- 「自己破産手続きにはどのくらいの期間がかかる?」
- 「自己破産でブラックリストに載る期間を知りたい…」
自己破産を考えている人にとって、手続きにどのくらいの期間を要するかについてや、自己破産によって制限がかかる期間があるかについてはとても気になるのではないでしょうか。この記事では自己破産の手続きにかかる期間や長引く原因、期間を短くする方法を詳しく解説。
また自己破産によって影響するさまざまな期間についても紹介していきます。自己破産の手続きにかかる期間を知れればスケジュールが立てやすくなり、どんな制限がどの程度の期間かかるかを知っておけば、事前に対処ができることもできるでしょう。なるべくスムーズに進めるためにできることを今から進めていきましょう。
自己破産の手続きにかかる期間は?
まずは一番気になる自己破産の手続きにかかる期間について説明していきます。手続きが長引くケースや短くする方法を知って、短期間で手続きを済ませられるようにしましょう。
自己破産手続きは2種類ある
借金が免責される自己破産ですが、条件や持っている財産によって「同時廃止」と「管財事件」という2種類の手続きに分かれます。それぞれの条件や特徴はこちらです。
手続きの種類 | 同時廃止 | 管財事件(少額管財) |
---|---|---|
手続きの特徴 | 持っている財産がほとんどなく、ギャンブルや買い物による浪費が借金の原因でないときに適用される。 | 破産を申し立てると破産管財人が任命され、所有財産の調査や換価、債権者への分配がなされる。 |
適用条件 |
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同時廃止よりも管財事件の方が手続きが複雑で、時間だけでなく費用もかかります。
同時廃止にかかる期間
同時廃止で自己破産する場合、債権者に分配できる財産がほとんどないため、破産の申入れを行い免責決定が確定されると破産手続も同時に終了(廃止)します。同時廃止にかかる期間は裁判所に自己破産開始の申立てをする前の準備期間で2~3カ月、申立てしてから免責決定が確定するまで3カ月から4カ月ほどです。
準備期間を含めるとトータルでは5カ月から7カ月ほどかかると覚えておきましょう。それぞれの手続き段階ごとの手順や期間の目安は以下の通りです。
手続き段階 | 手続き内容 | 期間の目安 |
---|---|---|
準備期間 |
|
2~3カ月 |
自己破産申立~破産手続開始決定 |
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2週間~1カ月 |
免責手続~支払い免除 |
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2~3カ月 |
同時廃止では管財事件のように破産管財人が財産を調査したり債権者に財産を配当する必要がないため、それぞれの事案や裁判所の運用方法によって異なりますが、自己破産の中では最も短期間で手続きが終わります。
管財事件にかかる期間
管財事件の手続きにかかる期間についてですが、準備期間は同時廃止と同じ2~3カ月ほどですが、免責決定確定までは6カ月から長いと1年以上かかることも。手続きの内容とそれぞれの期間の目安はこちらです。
手続き段階 | 手続き内容 | 期間の目安 |
---|---|---|
準備期間 |
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2~3カ月 |
自己破産申立~破産手続開始決定 |
|
2週間~1カ月 |
破産手続き |
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3~6カ月 |
免責手続き~支払い免除 |
|
2~3カ月 |
破産手続開始決定までは同時廃止と同じ流れで進みますが、管財事件では債権者に分配できる財産があるということで、その財産を調査管理する破産管財人が裁判所により任命されます。破産管財人によって財産が換価(売却)され、債権者集会で決定された内容で債権者に分配していきます。
破産状況の複雑さや債権者の数によって手続きが長引くことがあり、すんなり配分について決まらないと何度も債権者集会を開かなければならずさらに時間がかかることも。
