- 「元カレに同棲中の生活費を返せと言われた…」
- 「同棲中の金銭トラブルを防ぐ方法はある?」
同棲カップルが別れることになったとき、よくあるのが同棲中の生活費や退去費用、家財道具をどうするかといった金銭トラブルです。果たして同棲中に支払ってもらった生活費を返す必要があるのでしょうか。こちらの記事ではそのようなトラブルでお困りの方に、返済義務の有無や返す必要がないときの対処法などを詳しく紹介。
一口に同棲中といっても、事実婚状態だったり婚約していた場合には、結果が変わる可能性があります。どのような条件があれば認められるかや、慰謝料請求方法についても解説するので、同棲中の金銭トラブルで困っているという方は参考にしましょう。
同棲中の生活費、関係解消後に返済義務はある?
同棲中に相手に支払ってもらっていた生活費ですが、関係解消後に返済の義務があるのでしょうか。
返す約束をしていない場合は返済義務はない
基本的に返す約束をしていない場合には、返済の義務はありません。同棲開始当初に「家賃は折版」「食費は払うから日用品は負担して」などと約束していない限りは、いずれも相手の意思で支払ったものなので、原則として返済義務はないという訳です。
ただし言った・言わないのトラブルになる可能性があるので、LINEやメールなどのやり取りで生活費の負担は不要であるという内容のやり取りがないか探しておくことをおすすめします。
裁判を起こされたら反論する必要が
相手が強硬な態度で「法的な手段に訴える」などと言ってきた場合、最悪のケースでは裁判に訴えられる可能性があります。裁判を起こされてしまったら、いくらこちらに返済義務がなくても反論する必要が。裁判所を納得させられるだけの証拠が求められます。
同棲解消後の財産の清算に決まりはない
同棲解消後の財産の清算について、とくにこれといった決まりはありません。離婚時の財産分与において、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産の分与割合は、基本的に夫婦が半分ずつと決められています。
たとえ妻が専業主婦だったりパート勤務だったりしても、家庭を支えていたという形で貢献したとみなされるため。
しかし同棲解消後の家具や家電、その他の財産の清算に決まりがないため、逆に言うとどのような交渉も可能になります。相手が納得さえすれば、こちらがすべての家財道具を持って家を出るということも可能です。
よくある同棲前後の金銭トラブル例
こちらではよくある同棲前後の金銭トラブルについて紹介していきます。主に次のようなことで金銭トラブルが発生します。
- どちらか一方だけが家賃・公共料金・生活費などを負担していた場合、過去の分を相手に請求できるか
- 一緒に貯めていた結婚資金や貯金の分配について
- 同棲していた部屋を引き払う場合の費用(敷金・違約金・修繕費など)の分担割合
- どちらか一方だけが出ていくことになった場合の引っ越し費用や初期費用をどうするか
- 家具、自動車、家電製品などをどちらが引き取るか
- 互いの間で貸し借りしていたお金の清算
- 浮気や暴力が原因で同棲解消した場合、慰謝料を請求できるか
- 過去にもらったプレゼント代を返せといわれた
これらのトラブルにおいては、後に詳しく説明しますが返済の義務があるものとないものに分かれます。また事実婚状態か婚約済みかでも、結果が変わってくるので注意が必要です。
彼氏に借金があることが発覚した後の対処法や判断のポイントは、こちらの記事を参考にしてください。
「彼氏に借金があることが発覚!直後にすべき7の対処法と判断のポイント、借金問題解決法とは」
返せという不当な要求への対処法
返済義務がないのに返せと不当な要求をされた場合、次のような対処法を取ることができます。
話し合いを試みる
まずは相手と誠実に話し合ってみましょう。相手としてはお金が欲しい訳でなく、感情的なしこりがあってお金を請求している可能性もあるからです。別れを言い出した側の態度に誠意を感じられなかった場合などに、このようなトラブルが起こりがち。
