- 「自己破産を考えているんだけどどんなデメリットがあるか知りたい」
- 「自己破産すると会社をクビになるってホント?」
自己破産を考えている人の中には手続きによりどんなデメリットが発生する知りたいという方も多いのではないでしょうか。また巷の噂に惑わされて自己破産を躊躇している人もいるかもしれません。こちらの記事では自己破産のデメリットを中心に、ケース別のデメリットなどを詳しく解説。
また自己破産のデメリットに関する間違った情報や誤解していることをお教えします。自己破産は国が法律で定めた借金を免責するという制度です。正しい自己破産の知識を得て、余計なストレスや心配から解放されましょう。
自己破産の主なデメリット
まずは自己破産するとどんな状況の人でも当てはまるデメリットを紹介していきます。
財産を処分される
持ち家や貯金などの財産を持っている方が自己破産すると一定以上の財産は処分され、お金に変えられて借金の相手(債権者)への返済に充てられます。処分される財産・処分されない財産については以下の通りです。
処分される財産
自己破産で処分される財産については細かい基準があり、次のような財産が該当します。
- 土地や家などの不動産
- 99万円以上の現金
- 20万円以上の預貯金
- 換価すると1点当たり20万円を超える財産(車・生命保険・宝石など)
ただ処分される財産の額や基準については、手続きする裁判所によって多少異なります。財産をお持ちの方が自己破産する場合は、前もって裁判所がどんな基準で処分するかについて、弁護士などに確認しましょう。
処分されない自由財産
自己破産では「自由財産の拡張」によって、法律上は処分されてしまう財産でも裁判所の判断で処分されない自由財産として取り扱ってもらうことができます。自由財産の拡張によって処分されない財産には次のようなものがあります。
- 99万円以下の現金
- 20万円以下の残高の預貯金
- 処分見込み額が20万円以下の財産
- 家財道具
- 賃貸の敷金債権
- 電話加入権
- 見込み額が160万円以下の退職金債権(160万円を超える場合は7/8)
- 差し押さえ禁止の動産・債権
- その他破産管財人が処分しないと認めた財産
自己破産すると財産が処分されるとはいえ、生活必需品や最低限の現金まで処分されてしまっては、自己破産後の生活がままなりません。そこで上のような財産は処分されなくてもいいことになります。また自己破産手続き後に手に入れた財産は、処分されることがないので安心してください。
車が不可欠な地方にお住いの方は、新車で購入してから5年以上経過していると売却見込み額が20万円以下になるため、処分されることはありません。また給料を差し押さえられている場合でも、自己破産すると差し押さえの効力はなくなります。保険類も解約返戻金さえなければ引き続き払い続けられるので、いざというときも安心です。
ブラックリストに載る
ブラックリストに載るのは、自己破産をはじめとする債務整理に共通するデメリットです。ブラックリストというのは俗称で、3つある「信用情報機関に事故情報として登録されること」を指します。事故情報として登録されるのは債務整理したときだけでなく、返済が3カ月以上滞納したときや代位弁済(保証会社が代わりに返済すること)の事実、公共料金や携帯料金の滞納の情報も含まれます。
ブラックリスト掲載期間
事故情報として登録される期間は信用情報機関ごとに異なりますが、おおむね5年~10年の間です。いつからいつまでの期間や年数は次の通りです。
信用情報機関 | 掲載される期間 | 年数 |
---|---|---|
株式会社シー・アイ・シー(CIC) | 契約期間中および契約終了後 | 5年間 |
日本信用情報機構(JICC) | 契約継続中および契約終了後 | 5年以内 |
全国銀行個人情報センター(KSC) | 破産手続開始決定等を受けた日から | 10年を超えない期間 |
このうち一番長いのは、銀行や信用金庫などの金融機関が加盟しているKSCの10年です。ただし上の3つの機関は独自のネットワークにより、それぞれに保有している情報を共有しています。
一つの情報機関の掲載期間が終わったからとローンやクレジットの申し込みをすると、他の情報機関からの情報で申し込みが通らない可能性も。そのため期間明けに借金の申し込みをする場合は、必ず3つの機関全てから開示請求を申請し、事前に事故情報が消えているか確認しましょう。
ブラックリストに載るとできないこと
いわゆるブラックリストに載ると、生活の上でさまざまな出来ないことが生じます。
- クレジットカードが利用できない・新規で作成できない
- ローンが組めない
- 分割払いの買い物ができない
- スマホや携帯電話の分割購入ができない
- 保証人になれない
