個人再生で住宅ローンはどうなる?特則適用の条件・巻き戻し・手続き後のローンについて

個人再生で住宅ローンはどうなる?特則適用の条件・巻き戻し・手続き後のローンについて
個人再生で住宅ローンはどうなる?特則適用の条件・巻き戻し・手続き後のローンについて
  • 「個人再生すると住宅を手放さなければらなない?」
  • 「住宅ローン特則が使える条件が知りたい」

住宅ローン返済中のマイホームをお持ちの方にとって、債務整理しても住宅が残せるかは切実な問題です。こちらの記事では個人再生で利用できる「住宅資金特別条項」通称住宅ローン特則について詳しく紹介していきます。適用の条件や5つある種類の内容、使えないケースとその対処法を参考にして、自分が当てはまるのかをチェックしましょう。

さらに住宅ローン返済中の夫婦が個人再生する際の注意点や住宅ローンの「巻き戻し」についても解説。個人再生後に住宅ローンを組んでマイホームを購入しようと検討中の方には、注意すべきポイントをお教えします。

 

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目次

住宅資金特別条項(住宅ローン特則)とは?

まずは住宅資金特別条項とはどんな制度なのか、種類や条件などを詳しく見ていきましょう。

ローンを支払い続け住宅を残せる手続き

住宅資金特別条項(住宅ローン特則)は、個人再生でのみ適用される制度で、住宅ローンを支払い続けることを条件に、住宅を手元に残せる手続きです。この制度を利用しない個人再生や自己破産では、家を残したいからといって住宅ローンだけ返済し続けることはできません。

申立てが行われた段階で住宅に設定してある抵当権を行使して住宅を売却、その代金をローン残債の回収にあてます。住宅に住んでいた人は銀行が提示した日にちまでに退去を求められ、競売が成立する・しないに関わらずそれ以上住むことはできなくなります。

しかし住宅は他の財産と異なり、生活の基盤であり経済的再生につながる場所です。個人再生では住宅を手放さずに経済的な更生を図れるように、この住宅ローン特則が設けられています。

住宅ローン特則は裁判所からの「一部弁済」の許可を得ることで、住宅ローンの支払いを続けていくことが可能です。そして住宅ローンの返済と並行して減額した他の借金を完済できれば、個人再生後も住宅を手元に残しておけます。ただしローンの元金や利息などは減額できません。返済期間の延長や猶予により全額支払わなければいけないのが原則です。

住宅ローン特則の再生計画案は5種類

住宅ローン特則による再生計画案は返済方法の違いによって5種類あります。種類によっては利用できる条件があるため、気を付けましょう。

再生計画案の種類 返済方法 条件
正常返済型(そのまま型) 個人再生後も当初の契約通り住宅ローンを返済する 個人再生認可までの間に住宅ローンの滞納がないこと
期限の利益回復型 ローンを滞納している場合、これからの返済分は当初の契約通りに返済し、滞納分は再生計画で決めた期間(3年~5年)に返済できる なし
期間延長型(リスケジュール型) 期限の利益回復型で再生計画認可が下りない場合に選択される
返済期間を最長10年延長し、一回の返済額を減らすスタイル
本人が70歳までに完済すること
元本猶予期間併用型 住宅ローン元本やその一部の返済を個人再生の期間中3年~5年の間は猶予を受けられる 延長できるのは最大で10年かつ本人が70歳になるまで
合意型 合意があれば上記以外の特別条項を定められる
返済期間の10年延長やボーナス払いの取りやめなど
住宅ローン債権者の合意が必要

最も多く利用されているのが、今まで通り返済していく正常返済型です。ローンをすでに滞納している人は、期限の利益回復型で滞納分の返済も含めた返済が可能です。それでも認可が下りない場合は期間延長型がおすすめ。他にも元本の返済を猶予できる元本猶予期間併用型や、銀行との合意があれば上記以外の返済方法で返せる合意型もあります。

住宅ローン特則・適用の条件

住宅ローン特則はローンを返済しながら住宅を残せる便利な制度ですが、誰でも利用できるわけではありません。これから紹介する適用の条件を参考に、住宅ローン特則を利用できるかチェックしましょう。