少額管財にかかる期間
少額管財とは管財事件において手続きが簡略化される制度で、破産管財人が行う自己破産手続を短縮することで全体の期間や手続きにかかる費用を節約できます。通常は6~8カ月ほどかかる申立から免責決定確定までですが、少額管財では3~4カ月と短縮できるのが特徴。ただし少額管財で手続きするには以下のような条件があります。
- 債権者の数が少ない
- 複雑な案件でない
- 少額管財を実施している裁判所に申し立てる
- 弁護士に手続きを依頼している
少額管財は弁護士が財産および借金原因の調査をすることで、期間や費用を節約しています。よって弁護士に手続きを依頼するのが最低限の条件です。また地方によっては少額管財を取り扱っていない裁判所があるため、事前に確認が必要です。
自己破産の流れや必要書類を詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしましょう。
「債務整理の流れと必要書類 | 期間や手続きの注意点も解説」
手続きが長引くケース
上で同時廃止と管財事件、それぞれの手続きにかかる期間の目安を説明しましたが、場合によっては手続きが長引くことも。こちらでは手続きが長引く可能性のあるケースを紹介していきます。
自分で手続きした場合
自己破産を自分で手続きすると、免責決定確定までの期間が長引くでしょう。法律的には専門家に依頼せず自分ですべて進めても問題ありませんが、必要書類を集めることから始まり、裁判所への申立てや破産管財人とのやり取りでは法律的な知識が不可欠なことから、スムーズに進められないということも出てくるでしょう。
さらに弁護士に依頼することで受けられる数々の制度やメリットが受けられず、結果として無駄に期間が長引いてしまうということも。自分一人でやろうとすると提出書類などに不備が生じて、結果的に免責が不許可になる可能性があります。せっかく手間と時間をかけて手続きしたのに借金が免責されないということになりかねません。
法テラスを利用
法テラスを利用すると自己破産期間が伸びるケースがあります。法テラスとは、国が設立した法律にかかわるトラブルを解決してくれる公的機関です。無料で法律相談を受けられたり、一定の条件を満たすと手続きに必要な弁護士費用の立て替えや分割払いを受けられるという大変ありがたい法テラスなのですが、審査に時間を要することがあります。
通常法テラスを利用するには、収入基準や資産基準を満たしていることが条件となります。無料相談や民事法律扶助制度を利用するのには、収入や資産が基準を満たしているかという審査で、2週間前後の期間が必要です。
審査には給与明細や課税証明書、世帯全員の住民票の写しなど書類を提出しなければなりません。この書類の準備期間まで含めると、最短でも3週間ほど余分に必要になることを覚えておきましょう。
債権者が反対している
債権者が自己破産による免責に反対していると、手続きが完了するまで長引く可能性があります。通常消費者金融やカード会社、銀行などが免責について反対することはありませんが、個人の債権者がいると「免責を認めない」という反対意見を出してくるケースがあります。
債権者から反対意見を出されると、債務者側も反論を行わなければなりません。こうしたやり取りが繰り返されると、どうしても決定までの時間がかかります。また免責決定に対して債権者が「即時抗告」という形で不服申し立てをする可能性も。地方裁判所から高等裁判所に審理が移されるため、さらに期間が長引くことが考えられます。
書類の準備に手間取る
特に自己破産では、他の債務整理と比べて裁判所に提出しなければいけない書類が多岐にわたります。こうした書類の準備に手間取ると手続きにかかる期間が伸びてしまいます。必要な書類の中には期限付きの書類があり、例えば住民票は発行後3カ月以内のものを提出しなければならず、給与明細も直近のものが必要です。
他の書類を集めるのに手間取ってしまうと、期限付きの書類の有効期限が過ぎ、また新しく書類を準備しなければならなくなります。あまりに書類の準備に時間がかかると、今度は債権者から弁護士に連絡が来たり、返済するよう裁判を起こされる恐れがあります。