相手の気持ちを聞いたうえで必要なら謝罪して、法的に返済義務がないことを冷静に説明すれば、相手も納得して解決できる可能性があります。
電話に出ない
こちらに返済義務がないことが明らかで、証拠も確保している場合は、相手からの連絡に応じる必要はありません。相手によっては同棲中の生活費を返せと要求し、これに対して録音しながら「分かった」と言わせようとするケースも。明らかに了承したとみなされる返事をしてしまうと、それだけで新たな契約が成立したことになるので注意しましょう。
付きまといや頻繁な連絡は警察に相談
電話やLINEでの連絡を頻繁にしてくる、家の近所で待ち伏せするなどの行動がエスカレートしてきた場合は、ストーカー行為として警察に相談した方が良いでしょう。とくに暴行や脅迫行為によって、あなたの身体や名誉が傷つけられる被害に遭った場合には、早急に警察に相談してください。
個人間とくに男女間のお金のトラブルでは、次のような犯罪が発生する可能性があります。
- 暴行罪
- 傷害罪
- 脅迫罪
- 恐喝罪
- 住居侵入罪
- 器物損壊罪
- 名誉毀損罪
このような犯罪が成立し実害が生じている場合、警察による対応が期待でいます。被害届や告訴状を警察に提出するようにしましょう。
パパ活でお金返せと言われたときの対処法については、こちらの記事を参考にしましょう。
「パパ活でお金返せと言われたら…返済義務の有無&対処法を解説!弁護士に相談するメリットも教えます」
接近禁止命令の申立て
場合によっては「接近禁止命令」や「電話等禁止命令」を、裁判所に申立てることを検討しましょう。これらはストーカー規制法に基づく手続きで、申立てが認められると6カ月間は以下のような行為が禁止されます。
- 面会を要求すること
- 身辺を付きまとうこと
- 自宅や勤務先の付近をはいかいすること
- 電話やメールを連続して発信すること
- 午後10時~午前6時までの間に電話やメールをすること
- 著しく乱暴な言動をすること
この命令に違反すると刑事罰の対象となります。ストーカー規制法に基づく裁判所の命令は、事実上の強制力が期待できます。
相手への対応は弁護士に依頼
返済義務がないことが明らかな場合、相手への対応は弁護士に依頼することをおすすめします。付きまといなど単なる嫌がらせは、弁護士からの受任通知で収まることが期待できます。とくに別れた相手とつながっていたいという想いから請求している場合は、弁護士が間に入ることで本人の熱が冷める可能性が高いです。
こじれた関係の中での当事者同士のやり取りは、どうしても感情的になりがち。まとまる話もまとまらなくなります。しかし弁護士に依頼することで、不当請求を止めるように警告し支払い義務がない旨を冷静に説明できます。結果として事態が収まるケースが多いでしょう。
返済義務があるもの・ないものについて
こちらでは同棲後の金銭トラブルに関して、返済義務があるものとないものに分けて解説していきます。
返済の必要がないもの
同棲解消後に返済義務がないのは、次のようなものです。
貰ったもの
相手から貰ったものに関しては、基本的に返す必要がありません。「貰った」「あげた」という行為は、法律上の贈与契約に該当します。贈与契約は、あげる側の「あげる」という意思表示と、貰う側の「貰う」という意思表示によって成立します。
民法549条 贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
引用:民法|e-GOV法令検索
そして贈与契約はあげた側の一存では取り消せないので、「やっぱり返して欲しい」と言われても応じる必要はありません。通常交際中の男女間では、プレゼントやご馳走をするのにわざわざ贈与契約書などの書類を作成しません。これを「書面によらない贈与」といい、次のような例外が設けられています。