個人再生をするための要件を満たしている

そもそも住宅ローン特則は個人再生の特例措置です。個人再生をするための要件を満たしていなければ利用できません。また任意整理や自己破産など、個人再生以外の債務整理をする方は、住宅ローン特則を使えないので注意しましょう。個人再生をするための要件は次の2つになります。

  • 住宅ローン以外の借金総額が5000万円以下である
  • 将来的に継続または反復した収入があり再生計画通りの弁済ができる

個人再生は住宅ローンを除いた債務が5000万円以下でなければ手続きできません。また申立てが認められると、3年(最長でも5年)かけて減額された借金を返済していかなければならないので、安定した収入が今後も見込めるかがポイントになります。

住宅購入のための資金である

住宅ローン特則が利用できるローンは、住宅購入やリフォームのための資金(住宅資金貸付債権)でなければなりません。他にも次のような条件があります。

  • 住宅資金貸付債権であること
  • 分割払いの定めのある貸付であること
  • 住宅資金貸付債権または主債務者に対する求償権を担保するための抵当権が設定されていること

例えば住宅ローンの一部で登記の登録免除税など、住宅購入に不可欠な費用をまかなったときは認められますが、家具や家電の購入といった住宅購入に不可欠と言えない費用にあてた場合は、住宅ローン特則の利用が認められない可能性があります。また住宅を担保に事業用資金を借りたという場合も、住宅ローン特則は使えません。

本人が所有し住むための住宅である

住宅ローン特則が使えるためには、対象の建物を個人再生を申立てる本人が所有し、かつ本人が住むための住宅でなければなりません。もちろんそこに本人が住んでいるか、そこに住む予定がないと認められません。したがって次のような住宅のローンは認められないということです。

  • 本人以外の家族名義の住宅
  • 他人に賃貸している登記用の不動産
  • 一時期だけ使用する別荘やセカンドハウス

ただし単身赴任中でいずれその住宅に戻る場合や、転勤で一時的に他人に貸している場合は適用できる可能性があります。また夫婦2名の共有名義になっている場合なども、一部であっても所有形を有しているため住宅ローン特則が使えます。

床面積の1/2以上が住居用である

店舗や事務所と自宅が一緒になっている建物の場合、床面積の1/2以上が住居用でなければいけないという条件があります。他にもアパートと自宅を併用しているような建物や、自宅の一部を他人に賃貸している場合も同様です。

また親子で二世帯住宅に住んでいる場合は、二世帯の家計が別で住居部分が分離しているという条件付きで、本人が暮らす住居部分の床面積が1/2以上あるなら住宅ローン特則が使えます。

住宅ローン以外の抵当権がない

住宅ローン特則を利用するには、住宅ローンを担保するための抵当権が付いていることが条件になりますが、住宅ローン以外の抵当権が設定されていないことも条件の一つです。例えばカードローンや消費者金融からお金を借りるために、「不動産担保ローン」などで自宅を担保に入れたという場合です。

抵当権という担保権は数に限りがなく、いくつも設定することができます。設定した順番によって、その不動産を競売にかけて売却したときに受け取ることができる順番が決まっています。順番が遅ければ遅いほど回収の可能性が低くなりますが、消費者金融の中には回収の見込みがなくても抵当権を高順位で設定することがあり、このようなケースでは住宅ローン特則が使えなくなります。

滞納がないか代位弁済から6カ月以内である

住宅ローン特則を利用する条件に、滞納がないかもしくは代位弁済から6カ月以内であることが求められます。滞納があっても代位弁済から6カ月以内なら利用できるのでご安心を。代位弁済とは、住宅ローンに保証会社が付いているとき、滞納した債務者の代わりに金融機関にローンを一括で返済することです。

個人再生の手続きについて定めた民事再生法198条2項では、保証会社が住宅ローンを代位弁済してから6カ月以内に、個人再生手続開始の申立てをすれば、例外的に住宅ローン特則が認められるとあります。もしも住宅ローンを滞納して代位弁済が行われてしまった場合は、6カ月以内に個人再生手続き開始の申立てをするようにしましょう。