- 家賃保証会社が付いた賃貸物件を借りられない
信用情報は主に借り入れや返済に関する情報を取り扱っているため、ローンが組めなかったりクレジットカードが利用できなくなったりします。またいざというときに債務者に代わって返済を保証する保証人や、債務者と同じ返済の義務を負う連帯保証人にもなれません。
債務整理をすると載るブラックリストについては、こちらの記事を参考にしてください。
「債務整理するとブラックリストにのる?気になる『ブラックリスト』についてすべてお答えします!」
官報に公告される
自己破産すると官報に公告されるのもデメリットです。官報とは国が刊行している機関紙のようなもので、法律や政令の決定事項のほか、裁判所による公告も掲載されます。自己破産は裁判所を通す手続きのため、裁判所公告として自己破産した人の氏名や住所などが載せられるという訳です。
行政機関の休日以外は毎日刊行され、裁判所内にある官報販売所や特定の書店のほか、インターネットで無料で閲覧が可能です。
官報に載るタイミング・期間
自己破産の内容が官報に公告されるタイミングは以下の2回となっています。
- 破産手続き開始決定後
- 免責許可決定後
インターネット版なら、発行日の日から30日以内が無料で閲覧できます。
官報をよく見る人
国が毎日刊行している機関紙といえ、官報をよく見る人はごく限られた特定の団体や個人に限られるので、官報によって自己破産のことがバレる可能性は限りなく低いでしょう。というのも一般の人は官報という存在自体知らない人も多く、毎日たくさんの内容が掲載されているものを隅から隅までチェックする人はまずいないからです。
官報をよく見る人は信用情報機関や税務署職員、一部の金融業者や自治体の納税担当者などです。「官報に載ってしまい、会社や周りの人に自己破産のことがバレるのでは?」と心配する人がいるかもしれませんが、官報によってバレることはほとんどないので安心してください。
資格・職業の制限がある
自己破産すると特定の職業や資格に制限がかかります。制限がかかっている間はその仕事ができないので、休職したり部署異動するなど何らかの対処が必要です。
制限がかかる資格・職業
制限がかかるのは主に次のような資格や職業の人です。
- 士業(弁護士・税理士・司法書士・行政書士・公認会計士・弁理士など)
- 生命保険募集人
- 証券会社外務員
- 警備員
- 質業
- 有価証券投資顧問業者
- 宅地建物取引業者
- 旅行業者
- 建設業者
このほかにも取締役など会社の役員になっている人は、破産手続きが開始されると法律上は強制的に解任となります。引き続き役員であるにはすぐに再任の必要があります。
制限される期間
とはいえ自己破産してからずっと仕事ができないわけではありません。上のような資格や職業が制限されるのは期間が決まっていて、自己破産の手続きが開始されてから免責が決定するまでの間です。自己破産の方法にもよりますが、早ければ3カ月、遅くとも6カ月以内には制限が解除されるでしょう。
資格が制限されると一旦は登録が削除されますが、免責が決定した後で再度登録し直せばまた仕事を再開できます。
免責不許可事由がある
自己破産には、法律で借金の免責が認められない「免責不許可事由」という項目があります。これは自己破産について決められた破産法に規定されています。
免責不許可事由の内容
免責不許可事由に該当するのは全部で11項目です。具体的には次のような行為が当てはまります。
- 借金の原因が浪費やギャンブル
- 特定の債権者にだけ偏って返済した
- 手続きするのに当たり財産を隠した
- 裁判所に提出する債権者一覧を改ざんした
他にも、自己破産の手続きするにあたり故意に手続きを妨害したり、裁判所や破産管財人に対する隠ぺいや虚偽の報告なども免責不許可事由に当たります。
自己破産で免責が下りない「免責不許可事由」の詳しい内容は、こちらの記事を参考にしましょう。
「自己破産の免責不許可事由の11項目を解説!免責が下りなかったときの対処法とは?」
裁量免責とは
ただしたとえ免責不許可事由に該当しても、裁判所の判断によって免責が認められる「裁量免責」という制度があります。初めての自己破産だったり、自己破産について反省し素直に説明する姿勢が認められれば、ほとんどのケースで裁量免責が認められます。なのでたとえ免責不許可事由となる行為があったとしても諦めず、弁護士などに相談することをおすすめします。
【状況別】自己破産のデメリット
全ての人に当てはまる自己破産のデメリットが分かったところで、こちらでは次のような状況別のデメリットについて解説していきます。
- 管財事件で自己破産した場合
- 家族がいる人の場合
- 連帯保証人がいる場合
- 自営業者の場合
