
- 「債務整理中は引っ越しできないってホント?」
- 「債務整理後に家を借りるときの注意点が知りたい」
債務整理すると引っ越しができないという噂を聞いたことがある人はいませんか?その噂を聞いて、債務整理しない方がいいか悩んでいる方がいるかもしれません。確かに引っ越しまで制限されてしまうと、債務整理を躊躇するのも頷けます。
そこでこちらの記事では、債務整理が引っ越しにどう影響するのかについてや引っ越しの可否、住んでいる賃貸への影響について解説。債務整理と引っ越しに関する注意点をよく理解し、より生活に影響が少ない方法を探していきましょう。
債務整理中の引っ越しは可能?
まずはこの記事を読んでいる方が気になるであろう「債務整理中の引っ越しは可能?」という疑問について解説していきます。
手続き中は避けた方が無難
基本的に債務整理の手続き中であっても引っ越しは可能です。ただし、できれば避けた方がいいというのが正直なところ。債務整理は債権者と直接交渉したり、裁判所に申し立てて手続きを行います。引っ越しするとなると新しく家を借りたり引っ越し業者に依頼する費用がどうしてもかかります。
そうなると債権者としては「引っ越しするお金があるのなら借金を返して欲しい」と思うのも当然です。債務整理には債権者の合意が必要な手続きもあるため、債権者の心証が悪くなる可能性もゼロではありません。余計な出費を抑えるという意味でも、債務整理の手続きが終わるまではなるべく引っ越ししないのが賢明です。
債務整理の種類によって対応が変わる
しかしながらどうしても実家に帰らなければならなくなったり、勤務先から転勤を命じられるケースもあるでしょう。こうした本人の気持ちにかかわらず引っ越しを迫られるケースについては、債務整理の種類によって対応が変わってきます。
債務整理の種類ごとの引っ越し
債務整理には主に、債権者と直接交渉し利息の減額や支払い期間の延長を求める「任意整理」、裁判所に申し立てて借金を大幅減額できる「個人再生」、財産を手放す代わりに借金の返済義務をすべて免除(免責)できる「自己破産」の3種類があります。
こちらでは、それぞれの種類ごとの引っ越しの可否や対応について、詳しく見ていきましょう。
任意整理
任意整理は弁護士が代理人となり、裁判所を利用せずに債権者と個別に交渉する手続き。「任意整理中に引っ越しをしてはならない」という法律がないため、法的な制限や債権者に引っ越しを告げる義務はありません。やむを得ない事情がある場合は、実際に引っ越ししたからといって、交渉に影響を及ぼすこともありません。
ただし債権者との交渉は弁護士に依頼することが通常なので、弁護士には事前に引っ越し先の住所や連絡先を告げておきましょう。うっかり告げずにいると弁護士が依頼人に連絡できず、交渉に支障をきたす可能性があります。また連絡が取れない時間が続くと、途中で弁護士が辞任してしまう恐れも。
任意整理中に弁護士に辞任されたときの対処法は、こちらの記事を参考にしましょう。
「弁護士に任意整理中に辞任されたら?辞任の理由・対処法を知ってスムーズな手続きを」
個人再生
個人再生は、裁判所に申立てて借金を減額してもらう手続きです。個人再生は「民事再生法」という法律に基づいて行われますが、民事再生法では手続き中の引っ越しを禁止していません。ただし引っ越ししたことを裁判所や弁護士に申告しておく必要があるでしょう。
申立て前に引っ越しをすると管轄の裁判所が変わってしまいます。申立て後に引っ越すと、裁判所からの連絡を受け取れないと手続きがストップする可能性があります。引っ越し先住所が決まり次第、弁護士を通じて裁判所に説明してもらうと安心です。
また個人再生は、減額後の借金をどのように返済していくかについて「再生計画案」を裁判所に提出し、認めてもらう手続きです。引っ越し費用によってこの再生計画案に支障が出てしまうと、裁判所が個人再生を認めてくれない恐れがあります。こちらも引っ越ししても手続き後の返済に影響がないか、弁護士とよく相談しましょう。
個人再生で住宅ローンがどうなるかは、こちらの記事を参考にしましょう。
「個人再生で住宅ローンはどうなる?特則適用の条件・巻き戻し・手続き後のローンについて」
自己破産
自己破産も、個人再生と同様に裁判所に申立てて行う手続きです。自己破産は「破産法」という法律に基づいて行われますが、破産法には個人再生と違って移動に関する制限があります。
(破産者の居住に係る制限)