債権者一覧表に記載すること

住宅ローン特則を利用するには、個人再生申立てのときに提出する「債権者一覧表」に次のような文言を記載する必要があります。

  • 住宅ローン特則の対象としようとしている債権が住宅資金貸付債権であること
  • 住宅ローン特則を定めた再生計画案を提出する意思があること

住宅ローン特則のメリット

住宅ローン特則にはマイホームを残せる以外にも、次のようなメリットがあります。

口座凍結を回避できる

住宅ローン特則を利用すると、住宅ローンを引き落とししている銀行口座の凍結を回避できます。通常、個人再生の手続きを弁護士が請け負うと、弁護士からこれから手続きに入ることを知らせる「受任通知」が貸金業者や銀行に送付されます。住宅ローンを支払っていた銀行でも受任通知を受け取ると、その口座からお金を引き出されないようにするため口座を凍結してしまいます。

口座凍結は一時的なものではありますが、一旦口座が凍結されるとお金を下ろせなくなったり、光熱費や保険の引き落としが不可能に。よって個人再生をする場合は、事前に口座の変更手続きをしなければなりません。しかし住宅ローン特則を利用するということは住宅ローンを払い続けるとみなされるため、住宅ローンの返済がある口座の凍結を回避できるという訳です。

「一部弁済許可申立て」で継続返済が可

個人再生申立てのタイミングで「一部弁済許可申立て」を行うと、裁判所の許可のもと個人再生開始決定までの間も住宅ローンを払い続けられます。一般的に個人再生申立てをしてから再生計画案が認められるまでの間は、債権者への返済がストップします。長い場合は半年以上かかる可能性があるため、住宅ローンが延滞状態になり、その延滞が6カ月を超えると代位弁済されてしまいます。

申立て以前から住宅ローンを滞納していた場合は、さらにそこから6カ月経過してしまうと住宅ローン特則が利用できなくなることも。しかしあらかじめ「一部弁済許可申立て」を裁判所に提出し、住宅ローンの支払いだけは継続しておくと代位弁済される可能性が無くなります。

競売が開始されても停止できる

住宅ローン特則を利用すると、たとえ競売が開始されていてもそれを停止できるメリットがあります。通常住宅ローンを長期にわたって滞納すると、ローンを返済している金融機関から一括で返済するように請求され、一括で返済できない場合は保証会社による代位弁済が行われて最終的にはマイホームが競売にかけられてしまいます。

競売にかけられるともはや自宅に住むことはできなくなってしまいますが、住宅ローン特則で手続きすることでそれをストップできるという訳です。ただし競売がストップできるのは次のような条件を満たしているときのみです。

  • 代位弁済後6カ月以内に個人再生の申立てをしている
  • 競売にかけられた住宅がまだ落札されていない

競売にかけられた住宅がすでに落札されて競売が完了しているときは、住宅ローン特則で手続きしても中止できません。また住宅ローンを長期間滞納していると、滞納分の住宅ローンや遅延損害金も支払う必要が出てきます。結果として個人再生手続きにかかる負担が重くなる可能性が高いため、住宅ローンを滞納する前に弁護士に相談するようにしましょう。

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住宅ローンの返済が楽になる

住宅ローン特則を利用できると、住宅ローンの返済が以前よりも楽になります。上で説明した通り、住宅ローン特則には返済方法によって5つの種類があり、今まで通りの返済を行う「正常返済型」以外を選択すると、住宅ローンの返済が延長出来たり、猶予できたりします。

例えば期限の利益回復型なら返済が滞った分の再生計画により、通常なら一括で返済すべきローンを分割で返済できることに。また「期間延長型」は返済期間を最大10年まで延長でき、「元本猶予期間併用型」は元本やその一部の返済を最大10年間猶予可能です。さらに「合意型」なら、債権者の合意次第で別の返済方法を選択することもできるようになります。

連帯保証人に影響がない

住宅ローン特則の利用で、連帯保証人に影響が出ないというメリットもあります。連帯保証人の付いた借金では、通常自己破産や個人再生をすると申立て本人の返済は減額されたり免責されますが、本人から返済されなかった分の借金は連帯保証が返済しなければならなくなります。

