- 「知らずに友だちにすすめたビジネスがねずみ講だった…」
- 「ねずみ講でできた借金は返済しなくてもいい?」
知り合い数人を勧誘し入会金を支払ってもらうだけで、次々と会員が増えて入会金の一部を永遠に受け取り続けられる…そんなおいしいビジネスに誘われたことはありませんか?そのビジネスは違法なねずみ講の疑いがあります。
ねずみ講だと知らずに借金してまでお金を支払った方は、借金返済に追われる可能性も。借金の返済義務があるかについてや相談先、解決方法なども詳しく解説してきます。すでにねずみ講の被害に遭っている方はもちろんのこと、「もしかしてこれってねずみ講?」という方も参考にしましょう。
ねずみ講とは?
まずはねずみ講のシステムや違法性の有無、ネットワークビジネスとの違いについて解説してきます。
金銭の配当を目的としたビジネススキーム
ねずみ講とは、金銭の配当を目的としたビジネススキームのことを指します。ねずみ講加入時には、入会金や資本金、紹介料など様々な名目の金銭を支払うことになります。先に加入した人が2人以上の人を加入させ、加入した人がさらに2人以上の人を勧誘する…といった仕組みです。
先に加入した人は、後に加入した人(子会員)が支払った入会金の一部を受け取ることができるため、先に加入した人ほど、子会員が増えれば増えるほど手にできる金銭は増えます。ねずみ講の正式名称は「無限連鎖講」といいますが、次々と子会員を増やす様子が多産のねずみに似ていることから、一般的にはねずみ講と呼ばれています。
加入時に支払う金額は、数万円~数百万円の場合も。一部は上位会員の手元に渡りますが、ほとんどが一部の上部階層の人間に入っていく仕組みです。知り合いを2人以上加入させるだけで「なぜか」お金が継続的にもらえるというのが勧誘するときの誘い文句です。
インターネットを介したネズミ講も
最近ではインターネットを介したねずみ講も見つかっています。例えば「ホームページ自己増殖型」ねずみ講は、初めに勧誘のためのホームページを作成、そのページを見た人が指定の送金先にお金を振り込みます。そして指示してある方法に従って会員登録すれば、自動的にその会員の勧誘用ホームページが新たに開設。
そしてそのホームページを見た人から、自分の口座に新たにお金が振り込まれてくるという仕組みです。明らかに金銭の配当をもくろむシステムということを法的に認められたため「無限連鎖講」に該当するとしています。
そもそもねずみ講を勧誘してくる人は、初めから「ねずみ講です」といって勧誘するわけはありません。「少額の元手を出して知り合いを勧誘するだけで、簡単にすぐに大金を手にできます」などという巧みなセールストークや宣伝文句で勧誘してきます。インターネットを介することで、より巧妙に、よりねずみ講だと分かりにくくなっています。
参照:インターネットを介したねずみ講、マルチ商法の実態と処方箋
必ず破綻することが証明されている
ねずみ講は、数学的に見ても必ず破綻することが証明されています。組織ができた当初はうまく回っていくのですが、加入者が増えるにしたがって入会金の配当はストップ、末端の子会員ほど払い損となってしまうでしょう。
例えば各段階で、5人ずつの子会員を増やしていくとしましょう。以下の子会員の人数は、5人→25人→125人→625人→3,125人→15,625人とあっという間に増加。6段階後には日本の人口の約2倍の人数になる計算です。このような増え方を指数関数的といいますが、直観よりも早期に破綻するだろうということが分かります。
ねずみ講は法律違反になる
そもそもねずみ講(無限連鎖講)は、法律に違反した行為です。1978年に成立した「無限連鎖講の防止に関する法律」という法律によって禁止されている違法行為であり、犯罪です。行為の程度によって次のような処罰が課せられる恐れがあります。
行為の程度 | 処罰 |
---|---|
無限連鎖講の開設・運営 | 3年以下の懲役または300万円以下の罰金(もしくはその両方) |
