- 「過去の過払い金請求は住宅ローン審査に影響する?」
- 「過払い金請求で返済中の住宅ローンにどんな影響があるか知りたい」
過去に過払い金請求の経験があり、これからマイホームを購入しようと考えている人の中には、過去の過払い金請求が住宅ローンの審査に影響するのではと不安な方がいるかもしれません。また逆に、住宅ローン返済中に消費者金融からの借金の過払い金請求をしたいと思っている人もいるでしょう。
こちらの記事ではそんな方々のために、過払い金請求がローン審査に影響するかについて詳しく解説。影響する・しないケースだけでなく、住宅ローン返済中に過払い金請求をするときの注意点も紹介します。過払い金請求と住宅ローン審査との関係を良く知って、なるべく影響がないタイミングで手続きをするようにしましょう。
ローン審査に影響しないケース・するケース
こちらでは過払い金請求が住宅ローンの審査に影響するかしないかについてケースごとに詳しく紹介していきます。
そもそも過払い金は全ての借り入れで発生する訳でなく、2010年頃までに消費者金融・カードローン・クレジットカードのキャッシング機能で作った借金に発生の可能性があります。その中でも利息制限法の上限である年利15~20%を超える利息を支払っていた場合に発生し、最後に返済したときから10年経っていないのが条件です。
過払い金請求が影響しないケース
過払い金請求が住宅ローンの審査に影響しないのは次のようなケースです。
借金完済後の過払い金請求
該当の借金を完済した後の過払い金請求は、基本的に住宅ローンの審査に影響がありません。かつては完済後でも過払い金請求の情報が信用情報機関に登録されていましたが、平成22年1月に金融庁が「過払い金請求を事故情報として登録した業者は国の指定信用情報機関から外す」という通達を出したため、すべての信用情報機関で事故情報として登録されることがなくなりました。
この通達により、平成22年1月以降は借金完済後の過払い金請求は事故情報として登録されることが廃止に。もしも完済後の過払い金請求の情報が信用情報機関に登録されているという場合は、間違いの可能性があるので、信用情報機関に訂正してもらう必要があります。
返済中の借金が過払い金で相殺できた場合
たとえ借金返済中でも、発生した過払い金でその借り入れ先の借金が全て返済にまわせる場合は、住宅ローンの審査に影響は少ないでしょう。逆に返済中の借金がなくなったということで、住宅ローンの審査に通りやすくなるという利点が生じます。ローン審査に影響がないのは、過払い金の方が残債よりも大きいと判明した時点で、事故情報が抹消されるから。
ただし過払い金返還請求をしてから、残債よりも金額が大きいと分かるまでの数カ月間は、一時的に事故情報として登録される場合が。この間に住宅ローンの審査を行うと、事故情報があるとして審査に通らない可能性があるので注意が必要です。
過払い金請求が影響するケース
過払い金請求が住宅ローンの審査に影響するのは、次のようなケースが該当します。過払い金を請求するタイミングによっては、将来の住宅ローン審査や、現在返済中の住宅ローンに影響が生じる恐れがあります。
返済中の借金が過払い金よりも多い場合
過払い金請求で過払い金が戻ってきても、返済中の借金残額の方が多かった場合は住宅ローン審査に影響します。例えば200万円の借金が残っている状態で過払い金請求により130万円が戻ってきたとしても、残りの70万円分は「任意整理」という形で、信用情報機関に事故情報として登録されるためです。
任意整理の情報は借金を完済した後5年間は登録されるため、この間は住宅ローンをはじめ様々なローンやクレジットの審査に落ちることになるでしょう。
相殺対象の借金の範囲が広い場合
過払い金での相殺対象の借金が広い場合も結果的に借金が残り、住宅ローン審査に影響を及ぼす可能性があります。通常は借り入れした貸金業者の借金が過払い金の相殺対象となりますが、次のようなケースでは相殺する借金の範囲が広がる場合があるためです。
クレジットカードのショッピング枠も対象
クレジットカードのキャッシング枠を過払い金で相殺しようと思っても、ショッピング枠に残高があった場合は、そちらも相殺の対象となる可能性があります。どちらも同じクレジットカードのサービスということで、クレジットカード会社が「ショッピング枠の利用残高も過払い金で返済するように」と言ってくることがあるからです。
通常クレジットカードのショッピング枠は、借り入れではなくあくまでも「立替金」という扱いです。そのためショッピング枠に過払い金は発生しません。しかしほとんどのクレジットカード会社では、キャッシング枠とショッピング枠を合計して過払い金と相殺するため、ショッピングでの利用が多いと「任意整理」の扱いで事故情報として登録されることに。