第三十七条 破産者は、その申立てにより裁判所の許可を得なければ、その居住地を離れることができない。
2 前項の申立てを却下する決定に対しては、破産者は、即時抗告をすることができる。
自己破産には「同時廃止」と「管財事件」という二種類の手続きがありますが、移動が問題になるのは管財事件です。管財事件では破産管財人が選任され、破産者の財産調査を行います。移動が制限されるのは免責許可決定が確定されるまでのおよそ3~6カ月間。これは破産者が財産を隠すのを防ぐための措置です。
破産法でいう居住地というのは、自己破産を申し立てた時点での住所となります。住所が変わる引っ越しはもちろんのこと、宿泊を伴う出張や旅行も裁判所の許可が必要です。一見厳しく見える制限ですが、裏を返せば裁判所の許可さえ得れば引っ越しも旅行も可能だということに。
とはいえ同時廃止の場合でも、黙って住所を変えると裁判所手続きに影響が出ます。必ず関係者には事前に連絡をしておきましょう。
自己破産中の引っ越しについては、こちらの記事を参考にしましょう。
「自己破産中の引っ越しは許可が必要?破産手続き中や自己破産前後に引っ越す際の注意点を解説」
債務整理後の制限はなし
いずれの債務整理方法を選んでも、手続きがすべて終わった後に引っ越しするのは基本的に問題ありません。仮に何かトラブルがあっても、弁護士に引っ越し先を告げていれば解決可能です。
ただし任意整理と個人再生は、手続き後の返済すべき借金が残ります。3年~5年かけて完済を目指すわけですが、引っ越しにお金がかかったとしても、約束した金額は継続して返済し続けられるようにしましょう。
住んでいる賃貸に影響が出るケース
債務整理中の引っ越しに関しては、事前に申告していたり裁判所の許可を得ていれば可能です。しかし賃貸物件に住んでいる場合、債務整理によって影響が出る可能性があります。
すでに家賃を滞納している
債務整理とは関係なく、すでに数か月分の家賃を滞納している方は、賃貸契約を解除され家を出ていかなければいけない可能性があります。借金を滞納している場合、税金や公共料金、家賃なども滞納しているケースが多いため。1カ月程度なら問題ありませんが、3カ月以上滞納していると貸主側からの賃貸借解除が認められやすくなります。
管理会社や貸主から「契約解除予告状」といった通知が届いていたら、すぐに連絡し滞納分の家賃を支払ってください。このまま放置し続けていると、最終的には強制退去になる可能性があります。ただ強制退去までは訴訟などの段階を経る必要があり、実際には数カ月ほどかかります。この間に別の住まいを探すなど、準備を進めましょう。
家賃支払いがクレジットカード
家賃の支払いがクレジットカードの場合、債務整理後にクレジットカードが使えなくなると影響が出ます。このようなときは事情を話し、別の支払い方法がないか貸主や管理会社に相談しましょう。
クレジットカードが使えなくなっただけで強制退去させられる心配はないものの、クレジットカードが使えなくなったことで家賃を滞納すると、賃貸借解除の要件を満たす恐れが出てきます。家賃支払いで利用していたクレジットカードが使えなくなったときには、速やかに支払い方法を変更してください。
滞納家賃を債務整理した
滞納した家賃を債務整理すると、契約を解除される可能性があります。滞納家賃も債権の一種なので、債務整理で減免が可能です。しかし次に引っ越す当てがないのに債務整理してしまうと退去理由として認められ、家を追い出されてしまうでしょう。これを防ぐには次のような方法があります。
- 滞納家賃以外の借金を任意整理する
- 親族に家賃を立て替えて支払ってもらう
- あらかじめ貸主に債務整理することを伝え、手続き後に滞納分を支払うので契約を解除しないよう頼む
任意整理は対象の債権者を選べるので、滞納家賃を外して手続きすることが可能です。親族や家族に家賃を立て替えてくれそうな人がいる場合は、滞納している家賃を支払ってもらう方法が。
債務整理する本人が支払をすると「偏頗弁済」になりますが、他の人が支払うという方法であれば問題ありません。偏頗弁済とは、特定の債権者にのみ偏って返済する行為で、個人再生や自己破産では禁止されています。魔が一偏頗弁済が悪質だとみなされると、再生計画案が認可されなかったり、免責が受けられなかったりして手続きが失敗に終わります。
保証会社と系列の金融機関の借金を債務整理した
家賃保証会社と同じ系列の金融機関の借金を債務整理した場合、更新のタイミングで契約を解除される可能性があります。これは債務整理したことが事故情報として登録されるだけでなく、系列会社内で共有される「社内ブラック」にも登録されてしまうため。