しかし住宅ローン特則を利用すると今まで通り返済は行われることになり、連帯保証人に請求が行くことはありません。住宅ローンを組む場合は連帯保証人を立てている方が多いため「債務整理をすると連帯保証人に迷惑をかけるのでは?」と心配になるかもしれませんが、住宅ローン特則を利用すれば連帯保証人に迷惑をかけることがないでしょう。

住宅ローン特則以外の個人再生のメリットについては、こちらの記事を参考にしてください。

「個人再生のメリット・デメリットを徹底分析!注意点・利用条件・他の債務整理との違いは?」

住宅ローン特則を使えないケース

これまで住宅ローン特則の条件やメリットを紹介してきましたが、制度を利用できないケースもあります。これから住宅ローン特則を利用したいと検討中の方は、自身のケースが当てはまらないかをチェックしましょう。

別用途のために借り換えしている

住宅ローンを別用途のために借り換えしていると、住宅ローン特則を利用できません。住宅ローンをただ単に金利が安くなるからという理由で借り換えている場合は利用できますが、事業用資金を調達するためや全く他の用途で借り換えしてしまうと、制度が利用できなくなります。とはいえ借り換え後の用途や目的は申請時にしっかりチェックされるので、虚偽の報告はしないようにしましょう。

住宅ローンを住宅購入目的以外で使用している

上で紹介した通り、住宅ローンとして借りたお金を住宅の購入資金以外の目的で使用していると、住宅ローン特則を利用できません。とくに注意したいのがマンションの購入費用を住宅ローンでまかなったときです。マンションも住宅の購入費用となるので基本的には問題ないのですが、毎月の返済に住宅の購入費用と合算で、マンションの管理費が含まれている場合は注意が必要です。

というのもマンションの管理費には、管理組合に請求権がある「先取特権」という住宅ローンよりも一段強い担保権が設定されているからです。そのため管理費を滞納していると「住宅ローン以外の抵当権が付いていないこと」という条件を満たせなくなってしまい、住宅ローン特則が利用できません。

もしも管理費を滞納している場合は、事前に滞納を解消するか、管理組合との間で滞納分を分割で支払う代わりに先取特権を実行しない協定を結ぶ必要があります。

税金を滞納している

税金を滞納していると、住宅ローン特則を利用することが難しくなります。その理由は税金を滞納していると、回収のために強制執行が行われて住宅が差し押さえられる可能性があるからです。結果として住宅の所有権を失ってしまうことになり、住宅ローン特則が使えなくなります。

すでに税金を滞納しているという方は、まず税金の滞納を解消する必要があります。一括で税金を納めることが難しい場合は、役所と相談して合意が得られれば分納という方法があります。税金を全て支払えれば差し押さえが解除されて、住宅ローン特則が利用できるようになります。

査定によりアンダーローン状態である

住宅ローン特則を利用するためには事前に住宅を査定するのですが、その場合にアンダーローン状態だと、制度を利用してもメリットが得られません。アンダーローンとは住宅ローンの残債よりも住宅の資産価値の方が高い状態のこと。もしも住宅がアンダーローン状態だと、その差額分は「清算価値」として、個人再生後の返済の対象となってしまうからです。

例えば住宅ローンの残債が500万円で、住宅の査定額が1000万円のアンダーローン状態だとすると、差額の500万円が「清算価値」となり、個人再生後に最低でも500万円は返済しなければいけなくなります。アンダーローンの差額が大きければ大きいほど、個人再生後の返済額も上がるため、個人再生をする意味が無くなってしまいます。

二重ローンを組んでいる

住宅ローンの二重ローン(ダブルローン)状態だと、どちらか一方の家の住宅ローンに住宅ローン特則が利用できない可能性があるので注意が必要です。家を買い替える場合には、前の家の住宅ローンが残っている状態で、新しく住宅ローンを組むケースがあります。このように2つの住宅ローンを同時に返済する状態を二重ローンといいます。

住宅ローン特則を利用するには、「本人が居住している」という条件があります。このため制度を利用できるのは、申立て時点で本人が住んでいるどちらか一方の家の住宅ローンのみということに。現在二重ローンを抱えている方は気を付けましょう。

住宅ローン特則を使えないときはどうする?