処分する財産が複雑で多い
管財事件で自己破産する場合、処分する財産が多かったり、複雑な財産で換価に時間がかかると期間が伸びる傾向にあります。また持ち家や土地など不動産を所有している場合は、銀行の許可をもらい任意売却するケースが多いのですが、そこで売却価格に折り合いがつかなかったり買い手がつかないとさらに時間がかかります。
また売掛金の資産があり、なかなか回収ができないなどという事情があるときにも手続きが長引く傾向が。同様に財産の数が多いと破産管財人による財産の調査や換価が進まず、トータルで1年以上費やしてしまうということも考えられます。
手続き期間を短くする方法
自己破産の手続きは短いと5カ月ほど、長くなると1年以上もかかることも。そんな長い手続きを少しでも短くするためには、いくつかの方法があります。
前もって書類を準備
自己破産の手続きに時間がかかる大きな理由の一つに、必要書類の準備に時間がかかることが挙げられます。必要な書類がそろわなければ、いつまで経っても申立てできず、書類に不備があれば突き返されることも。
そこでこの書類準備を効率的に行えば、全体的な期間を短縮できるはず。そのためにはまずどんな書類が必要になるか、事前に把握しておくことが大切です。こちらは自己破産申立てに必要な最低限の書類一覧です。
- 自己破産申立書
- 陳述書
- 債権者一覧表
- 滞納税金一覧表
- 財産目録
- 世帯の家計表
- 住居に関する書類(不動産登記簿謄本、賃貸借契約書など)
- 収入に関する書類(給与明細、確定申告書、源泉徴収票、課税証明書、年金受給証明書、退職金証明書など)
- 財産に関する書類(車検証、預貯金通帳、生命保険証書など)
- 公共料金領収書
- 住民票
- 戸籍謄本
収入のある家族と同居している場合は、家族の給与明細や預金通帳、家族名義の車検証や保険証書が必要になることも。手続きを依頼した弁護士に確認すると申立てに必要な書類が分かります。期限のある書類は直前に準備することにして、集められる書類から効率的に集めていきましょう。
同時廃止で手続きする
上で紹介した通り自己破産には同時廃止と管財事件(少額管財)という種類があり、このうち同時廃止で手続きすると長くても半年ほどですべての手続きを終わらせられるでしょう。また同時廃止では、管財事件で必要となる破産管財人への報酬が必要ありません。費用の上でも大きなメリットがあります。
ただし適用条件を上回る財産を持っていたりすると申立てできません。また申立てしても免責できない「免責不許可事由」があると手続きできないため、事前に弁護士に相談して自分は同時廃止で手続きできるか確認しましょう。
即日面接で手続きを簡略化
申立て件数の多い東京地方裁判所や横浜地方裁判所では「即日面接」という制度で、破産手続きにかかる期間の短縮ができます。この制度は少額管財による自己破産を申立ててすぐに裁判官と弁護士が面接を行い、通常2週間から1カ月ほど手続きにかかる期間を短縮するという制度。
とはいえ裁判案件の多い東京地方裁判所では当日に面接することは難しく、申立てから3営業日以内というのが通常です。面接が終わると破産手続開始決定がなされ、2カ月以内には債権者集会へと進めます。こちらの制度が利用できるのは一部の地方裁判所だけで、弁護士に依頼している申立てに限ります。
弁護士に依頼する
自己破産の手続き期間を短縮したいなら、弁護士に依頼するのが必須です。弁護士に手続きを依頼すると、次のような理由から手続き期間を短縮できるなどのメリットが得られます。
- 書類の作成や収集について的確な指示をしてくれる
- 債権者とのやり取りを任せられる
- 破産管財人との仲介役となる
- 免責不許可事由についてアドバイスがもらえる
- 過払い金返還請求をしてもらえる
- 「受任通知」を送付すると督促がなくなる
- 同時廃止事件となる可能性が高くなる
- 即日面接制度が受けられる
- 免責を受けられる可能性が高まる
たとえ免責不許可事由があったとしても、どうすれば免責を受けられるかのアドバイスがもらえたり、上申書を作成して管財事件になるのを避けられます。また破産管財人とのやり取りも任せられるため、専門家同士の法律に基づいたスムーズな情報共有が可能です。
司法書士に依頼した場合