債務整理すると契約更新のタイミングで、連帯保証人を付けるように求められたり、別の保証会社で審査を受けるように言われる場合があります。任意整理を考えている方は、保証会社と同じ系列の金融機関からの借金を、整理対象から外すことをおすすめします。
債務整理後の賃貸物件契約について
債務整理の手続きが終わった後に賃貸物件を契約する場合、契約できるケースとできないケースがあります。債務整理後に賃貸への引っ越しを考えている人は、物件選びの参考にしましょう。
契約できないケース
次のような場合、債務整理後でも契約できない可能性があります。
家賃支払いがクレジットカードのみ
家賃支払いがクレジットカード払いのみの物件は、債務整理後の人には向いていません。債務整理したという情報は、個人信用情報に事故情報として登録されます。いわゆるブラックリストという状態です。事故情報が登録されると、次のようなデメリットが生じます。
- 新規でクレジットカードが作れない
- 今まで使えていたクレジットカードは更新のタイミングで使えなくなる
- 新たなローンや借入ができなくなる
- 携帯電話本体などを分割で購入できなくなる
- 保証人になれない
新規でクレジットカードが作れないのはもちろんのこと、持っているカードも更新のタイミングで使えなくなります。そのため家賃支払いがクレジットカードのみの物件の契約は難しいでしょう。物件を選ぶ場合は、手渡しか銀行振込、口座引き落としの物件を選ぶようにしましょう。
保証会社が信販系
新たに借りる物件が保証会社との契約が必須で、さらにその保証会社が信販系だと契約できない可能性が出てきます。保証会社とは、入居者が家賃を支払えなくなったときに、代わりに貸主に保証する会社のこと。少し前までは連帯保証人を付けるのが一般的でしたが、最近では保証会社との契約を必須としている物件が増えています。
信販系の保証会社だと審査時に信用情報をチェックするので、事故情報があると審査に落ちてしまうでしょう。信販系の家賃保証会社には、次のような種類があります。
- セゾンの家賃保証・Rent Quick(クレディセゾン)
- アプラス家賃サービス
- JACCSセキュアレントシステム
- ライフあんしんプラス
- Room ID(エポスカード)
- オリコフォレントインシュア
- セディナ家賃決済サービス
- イントラスト
- SBIギャランティ
- 日本レンタル保証
物件を紹介してくれた不動産会社に確認すると、保証会社の名前が分かります。連帯保証人でも問題ない物件ならいいのですが、上に挙げた保証会社との契約を求められた場合は、別の物件にした方がいいでしょう。
保証会社間で情報共有しているケース
信販系の保証会社ではないものの、保証会社間で情報共有していると審査に落ちる可能性があります。例えば以前に住んでいた物件の家賃を滞納していて、保証会社がその家賃を代位弁済していたようなケースです。代位弁済とは契約者本人に代わって債務(滞納家賃)を支払うこと。
次のような協会や機構に加入している保証会社の間では、過去の家賃滞納や代位弁済についての情報を共有しています。
- 日本賃貸住宅管理協会
- 全国賃貸保証業協会(LICC)
- 賃貸保証機構(LGO)
- 日本賃貸住宅管理協会
- 家賃債務保証事業者協議会
- 全国賃貸管理ビジネス協会
- 賃貸保証機構
とくに加盟数が多いのは、LICCやLOGといった協会です。LICCでは契約者の個人情報はもちろん、契約物件の情報や滞納があった金額など、契約終了(滞納が解消されたとき)から5年間残ります。すべての保証会社が協会に加盟している訳ではないものの、こうした懸念材料があることを覚えておきましょう。
契約できるケース
一方で、次のようなケースは問題なく賃貸物件を契約できます。
デビットカード払いの物件
デビットカード払いができる物件なら、債務整理後も契約ができます。デビットカードとは、利用時に即座に紐付けした銀行口座から引き落としになる支払い方法。債務整理後のブラックリスト状態でも、新たに作ることができます。
例えば契約しようとしている物件が、デビットカード払いに対応していて、契約しているデビットカードが家賃の引き落とし利用を認めている場合に、デビットカードで家賃を支払うことが可能です。ただしデビットカードは、クレジットカードのように引き落とし日が明確に決められていません。