もしもクレジットカードのキャッシング枠の過払い金請求をしたい場合は、ショッピングの支払いが終わってから、もしくは利用残高と過払い金がいくらあるか比較してからにしましょう。
請求先が別の借金の保証会社になっている
過払い金請求先の業者が他の借金の保証会社になっていると、住宅ローン審査に影響があります。過払い金請求先の貸金業者が他のカードローン等の保証会社になっている場合、カードローンからも借金していると「本来の借金とカードローンの借金を合算して、過払い金で相殺するように」と貸金業者が主張してくるケースがあるからです。
例えばA社の借金が30万円あり、過払い金が50万円あったとしましょう。本来なら20万円のプラスになるはずが、A社が保証会社をしているB社のカードローンから40万円の借り入れをしていると、
A社の借金+B社の借金=70万円−過払い金50万円=-20万円
計算すると20万円の借金が残ることになります。これは同じグループ企業に属している業者間で多く、B社のカードローンを延滞したり滞納していると、保証会社が債務者の代わりに借金を一括返済する「代位弁済」を行うためです。代位弁済しても保証会社に返済義務が移るだけで、過払い金と相殺しても借金が残る場合は「任意整理」扱いで事故情報が登録されます。
合併先の借金も相殺される
合併先の貸金業者に借金がある場合は、そちらの借金も過払い金で相殺される可能性が。貸金業者の中には経営状態の悪化などで、他の貸金業者と合併しているケースがあります。合併先の貸金業者にも借り入れがある方は、元々の借金が過払い金で相殺できても、合併先の借金も合算して差し引かれる可能性があるということです。
過払い金で合併先の借金も相殺できるようなら問題ありませんが、2社分の借金を相殺して借金が残った場合は「任意整理」という情報が、事故情報として登録されてしまいます。
過払い金請求中の住宅ローン審査
過払い金請求の手続き中に住宅ローンの審査を受けると、ローン審査に通らない可能性があります。上で少し説明しましたが、過払い金請求中は「過払い金返還請求」という情報が個人信用情報に登録されるためです。ローン審査では必ず信用情報をチェックするので、事故情報があると審査にマイナスに影響する可能性があるでしょう。
ただし事故情報に登録されるのは、過払い金の金額が判明するまでの期間だけです。借金がすでに完済している場合はもちろんのこと、返済中でも過払い金で借金を相殺できれば事故情報は抹消されます。過払い金請求手続き中はブラックリスト載っていると同じと考え、手続きが終わるまで住宅ローンの申し込みはしないようにしましょう。
住宅ローンを組む金融機関が関連会社の場合
住宅ローンを組む銀行が過払い金請求した貸金業者の関連会社やグループ企業の場合、ローン審査に影響を及ぼす可能性があります。すでに完済した借金の過払い金を請求する場合もです。
社内ブラックだと審査に通らない
過払い金を請求した貸金業者と住宅ローンを申し込んだ金融機関がグループ企業だと、過去の借金や過払い金請求したことが「社内ブラック」に登録されているので、ローン審査に通らない可能性が。社内ブラックとは、金融機関やグループ企業内で共有される独自のブラックリストのこと。社内ブラックは永続的に残る情報なので「永年ブラック」と呼ぶこともあります。
一度でも延滞したり過払い金請求してきた債務者を社内ブラックとして登録していると、たとえ信用情報機関の事故情報が抹消されても、審査に通らず住宅ローンが借りられません。過払い金請求後に住宅ローンを組む場合は、それぞれのグループ企業についてよく確認し、同じグループ企業へのローン申し込みは避けるのが賢明です。
社内ブラックと通常のブラックリストとの違い、ブラックリスト入りするとできないこと等については、こちらの記事を参考にしましょう。
「債務整理するとブラックリストにのる?気になる「ブラックリスト」についてすべてお答えします!」
関連の可能性がある金融機関一覧
グループ企業の住宅ローン審査に通りにくいということで、主要なグループ企業名とグループ内企業の一覧を紹介します。
グループ企業名 | 銀行名 | グループ内企業 |
---|---|---|
三菱UFJフィナンシャル・グループ | 三菱UFJ銀行 |
|
三井住友フィナンシャルグループ | 三井住友銀行 |
|
みずほフィナンシャル・グループ | みずほ銀行 |
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上記以外にも、レイクALSAは新生銀行のグループ企業だったりします。ただし中には「グループ企業の過払い金請求をした後でローンの審査に通った」というケースも。過払い金請求をする前には請求先のグループ企業を調べたり、過払い金請求を依頼する弁護士に確認することをおすすめします。