では住宅ローン特則を使えないときは、家を維持するためにどのような方法があるのでしょうか。

任意整理に変更

住宅を手元に残すためには、個人再生ではなく任意整理に変更するという方法があります。任意整理は個人再生と違い裁判所を通さずに債権者と直接交渉して利息のカットや返済期間の延長をお願いする手続きです。任意の債務整理となるため、整理する借金を選べるので、住宅ローンを整理対象から外すことで従来通り返済を続けられれば住宅を残せます。

ただし任意整理では、元本以上の減額はできません。元本を含め大幅に減額できる個人再生と比較すると、借金を減額するという効果は限定的です。任意整理でも3年(最長でも5年)かけて減額した借金を返済していきます。したがって借金総額が多い方は、任意整理しても期間内に返済できるのかよく検討する必要があるでしょう。

リースバックを活用

住宅ローン特則を利用できなくても、リースバックで家に住み続けることができます。リースバックとは、自宅を不動産会社や投資家などに売却して、賃料を支払うことで賃貸物件としてその家に住み続けられるという方法です。この方法を活用できれば自宅を売却してその代金で住宅ローンを返済し、毎月賃料さえ支払えれば引き続き同じ家に住むことができます。

見た目には家を手放したことなど周囲に分からなく、引っ越しや子どもの転校の必要もありません。また賃料が月々の返済額よりも低ければ、毎月の出費を抑えられて大きなメリットが出ます。ただし家賃がその地域の相場よりも大幅に高く設定されると、毎月の負担が増大する可能性があります。

夫婦で個人再生する場合の住宅ローンはどうなる?

夫婦で個人再生する場合には、住宅の名義や連帯保証人によって選択する債務整理方法を変える必要があります。また場合によっては住宅ローン特則を利用できないケースもあるため要注意です。

夫(妻)名義の住宅

夫名義の住宅の場合(妻名義の場合は逆に考えてください)、妻が住宅ローンの連帯保証人や連帯債務者になっていないケースでは、単純に名義のある夫が住宅ローン特則を利用して個人再生を進められます。ただし妻が連帯保証人や連帯債務者になっているケースでは、夫の個人再生だけでは済まない場合があります。

妻が連帯保証人

妻が住宅ローンの連帯保証人になっていると、妻も個人再生で借金を減額しようと思っても、住宅ローン特則は使えません。もちろん夫は問題なく使えますが、夫の住宅ローンの期限の利益(分割で返済できる権利)が喪失されないためには、妻も何らかの債務整理が必要です。

一般的に任意整理や自己破産を選択することが多いですが、個人再生を選択した上で住宅ローンの債権者と相談して、交渉により期限の利益を喪失しないように扱ってくれることもあります。

個人再生と自己破産の違いや切り替え方法については、こちらの記事を参考にしてください。

「個人再生と自己破産の違いとは?手続き・条件の比較や切り替え方法を教えます!」

妻が連帯債務者

住宅ローンの抵当権に夫と妻の両方が債務者となっている場合も、夫婦共が個人再生をしても所有者である夫だけしか住宅ローン特則を利用できません。したがって上の連帯保証人のケースと同じような対応が必要になります。

夫婦共有の住宅

住宅の名義が夫(妻)だけでなく夫婦共有になっている場合は、対応がまた変わってきます。

妻が連帯保証人

住宅ローン返済中の夫婦共有の住宅があり、妻が連帯保証人になっているケースでは、制度上は夫婦が同時に個人再生を申立てれば夫婦共に住宅ローン特則が使えることになります。解釈が難しいところですが、そうしないと住宅ローン特則の制度の趣旨に反するからと考えられます。

夫婦が連帯債務者

住宅ローンの抵当権に夫婦両方が債務者となっている場合は、夫婦二人とも個人再生の住宅ローン特則が利用できます。同時に個人再生手続きを進め、同じ弁護士に依頼すると、必要書類が一部省略できることがあります。詳しくは担当の弁護士にお問い合わせください。

