自己破産前に名義変更できる?名義変更の可否・注意点と財産を持ち続けたいときの対処法

自己破産前に名義変更できる?名義変更の可否・注意点と財産を持ち続けたいときの対処法
自己破産前に名義変更できる?名義変更の可否・注意点と財産を持ち続けたいときの対処法
  • 「自己破産前に名義変更できる?」
  • 「名義変更したいときの注意点が知りたい」

自己破産するときに気になるのが、財産を処分されること。できれば財産を処分されてしまう前に、手続き前に不動産や車などの名義変更を済ませておきたいと考える人がいるかもしれません。しかし自己破産前に財産の名義変更をすることは可能なのでしょうか。

こちらの記事では、自己破産前の財産の名義変更について詳しく解説。名義変更の可否や破産後も財産を持ち続けたいときの対処法も紹介します。財産を持っている人が自己破産するときは、財産を処分するタイミングや処分方法に注意が必要です。最悪の場合、免責が受けられない可能性もあるので、正当な手段で財産を処分したり名義変更したりすることが重要です。

 

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自己破産前にしがちな名義変更

自己破産では破産者名義の財産が処分されてしまうため、あらかじめ名義変更をしておきたいと考える人もいるでしょう。とくに次のような財産で、自己破産前の名義変更が行われる傾向にあります。

車の名義変更

自分名義の自動車を持っている方は、破産後も車を自由に使えるよう、処分を回避するために車の所有者変更(名義変更)をしがちです。自己破産の手続きでは耐用年数(6年~)が経過し、市場価値が20万円以下の車を除き、処分対象の財産となります。

ローン返済中の車は、「所有権留保」により持ち主であるローン会社に回収されてしまいます。ほとんどのケースで勝手に名義変更や売却ができないので気を付けましょう。

持ち家の名義変更

自己破産で処分されると困る財産の筆頭は持ち家でしょう。土地や建物は一般的に市場価値が高く、破産手続による処分の対象となることはほぼ間違いありません。そのため、自己破産前に持ち家を他の家族名義に変更して、処分を免れたいと考えるのもある意味当然のことと言えます。

ただし住宅ローン返済中の持ち家は、ローン会社によって「抵当権」という担保権が不動産につけられています。抵当権とは住宅ローンの返済が滞ったときなどに、家を売却してそこから返済にあてられるという権利です。抵当権がある状態で家の名義変更を勝手に行うことはできず、抵当権を消すためには住宅ローンを完済しなければなりません。

携帯電話・スマホの名義変更

携帯電話やスマホの端末を分割払いしている場合、そのまま使い続けるには名義変更が必要です。分割払いの残債は自己破産による免責の対象となり、携帯電話は担保権を実行してその端末を回収し残債の処理にあてます。そのため端末の処分を回避する目的で、自己破産前に名義変更を行う例がしばしば見受けられます。

生命保険の名義変更

自己破産で処分される財産の中には、20万円以上の解約返戻金がある生命保険も含まれます。せっかく今まで積み立てた生命保険を解約されたくない、解約返戻金を債権者に分配されたくないという理由から、自己破産前に生命保険の契約者を他の家族や親族に変更するケースがあります。

自己破産前に名義変更してもいい?

では自己破産前に名義変更してもいいのでしょうか?こちらでは自己破産前の名義変更の可否および、名義変更したときに起こることについて見ていきましょう。

破産手続き前の名義変更はNG

一部認められるケースもありますが、基本的に破産手続き前の名義変更は控えるべきです。そもそも自己破産で財産が処分されるのは、返済すべき残債がある債権者に公平に分配するため。財産を管理処分するのは裁判所から任命された破産管財人と呼ばれる人で、直接利害関係のない弁護士の中から選ばれます。

破産管財人は、破産手続開始決定時点で破産者が所有している財産をチェックし、処分の対象となるか判断します。同時に自己破産前2年以内に贈与や名義変更を行った財産についても、破産者から提出された「財産目録」に基づいて調査を実施。あえて財産目録に記載しなかったり、虚偽の内容を記載したりすると「財産隠匿行為」や「説明義務違反行為」となる可能性があります。