民法550条 書面によらない贈与は、各当事者が解除することができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。
つまりたとえあげる・貰うの意思表示が成立してとしても、当事者それぞれが後で「やっぱりやめた」ということも可能になります。ただしすでにあげてしまったものについては、後で気が変わってもそれを取り返すことができません。
厚意でお金を出してくれていた場合
相手の厚意でお金を出してくれていた場合も、贈与に当たるため基本的に返済の義務はありません。例えば同棲中の生活費を負担する場合、相手のために見返りを求めずに支出する場合です。お金を出してもらう側も、相手の厚意として受け止めてお金を出してもらうはず。このようなときは、2人の間で暗黙の裡に贈与契約が成立しているとみなされます。
こちらが「後で返すね」と言っても相手が「無理しなくてもいいよ」と言って支払ってくれたケースもあるでしょう。この場合にはお金の貸し借り「金銭消費貸借」についての合意がなく、贈与に該当するとみなされるので、こちらも返済の義務はありません。
交際中の男女間では、約束の内容があいまいだったり、時間が経つにつれて変化することもよくあります。「返してもらう」「返す」という明確な合意がない限り金銭消費貸借契約は成立せず、原則として贈与に当たると考えてもいいでしょう。
代理権のある相手に脅迫まがいに要求されたもの
元交際相手への返済義務があり、相手の現在のパートナーから返済を要求されるケースもあるでしょう。このようなケースでは、現在のパートナーが代理権を持っている場合を除いて、お金を要求されたとしても返済の義務はありません。
代理権があるケースとは、元交際相手が現在のパートナーに対して金銭の取り立てを依頼し、委任状を提示した場合です。現在のパートナーというのも名ばかりで、反社会的勢力のような人が脅迫してくるケースも。たとえ元交際相手への支払い義務があり、代理権がある人がいた場合でも、脅迫や恐喝などを行った場合には、その契約を取り消すことが可能です(代理行為の瑕疵)。
犯罪が成立する可能性があるので、警察や弁護士に相談してしかるべき対処をしましょう。
経済的DVが原因の借金を解決する方法は、こちらの記事を参考にしてください。
「経済的DVが原因の借金を返す方法|弁護士に相談して根本的解決を」
返さなければならない可能性があるもの
次に紹介するのは、返済の義務がある可能性が高いものです。
借りていたお金
たとえ恋人同士でも、相手からお金を借りて後で返す約束をしていた場合、返済する義務があります。たとえ契約書を交わしていなくても、金銭消費貸借契約が成立するからです。例えば仕事で使うPCを買うお金が不足して「必ず返すから10万円かしてほしい」と頼んで借りていた場合には、5万円を返済する義務があります。
たとえ別れるまで返済を要求されなかったとしても、相手が返済を待っていただけにすぎません。返済するように要求されたら返済しなければならないお金です。
詐欺による贈与
詐欺による贈与もまた、返済の義務があります。交際中の男女間の詐欺の典型は、「結婚詐欺」です。結婚する意志がないのに結婚をちらつかせて異性に近づき、相手をだまして金銭を巻き上げたり、返済の意思がないのにお金を借りたりするような行為です。
最近では出会い系サイトやマッチングアプリを利用した、婚活詐欺や恋愛詐欺が行われるケースも。金品を渡した側にしてみれば、騙されなければ贈与しなかったわけなので、「あげる」という意思表示には瑕疵(かし)があったことになります。詐欺を理由に贈与契約を取り消すことができます。
ただし裁判になったときには、取り消しを主張する側が詐欺を立証しなければならないのがルールです。詐欺に該当する行為についての立証のみならず、相手の故意(誤解することを知りながらあえて行うという意思)も立証する必要が。この点では交際中の男女間ではあいまいなやり取りも多く、故意の実証は難しいのが実情です。
