- 「個人再生と自己破産はどう違うの?」
- 「どちらが自分に合っているか分からない」
個人再生と自己破産はどちらも裁判所を通す債務整理の手続き方法ですが、債務整理を検討中の方の中にはそれぞれの違いが分からないという方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では個人再生と債務整理の違いに着目して、それぞれの特徴や向いている人、手続きなどについて詳しく解説。
さらに個人再生後の返済が思うようにいかない場合の対処法や、個人再生から自己破産へ切り替える方法なども紹介していきます。
こちらの記事を参考にして、債務整理にはどんな方法があるか知り、個人再生と自己破産のどちらが自分に合っているか見極めましょう。
個人再生と自己破産の主な違い
まずは個人再生と自己破産の主な違いを6つ紹介していきます。
ベースとなる法律
個人再生と自己破産は、それぞれ「民事再生法」と「破産法」という異なる法律に基づく法的手続きとなります。ベースとなる法律が違う訳なので、法律の目的とすることや手続きにも違いが出てきます。こちらはそれぞれの法律に基づく目的や減額割合の違いです。
個人再生 | 自己破産 | |
---|---|---|
法律 | 民事再生法 | 破産法 |
目的 | 経済的に困窮し返済が滞っている個人や事業者を対象に、生活および事業の再生を図る。
権利義務についてだけでなく、それを実現するために手続きも定めている。 |
債権者の利益確保のために、債務者の財産を公平かつ適正に清算すること。
債務者の経済更生を図ることも目的とされている。 |
種類 | 小規模個人再生・給与所得者等再生 | 同時廃止・管財事件 |
手続き方法 | 借金の返済についての「再生計画」を裁判所に提出し、認可が下りるとその計画通りに返済を再開する。 | 破産手続きの開始を裁判所に申立て、破産管財人によって財産を等価処分(現金化)し債権者に分ける。それでも残った借金はは裁判所の免責許可決定により支払いを免除される。 |
借金の減額割合 | 返済不能になった借金を1/5~1/10に減額し、通常は3年、最長でも5年かけて返済していく。 | 裁判所が許可すれば支払い義務が免責される。 |
破産法も民事再生法も、倒産時の手続き方法を定めたいわゆる「倒産法」の一つで、他に会社更生法などがあります。倒産というと会社や企業のことを思い浮かべる方も多いでしょうが、個人であっても借金の返済ができないほど経済的に困窮している状態を、法律用語では倒産といいます。
財産処分について
個人再生と自己破産では、手続きに際しての財産の処分についての違いがあります。自己破産では財産を処分することが前提となりますが、個人再生では必ず処分しなければいけないという訳ではありません。
ローン支払い中の住宅について
財産処分に関して特に気になるのがマイホームですが、個人再生では「住宅ローン特則(住宅資金特別条項)」というものがあり、住宅ローンを返済中のマイホームでもこの特則を使えばマイホームを手放すことなく住み続けられます。ただし適用される条件には、次のようなものがあります。
- 個人再生する本人の所有である
- 対象住宅に居住している
- 住宅ローン以外の抵当権が付いていない
- 居住スペースが1/2以上である(店舗・事務所兼用の場合)
自己破産ではローンが残っていようがいまいが、債務者名義の不動産は処分されることになります。
マイカーについて
住宅に次いで大きな財産といえば車ですが、自己破産ではマイカーも清算の対象となります。一方で個人再生では、すでにローンの返済が終わっている車に関しては処分しなくてもいいということになります。ただしローン返済中で、車の名義がローン会社になっているものは処分の対象に。
もしどうしても車を処分したくないときや、生活をする上で車が欠かせないという場合は、個人再生手続きをする前にローン返済を終えておくと、処分の対象から外れて個人再生後も引き続き車を使えるでしょう。
処分外の財産と清算価値保障について
財産がすべて処分されてしまう自己破産といえど、生活する上で欠かせない分は「自由財産」として残しておくことができます。こちらは処分の範囲外となる自由財産の一覧です。
- 現金
- 99万円以下の現金
- 現金以外の財産
- 現在価格が20万円以下の財産
- 差押禁止財産
- 生活必需品・家財道具・1か月分の食品や燃料・職業上必要な器具や材料・仏壇や位牌など
こちらは生活で必要な財産とみなされ、処分の対象から外れます。