無限連鎖講への複数回の勧誘 | 1年以下の懲役または30万円以下の罰金 |
1度でも無限連鎖講へ勧誘したことがある | 20万円以下の罰金 |
ねずみ講の開設や運営にかかわった場合はもちろんのこと、1度でも勧誘したことがある人も処罰の対象に。ただしねずみ講としらずに入会・勧誘した人は、それが証明されれば被害者とみなされて罪に問われないケースもあります。とはいえ、警察の事情聴取を複数回受ける必要があるなど、社会生活への影響は免れません。
ネットワークビジネス(マルチ商法)との違い
ねずみ講と似た構造のビジネスに、ネットワークビジネス(マルチ商法)がありますが、それぞれの違いはどこにあるのでしょうか。
目的の違い
ねずみ講とネットワークビジネスには、目的の違いがあります。ねずみ講は金銭の配当のみを目的としている組織であるのに対し、ネットワークビジネスやマルチ商法は名目上であるにしろ、商品やサービスの販売を目的としています。そこに大きな違いがあるといえるでしょう。
とはいえねずみ講もネットワークビジネスも、商品・サービスが介在するかどうかの違いだけで、購入するために組織に加入し、次に加入した人が買い手を探し、その買い手が又次の買い手を探す…というピラミッド式に組織を拡大していく手法は同じです。
法律違反かどうかの違い
マルチ商法は「連鎖販売取引」と呼ばれ、「特定商取引に関する法律」や「連鎖販売取引に対する規制」によって、業者に様々な規制が課されているものの、ねずみ講とは違って法律では禁止されていません。そこがねずみ講との大きな違いです。しかし行政規制に違反した者は、行政処分の対象となる他、一部は罰則の対象に。
ねずみ講と気が付いたときの対処方法
ねずみ講と知らずに活動していたものの、あるとき何かのきっかけで自分がしていることはねずみ講だと気づいた方は、次のような対処法を速やかに行ってください。
銀行口座を閉じる
入会費の振込用として使っていた銀行口座は、すぐに解約するようにしてください。気づいた後にもかかわらず口座をそのままにしておくと、ねずみ講と認識していながら子会員を勧誘したとみなされて処罰の対象となる恐れがあるためです。
銀行口座を解約するには、名義人本人が窓口に通帳やキャッシュカード、届出印を持参して手続きします。本人確認書類が必要なので、身分証明書も忘れずに持参しましょう。
勧誘した人に注意喚起
ねずみ講だと気が付いたら、自分が勧誘した人に、新たな子会員を勧誘しないように注意喚起を行ってください。ねずみ講は法律に違反している行為だということをしっかりと伝え、これ以上活動すると犯罪者になる恐れがあることを知らせましょう。
警察から事情を聞かれたら
場合によっては警察から事情を聴かれることがあるかもしれません。警察からの任意同行には素直に応じ、ねずみ講だと知らずに入会したこと、知った後にどのような対応をしたかなどを正直に話すようにしましょう。
各種相談窓口への問い合わせ
ねずみ講は違法で、支払った入会金は「不当利得」に該当するとして、返還請求が可能です。しかし返還請求の方法が分からない、どこに訴えたらいいか分からないという方は、次に紹介する窓口に相談することをおすすめします。
国民生活センター(消費生活センター)
国民生活センターやお住いの自治体にある消費生活センターでは、ねずみ講被害をはじめとする消費者問題についての相談を受け付けています。局番なしの118番に電話すれば、最寄りの消費生活センターに自動でつながります。
相談内容によっては、相手組織への働きかけや弁護士の紹介なども行ってくれます。消費者ホットラインは平日9時~17時まで、土日祝日も10時~16時まで受け付けています。
警察の相談専用電話
ねずみ講は無限連鎖講防止法によって処罰の対象となる犯罪です。そのため、ねずみ講の被害は警察に相談することもおすすめです。悪質商法などの相談や悩み事に関しては、相談専用電話「#9110」で受け付けています。受付曜日や受付時間は、お住いの場所によって異なります。