過払い金請求以外の原因があるケース
過払い金請求のせいでローン審査に落ちたと思っていても、実は別の理由でローンが通らなかったというケースもあります。
別の理由で事故情報になっている
過払い金請求の結果として借金が相殺できないと「任意整理」として事故情報に登録される訳ですが、他の理由で事故情報になっているという場合があります。個人信用情報はクレジットやローン契約に関する情報のことなので、次のような情報も登録されることに。
- 過去の債務整理
- 多重債務
- 代位弁済
- 多重申し込み
- 返済の延滞(2~3カ月程度)
返済の延滞には消費者金融からの借り入れの他にも、携帯料金や奨学金、光熱費の延滞も含みます。債務整理では5年~10年、延滞情報は約5年間事故情報として登録されます。
申込者本人の属性が問題
個人信用情報以外の申込者本人の属性が問題で、ローン審査に落ちることがあります。とくに住宅ローンは何十年にも渡って返済していくことから、申込者に関する様々な情報を総合的に判断します。住宅ローン審査の判断基準は公に公開されていませんが、次のような属性を総合的に勘案して決められます。
- 勤務先
- 年収
- 雇用形態
- 勤続年数
- 健康状態
- 家族構成
- 結婚歴
- 世帯年収
- 申し込み時年齢
- 完済時年齢
- 担保評価(不動産の価値)
- 返済負担率(年収に占める年間返済額の割合)
返済負担率は住宅ローン以外の借金の残高も含めて計算されるため、ローン以外に借金がある方は要注意です。住宅ローンの審査は他の借り入れとは比べ物にならないくらい審査が厳しいです。過払い金請求以外の原因で審査に通らないこともあるということを、十分に理解しておきましょう。
住宅ローンを組んだ後に過払い金請求するには?
過払い金請求をしたいと思ったとき、返済中の住宅ローンに影響があるのか気になる人も多いのではないでしょうか。こちらでは住宅ローンを組んだ後に過払い金請求しても、ローン返済に問題がないかや注意点について詳しく見ていきましょう。
事故情報として登録されてもローンに影響なし
住宅ローン審査を経て無事に借り入れができ、現在もキチンと返済できている状態であれば、過払い金請求をしても問題ありません。過払い金返還請求は債権者が不当に得た利息を返してもらう手続きのため、債務者に何ら落ち度がないからです。また現在ローンを利用している金融機関に対して、過払い金請求をしたことを報告する義務もありません。
「過払い金請求のせいでローンの一括返済を迫れるのでは?」と心配になる方がいるかもしれませんが、ローン返済に問題がない限りは、過払い金請求をしても特に影響はないのでご安心を。
事故情報として登録されていないかチェック
完済した借金の過払い金請求が原因で他のローンやクレジットカードの新規作成に影響を及ぼさないためには、返還手続きが終わってから信用情報機関に登録内容の確認をしましょう。間違って事故情報として登録されていると、様々な制約が課されるためです。
日本には信用情報機関が3社あり、それぞれに加盟業種が異なります。自分の信用情報を確認するには、3社すべての情報開示請求を行った方がいいでしょう。こちらは信用情報機関ごとの請求方法や手数料です。
信用情報機関名 | 請求方法・手数料 |
---|---|
株式会社シー・アイ・シー(CIC) | 窓口…500円 郵送・インターネット…1,000円 |
株式会社日本信用情報機構(JICC) | 窓口…500円 郵送・スマートフォン…1,000円 |
全国銀行個人信用情報センター(KSC) | 郵送…1,000円 |
開示請求を行った結果、間違った情報が登録されている場合は、信用情報機関に訂正請求をすることが可能です。
任意整理で信用情報に載る内容や効率的な回復方法については、こちらの記事を参考にしてください。
「任意整理で信用情報に載る内容・期間を解説!ポイントを知って効率的に信用情報を回復」
ただし頻繁な確認は要注意
過払い金請求後の情報開示は返済中の住宅ローンに影響はありませんが、頻繁に確認しすぎには要注意です。信用情報機関では情報開示請求があったという履歴も1カ月前後残しています。頻繁に確認しすぎるとその履歴が多く記録され、新しくクレジットカードを作る場合や携帯電話の分割払いを申し込むときに「頻繁に確認しなければならない事情があるのか?」とマイナスにとられる場合が。
開示請求の回数をなるべく少なくするには、事故情報として登録されてからの期間をしっかり把握したうえで、開示請求をするようにしましょう。
住宅ローンは過払い金請求できる?