貸主や管理会社がいつ家賃を請求するかによって、引き落とし日が前後する可能性があり、口座残高には常に十分注意する必要があります。
保証会社との契約が必須でない
保証会社との契約が必須でない物件なら、債務整理後も賃貸物件を借りられます。保証会社との契約が必要ない多くの物件では、連帯保証人を立てるように求められます。あらかじめ連帯保証人になってくれそうな人を探しておくとスムーズに契約できるでしょう。
稀に保証会社との契約も連帯保証人も必要ない物件があります。しかしこのような物件は、築年数が古かったり交通の便が悪いなど、何かしらの問題を抱えている場合が。物件としての条件もしっかり確認したうえで、契約するようにしましょう。
保証会社が信販系でない
保証会社が信販系でない物件も、債務整理後に問題なく契約できます。上で紹介した保証会社の団体は信販系でないので、事故情報が登録されていてもそもそも信用情報を閲覧できず、審査に影響がありません。信販系でない保証会社の審査基準は様々で、信販系よりも審査が通りやすいといわれています。
ただし過去に保証会社付きの物件を滞納していて、その保証会社が協会に加盟している場合には、審査に落ちる可能性があります。保証会社との契約を求められたときには、どのような保証会社なのかについて十分に調べてから手続きを進めるようにしましょう。
公営住宅
市営住宅や県営住宅といった公営住宅は、債務整理後も契約可能です。このような公営住宅は信用情報を利用した審査を行わないからです。公営住宅の入居条件は、自治体が定めた収入基準などを下回っていることです。そもそも公営住宅は住む家に困っている低所得者に対して、相場より安い家賃で供給する目的で整備された住宅。
家賃が安いのが大きなメリットですが、入居希望者が多いと抽選になる確率が高く、希望の物件に入居できない可能性があります。収入の基準や抽選の有無などは、お住いの自治体窓口にお問い合わせください。
任意整理で賃貸の更新や契約に影響が出るかについては、こちらの記事を参考にしてください。
「任意整理で賃貸の更新・契約に影響は?影響を最小限にする方法とよくある疑問・質問」
債務整理と引っ越しに関する注意点
債務整理と引っ越しに関して失敗したくない方は、こちらで紹介するポイントに気を付けましょう。
滞納家賃の取り扱いは債務整理の種類によって異なる
上で少し触れましたが、滞納家賃の取り扱いは債務整理の方法によって異なります。基本的に滞納した家賃も債務整理の対象に含まれますが、取り扱いを間違えると債務整理が認められなかったり、住んでいる家から強制退去になったりする可能性があります。
ただ一つ共通しているのは、債務整理する前に滞納家賃があることを弁護士に伝えるべきということ。引っ越しが可能なのかやこの先も住みたいと思っているかによって、債務整理の選び方や適切な対処方法が変わってきます。
任意整理
任意整理は裁判所を通さずに債権者と直接交渉できる手続き。複数の借金がある場合は、どの債権者と交渉するのか自分で選ぶことができます。滞納家賃を任意整理の対象に含めるかどうかは、弁護士と相談しながら決められます。
個人再生
個人再生は、借金を大幅減額したのちの返済計画を立て、その計画通りに完済を目指す手続き。滞納家賃だけ対象から外すことができません。また個人再生手続きでは、債権者すべてを平等に取り扱わなければならない「債権者平等原則」があります。家を追い出されたくないからと滞納家賃だけ優先的に支払ってしまうと「偏頗弁済」とみなされて再生計画案が認められなくなります。
どうしても滞納家賃を支払わないと強制退去になりそうなときには、親や親族などから家賃を代わりに支払ってもらう「第三者弁済」が無難でしょう。また裁判所から弁済許可が出れば、再生手続き開始決定後も、滞納家賃を支払うことができます。
個人再生の最低弁済額の計算方法は、こちらの記事を参考にしてください。
「個人再生の最低弁済額が知りたい!手続き別の計算方法や減額できないケース、滞納後の対処方法」
自己破産
自己破産では、滞納家賃を含めたすべての借金(債務)の支払い義務が免除されます。一方で、特定の債権者にのみ支払う偏頗弁済は、免責が許可されない「免責不許可事由」に該当します。自己破産を裁判所に申し立てた時点ですでに家賃を滞納している方は、間違っても偏頗弁済しないように気を付けましょう。