相談内容から無限連鎖講に該当する可能性が高い場合は、警察が捜査を開始します。結果として運営者などが摘発される可能性も。ただし支払った入会金などの損害賠償請求は、民事の領域に当たるため警察では対処できません。別途弁護士に相談する必要があるでしょう。
弁護士事務所
ねずみ講に支払ってしまったお金を取り戻したいという方は、弁護士事務所への相談がおすすめ。入会していた組織がねずみ講かマルチ商法に当たるかの判断は、法律の専門家でなければ難しいでしょう。たとえ違法なねずみ講であっても、個人で交渉するのは高リスクです。うまく言いくるめられて返金請求が難しくなることも。
その点、法律の専門家である弁護士ならねずみ講かどうかの判断ができるのはもちろんのこと、相手に入って相手との構想も可能です。弁護士が介入したということで、相手も返還請求に応じざるを得なくなるケースも。たとえ裁判に発展したとしても、すべて弁護士が代理人として対応してくれるので安心です。
ねずみ講の借金の返済義務と解決方法
ねずみ講でできた借金は返済義務があるのでしょうか。借金解決方法もあわせて、こちらで解説してきます。
ねずみ講が原因の借金は返済義務が残る
ねずみ講がきっかけで消費者金融などからお金を借りた場合、借入理由がどうであれ、借りた人に返済義務があります。たとえ加入していたねずみ講が違法だと判断されても、金融機関に被害者だということを訴えても、借金返済を帳消しにしてもらうことは不可能です。
借金解決方法と手順
たとえ違法なねずみ講だったとしても、消費者金融やローン会社など金融機関からの借金は借りた人に返済義務があります。ではどのように借金問題を解決していけばいいのでしょうか。こちらでは順番に沿ってご紹介します。
現在の借金の内容を精査
まずは現在の借金の内容について、精査してみましょう。いつどこからいくら借金して、残金はいくらか、完済までにどのくらいの時間がかかるかを金融機関ごとに書き出してください。ねずみ講以外の理由でローンを組んでいたりキャッシングしている場合でも、返済すべきものはすべてピックアップする必要があります。
借金返済の先が見えずお困りの方は、こちらの記事を参考にしましょう。
「借金返済の先見えない…5つの原因と見通しを立てる手順・解決方法を詳しく解説」
支出の見直し
借金完済を目指すためには、毎月の支出を見直すことから始めましょう。最も簡単にでき、今後の生活にも役立つからです。毎月の支出の中でも特に見直した方がいいのは、固定費と嗜好品にかかる出費です。固定費は必ず毎月かかる費用なので、これを削減できれば返済金額をアップできます。主に次のような固定費を見直すといいでしょう。
- 家賃
- 公共料金(電気・ガス・水道料金)
- 通信費(固定電話・携帯電話・ネット料金)
- 保険料
- 教育費(塾代・部活動費・習い事代など)
- サブスク料金
次のような嗜好品やレジャー費など、自分が楽しむための費用は、家計に余裕が出るまで控えることをおすすめします。また嗜好品ではないものの、洋服の購入や美容院に行く頻度を落とすと出費を抑えられます。
- 外食
- レジャー
- 飲み会代
- タバコ代
- ギャンブル
- ゲームへの課金
親族や知人に借りる
自力で返済するのが難しい場合は、親族や知人に借りられるか相談してみましょう。借金していることを内緒にしている方は言い出しにくい話題ではあります。しかし自力で解決しようとして借金で借金を返済しようとすると、いずれ借金できる総額が決められている「総量規制」により、自転車操業も不可能に。
気が付くと借金が雪だるま式に増えてしまうため、なるべくなら借金額が少ないうちに相談することをおすすめします。好意により借りられたときは必ず「借用書」を作成し、どのように返済していくか説明しましょう。約束した返済は必ず履行し、信頼関係を失わないような努力も欠かせません。