一方で個人再生では、自己破産と比較したときに債権者が損をしないよう「清算価値保証原則」というものがあります。これは自己破産をしたときに処分されるはずの財産と同額以上は個人再生で返済しなければいけないという決まりで、保有している財産の総額(住宅ローン以外)と同額は返済の義務があります。
つまり個人再生では残しておきたい財産が多ければ多いほど返済額が多くなるわけで、返済額を抑えるにはどの財産を残してどの財産処分するかの見極めが必要です。
参考:新型コロナウイルス感染症の影響により借金等の返済が困難となった方へ|法務省
職業制限の有無
個人再生をしても職業に制限がかかることがありませんが、自己破産では手続き期間中に仕事ができない職業や資格が発生します。こちらは自己破産で資格制限や職業制限がかかる職業・資格の一覧です。
- 士業
- 士業:弁護士・弁理士・司法書士・行政書士・税理士・公認会計士・不動産鑑定士など
- 金融・保険
- 生命保険募集人・貸金業者・質屋
- その他
- 警備員・宅地建物取引主任者・旅行業務取扱管理者・建設業など
もし上のような職業の人が自己破産をする場合は、あらかじめ会社に休職や異動を願い出る必要があります。ただしこれら制限がかかるのは免責許可決定の確定までの2カ月~半年程度。手続き終了後は復権により解除されれば、これまで通り仕事をすることができます。
借金の原因
個人再生では借金の原因が問題になることはありませんが、自己破産の場合は借金の理由が「免責不許可事由」に該当する場合は、免責が許可されないので注意しましょう。免責不許可事由には次のような借金の理由があります。
- パチンコや競馬、競輪などのギャンブル
- FXや仮装通貨などの投資
- 買い物や遊興費などの浪費
他にも債権者をだます目的で財産を隠したり、他人に財産を渡すことも免責不許可事由に当たります。また破産手続きを遅らせるために闇金から高利で借金をすることも含まれるので、気を付けましょう。
郵便物の転送
自己破産をすると破産の手続き中、本人宛の郵便物はすべて破産管財人に転送されます。破産管財人は転送された郵便物の中身をチェックして、財産を隠し持っていないかなどを調査することが認められています。ただし調査後は本人に返還されるのでご安心を。
それに対して個人再生では、自己破産と異なり破産管財人がいないので、郵便物が転送されて中身をチェックされることがありません。
借金の減額割合
個人再生と自己破産の大きな違いは借金の減額割合にあります。自己破産では裁判所により免責が許可されると、すべての借金や債務の支払い義務がなくなります。対して個人再生の場合は一部の免除にとどまり、残った借金は3年もしくは5年かけて分割で返済していくことになります。
個人再生では以下の3つの基準のうち、最も金額が高くなる基準に基づいて弁済(返済)額が決まります。
- 債務基準
- 財産基準
- 可処分所得基準
1.債務基準
債務基準とは借金総額の合計から弁済額を決めることで、借金の金額に応じて次のような弁済額となります。
- 100万円未満
- 全額
- 100万円以上500万円未満
- 100万円
- 500万円以上1500万円未満
- 借金総額の5分の1
- 1500万円以上3000万円未満
- 300万円
- 3000万円以上5000万円未満
- 借金総額の10分の1
つまり借金が100万円未満の場合は全額、5000万未満の場合は500万円が債務基準の弁済額です。
2.財産基準
財産基準とは持っている財産の合計に応じて弁済額を決めることで、財産に含まれるのは次のようなものです。
- 預貯金
- ローン返済が終わった車
- 生命保険の解約返戻金
- 現時点での退職金額(自己都合)
さらに住宅ローン返済中のマイホームに関しては、支払い済みの金額よりもローン残高が多い時点では(オーバーローン)は財産としてみなされませんが、頭金を多く入れている場合やローン残高が少ない場合は、ローン残高と住宅の時価の差額が財産として含まれることがあります。
3.可処分所得基準
可処分所得基準とは可処分所得の2年分を弁済額とするもので、こちらは「給与所得者等再生」による手続きのケースに限ります。可処分所得とは給与などの所得から次のようなものを差し引いた金額です。
- 所得税や住民税などの税金
- 社会保険料
- 債務者とその扶養者の最低限の生活を維持するための生活費
算出された2年分の金額が、弁済の基準として採用されます。
個人再生と自己破産を徹底比較!