自己破産で滞納家賃の支払い義務もなくなりますが、賃貸契約に連帯保証人が要る場合は、残りの家賃支払いの請求が連帯保証人に行きます。また長期間滞納しているケースや保証会社が家賃を立て替えていたケース、公営住宅に住んでいるケースでも、賃貸借契約が解除され退去を求められる恐れがあります。
貸主から契約解除を求められ、滞納家賃の解消ができないときには、新しい住居を見つけて引っ越す必要があるでしょう。
自己破産の偏頗弁済はバレるかどうかに関しては、こちらの記事を参考にしてください。
「偏頗弁済はバレる?個人再生・自己破産でやりがちな例とバレた後で起こること、回避術とは」
手続き後の返済に影響が出ないか確認
債務整理の後に引っ越しを考えている方は、手続き後の返済に影響が出ないか確認しましょう。引っ越しには一時的に大きな費用がかかります。引っ越し費用を支払ってしまうと、その後の返済に影響が出るような場合は、そもそも無謀な引っ越しといわざるを得ません。
任意整理・個人再生後の返済を2カ月以上滞らせてしまうと、分割で返済できていた「期限の利益」が喪失し、減額前の金額で一括請求書が届く可能性も。遅れたことに対する遅延損害金が新たに加算され、債務整理は失敗に終わってしまいます。
個人再生の成功率や失敗したときの対処法については、こちらの記事を参考にしましょう。
「個人再生の成功率はどのくらい?失敗する理由と成功の秘訣、失敗したときの対処法を解説」
申立前の引っ越しで裁判所費用が変わる可能性
申立前の引っ越しによって、裁判所費用が変わる可能性があります。個人再生と自己破産は、裁判所に申立てる手続きです。申立先は、その時点で済んでいる地域を管轄している地方裁判所。例えば申立日に東京都にお住まいなら、申立書は東京地方裁判所に提出します。
しかし申立前に埼玉県に引っ越した場合、埼玉地方裁判所に申立てしなければなりません。裁判所費用や提出書類は、その裁判所ごとに異なります。申立先の裁判所が変わることで、費用が余分にかかったり、手続きをスムーズにできない可能性があります。
自己破産の費用については、こちらの記事を参考にしてください。
「自己破産にかかる費用相場・内訳を解説!安く抑えるコツや払えないときの対処法も紹介」
物件探しでは不動産会社に話す
債務整理後に引っ越すときには、仲介する不動産会社に話した方が、スムーズに物件探しが進みます。原則として債務整理のことを不動産会社に伝える義務はないものの、あらかじめ伝えておくことで、債務整理後でも問題なく借りられる物件をピックアップしてもらえるでしょう。
他人に債務整理のことを伝えるのは勇気がいるでしょう。しかし知らせずに後から審査に落ちる方が、時間も労力も消耗します。しかし初めから誠意をもって伝えていれば、相手も助けになってくれるはず。「債務整理している人に貸す物件はない」というところなら、そもそも頼るべきではないでしょう。
引っ越しを考えたら弁護士に相談
引っ越しを考えたら、まずは債務整理を依頼する弁護士に相談してください。債務整理の種類によっては、裁判所の許可を得る必要があります。裁判所の許可がいらなくても、手続きにマイナスに働く可能性が。弁護士や裁判所からの連絡がスムーズに受け取れない場合もあるので、なるべく早めに弁護士に伝えましょう。
さらに引っ越し費用がかかる場合は、任意整理後の返済や個人再生の再生計画案に基づいた返済に影響が出る恐れが。そもそもの返済計画に見直しが必要になる場合があるので、弁護士には引っ越しにかかる費用についても忘れずに伝えることをおすすめします。
まとめ
債務整理中の引っ越しは、法的に禁止されている訳ではありません。しかし任意整理では債権者との交渉に影響が出る可能性があり、個人再生では再生計画案の見直しが必要なことも。自己破産の中でも管財事件では、事前に裁判所に許可を取らなければなりません。いずれの場合も、必ず引っ越し前に弁護士や裁判所には伝えておきましょう。
債務整理によって現在住んでいる賃貸に影響が出ることもあります。すでに家賃を3カ月以上滞納している方や滞納家賃を債務整理した方、家賃支払いがクレジットカードのみの場合や信販系の保証会社の場合は気を付けましょう。何も手立てを講じないと、強制退去になる恐れがあります。
債務整理後に賃貸物件に引っ越ししたいというケースでは、家賃の支払い方法や保証会社の種類を良くチェックしてください。不動産会社にあらかじめ伝えておくのもトラブルを防ぐ手段です。何よりも大切なのは債務整理を成功させること。そのために弁護士には引っ越しすることを一番に伝え、アドバイス通りに動くようにしましょう。