債務の一本化で金利を引き下げ
複数の金融機関から借金しているという方は、借金を1本にまとめることで、トータルの金利を引き下げられる可能性があります。多くの銀行や消費者金融では、多重債務者向けの「おまとめローン」を扱っています。このようなローンへの借り換えを検討してみてはいかがでしょうか。
貸金業者からの借金の利息は利息制限法や貸金業により、次のように上限が定められています。
借金総額 | 法定年利 |
---|---|
10万円以下 | 20% |
10万円~100万円 | 18% |
100万円以上 | 15% |
数十万円の借金がいくつもある場合、それらを一つにまとめることで100万円以上となり、支払う年利が下げられる可能性が。また支払先を1か所にすることで、支払の管理が楽になります。ただしおまとめローンの場合は、通常のカードローンなどよりも審査が厳しくなる可能性があります。
借金の一本化が可能な金融機関や、審査に通らない場合の対処法については、こちらの記事を参考にしてください。
「借金返済の一本化ができる銀行は?審査に通らないときの対処法も解説」
弁護士に相談
借金の返済が難しくなった場合は、借金問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。先のねずみ講被害を相談する場合は、借金についても一緒に相談するといいでしょう。まずは被害金額を返還できるか検討し、返還できるようならそこから借金を返済できます。
返還までに長い時間かかりそうな場合は、当面の返済が可能かについて判断してもらえ、場合によっては債務整理を検討すべきでしょう。弁護士は債務整理の専門家でもあります、借金総額や個々の状況に一番合った債務整理を提案してくれるでしょう。
ねずみ講被害や借金問題を相談する弁護士の選び方については、こちらの記事を参考にしましょう。
「【相談前・相談時】債務整理を依頼する弁護士の選び方を解説!失敗しない6つの注意点も紹介」
債務整理を検討
どうしても自力での借金返済が難しい方は、弁護士に相談のうえ債務整理を検討しましょう。債務整理は主に、任意整理・個人再生・自己破産の3種類があります。国が認めた借金救済制度として、利息のカットや借金額の大幅減額、一括請求の分割払いへの変更や借金全額の返済義務免除(免責)が可能です。
それぞれに特徴やメリット・デメリットが次のように異なります。
債務整理の種類 | 任意整理 | 個人再生 | 自己破産 |
---|---|---|---|
特徴 |
|
|
|
メリット |
|
|
|
デメリット |
|
|
|
制度上手続きが難しい場合でも、弁護士に依頼することで希望する債務整理ができる可能性があります。どの債務整理が適しているかについては、弁護士に相談したうえで慎重に決めましょう。
特定調停を含む債務整理の4種類について詳しくは、こちらの記事を参考にしてください。
「債務整理の種類は4つ!メリットデメリット・変わること・向いている人を解説」
まとめ
ねずみ講は、金銭の配当を目的とした法律に違反した行為です。ねずみ講だと知りながら勧誘した場合は、処罰の可能性があります。マルチ商法とは仕組みが異なり、最近ではインターネットを介した手口もあります。ねずみ講だと分かったらすぐに銀行口座を解約し、自分が勧誘した人にも注意喚起を行ってください。
被害金を返還したい場合は、消費生活センターや警察の相談窓口、弁護士などに相談するのがおすすめ。ねずみ講に加入するために消費者金融等から借金した場合は、借金の返済義務があります。固定費や遊興費を見直し、借金を一本化するなどして、完済を目指しましょう。
どうしても自力で借金返済ができない方は、親せきや知人にお金を借りる方法が。お金を借りられる相手がいない方は、債務整理を検討しましょう。3種類ある債務整理には、異なる特徴やデメリットがあります。弁護士に相談してアドバイスを求めれば、一番適した債務整理方法が分かるはずです。