それぞれの状況ごとにどんなことがデメリットになるのか見ていきましょう。
管財事件で自己破産した場合
自己破産には破産開始手続と同時に免責が決定される「同時廃止」と破産管財人が付いて手続きする「管財事件」、裁判所の運用により手続きにかかる費用が抑えられる「少額管財」の3種類があります。このうち財産を持っている人がその財産を調査・処分・分配される「管財事件」や「少額管財」では次のようなデメリットがあります。
郵便物が転送される
管財事件や少額管財になると、手続きが終わるまでの一定期間郵便物が自宅ではなく、破産管財人のもとに転送されます。これは破産者に隠し財産や申告し忘れた債権者がいないかチェックするためのもので、破産管財人が郵便物の中身をチェックした上で問題なければ本人に転送されます。
もしも家族に破産することを隠していると、開封済みの郵便物が破産管財人から届くことを不審に思うかもしれません。ただし郵便物が転送されるのは手続き中の一定期間に限られ、手続きが終わると不通に配達されます。また宅急便は転送の対象外です。
海外旅行や引っ越しが制限される
管財事件による自己破産では、長期間の海外旅行や引っ越しが制限されます。これは裁判所や管財人がすぐに本人と連絡が取れるようにするためや財産隠し、逃亡を防ぐ目的で行われます。ただし本当に必要な移動や転居に関しては、連絡先さえ確保できれば裁判所から許可が出るのでご安心を。また手続き完了後は、今までと同様に旅行や引っ越しもできるようになります。
家族がいる人の場合
自己破産は個人に対しての手続きなので、家族に直接の影響は及びません。しかし一緒に住んでいる家族や本人には何らかのデメリットが生じる可能性があります。
夫や妻に知られてしまう
一緒に住んでいる家族がいる人は、とくに配偶者に自己破産のことを知られる可能性が高まります。「家族に自己破産のことを内緒にしたい」と考える人がいるかもしれませんが、一緒に暮らす家族がいると隠すことは困難です。というのも自己破産は、主に次のような状況で同居家族にバレやすくなります。
- 家族が保証人になっている
- 家族からお金を借りている
- 同居家族に収入がある
- 弁護士や裁判所からの郵便物
家族が保証人になっていると保証人に借金の返済が移るため、債権者からの催促が来て自己破産したことがバレるでしょう。また家族からお金を借りていると、その家族も債権者ということで裁判所から通知が届きます。生計を共にしている家族に収入があると、自己破産を申立てるときに給与明細や源泉徴収票といった書類の提出が必要になります。
上のような理由から一緒に住んでいる家族に内緒で手続きを進めることはほぼ不可能なため、あらかじめ家族には自己破産のことを伝えておくのが最良です。
その他に自己破産するとどんなケースが家族にバレやすいかについては、こちらの記事を参考にしてください。
「自己破産すると家族にバレる?バレる8つのケースと対処法を紹介!」
持ち家や車が処分される
マイホームや購入したばかりの車があると、それらが裁判所によって処分されて債権者に分配されます。つまり競売にかけられることになり車や家を手放さなければなりません。子どもの転校や引っ越しなどで家族への影響は避けられず、生活が不便になったり今までの生活を送れないことも。また車が欠かせない地域に住んでいる場合、買い物や子どもの送り迎えなどに影響が出ます。
子どもの奨学金の保証人になれない
子どもの進学で奨学金を利用することを考えている人は、奨学金の連帯保証人になれません。この場合は、他の家族や親せきなどに依頼するのが通常ですが、機関保証を利用するという手もあります。
機関保証とは最も多くの奨学金を取り扱っている学生支援機構の制度で、人的保証がなくても奨学金が借りられるというもの。保証料を支払って保証会社に保証してもらうという制度ですが、親が保証人になれない場合や他に保証人になってくれる人がいないときでも奨学金を利用できるようになります。
連帯保証人が付いている場合
免責される借金に連帯保証人や保証人が付いていると、そちらに様々な影響が生じます。
返済義務が保証人に行く
自己破産をすると債務者本人は借金返済の義務から逃れられますが、保証人や連帯保証人が付いている借金では、代わりに保証人の方に借金返済の義務が移ります。よって自己破産後は保証人の方に、貸金業者から返済の催促や取り立てが行くようになります。
もともと保証人は、借主が返済できなかったときに主債務者の代わりに返済を保証するために存在しています。自己破産後に債務者が保証人に対して返済を求めるのは当然の権利で、保証人はこれを拒否できません。またこのとき保証人は借金の残債を一括で返済しなければならないことを覚えておきましょう。