最後に住宅ローンは過払い金請求できるかという疑問にお答えしていきます。
金利が低いので過払い金が発生しない
住宅ローンの金利は消費者金融の金利と比べてはるかに低いので、そもそも過払い金は発生しません。過払い金請求ができる借金の金利が年15~20%なのに対し、固定金利の住宅ローン金利は年0.7~1%、変動金利で0.4~0.5%前後です。高くても年利1%を超える程度なので、過払い金はほぼ発生しないと考えていいでしょう。
住宅ローンが負担なときの対処法
住宅ローンが負担で生活費を圧迫しているというときは、どのような対処法があるのでしょうか?住宅ローンが負担だといいながら返済を滞納し続けると、自宅が競売にかけられて人手に渡ってしまうことになりかねません。強制的に退去させられる前に何らかの対処をしておきましょう。
金融機関に相談
住宅ローンを払えないと分かった段階で、なるべく早めにお金を借りた金融機関に相談しましょう。多くの金融機関では、住宅ローン専用窓口を設置しているので、そちらに相談するといいでしょう。住宅ローンは審査の段階で完済できると判断されてお金が借りられます。しかし支払えない状況になった場合、状況次第では返済までの期間を延長したり返済額を減らすことも可能です。
債務整理を検討
住宅ローン以外にも借り入れがある場合は、債務整理を検討しましょう。任意整理なら債権者を選べるので、住宅ローンを借りている金融機関を除外できます。また個人再生なら「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」があるので、返済しながら住宅を手元に残せ、住宅ローン以外の借金を最大で1/10まで減額可能です。
債務整理を検討する場合は、借金問題に詳しい弁護士に相談するのがおすすめ。住宅ローンの残債や他の借金の状況を確認しながら、あなたに一番適した債務整理方法を提案してくれます。
個人再生で住宅ローンがどうなるかについては、こちらの記事を参考にしてください。
「個人再生で住宅ローンはどうなる?特則適用の条件・巻き戻し・手続き後のローンについて」
まとめ
過払い金返還請求は、すでに完済している借金の分や、返済中でも過払い金で相殺できるようなら、住宅ローン審査に影響することは限定的です。ただし相殺する借金の範囲が広く、過払い金で相殺しても借金の方が多かったり、住宅ローンを申し込んだ金融機関が関連会社だと社内ブラックによって審査に落とされる可能性が。
過払い金請求が事故情報として残っていないかや、事故情報が抹消されたかについては、信用情報機関に開示請求を依頼して確認が必要です。これから住宅ローンを組む予定があり確実に借り入れしたいという方は、ローン審査に通った後で過払い金請求をすることをおすすめします。
また他の借金が原因でローンが組めるか心配という方は、先に過払い金請求をして借金を減額するという方法もあります。過払い金請求のベストなタイミングは、その他の借金の返済状況や申込者本人の属性によって異なります。過払い金請求は弁護士が手続き可能です。どのタイミングですべきかも相談出来れば、住宅ローンに及ぼす影響を最小限にできるはずです。