意思表示に問題があった
意思表示に問題があった場合、返済義務が生じる可能性があります。例えば渡した側が「あげるつもりがなかった」と思っていたのに、2人の関係上「あげる」と嘘をついてしまった場合などです。このように本心でないことを承知で意思表示することを「心裡留保(しんりりゅうほ)」と言います。この場合「あげる」といった側は、その嘘に従って履行しなければならないのが原則となります。
しかし相手が嘘をついていると気づきながら受け取った場合、受け取った側があげた側の真意を知っていた、または知り得た場合、法律効果は無効となります。
別れたら返す等の条件があった
別れたら返す等の条件があった場合、別れた時点でそれまでの贈与契約が無効になる可能性があります。このような条件のことを「解除条件」といいます。仮に解除条件を付けていた場合、その条件についての立証責任は贈った側にあります。
また収入に余裕がないなどの理由で後で返す約束をして立て替え払いをしてもらった場合には、金銭消費貸借契約が成立しているので返済義務があります。
同棲解消後に「払う」と言ってしまった
同居解消後に請求を受けて「払う」と言ってしまった場合には、その時点で贈与契約を合意解除したことになり返済義務が生じます。贈与契約は片方の意思では取り消せないものの、双方が合意すれば解除可能です。贈与契約の解除後は、貰ったものを返さなければならないでしょう。
「支払を待って欲しい」「もう少し減額して欲しい」と申し出た場合も、支払い義務自体を認めていることになるため、支払わなければならないでしょう。たとえ支払うつもりがなくても「払うからもう連絡してこないで」といった場合も、「返す」と言った時点で支払い義務が発生します。
損害賠償として支払い義務が生じるもの
相手と婚約していたり内縁関係状態だったという場合には、不当に婚約を破棄したり事実婚状態を解消したりすると、損害賠償義務が生じます。損害賠償義務には、精神的損害に対する慰謝料の支払い義務と、財産的損害に対する賠償義務の二種類があります。
ただしこの場合、後で詳しく説明しますが事実婚状態であるとの証明や婚約状態と認められるかで請求できるかが変わってきます。
同棲解消時に生じる金銭トラブルについて
同棲解消時に生じる金銭トラブルについて、判断の基準や請求方法について解説していきます。
事実婚・内縁関係にあるかどうかで結果は変わる
損害賠償義務があるかを判断する上で、事実婚や内縁関係にあるかどうかで結果が変わってきます。事実婚・内縁関係とは、男女が婚姻生活を送る意思を持って夫婦同然の生活を営んでいるが、婚姻届けを提出していない状態のことを指します。具体的に次のような事情がある場合には、事実婚・内縁関係が成立する可能性が高いでしょう。
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li>生計を一緒にしていて共有財産を築いている
- 相当の期間一緒に暮らしている
- 2人の間に子どもがいる
- 片方が専業主婦(主夫)として家事に専念している
- 周囲に配偶者としてあいさつしている
- 互いの親戚の冠婚葬祭にパートナーとして出席した
上記のいずれの事情にも該当しない場合、事実婚・内縁関係とみなされる可能性は低く、単なる同棲中の恋人同士の扱いになるでしょう。
婚約関係にあったかで判断が分かれる
婚約関係にあったかでも、判断が別れます。婚約とは男女が将来結婚する約束をする契約のことで、理論上は双方が「結婚しよう」と約束するだけで成立します。しかし本当に結婚する意志があったかは、本人にしかわかりません。そのため裁判などでは次のような事情があれば、婚約が認められるでしょう。
- 婚約指輪を贈っていた
- 結納金を渡していた
- 結婚相手として互いの親に挨拶していた
- 双方の親族が出席した結納を交わしている
- 結婚式場を予約した
- 新居の下見をしていた