個人再生と自己破産の違いが分かったところで、そのほかのメリット・デメリットや向いている人などを徹底比較していきます。適用の条件や手続き、費用に関することなどより具体的な情報がわかるので、債務整理方法を決める参考にしましょう。
メリット・デメリット
まずは個人再生と自己破産のメリット・デメリットから。個人再生のメリット・デメリットはこちらです。
メリット | デメリット |
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次に自己破産のメリット・デメリットは以下のような内容です。
メリット | デメリット |
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手続きの流れと期間
個人再生と自己破産の手続きとそれにかかる期間を見ていきます。
【個人再生】流れと期間
個人再生手続きの流れは以下の通りです。
- 弁護士・司法書士に依頼
- 受任通知の発送・取引履歴の開示請求
- 引き直し計算・過払い金返還請求
- 申立書類の作成
- 個人再生申立
- 個人再生委員の選出・面談
- 履行テストの開始
- 再生手続きの開始決定
- 再生手続き開始決定書・債権届出書を送付(裁判所→債権者)
- 債権認否一覧表・再生計画申立案を提出(申立人→裁判所)
- 意見聴取・書面による決議
- 再生計画案の認可決定
- 再生計画案による返済の再開
手続き自体は半年から1年前後で終了します。弁護士を探して相談し依頼、必要書類の準備などを含めるとトータルで8カ月~14カ月ほどかかることがあります。個人再生では個人再生委員が選出されることがありますが、手続きの主体はあくまで債務者。手続きがスムーズにいくかについては、綿密な事前準備ができるかどうかにかかっています。
【自己破産】流れと期間
自己破産の流れは、同時廃止手続きに関して紹介していきます。
- 弁護士に依頼
- 受任通知の発送・取引履歴の開示請求
- 引き直し計算による利息の再計算
- 自己破産申立
- 裁判所での面談(裁判官・弁護士・本人)
- 破産手続開始決定・同時廃止決定
- 免責審尋
- 免責許可決定
- 免責許可決定確定
手続きにかかる期間は同時廃止で4カ月~半年、管財事件では7カ月~1年以上かかることがあります。自己破産の中でも「管財事件」で期間が長引くのは、裁判所による破産管財人の選任や破産管財人が財産の調査や債権者への分配を行うのに時間がかかるためです。
必要書類
個人再生で必要な書類は次の内容です。
- 個人再生申立書
- 陳述書(職業・家族構成・収入)
- 債権者一覧表
- 源泉徴収票や給与明細
- 退職金証明書
- 家計表
- 財産目録
- 戸籍謄本
- 住民票
自己破産の必要書類は個人再生よりもボリュームが多く、次のようなものです。
- 自己破産申立書
- 陳述書(職業・家族構成・収入)
- 債権者一覧表
- 住居関連書類(賃貸借契約書・土地建物登記簿謄本)
- 収入関連書類(源泉徴収票・給与明細・年金受給証明書・退職金証明書など)
- 財産関連書類(預金通帳・車検証・生命保険証書)
- 支払関連書類(公共料金証明書・家計表・税金滞納額が分かる書類)
- 戸籍謄本
- 住民票
自己破産では住居・収入・財産関係の提出書類が多く、これらの準備が必須になります。
弁護士費用やその他経費
個人再生や自己破産にかかる弁護士費用や裁判所費用の比較は次の通りです。
費用/債務整理の種類 | 個人再生 | 同時廃止事件(自己破産) | 管財事件(自己破産) |
---|---|---|---|
裁判所費用 | 20万円~ | 1万~3万円 | 50万円~ |
弁護士費用 | 50万円~ | 40万円~ | 50万~80万円 |
総額 | 70万円~ | 42万円~ | 100万円~ |
個人再生で住宅ローン特則の手続きをする場合は、上にプラスして5~10万円かかります。裁判所費用には次のような費用が含まれます。
個人再生 | 自己破産 |
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自己破産の中でも管財事件になると、破産管財人への報酬が必要となり、裁判所費用が50万円以上となる場合があります。
個人再生と自己破産の手続きの流れ・期間・費用については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
「債務整理の流れと必要書類 | 期間や手続きの注意点も解説」
適用の条件
個人再生と自己破産では適用の条件が異なります。
【個人再生】適用の条件
個人再生には借金総額などにより、次のような条件があります。
- 住宅ローンを除く借金の総額が5000万円以下
- 安定した収入が見込める人
- 債務者が法人でないこと
個人再生では借金が1/5~1/10に減額されるとはいえ返済が残るため、毎月の安定した収入があることが条件として欠かせません。よって無職の人やアルバイトの方など収入が不安定な方は利用できない可能性があります。
また個人再生には小規模個人再生と給与所得者等再生の二種類があり、それぞれに対象者などが異なります。
適用条件/個人再生の種類 | 小規模個人再生 | 給与所得者等再生 |
---|---|---|
対象者 |
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債権者の同意 | 過半数の同意が必要 | 同意は不要 |
【自己破産】適用の条件