ペアローンを組んでいる

ぺーアローンを組んでいて住宅ローン抵当権に夫と妻の両方が債務者として登記されているのであれば、二人とも住宅ローン特則が利用できます。ペアローンとは同一の物件に対して個別にローン契約を行い、お互いに連帯保証人になるという借り入れ方法です。共働きの家庭が増え、夫婦それぞれに収入があることからぺーアローンを組んで住宅を購入する家庭が増えました。

ただしペアローンを組んでいる場合は片方だけが個人再生を申立てても住宅ローン特則を利用できません。それは自分の持ち分に配偶者の借り入れ分についての抵当権が設定されているからです。

つまり自分以外の他の抵当権が付いていることになり、住宅ローン特則の利用条件から外れてしまいます。ペアローンで住宅ローン特則を利用するためには、夫婦二人そろって個人再生を申立てることが新たな条件となるので気を付けましょう。

住宅ローンの巻き戻しとは?

個人再生では「住宅ローンの巻き戻し」ができると言われています。果たしてこれはどんな制度なのでしょうか。

住宅ローンを滞納していたときの解決策

住宅ローンの巻き戻しとは滞納していた時の解決策で、住宅ローン特則を利用する目的で保証会社による代位弁済をなかったことにする制度です。保証会社が付いている住宅ローンを滞納し続けていると、保証会社が債務者の代わりに金融機関にローンの返済を行い、住宅の債権者となり住宅を売却することで返済した分を取り返そうとします。

そのタイミングで待ったをかけるのが、巻き戻し制度です。代位弁済が行われると住宅ローン特則を利用できないのが原則ですが、裁判所が住宅ローン特則を定めた再生計画を認可して確定すると、保証会社による代位弁済をなかったことにできます。

巻き戻しができる条件

ただし巻き戻しができるためにはいくつかの条件があります。

代位弁済から6カ月以内

住宅ローンの巻き戻しを可能にするには、代位弁済から6カ月以内でなければいけません。代位弁済した日から6カ月を過ぎない間に、再生手続開始の申立てができればセーフです。ただし保証会社が代位弁済した日にちと、債務者が代位弁済の通知を受け取った日は必ずしも同じではありません。

したがっていつ代位弁済されたかという正確な日にちを確認する必要があります。代位弁済したことを知らされていなかったからといって、巻き戻しの期限が延長されることはありません。また6カ月という期限も、個人再生を弁護士に依頼しただけでは十分でなく、必要書類を準備して申立書と共に裁判所に提出して受理されなければなりません。

代位弁済したのが保証会社である

巻き戻しができるのは、保証会社が行った代位弁済に限られます。保証会社とはローンや家賃の返済が滞ったときに利用者の代わりに返済を保証してくれる業者のこと。いわば連帯保証人の代わりです。

ですが債務者の代わりに連帯保証人になっている親や親族が代位弁済をした場合は、保証会社に該当せず、住宅ローンの巻き戻しは利用できないので気を付けましょう。

競売後は入札日までに申立てる

住宅ローンの巻き戻しができるためには、競売後は入札日の前までに申立てる必要があります。入札日が1日でも過ぎてしまうと、たとえ落札されなくても巻き戻しができなくなります。

個人再生後いつから住宅ローンを組める?

個人再生後に住宅を購入したいと考えている人の中には、いつから住宅ローンを組めるか気になる人も多いのではないでしょうか?こちらでは個人再生後いつから住宅ローンを組めるかについてや注意点を解説していきます。

5年~10年は組めない

個人再生をすると少なくとも5年~10年は住宅ローンが組めません。それは個人再生すると信用情報機関にある個人信用情報に事故情報として登録されるからです。いわゆる「ブラックリスト」状態ということになり、その期間は新しくクレジットカードが作れなかったり住宅ローン以外の分割払いも利用できないことに。登録されている期間はローンを申し込んでも審査で落とされてしまいます。

5年~10年と期間に幅があるのは信用情報機関によって登録機関が異なるため。日本には加盟金融機関ごとに3つの信用情報機関があり、それぞれに事故情報として登録する期間を決めています。銀行や信用金庫など住宅ローンを主に扱う金融機関は「全国銀行個人信用情報センター(KSC)」に加盟していて、個人再生するとその事実が10年間登録されます。