自己破産の免責不許可事由について詳しくは、こちらの記事を参考にしてください。

「自己破産の免責不許可事由の11項目を解説!免責が下りなかったときの対処法とは?」

破産前の名義変更は必ずバレる

破産前の名義変更を隠そうと思っていても、必ず破産管財人にバレてしまうでしょう。上で説明した通り、破産前2年以内の名義変更は、必ず財産目録に記載し破産管財人に提出しなければなりません。同様に通帳の入出金明細や同居家族の収入、財産等も調査されます。

それらの資料から明らかに不自然なお金の出入りがあったことや、妻が専業主婦にもかかわらず最近貯金が大幅に増えたことなどが分かると、財産隠しを疑われてしまうでしょう。また不動産や車の名義変更を行うと、車検証や納税証明書、固定資産税評価証明書や不動産登記簿などから、名義変更に日にちや変更前の名義人が分かってしまいます。

破産管財人が財産について調べる範囲や財産隠しがバレる理由については、こちらの記事を参考にしましょう。

「破産管財人はどこまで調べる?自己破産の管財事件での調査内容・方法と財産隠しについて」

財産隠しとみなされ、免責が受けられない

自己破産前に名義変更すると、たとえ意図していなくても財産隠しとみなされる場合があります。それだけ財産を隠す目的で名義変更する破産者が多いといえます。財産隠しは破産者の財産を減少させる「財産減少行為」とみなされ、破産法第252条の「免責不許可事由」に該当。

免責不許可事由とは文字通り免責が許可されない事由ということで、自己破産しても借金がゼロになりません。借金をゼロにするために弁護士に手続きを依頼するために支払った着手金や、裁判所に破産を申し立てたときにかかる費用はすべて捨てたことに。そればかりか債権者からの取り立てや督促が再開し、また精神的に辛い日々に逆戻りです。

財産隠しの手口や財産を処分してしまったときの対処法については、こちらの記事を参考にしてください。

「自己破産で財産隠しがバレるとどうなる?主な手口やバレる理由、対処法を教えます」

詐害行為とみなされると名義変更が取り消される

自己破産前の名義変更が財産隠しだとみなされると、名義変更は取り消されてしまいます。財産隠しは、債務者が債権者を害するために行った「詐害行為」と判断されるため。破産管財人が持つ「否認権」によって、たとえ自己破産前に行われた名義変更でも、その効力を否定できます。

破産管財人の否認権の行使は、名義変更だけでなく贈与や売却にも及びます。従って名義や売却が詐害行為と判断された場合は、贈与や売買行為も取消されることに。裁量免責で免責が認められた場合でも、それらの財産は処分されて債権者に分配されることになるでしょう。

悪質だと逮捕される可能性

名義変更や財産隠しの手口が悪質だとみなされると、破産法第265条の「破産詐欺罪」として、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金という刑事罰を言い渡される恐れがあります。破産詐欺罪となる可能性があるのは、破産手続開始の前後を問いません。

また財産隠しの手口と知っていて名義変更に協力した人も、破産詐欺罪の処罰対象に。自宅を残すために所有者を夫から妻に変更した場合は、夫婦そろって破産詐欺罪で処罰される可能性があります。

例外的に裁量免責が認められる可能性

ただし例外的に「裁量免責」が認められ、免責が許可される可能性があります。というのも免責不許可事由に該当するケースでも、名義変更について悪意がなかったことや二度と破産をしないという決意および計画について裁判所に誠実に説明し、裁判所が免責を許可する(裁量免責)判断が出れば、借金をゼロにできるということ。

裁量免責の可否は、完全に裁判所の裁量で決められるため、一概にこれすれば認められるとはいえません。裁量免責の可能性を高めるために弁護士のサポートを受けるのはもちろんですが、それでも個々のケースによります。どんな優秀な弁護士がついても裁量免責が認められるかは不確実なため、そもそも裁判所に疑われるような自己破産前の名義変更は避けるべきでしょう。

