続きで、整理対象を選べるのが特徴
減額された借金は3年~5年かけて返済していく
個人再生 裁判所に申し立てて再生計画が認められれば返済総額を大幅に減額できる
減額された借金は返済の義務が残るため、安定した収入があることなどが条件
自営業者でも可能な「小規模個人再生」とサラリーマンなどが対象の「給与所得者再生」の2種類ある
自己破産 一定以上の財産を処分する代わりに裁判所に申し立てて借金を免責できる手続き
財産や免責不許可事由のない場合の「同時廃止」と、破産管財人によって財産や借金の理由を調査される「管財事件」があり、破産までの期間や費用が異なる

ただし給料差し押さえが実際にスタートしてしまっていると、任意整理で差し押さえをストップすることはできません。任意整理は債権者と交渉して減額してもらう手続きですが、減額に応じるよりも給料差し押さえを継続した方が確実に回収できるため、債権者が交渉に応じる可能性が限りなく低いからです。

債務整理と任意整理の違いについては、こちらの記事を参考にしましょう。

「任意整理と債務整理の違いは何?メリット・デメリット、任意整理に向いてる人を解説」

差し押さえの解除方法

債権者から給料などの財産を差し押さえられてしまったときでも、一定期間以内であれば差し押さえを解除してもらう手続きをとれます。

一括返済

すでに差し押さえがされてからでも、残債を一括返済できればそれ以降の差し押さえが行われることはありません。一括払いすれば債権が無くなるからです。可能なら親族や知人などに支援を依頼して、返済のためのお金を借りるという方法があります。ただし個人間の借金はトラブルの元。なるべく借用書を交わすなどして信用してもらうようにしましょう。

裁判所に異議申し立て

上で説明した通り、給料差し押さえに至る各段階では異議申し立てをできる期間が2週間設けられています。もし差し押さえが不当ならこの期間内に裁判所に対して異議申し立てを行うことで、差し押さえを取り下げてもらうことが可能です。ただ異議申し立てによって実際に給料の差押が取り下げられるケースは次のような場合に限られます。

  • 債務者ではない不当な差し押さえの場合
  • 収入が年金や生活保護費しかない場合

定職があり給与収入を得ているケースでは、ほとんど異議申し立てを認められません。

個人再生か自己破産

一括返済が不可能な場合は、個人再生か自己破産の申立てをすれば差し押さえが解除できます。

個人再生

個人再生を裁判所に申し立てて、「個人再生手続開始決定」が出ると、それまでなされていた差し押さえなどの強制執行がストップします。もちろん給料の差し押さえも中止されるのですが、差し押さえされていた分の給料は債務者に支払われることはありません。その分の給料は勤務先が独自にプールしておくか、供託金として法務局に預けられます。

プールされていた差し押さえ分の給料は、個人再生案の認可決定が確定した後にまとめて受け取れます。期間は個人再生の手続きを申立ててから半年~7カ月前後です。

自己破産

自己破産の場合は「同時廃止」と「管財事件」で、差し押さえられた分の給料が手元に戻ってくるタイミングが異なります。

自己破産の種類 給料差し押さえの取り扱い
同時廃止 破産手続開始決定と同時に強制執行が中止
それ以降の差し押さえ分の給料は勤務先がプールするか供託される
プールされた分が戻ってくるのは免責決定確定までの2~3カ月後
管財事件 破産手続開始決定と同時に差し押さえが中止される
差し押さえられた分の給料を含めて全額はすぐに債務者が受け取れる

同時廃止でも管財事件でも破産開始決定と同時に強制執行がストップします。ただし同時廃止では2~3カ月分の給料をプールされ、免責許可決定確定にならないと手元に戻ってきません。その点、管財事件では強制執行が中止されるとすぐに給料の全額が受け取れるようになります。

個人再生と自己破産、どちらが自分に向いているか分からないという方は、こちらの記事を参考にしましょう。

「個人再生と自己破産の違いとは?手続き・条件の比較や切り替え方法を教えます!」

まとめ

給料の差し押さえは裁判所で出される強制執行に基づいて行われるため決して無視できません。給料が差し押さえられると勤務先に知られるだけでなく、その他の財産も差し押さえられたり住宅ローンが強制解約されることも。給料は差し押さえされやすく、雇用形態や支払い方法も関係ありません。手取りの1/4を差し押さえられると家族にも知られることになるでしょう。

給料が実際に差し押さえられるまでには、債権者から一括請求や差押予告通知書が、裁判所から支払督促や仮執行宣言付支払督促が届くなど段階があります。いずれの場合でも債権者に分割払いの交渉をしたり、異議申し立てをする等の手立てが残されています。実際に給料が差し押さえられる前に、なるべく早めにこれらの方法でストップさせましょう。

すでに給料が差し押さえられている場合は一括返済できれば解除できますが、全額完済するのが難しいときは個人再生もしくは自己破産という方法が残されています。ブラックリストや官報に載るなどのデメリットがありますが、差し押さえをすぐにストップでき、借金も減免できます。これらの債務整理をお考えの方はぜひ借金問題に詳しい弁護士までご相談ください。

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