自己破産には借金の総額などの条件が問われることがありません。あくまでも「返済が不可能」なことが条件となり、無職の方や安定した収入が無い方でも手続き可能です。
あくまで手続き上の条件として、次のようなものが挙げられます。
- 破産法による「支払不能」状態であること
- 破産障害事由(費用の未納付・虚偽申告・民事再生手続中)がないこと
- 手続き上の要件を満たしていること(申立書の不備など)
ブラックリストに載る期間
債務整理を行うと個人の信用情報に事故情報として登録されます。一般的にこの状態を「ブラックリストに載る」といい、個人再生と自己破産ではどちらも5年~10年間ブラックリストに載ることになります。
5年~10年と期間に幅があるのは、掲載している信用情報機関による違いです。
信用情報機関 | 加盟業種 | 掲載期間(個人再生・自己破産とも) |
---|---|---|
株式会社シー・アイ・シー(CIC) | クレジットカード会社 信販会社 |
5年 |
株式会社日本信用情報機構(JICC) | 消費者金融 街金融 |
5年 |
全国銀行個人信用情報センター(KSC) | 銀行 信用金庫 労働金庫 |
10年 |
個人再生と自己破産がブラックリストに載るタイミングは次の通りです。
- 個人再生
- 個人再生手続の開始が決定した日
- 自己破産
- 裁判所による免責許可が確定した日
ただし信用情報機関によっては、個人再生を申立しただけでは掲載されないケースがあります。
ブラックリストについては、こちらの記事で詳しい内容を参考にしてください。
「債務整理するとブラックリストにのる?気になる『ブラックリスト』についてすべてお答えします!」
家族・職場に知られる可能性
裁判所を通さない任意整理と比べて個人再生と自己破産どちらも、家族や職場に知られる可能性は高いのが現状ですが、どちらかといえば個人再生の方が知られる恐れは少ないでしょう。
個人再生ではこのようなことが原因で、周囲に知られる恐れがあります。
- 裁判所に行くのに平日休まなければならない
- 官報を調べられる
- ブラックリストに載っていることがバレる
- 会社から退職金証明書を出してもらうのに理由を聞かれる
自己破産では上の理由にプラスして、次のような原因が考えれらます。
- 職業制限で業務に支障が生じる
- マイホームや車を手放さなければならない
- 配偶者の収入に関する書類が必要
このような理由から個人再生よりも自己破産の方が周囲にバレる確率が高く、同居家族に限っては黙って手続きするのはほぼ不可能だと考えましょう。
個人再生や自己破産が職場や就職に及ぼす影響については、次の記事を参考にしましょう。
「債務整理が及ぼす就職・転職・仕事への影響とは?会社に知られないための対処方法も解説」
向いている人
個人再生と自己破産には、それぞれ向いている人が異なります。自分はどちらに当てはまるのか確認してみましょう。
個人再生に向いている人 | 自己破産に向いている人 |
---|---|
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上記の項目を参考にしながら個人再生か自己破産を選択する訳ですが、最後は担当の弁護士と相談しながら「自分がどうしたいのか」をよく考えてから決めましょう。
適用条件が問題ない限り、自分が「借りたお金は少しでも返済したい」と思うのなら個人再生を、「ゼロから再スタートしたい」という気持ちが強いなら自己破産を選んだ方が、今後より後悔のない生き方ができるのではないでしょうか。
個人再生手続き後に返済できなくなった時の対処法
個人再生手続きにより減額されたにもかかわらず、病気や不慮の事故等で返済が困難になった場合の対処方法を解説していきます。
1.個人再生計画の変更申立
やむを得ない事情で個人再生後の返済が難しくなった場合は、必要な要件を満たすと個人再生計画の変更申立により返済期間を最大で2年まで延長できます。まずは手続きでお世話になった弁護士に相談して、自分の理由で変更申立が可能かを確認しましょう。
もし「今月だけ返済をスキップしてもらえないか」という場合は、債権者によってはその月の返済を猶予してもらえる可能性があります。いずれにしても返済が難しいと分かったら、なるべく早めに弁護士に伝え、適切な対処を取るようにしましょう。
2.ハードシップ免責の申立
個人再生計画の変更申立で期間を伸ばしてもなお支払いが難しい場合は「ハードシップ免責」の申立ができる可能性があります。ハードシップ免責とは個人再生で当初の再生計画の3/4以上の額を返済していれば、残りの返済を免責できるという制度のこと。
ハードシップ免責は次のような要件を満たしていれば申立できます。
- 総額3/4以上の借金を返済している
- 本人に責任のない事情によるものであること
- 免責の決定が債務者にとって一般の利益に反しないこと
- 再生計画を変更しても返済が困難であること
手続きは個人再生を申し立てた裁判所に「免責申立書」と「返済できないことを証明する書類」を提出して、裁判所が免責するかどうかを判断します。
3.自己破産の検討
もしも個人再生計画の変更申立により返済期間を延長しても支払いが難しく、ハードシップ免責の要件を満たしていないときは、自己破産を検討しなければなりません。
ただし自己破産には、マイホームを手放さなければならないなどの多くのデメリットがあります。果たして本当に返済が不可能なのか、自分の返済計画や支出、収入のアップができないかなどよく考えてから自己破産を申立するようにしましょう。
個人再生から自己破産へ切り替えるには?