- その他結婚に向けて正式な準備を進めていたことが分かる事情
同棲解消時に請求できるもの
同棲解消時に請求できる金品には、次のような種類があります。
借金
同棲相手とお金の貸し借りがあった場合、事実婚状態・婚約関係にかかわらず返済を求めることができます。ただし借金の返済を求めるときには、お金を貸したという客観的な証拠の有無が重要に。証拠がなければ相手に「そんなお金は借りていない」と開き直られる可能性があるためです。
借金の借用書があれば証拠となります。またLINEやメールでのメッセージのやり取り、借金に関する会話の録音なども証拠となるでしょう。
結納金・贈った婚約指輪
相手に結納金や婚約指輪を渡していた場合、関係解消後に返還を要求することができます。というのも相手に結納金や婚約指輪を渡すということは「将来結婚することを条件にしている」という時点で、通常の贈与契約と異なるため。このように送った側が何らかの債務を負担することを条件とする贈与契約を「負担付贈与」といい、通常の贈与契約と区別して扱われます。
結納金や婚約指輪を贈っておきながら結婚にまで至らなかった場合、結婚という条件が履行されていないとみなされ、これらの返還を請求できる可能性があります。ただし贈った側の落ち度により婚約破棄となった場合は、条件が履行されなかった原因は贈与側にあるとみなされ、原則的に返還を求めることはできません。
財産分与
事実婚・内縁関係にあったと認められた場合、関係解消によって法律婚と同様に財産分与を求めることができます。過去の判例(最高裁決定平成12年3月10日)でも、事実婚の財産分与について次のように認めています。
内縁の夫婦について、離別による内縁解消の場合に民法の財産分与の規定を類推適用することは、準婚的法律関係の保護に適するものとしてその合理性を承認し得る
引用: 財産分与審判に対する抗告審の取消決定に対する許可抗告事件|最高裁判所判例集
これにより、事実婚の場合も法律婚の夫婦に準じての財産分与が認められます。事実婚を開始してからの収入やそれにより形成した預貯金・株式・不動産などの共有財産はどちら名義であっても分与の対象に。一方で自分の親族からの相続財産や事実婚以前に貯めた貯金は「特有財産」として分与の対象外になります。
話し合いによって解決できない場合は、法律婚の場合と同じように調停や裁判で決着をつけることになります。
相手が原因の場合、慰謝料請求ができる可能性
相手の浮気や暴力による関係解消、相手が原因の婚約破棄の場合には慰謝料請求が認められる可能性があります。通常、単なる恋人同士の関係では、片方の浮気で同棲が解消されても慰謝料を請求することはできません。
しかし事実婚・内縁関係の場合、法律上は「準婚関係」とみなされ慰謝料請求が可能です。また婚約関係の状態にあるカップルの双方には貞操義務があるので、どちらかの浮気が原因で婚約解消に至った場合には、慰謝料請求することができます。
不貞行為の有無が焦点
事実婚状態や婚約関係で慰謝料請求が認められるためには、不貞行為の有無が焦点となります。具体的にはパートナー以外の異性との間に、自由な意思のもとに性的関係を結ぶこと。一時的な関係か継続した関係かは問いませんが、デートしただけや手をつないだだけでは不貞行為とはみなされません。
法律婚における不貞行為に比べると、慰謝料金額は低くなる傾向があります。また次のような要素によって金額が変動する可能性があります。
- 事実婚・婚約関係の期間の長さ
- 不貞行為の期間の長さ
- 浮気相手が妊娠・出産していた
また結婚を想定して退職していたなど、不貞行為をされた側の精神的苦痛が増すような事情がある場合にも、慰謝料金額が増額になる可能性が高いでしょう。
婚約破棄の場合も請求できる
婚約破棄の場合にも、慰謝料を請求できる可能性があります。次のような条件を満たしていると、慰謝料を請求できるでしょう。
- 婚約成立を客観的に証明できる
- 正当な理由なく婚約を破棄された