「今まで分割で返済できたんだから、保証人も分割で出来るのでは?」と思っている方がいるかもしれませんが、元々の債務者の返済が滞ったことで分割で返済できるという「期限の利益」が消滅したため、結果として一括で支払う必要が生じます。保証人にはこうした責任が生じる可能性があるので、自己破産することを決めたらなるべく早めに保証人にも伝えましょう。
保証人も債務整理が必要になることも
もしも債務者の代わりに返済を求められた借金を一括で返せなかった場合は、保証人も債務整理を検討する必要があります。とくに家族が保証人になっているケースでは、本人が自己破産すると保証人になっている家族も債務整理する確率が高いです。
もしも債務整理せずに放っておくと、裁判所によって強制執行が出され、給与や車などの財産が差し押さえられてしまいます。このように自己破産すると保証人にも大きな影響が出てしまいます。重ねて言いますが、破産する人は大きなトラブルにならないよう前もって保証人に伝え、できうる限りの誠実な対応を取るようにしましょう。
自己破産すると連帯保証人がどうなるかや対処法については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
「自己破産すると連帯保証人はどうなる?借金の前と後&パターン別の対処法」
自営業者の場合
自営業者が自己破産するときは、自営業者ならではのデメリットが発生します。
売掛金は手元に残らない
上で説明したように、自己破産するには一定額以上の財産を処分しなければなりません。個人に関しては不動産や車、預貯金などが該当しますが、自営業者の手続きでは従業員に支払う賃金や取引先からの未回収の売上「売掛金」も財産とみなされます。つまり売掛金が20万円を超える場合は、自由財産と認められず処分されてしまいます。
ただしこの売掛金に関してはいくつかの例外があります。一つ目は売掛金が実質的に賃金とみなされる場合です。個人事業主などでその売掛金がないと生活ができないようなケースでは、実質的に賃金と同じとみなされ自由財産となります。この場合は3/4が自由財産となり、残りの1/4が処分対象となります。
もう一つの例外は「自由財産の拡張」によって処分の対象から外されて手元に残せるというケースです。ただし自由財産の拡張が認められるには一定の基準を満たす必要があり、申請すればすべて認められる訳ではありません。
新たな借り入れができない
自営業者も自己破産すると事故情報として登録されて、銀行などから新たな借り入れができなくなります。事業をしていくには固定費の支払いや仕入れ代金など、様々な運転資金が必要です。しかし自己破産したことで事業目的の融資も受けられなくなることを覚えておきましょう。
事業に関する融資が受けられないということは、手持ちの資金で事業を回さなければいけません。事業主が自己破産するという状況では、手元の資金はかなり不足していることがほとんどで、事業の縮小を余儀なくされるケースも。
事業の継続が難しくなる
上のような理由から、自営業者が自己破産すると事業の継続が難しくなる恐れがあります。さらに事業に不可欠な車両やパソコン、備品類や機械設備なども自由財産に該当しないと、処分の対象になります。また契約に関しても処分の対象となるため、次のような契約も解消する必要があります。
- 事務所、店舗の賃貸契約
- 社員との雇用契約
- 事業で必要不可欠な設備や機械のリース
事務所や従業員、設備のリース契約ができなくなってしまうため、自己破産後は事業を続けることがかなり難しくなるでしょう。
これってホント?自己破産のデメリットでの誤解
全てのケースで該当するデメリットや、状況別で注意すべきデメリットが分かったところで、自己破産に関する誤解や間違ったうわさ、嘘などについて解説していきます。「自己破産するのが不安」「自己破産すると人生が終わる」といった心配を解消するためには、自己破産についての正しい知識を得ることが重要です。
自己破産すると会社をクビになる?
「自己破産すると会社を解雇されるのでは?」と自己破産するのに躊躇する方もいるかもしれませんが、会社が自己破産を理由に社員を解雇することはありません。労働基準法は会社側が解雇できる解雇事由に自己破産を認めていないためです。そもそも勤務先から借金をしていたり給料が差し押さえ対象になっていない限り、会社に自己破産について知られることはほとんどありません。
またブラックリストや官報に載ったとしても、常時これらをチェックするような一部の職種の人以外には会社の人のバレる心配もありません。公務員についても同様で、自己破産は公務員としての資格がないとされる「欠格事由」には該当しないのでご安心を。「自己破産すると会社をクビになる」という噂は全くの誤解なので、必要以上に気に病む心配はありません。
戸籍に載って結婚に支障が出る?