よく「司法書士も債務整理の手続きができるのでは?」という疑問を聞きますが、司法書士では取り扱える借金の金額に上限があり、あくまで書類作成代行に限るため本人が申立てするのと同じ扱いを受け、代理人としての仕事ができません。よって裁判官との面接や管財人面接、債権者集会に同行したりあなたの代わりに出席してもらうことができないので注意しましょう。
また管財事件の手続きを短縮できる「少額管財」で手続きができず、「即日面接制度」も利用できません。弁護士に依頼すると司法書士に依頼するよりも高い依頼料がかかりますが、それだけ得られるメリットも大きいため、費用の多寡だけでなくさまざまな視点から検討して選ぶようにしましょう。
自己破産が影響するさまざまな期間について
自己破産の手続き中や免責決定確定後は、色々な制限や影響を受けることになります。こちらでは自己破産が影響する期間について見ていきましょう。
銀行口座凍結の期間
銀行からのローンや借り入れがある場合、自己破産手続きの初めに弁護士から送られる受任通知が銀行に届くと、銀行側が残高を確認したり相殺の手続きをするために口座が凍結されて自由に預金が引き出せなくなります。通常は弁護士に自己破産を依頼した2~3日後に凍結されると考えた方がいいでしょう。凍結される期間は銀行によって異なりますが、1カ月~3カ月程度です。
普段引き落としや振り込みなどでその口座を使っている場合は、口座を凍結される前に次のようなことをやっておくと生活に支障をきたさずに済みます。
- 預金を引き出す
- 給与や年金の振込口座を変更する
- 公共料金や電話料金などの引き落とし先を変更する
どうしても振り込みや引き落としで銀行口座が必要な場合は、どこか新しい銀行に口座を作ることが可能です。たとえ自己破産手続中でも、銀行はいちいち口座を開設するする人すべての信用情報をチェックすることはなく、口座を作ったからといってお金を貸し出す訳ではないので問題ありません。
ただし自己破産の開始決定前に新しく銀行口座を作ったときは、その口座情報を手続きを依頼した弁護士に忘れずに伝えてください。伝え忘れると財産隠しを疑われて免責が受けられない可能性があるので注意しましょう。
郵便物が転送される期間
破産手続中は破産申立人宛てに送られた郵便物は自動的に破産管財人へ転送されるよう、裁判所が手続きを行います。これは申立人が故意に財産を隠していないかや債権者名簿に載っていない債権者がいないかをチェックするために必要な手続きで、転送を拒否することはできません。
通常は破産手続開始決定から破産手続廃止決定までの期間に転送され、最短でも3カ月程度です。破産管財人によってチェックされた郵便物はある程度溜まったら申立人のもとに返されます。
ただし次のようなものは郵便物に該当しないため、破産管財人に転送されません。
- 宅急便・宅配便
- メール便
- ゆうメール
- ゆうパック
引っ越しや旅行ができない期間
破産手続中、移動を伴う引っ越しや国内外問わず旅行は裁判所の許可がないと勝手にできません。これは管財事件(少額管財)で手続きするときに該当し、破産手続期間中に引っ越しや旅行をする場合は事前に裁判所に連絡し、裁判所からの許可を得る必要があります。
住宅や土地を所有している人は引っ越しを認められない可能性がありますが、ほとんどのケースで問題なく許可が下りるでしょう。ただしこれは破産手続中のみの話で、破産手続がすべて終わった後なら問題なく引っ越しや旅行ができるので安心してください。
転職できない期間
自己破産では特に転職してはいけないという決まりがありませんが、転職によって大幅に給料が増額したり、多額の退職金が入ってきたりすると破産できなくなる可能性があります。
自己破産手続中に転職したときは裁判所に申し出る必要があり、提出した家計収支に狂いが生じる場合があるので、やむを得ず転職しなければいけない状況以外はなるべく免責が確定してから転職するようにしましょう。
事故情報(ブラックリスト)解除までの期間
自己破産すると信用情報機関に事故情報として登録されます。これはいわゆる「ブラックリストに載る」という状態ですが、事故情報が解除されるまでの期間は、信用情報機関によって異なります。信用情報機関ごとの具体的な登録期間や登録される内容については、こちらの表を参考にしましょう。