財産を持つ人が自己破産する時の注意点

では財産を持つ人が自己破産する場合、どのようなことに注意が必要なのでしょうか。

不当処分をしない

前項で説明した通り、自己破産前の名義変更は疑われても仕方のない行為。このような行為は絶対にしないようにしましょう。名義変更が財産隠しと疑われると、免責が許可されないばかりか名義変更は無効になり、売却した相手にも迷惑をかけます。さらに悪質と判断されると、刑事罰を科せられる恐れも。たとえ財産を隠す目的がなくても、自己破産前や手続き中の名義変更はNGです。

財産を処分する場合は計画的に

それでもどうしても財産を処分したいという場合は、計画性をもって裁判所に疑われないような手順で名義変更や財産の売却を進めましょう。自己破産前に財産を処分するベストなタイミングは、弁護士に手続きを依頼する前です。弁護士に手続きを依頼した後は自己破産することを債権者に伝えられるため、かなり慎重に媒酌手続きを進めないと免責が許可されない可能性があるからです。

そして財産を売却するときは、複数の業者に見積もりを出してもらってください。例えば時価30万円の車を親族にタダで譲ってしまうと、本来30万円の財産価値のあるものを0円で、と不当に安く処分したことになります。

また最初に出た見積もり10万円で売却した場合、他の店に行けばもっと高い価格で売れたのではという疑念が生じ、こちらも不当で安く処分したのではという批判を受ける可能性が。そのため自己破産前に財産を処分する場合は、弁護士に手続きを依頼する前に、必ず複数の業者から見積もりを取って不当に安く処分したとみなされないように気を付けましょう。

ローンがあることを隠さない

自己破産するときは、財産にローンが残っていることを決して隠さないようにしましょう。そもそも特定の債務者を自己破産の対象から外すことはできません。そして破産開始時にはすべての債権者に通知が行くため、ローンがあることを隠すのは不可能です。

たとえ一部のローンを隠して破産申立が認められても、発覚するのは時間の問題。手続きを依頼した弁護士にも隠していたときは、弁護士から解任されてしまいます。さらに裁判所からは免責許可が降りず、破産詐欺罪で刑事告発される可能性があるので十分に注意しましょう。

特定の債権者にのみ返済しない

いくら財産を処分されたくないからといって、特定の債権者にのみローンを返済することは止めましょう。このような行為は「偏頗弁済(へんぱべんさい)」といい、免責不許可事由に該当します。そもそも自己破産を含む債務整理では、全ての債権者を平等に扱うべきという「債権者平等の原則」があります。

他の借金の返済はしないのに、一部のローンの返済を続けるという行為はこの原則に反し、免責が認められない可能性があります。返済する相手が金融機関だけでなく、個人からの借金でも同様です。自己破産で迷惑をかけないようにと、親族や知人からの借金を優先的に返済することはできません。

何とか財産を残したい(家に住み続けたい)ときの対処方法

自己破産してもなお、財産を残したいと思った場合、何か対処方法はないのでしょうか?こちらでは破産後の生活に困りがちな車と持ち家の対処法にスポットを当てて解説していきます。

破産しても車を残せる可能性がある

破産しても車を残せる可能性があります。自己破産で処分されるのは、破産者名義のすべての車という訳ではありません。次のような条件に当てはまる場合、破産後も車を所有し続けられる可能性が高いでしょう。

  • 評価額20万円以下の車
  • 新車登録後一定期間経過した車(普通自動車6年~・軽自動車と商用車4年~)
  • 自由財産の合計額と合算で99万円以下、かつ生活に絶対必要と認められるとき

前提として、車の名義が破産者以外の家族の場合は処分の対象となりません。これらの条件に当てはまる破産者名義の車であることが条件です。そして所有者がローン会社になっているカーローン返済中の車は、自己破産と同時に車を引き揚げられてしまうので注意しましょう。

名義変更する代わりに対価を受け取る

名義変更する代わりに、相応の対価を支払ってもらうという方法があります。例えば夫名義の車を妻に名義変更しようとする場合、妻に十分な収入や資産があるという条件で、適正な時価で妻に売却し、その代金を妻の口座から夫の口座に振り込んだことが分かれば、財産隠しを疑われる可能性は低いでしょう。