自己破産しても戸籍や住民票に載ることはなく、それらがもとで結婚相手に過去の自己破産が知られることはありません。もちろんパスポートの取得も可能で、マイナンバーカードに自己破産の情報が登録されることもありません。また自分以外の家族が自己破産した情報も、公の書類には一切掲載されないので、安心してください。
自己破産手続き後は海外旅行で出入国審査のときに自己破産について聞かれることもありません。ただし手続き中は住所地を離れるのに裁判所の許可が必要になるなど、一定の制限があります。
手続きをするのに100万円もの費用が必要?
「自己破産するのに100万円近くのお金がかかるんでしょ?」と手続きを躊躇される人がいるかもしれませんが、それは誤解です。確かに管財事件では破産者が持っている財産などの調査に破産管財人が必要で、裁判所に納める「予納金」に50万円前後、弁護士費用に30万~50万円ほどかかるため、トータルで80万~100万円の費用となります。
しかし自己破産には他に「少額管財」と「同時廃止」の手続きがあり、費用を抑えられる少額管財では予納金と弁護士費用の合計で50万~70万円、財産がない人ができる同時廃止では22万円~36万円ほどで済みます。また負担が大きい弁護士費用は、分割支払いを受け付けている弁護士事務所もあるため、事前に報酬の支払い方法について相談してみましょう。
病気など何らかの事情で分割支払いも難しいという方は、日本司法支援センター(法テラス)に相談してみては?収入など一定の要件を満たせば、弁護士費用の立て替え制度が利用でき、毎月5,000~10,000円ほどの少額で無理なく返済できます。また生活保護受給者は法テラスに申請すれば弁護士費用を免除してもらえる制度があります。
自己破産の費用について詳しくはこちらの記事を参考にしましょう。
「自己破産にかかる費用相場・内訳を解説!安く抑えるコツや払えないときの対処法も紹介」
賃貸物件を借りられない?
「自己破産すると賃貸物件が借りられない」と思っている人がいますが、自己破産したからといってマンションやアパートが全く借りられなくなることはありません。これはブラックリストに載っている期間は保証会社の審査に落ちてしまうため、保証会社を付けることが条件の賃貸契約に限り物件を借りることができないことから発生した誤解です。
したがって保証会社を付けることが必須でない物件では、問題なく賃貸契約ができ物件を借りることが可能です。もしもブラックリスト掲載中に物件を借りたいときは、保証会社を使わずに契約できる物件を探すことをおすすめします。
配偶者の保証人でも離婚すれば返済しなくていい?
「自分が連帯保証人になっていても、離婚すれば借金を代わりに返済しなくてもいいんでしょ?」と誤解している方がいますが、離婚をしても保証人の義務から逃れられる訳ではありません。たとえ自己破産する前に離婚していても、保証人である元配偶者が債務者の代わりに借金返済をしなければなりません。
また離婚と自己破産の時期も難しく、離婚後に自己破産すると離婚に伴う慰謝料や財産分与が免責不許可事由の中の「詐害行為」などに該当しないかの調査が必要になり、手続きも複雑になります。さらに不貞行為による慰謝料は自己破産により免責されてしまうため、慰謝料をとれなくなる確率が高まります。
このように配偶者の自己破産によっては、自分の将来が大きく変わってくる可能性があります。まずは焦って離婚しようと思わずに、自分も弁護士に相談するなどして対策を練るようにしましょう。
デメリットを知った上での対処方法&考え方
これまで自己破産のデメリットについて様々な角度から紹介してきましたが、どのような結論を出せばいいのかまだ迷っているという方も多いと思います。そこでこちらではデメリットを知った上での考え方や困った時の対処法を解説していきます。
得られるメリットの方が大きい
自己破産にはデメリットもありますが、得られるメリットの方が大きいと考えます。まず一番には借金が免責されるということ。借金の全てがなくなるとこれまで大変だった返済の必要がなくなり、弁護士が債権者に受任通知を送付することで返済の督促やしつこい取り立てもストップします。早いうちに借金に関するすべてのストレスから解放されるでしょう。
また自己破産は、無職の方や生活保護を受けている人、専業主婦など収入がない人でも手続きできます。無収入の人でも手続きできる債務整理方法は自己破産だけです。特に財産を持っていない方にとっては、自己破産のデメリットよりもメリットの方がはるかに大きいのではないでしょうか。