信用情報機関 | 加盟金融機関 | 登録される内容 | 登録される期間 |
---|---|---|---|
CIC(株式会社シー・アイ・シー) | クレジットカード会社 信販会社 |
破産開始決定 免責の有無 |
加盟会社が免責許可決定を確認し登録した日から5年以内 |
JICC(株式会社日本信用情報機構) | 消費者金融 街金融 |
破産申し立ての有無 | 破産申し立ての日から5年を超えない期間 |
KSC(全国銀行個人信用情報センター) | 銀行 信用金庫 労働金庫 |
破産手続開始決定の有無 | 破産手続開始決定の日から10年を超えない期間 |
信用情報に事故情報として登録されると、クレジットカードが使えなくなったりローンや借り入れができなくなります。これらが利用できるようになるまでの期間はこちらを参考にしましょう。
クレジットカードが使えるまで
裁判所からの破産開始決定が出されると、それを確認したクレジットカード会社から信用情報機関に情報が行き、事故情報として登録されます。最低でも5年間は登録されるので、その期間内はクレジットカードが使えなくなります。とはいえ買い物のときに現金以外使えなくなると何かと不便なため、クレジットカードの代わりになるようなものを準備しておくと安心です。
- デビットカード
- 家族カード
- プリペイドカード
- スマホ決済サービス
- QR決済サービス
5年が経過すると使えなかったカードも復活し、新しくクレジットカードが作れるようになります。
ローン・借り入れできるようになるまで
銀行のローンや消費者金融からの借り入れは、5年~10年経たないと利用できません。当然その期間中はローンの申し込みをしても信用情報をチェックした金融機関から断られてしまうので新規借り入れできないばかりか、その申し込み情報が新たに事故情報として掲載されるため、さらにブラックリスト状態が延長されてしまいます。
そうならないためには、まずローンや借り入れをせずに生活できないか検討することが重要。どうしてもローンを組む必要があるときは、必ず事故情報が消えているか確認してからローンを申し込むようにしましょう。
連帯保証人になれるまで
連帯保証人になれるまでの期間は、事故情報が掲載されている期間にもよります。銀行系ローンの連帯保証人になる場合は10年以上経たないと無理ですが、信販会社のローンなら5年経過すると連帯保証人になれるでしょう。
また賃貸物件を契約するときの保証人では、保証会社が信販系でなければ信用情報をチェックされない可能性が高いため、事故情報が掲載されている状態でも保証人になれることがあります。また信販会社以外の家賃保証に特化した保証会社なら、保証人の財産や収入が基準を満たしていれば連帯保証人になれる可能性が高いため、あらかじめどこの保証会社になっているか確認しましょう。
ブラックリストに関して詳しくは、こちらの記事を参考にしてください。
「債務整理するとブラックリストにのる?気になる『ブラックリスト』ついてすべてお答えします!」
家に住める期間
自己破産を申立てた人に持ち家があると、ほとんどのケースで手放さなければならなくなります。そこで家に住める期間をケースごとに解説していきます。
申立人名義の持ち家の場合
申立人名義の持ち家がある場合、自己破産すると債権者への返済のために自宅を手放さなければなりません。まだ支払い中の住宅ローンがあるケースでは、債権者である金融機関が「競売(けいばい)」を行って、住宅を処分することになります。競売とは債権(住宅ローンの残債)を回収するために債権者が裁判所に申し立てて売却する手続きのこと。
競売が開始されると所有者に、裁判所から「競売手続開始決定」という書類が送られてきます。この開始決定から約半年で売却されることになり、売却されるとその家から出ていかなければなりません。
すでに住宅ローンのない持ち家は、破産管財人によって売却されることになります。こちらでは買主がいつ現れるかで立ち退きの時期が異なりますが、売却することが決まればすぐに立ち退く必要があるでしょう。
家族名義の持ち家の場合
自分以外の家族名義の持ち家に住んでいる場合、自己破産したからといってその家から引っ越す必要はありません。もちろんそのままその家に住んでいられます。