正当な理由なく一方的に婚約破棄された場合、婚約破棄を言い出した側が慰謝料を支払うことになります。逆に次のような正当な理由がある場合には、婚約破棄されても慰謝料が請求できない可能性が高いでしょう。
- 不貞行為があった
- DVやモラハラ行為があった
- 失業や借金のことを隠していた
- 相手が精神病や身体障碍者になった
- 相手に性的に問題があった
- 相手が行方不明になった
慰謝料請求の方法
不貞行為を行った同棲相手に慰謝料を請求するためには、「事実婚(婚約)関係」と「相手の不貞行為」それぞれの証拠を確保して証明する必要があります。事実婚・内縁関係を証明するには、次のような証拠が必要です。
- 「妻(未届)」または「夫(未届)」と記載された住民票
- 事実婚をするにあたって取り決めた内容を記した公正証書
- 賃貸借契約書・通帳・公共料金の支払い履歴
- 互いの親戚の冠婚葬祭に出席したことを示す招待状や写真、動画など
- 家族・友人・知人・近所の人の証言
また相手の不貞行為を証明するには、次のような証拠を集めてください。
- 2人でラブホテルに出入りしたことが分かる写真や動画
- 性行為中を撮影した写真や動画
- ラブホテルの領収書
- 相手とのメッセージのやり取り
- 不貞行為を認めた音声データ
上記の証拠を集めた後は、直接相手と交渉して慰謝料請求する旨を伝えてください。相手に拒否されたときには、内容証明郵便で請求するという方法があります。それでも相手が応じないときには、弁護士に依頼して相手との交渉を任せてください。
弁護士を通してもダメなときには家庭裁判所に「慰謝料請求調停」の申し立てを行うことができます。調停が不成立になった場合には、「慰謝料請求訴訟」へと移行します。調停・訴訟いずれの場所でも、不貞があった証拠や事実婚を示す証拠が必要です。
法的な知識や裁判所での手続きの経験がないと難しいため、こちらも弁護士に依頼して手続きを進めるようにしましょう。
同棲にまつわる金銭トラブルのよくある疑問
同棲にまつわる金銭トラブルで、よくある疑問や質問にお答えしていきます。
置いてきたプレゼントは取り返せる?
相手にもらったプレゼント、家を出ていくときに置いてきたので取り返したいと考える人がいるかもしれません。確かに贈与されたものは相手に返す必要がありません。しかし家を出た今、プレゼントを所有しているのは相手方になります。
黙って持ち帰った場合には、相手の所持を侵害したとみなされて、窃盗罪(刑法第235条)が成立する可能性があります。また相手の許可なく部屋に入ると、住居侵入罪(刑法第130条)に当たります。このような場合は、相手に連絡して着払いで送ってもらうようお願いするのが無難です。
逆に相手が荷物を置いて家から出て行った場合にも注意が必要です。置いていった荷物の所有権は、家を出て行った側にあるので、無断で捨ててしまうと器物破壊罪(刑法第261条)が成立する恐れがあります。このようなケースでも、相手に連絡したうえで着払いで送ってしまうのがベストです。
支払い義務があるが払えないときはどうする?
支払い義務があることが分かったものの、様々な理由で今すぐに支払えないときにはどうすればいいのでしょうか。金銭トラブルでは、当事者同士が合意すれば支払方法や支払額を自由に決められます。払えない理由を正直に話し誠意をもって交渉すれば、支払期間の延長や分割払い、減額に応じてもらえる可能性も。
それでもどうしても支払えないときには、債務整理で解決可能です。カードローン等の借金がある場合も、法律にのっとった手続きで借金を減免できます。もちろん同棲相手など個人間のお金の貸し借りで生じた債務(借金)も債務整理の対象です。
風俗で借金返済を考えている方は、こちらの記事を参考にしてリスクと解決方法を知りましょう。
「風俗通いの借金がある男性&風俗で借金返済を考える女性必見!リスクと解決方法を解説」
個人間の借金を債務整理するときの注意点は?