そのためには適正な時価ということを証明できる複数の業者からの見積もりや、お金の流れが分かる通帳や振込明細書等の証拠を確保し、裁判所がキチンと検証できるようにしておくことがポイントです。

破産後に家族に買い取ってもらう

どうしても今住んでいる持ち家に住み続けたい場合、破産後に家族や親族に家を買い取ってもらうという方法があります。買い取ってもらった後は、その人の家賃を支払うことで済み続けられます。持ち家がある状態で自己破産を開始し、破産管財人を通して家族や親族が家を買い取ることには何ら問題がないからです。

ただし親族間の不動産売買では、融資してくれる銀行はありません。ローンなどの分割払いができないため、家の代金は一括で破産管財人に支払う必要があるでしょう。破産管財人が提示した相場通りの価格で、一括で購入できる親族がいる場合にできる方法です。

リースバックで住み続ける

住宅を不動産会社に買い取ってもらい、不動産会社に家賃を支払うことで済み続けられる「リースバック」という方法があります。簡単に言うと持ち家ではなく借家として、今住んでいる家に住み続けるということ。ただしリースバックの家賃は、賃貸物件の相場家賃よりも高めに設定されており、将来的に不動産会社から家を買い戻すことが条件です。

通常リースバックの契約期間は2年~5年と決められていて、期限が来たら売却した価格よりも高い1.1~1.3倍の価格で買い戻さなければなりません。当然期間内に買い戻すだけの資金を貯める必要があり、資金を準備できなければ結局は家から出ていかなければならないことを覚えておきましょう。

自己破産以外の債務整理を検討

可能であれば、自己破産以外の債務整理を検討してみてはいかがでしょうか。任意整理の場合、対象とする債権者を選べるため、車のローン会社や住宅ローンを借りている金融機関を外して手続きできます。また債権者の理解を得られれば、財産を処分しなくて済むという可能性も。

また個人再生であれば、ローン返済中の持ち家を維持したまま借金を減額できる「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」があります。この制度を利用すれば、個人再生後も住宅ローンを払い続けることで、持ち家を維持できます。

任意整理は利息や遅延損害金の減額にとどまり、個人再生では債務額に応じて1/5~1/10までの減額となります。借金をすべて免責できる自己破産とは、効果の程度が異なります。また任意整理も個人再生も手続き後に残債の返済があります。毎月決められた額を返済できるだけの安定した収入が必要です。

自己破産と個人再生の違いや切り替え方については、こちらの記事を参考にしましょう。

「個人再生と自己破産の違いとは?手続き・条件の比較や切り替え方法を教えます!」

困ったときは弁護士に相談

自己破産後の生活について不安な方や、自己破産以外の債務整理方法が可能かを知りたいという方は、債務整理に詳しい弁護士に相談してください。自己破産前に名義変更したい場合も、手続きを進めても免責が受けられるかや、他に財産を処分せずに済む方法がないかアドバイスが受けられます。

自己破産前に自分の判断で名義変更してしまうと、破産手続きに支障が出る可能性が高いです。自己破産は破産法という法律に基づいて行われる借金救済措置です。弁護士なら法律の専門家として、これまでの経験に基づいた救済方法を探ってくれるはずです。

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まとめ

破産者名義の車や持ち家、生命保険やスマホ端末は、自己破産前に名義変更すると、財産隠しを疑われて免責が許可されません。そればかりか名義変更が無効になったり、悪質だとみなされると名義を変えた相手ともども破産詐欺罪で逮捕される可能性があります。

財産がある人が自己破産する場合は、不当処分を絶対にせず、財産を処分する場合は計画的に。また特定の債権者にだけ返済したり、ローンがあることを裁判所に隠さないようにしましょう。

どうしても財産を処分されたくない場合は、適正な対価を受け取って名義変更しましょう。持ち家は破産手続後に破産管財人を通じて親族に買い取ってもらうという方法も。自己破産以外の債務整理を検討するという対処法もありますが、どのような方法を取るべきかについては債務整理に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

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