また多くの方が利用する住宅ローン「フラット35」は、住宅金融支援機構が提携して提供しています。住宅金融支援機構もKSCに加盟していることから、個人再生後10年間はフラット35を利用して住宅ローンが組めません。

個人再生後の住宅ローンの注意点

個人再生後5年~10年経って、住宅ローンを利用しようと思ったときに注意すべきポイントがあります。

同じ銀行だと社内ブラックで組めないことが

以前個人再生で整理した金融機関と同じところに住宅ローンを申し込むと、「社内ブラック」によりローン審査が通らない可能性があります。社内ブラックとは貸付の滞納や債務整理の履歴など、金融機関が独自に保有している情報で、信用情報機関のように消える決まりがないため、社内で半永久的に残り続けます。

同一の金融機関だけでなく、グループ会社にまで社内ブラックが回っている可能性が高いので、以前個人再生手続きを行った金融機関とそのグループ会社は、住宅ローンの申し込み先候補から外すことをおすすめします。

万が一確認漏れでローンを申し込んで落ちてしまうと、「ローンに落ちた」という情報が事故情報として登録されてしまいます。さらに数年間はローンを組めなくなってしまう恐れがあるので、確認は怠らないようにしましょう。

減額承認されるケースがある

過去に個人再生すると、住宅ローンの審査で「減額承認」となる場合があります。減額承認とは、例えば2000万円のローンの申し込みをしても審査の結果減額され1500万円までしか融資できないと判断されること。とはいえ債務整理しただけで減額承認されるケースはほとんどなく、返済能力や物件の担保価値などをトータルで判断した総合的な結果と考えるべきでしょう。

信用情報開示請求でチェック

個人再生後5年~10年後に住宅ローンを申し込む場合は、必ず事前に信用情報機関に自分の個人信用情報の開示請求を行って、事故情報が消えているかチェックしましょう。この場合、3つある信用情報機関すべてに開示請求を行うことをおすすめします。というのも信用情報機関同士で独自のネットワークを持ち、情報が共有されている可能性があるからです。

3つある信用情報機関の開示請求方法や費用の詳細はこちらです。

信用情報機関名 主な加盟業種 開示方法 費用(税込)
日本信用情報機構(JICC) 消費者金融・リース会社・信販会社・保証会社 窓口・郵送・スマホ 窓口:500円
郵送・スマホ:1,000円
割賦販売法・貸金業指定信用情報機関CREDIT INFORMATION CENTER(CIC) クレジットカード会社・信販会社 窓口・郵送・インターネット 窓口:500円
郵送・インターネット:1,000円
全日本銀行個人信用情報センター(KSC) 銀行・信用金庫・労働金庫・農協・銀行系クレジットカード会社 郵送 1,000円

信用情報機関に掲載される内容や期間について詳しくは、こちらの記事を参考にしましょう。

「任意整理で信用情報に載る内容・期間を解説!ポイントを知って効率的に信用情報を回復」

まとめ

住宅資金特別条項、通称:住宅ローン特則は個人再生でのみ利用できる制度で、裁判所に申し立てて住宅ローンを払い続ける代わりに差し押さえなどから住宅を守ることができ、引き続き住み続けられる手続きです。そのほかにも口座凍結を回避できたり、連帯保証人に迷惑をかけずに済むというメリットがあります。

ただし住居部分の床面積が全体の1/2以上であることや、住宅ローン以外の担保権が付いていないことが条件となり、住宅ローンを住宅購入の目的以外で使用していたり、アンダーローン状態もしくは二重ローンだと住宅ローン特則を利用できません。もしも利用できないときは任意整理を選択するか、リースバックを活用するという方法があります。

また夫婦で個人再生する場合は住宅の名義や連帯保証人、連帯債務者がどうなっているかによって住宅ローン特則を利用するのに注意が必要です。個人再生後、5年~10年は住宅ローンを組めず、新たにローンを組むときには社内ブラックに注意して、信用情報機関3社すべてから個人情報の開示請求を行いましょう。

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