同棲相手や知人、親せきや友人など個人から借りたお金についても債務整理は可能ですが、いくつかの注意点があるので覚えておきましょう。
任意整理は効果が得られない可能性
任意整理とは債権者と直接交渉し、利息や遅延損害金をカットしたうえで、3年(36回)~5年(60回)で分割して支払うことができる手続き。そもそも個人間の借金では利息や遅延損害金を設定していないことが多く、元金の減額交渉がうまくいかないと手続きそのものができなくなります。
そもそも任意整理は債権者が交渉に合意しないと、効果が得られない方法です。債権者が交渉条件を認めず、一括返済しか受け付けないという場合には、任意整理は失敗に終わるでしょう。
任意整理しない方がいいケースについては、こちらの記事を参考にしてください。
「任意整理をしない方がいい14のケースとありがち誤解とは?悩んだときの解決方法も解説」
取り立てがストップできない
貸金業者からの借金を債務整理しようと思って弁護士に依頼すると、弁護士が送付した「受任通知」が届いた後は、債権者は取り立て行為ができなくなります。これは貸金業法第21条に規定されているためで、これに違反すると行政処分などの罰則が科せられます。
しかし個人間の借金では、貸金業法による取り立て規制がないため、弁護士に依頼した後も取り立てを受ける可能性があるという訳です。
債務整理したらどうなるかについて詳しくは、こちらの記事を参考にしましょう。
「債務整理したらどうなる?デメリットや影響を把握して、後悔しない借金解決方法を!」
優先的に返済すると債務整理ができなくなる
元同棲相手からの借金だからと、債務整理の手続きを始めた後も返済を続けていると、手続きそのものが失敗する可能性があります。裁判所を通す手続きである個人再生や自己破産では、特定の債権者にのみ返済する行為を「偏頗弁済(へんぱべんさい)」といい、次のような不都合が生じる可能性があります。
- 自己破産の免責不許可事由となり免責が認められない
- 免責が認められたとしても管財事件となり裁判所費用がかかる
- 返済を受けた側は破産管財人に返さなければならない
- 個人再生では再生計画案が不認可となり、手続きが失敗に終わる
これ以上相手に迷惑をかけられないからと、個人再生や自己破産の手続きを開始してからも返済し続けていると、余計に費用がかかってしまったり、手続きが失敗に終わる可能性があります。支払不能状態から偏頗弁済とみなされることがありますが、少なくても破産手続開始の申立をした後は一切の返済をしないようにしましょう。
偏頗弁済がバレるかについてや回避方法については、こちらの記事を参考にしましょう。
「偏頗弁済はバレる?個人再生・自己破産でやりがちな例とバレた後で起こること、回避術とは」
金銭トラブルを未然に防ぐ方法はある?
同棲相手との金銭トラブルを未然に防ぐには、同棲を始めるときにお金についてのルールを決めるのがおすすめです。これから一緒に暮らすのに、トラブルになった後のことを話し合うのは気が進まないかもしれませんが、最初にルールを作っておけば話し合いがスムーズに進むケースが多いです。
具体的には、次のようなルールを作るといいでしょう。
- 生活費は共有の財布から出す
- あらゆる生活費を折半する
- 別れを言い出した方が退去費用を支払う
- 別れたときに家財道具をどう分けるか
まとめ
同棲解消後に相手に生活費を返せと言われた場合でも、こちらが返すと約束をしていないときには返済の必要がありません。それでも返せと不当な要求をしてきたときには、話し合いで解決を試みましょう。それでも執拗な連絡や付きまといがあるときには、警察に相談して接近禁止命令を出してもらったり弁護士に対応を依頼してください。
基本的に貰ったものや相手の厚意により支払ってくれていたものに関しては、返済の義務はありません。しかし返す約束をして借りていたものや「別れたら返す」等の条件があった場合、「返す」と言ってしまったものに関してや損害賠償請求が認められるものには返済義務が生じます。
同棲解消時に請求できるものとできないものがあり、事実婚状態かや婚約していたかで請求できるかが変わってきます。同棲解消時に金銭トラブルにならないためには、同棲を始めるときにお金についてのルールを決めるのがおすすめ。それでもトラブルを回避できないときには、弁護士など法律の専門家に相談しましょう。