ただし家の所有者がすでに死亡しているにもかかわらず所有者の名義変更をしておらず、自己破産した人が相続人になっている場合は、相続人の法定相続分が破産手続をする上で問題となる可能性があります。このような状態にある方はなるべく早めに弁護士に相談するようにしましょう。
賃貸の場合
賃貸アパートやマンションに住んでいる場合、家賃さえきちんと支払っていれば自己破産したからといって家を追い出されることはありません。まれに賃貸借契約書に「破産した場合は契約を解除することができる」という文章が記載されていることがありますが、原則として借主の自己破産を理由として、家主が一方的に契約を解除することはできないのでご安心を。
また新しく家を借りる場合も問題なく賃貸借契約が結べます。ただしクレジットカード会社や信販会社系の保証会社を通していると、契約の審査に落ちる可能性が。どこの保証会社を使っているか、契約前に確認するようにしましょう。
官報掲載期間
自己破産すると破産手続開始決定と免責決定確定のタイミングで官報に掲載されます。官報とは政府が発行する機関誌のようなもので、掲載される内容は自己破産では申立人の氏名や住所、決定の年月日などです。官報は取扱店で紙媒体で購入するほか、インターネットサービスで無料で閲覧できます。
基本的にその内容は消えることがありませんが、ネットで無料で閲覧できる期間は過去30日分までと決まっています。たとえ官報に掲載されても30日を経過すると無料で見れなくなるため、知り合いや勤務先の人に見つかるリスクは低いといえるのではないでしょうか。
破産者名簿に載る期間
破産者名簿というのは本籍地の自治体役場で作成される名簿のことで、通常は「破産者等でないことの証明」書類を発行する目的のために作れています。あくまでも身分証明書を発行するための名簿で、一般に公開されるものではありません。
現在では免責許可決定が確定されるまでの間や、申立てしたものの免責を受けられなかった人などごく一部の人が破産者名簿に載っています。破産者名簿にのるタイミングは次の通りです。
- 破産手続開始決定がされたものの免責手続がされていないとき
- 破産手続開始決定が確定してから1カ月以上後に免責許可申立が取り下げられたとき
- 破産手続開始決定が確定してから1カ月以上後に裁判により免責許可申立の棄却及び却下が確定したとき
- 破産者について免責取り消しの決定が確定したとき
資格・職業制限の期間
自己破産すると破産手続開始決定から免責決定確定の期間は、弁護士や保険募集人といった特定の職業や資格が制限されてしまいます。一般的に同時廃止では最短でも3カ月程度、管財事件では5カ月前後その資格を使った仕事に就けないことになります。
免責が確定されれば再び同じ職業に就く(復権)ことができますが、復権に申立てが必要な場合も。該当する仕事をしている方は、手続き期間中は休職したり部署移動するなどの対処が必要です。
自己破産が影響する仕事や就職に関しては、次の記事を参考にしましょう。
「債務整理が及ぼす就職・転職・仕事への影響とは?会社に知られないための対処方法も解説」
まとめ
自己破産では、同時廃止と管財事件で手続きにかかる期間が異なり、準備期間を含めると最短で5カ月前後、長いと1年以上かかることもあります。財産が多かったり債権者が免責に反対していると長引く恐れがありますが、書類の準備を効率的に進めたり手続きを簡略化できる制度を利用できれば、期間を短縮できるでしょう。
それにはまず弁護士に依頼するのが一番の近道。弁護士に手続きを依頼できれば、書類の作成や準備に関するアドバイスを受けられるばかりか、債権者や破産管財人とのやり取りを任せられてスムーズに手続きが進むでしょう。さらに管財事件では手続きを簡略化できる少額管財を選択できたり、即日面接制度を利用できるというメリットも。
自己破産の手続きは期間が長引けば長引くほど、引っ越しができなかったり銀行口座が凍結されるなどの制限期間も延びてしまいます。なるべくなら最短で手続きができるよう、信頼できる弁護士に依頼したり、自分でできる書類集めは効率的に行うのがポイントです。
手続きを依頼する弁護士の選び方は、こちらの記事を参考にしてください。