取り返しがつかないようなデメリットはない
自己破産にデメリットがあるとはいえ、人生が終わるようなデメリットは存在しません。手続き期間中やブラックリスト掲載中の一時期に様々な制限がかけられますが、その期間を過ぎれば元の生活に戻れます。また財産を持っている方でも「住むところもなく食べるのにも困る…」といった、今後の生活ができない程に財産が全て没収される訳ではありません。
返済しきれないほどの借金を背負い闇金からお金を借りたり、「もう自殺するほかないのでは…」と思い詰めるよりは、一時期多少制限がかかっても借金が免責される方がよっぽど「マシ」です。実際自己破産のデメリットをよく見てみると、思ったほど大変そうでないことが分かるでしょう。自己破産は法律で定められた、借金を抱えた人が生活を再建するための制度です。
自己破産を新たなスタートと考える
自己破産で人生が終わるなどと嘆く必要は全くなく、逆に自己破産を新たなスタートだと考えることをおすすめします。苦しんできた借金の返済からも解放されて、取り立てによってストレスを抱えたりビクビクしながら生活する必要はありません。
ブラックリストに登録されている間は、借金をしなくても生活が送れるための準備期間と考え、収入を増やす努力をしたり収支を見直しましょう。無駄遣いを減らし、貯金できるような家計にする努力も必要。また買い物をするときは持っている現金の範囲で、欲しいものが出たときは「本当に今必要なものか?」をよく考えてから購入するのも今後の生活のために重要です。
他の債務整理方法を検討する
どうしても自己破産をして家を手放したくない、保証人に迷惑をかけたくないという方は、他の債務整理方法を検討してみては?債務整理には自己破産以外にも任意整理や個人再生といった方法があります。それぞれの特徴やメリットはこちらです。
- 任意整理
- 裁判所を通さずに債権者と直接利息の減額や返済方法を交渉する方法。整理する対象を選べるので保証人が付いている借金を対象から外せば保証人に迷惑がかからない。
- 個人再生
- 裁判所を通して借金を1/5から最大1/10にまで減額する債務整理法。「住宅ローン特則」があり、条件に該当すると住宅ローンを払い続ける代わりにマイホームを残せる。
いずれも残った借金を3年もしくは5年かけて返済する方法で、将来にわたって継続的な収入があることなどが条件になります。
借金問題に詳しい弁護士に相談
債務整理方法に迷ったり、自己破産で不安なことがあったときは借金問題に詳しい弁護士に相談しましょう。また「借金が返済できなくなってどうしたらいいか分からない…」「闇金から借金をしたときの対処法は?」など、借金に関する困りごとも法律の観点からアドバイスしてくれます。
もしも自己破産を決めた場合はそのまま手続きを弁護士に依頼すれば、書類の作成や裁判所とのやり取り、債権者との交渉などを任せられます。借金問題を扱っている弁護士事務所の多くで無料相談を実施しています。また弁護士費用を分割で支払えるところもあるので、まずは相談に行ってみて自分の話を親身なって聞いてくれ、誠実に対応してくれそうな事務所を選びましょう。
まとめ
自己破産には財産が処分される、ブラックリストに載る、職業制限があるなどのデメリットがあります。また管財事件で手続きすると郵便物が転送されたり転居に制限がかかるなどのデメリットが。他にも家族のいる人や自営業者、連帯保証人が付いている場合のデメリットをよく理解して、自己破産するかどうかを決めましょう。
ただ自己破産のデメリットに関する誤解も多く、自己破産しても会社をクビになることは法律上なく、戸籍に載って結婚に影響することも賃貸物件が全く借りられないこともありません。財産がなければ裁判所費用をかけずに手続きできますし、弁護士費用も分割で支払えることも。まずは自己破産についての嘘や噂をやみくもに信じずに、正しい情報を得て判断するのが重要です。
自己破産は年間約7万人もの人が手続きをしており、借金が免責されています。そしてほとんどの人が、取り返しのつかないようなデメリットはなく、自己破産によって新しい人生がはじめられたと感じています。自己破産で不安なことがあったときは、債務整理に詳しい弁護士に相談して、納得してから手続きを始めることをおすすめします。