個人再生をした後でも自己破産ヘ切り替えることは可能です。「やっぱり個人再生しても完済できない」という場合は、早めに個人再生を依頼した弁護士に相談してください。
手続きの流れ
個人再生から自己破産へ変更するには次のような流れで手続きを進めます。
- 1.再生計画の取り消し
- 債権者の申立てにより裁判所に再生計画の取り消しを申請
- 2.借金総額の変更
- 借金の額を減額なしの元通りにする
- 3.自己破産申立
- 改めて裁判所に自己破産の手続きをする
個人再生により借金が減額された状態では、自己破産が認められる「支払不能」とはいえません。そこで債権者からの申立により、裁判所に再生計画の取り消しが必要となります。借金が元の金額に戻ったところで、一から自己破産の申立手続きを開始します。
裁判所権限で切り替え可能
個人再生の手続中に裁判所の権限で自己破産へ切り替えることも、法律上は可能です。民事再生法によると、裁判所は次のような場合に破産手続開始の決定をすることができます。
- 債務者に破産手続開始の原因となる事実があると認められるとき
- 再生手続が廃止されたとき
- 再生計画取り消しの決定が確定したとき
ただし実際のところ、裁判所の職権により自己破産へ切り替える事案はそれほど多くありません。理由として裁判所が積極的に自己破産への切り替えを行ってしまうと、個人再生の申請を躊躇する人が増える可能性があるためです。
弁護士との契約変更が必要
個人再生の手続き途中で自己破産へ切り替える際は、依頼している弁護士との契約変更が必要となります。場合によっては個人再生の契約をいったん終了し、新しく自己破産の委任契約を結ぶことになるでしょう。
個人再生で支払った着手金とは別に自己破産手続きで着手金が必要になるかについては、依頼している事務所次第です。その他の弁護士費用に関しても、切り替えの相談時に担当弁護士まで確認することをおすすめします。
2つの制限に注意
すでに個人再生をしている場合、次の2つの制限に当てはまると自己破産ができません。これは自己破産の免責不許可事由にも規定されている内容です。
給与所得者等再生からの制限
個人再生の中でも「給与所得者等再生」が確定した日から、7年以内に自己破産を申請した場合は免責不許可となります。つまりこの期間は自己破産を申請しても、借金の免責が認められないということです。
ただし再生計画に基づいた弁済をしている間は、この制限から除外されます。再生計画に基づいて3年かけて弁済した場合は、残りの4年だけ自己破産に制限がかけられることになります。
またたとえ免責不許可事由であっても、裁判官の判断で免責を受けられる可能性があるため、「自分は免責不許可事由に当てはまるから」と諦めず、一度弁護士に相談してみましょう。
ハードシップ免責利用からの制限
個人再生後の返済が難しくハードシップ免責の適用により免責された場合、免責が確定してから7年間は自己破産ができません。こちらも自己破産の免責不許可事由となります。
ただしハードシップ免責を単に申し立てただけで免責が決定されなかったときや、免責決定がされていても確定前であれば免責不許可事由に該当しないため、自己破産に切り替え可能です。
まとめ
個人再生と自己破産ではベースとなる法律が異なり、借金の減額割合や職業制限、財産処分の有無が違ってきます。それぞれに手続きにかかる期間や費用、適用となる条件や周囲に知られる確率なども変わってくるため、どちらの債務整理方法が自分の条件や希望に合っているか、弁護士と相談しながら慎重に決めましょう。
もし個人再生後に支払いが難しくなった場合は、個人再生計画の変更申立やハードシップ免責の申立などで返済期間を延長したり、残りの借金を免責できます。それでもどうしても返済できないときは自己破産へ切り替えることができます。
しかし7年以内に給与所得者等再生およびハードシップ免責を受けた場合は、免責不許可事由により自己破産をしても借金が免責されません。自己破産へ切り替えたいときは、まず依頼している弁護士に相談し、自分が切り替え可能か確認するといいでしょう。