- 「600万円の奨学金は本当に返せる?」
- 「奨学金が返せなくなったら債務整理できるか知りたい」
大学や短大に進学したいけど学費が心配…という方にとって、奨学金はとてもありがたい存在です。しかし返済の必要がある奨学金が600万円もあると、果たして卒業後に完済できるのかと心配になる方も多いのではないでしょうか?
そこでこちらの記事では「600万円の奨学金は返済可能か?」という疑問を中心に、奨学金の現状や返済プランの算出方法について詳しく解説。奨学金を返せなくなったときに利用すべき制度や、奨学金を債務整理できるのかについても紹介するので、多額の奨学金を抱えて困っている方は参考にしましょう。
奨学金の現状と問題点とは?
こちらでは奨学金の現状や奨学金を借りている多くの人が抱えている不安、問題点について見ていきましょう。奨学金で困っているのは自分だけでないと分かるだけも、心が少し軽くなるはずです。
奨学金の現状について
まずは奨学金の現状について、様々なデータをもとに解説していきます。
奨学金の利用状況
文部科学省が平成30年に行った「学校基本調査」によると、大学に進学する人の割合は53.3%と、全体の半数以上に上ります。奨学金の貸与事業を行っている日本学生支援機構の平成30年の調査によると、その中で奨学金を利用している学生の割合は、以下の通りです。
学校の種類 | 奨学金の受給割合 |
---|---|
大学院博士課程 | 53.5% |
大学院修士課程 | 48.0% |
4年制大学(昼間部) | 47.5% |
短期大学(昼間部) | 55.2% |
こちらを見ると大学院、大学、短大に進学する人の約半数が奨学金を利用していることが分かります。
参考:平成30年度学校基本調査(確定値)の公表について|文部科学省・平成30年度学生生活調査結果|日本学生支援機構
奨学金の借入総額
では奨学金を利用している学生の借入金額はどのくらいなのでしょうか。労働者福祉協議会が実施した「奨学金や教育費負担に関するアンケート調査」の結果を見ると、39歳以下で日本学生支援機構の奨学金の借入金額、金額別の割合は以下の通りとなっています。
借入総額 | 割合 |
---|---|
100万円未満 | 2.9% |
100~200万円未満 | 17.7% |
200~300万円未満 | 31.5% |
300~400万円未満 | 16.8% |
400~500万円未満 | 13.9% |
500~600万円未満 | 6.0% |
600~700万円未満 | 2.9% |
700~800万円未満 | 1.8% |
800~900万円未満 | 1.0% |
900~1000万円未満 | 0.2% |
1000万円以上 | 0.5% |
わからない・無回答 | 4.9% |
奨学金の借入金額の平均は324.3万円、データの中央値は285.6万円です。
毎月の返済額
毎月どのくらいの金額を奨学金返済にあてているかは気になるところです。こちらも39歳以下の日本学生支援機構が集計した、奨学金利用者のアンケート結果をもとにした一覧です。
毎月の返済額 | 割合 |
---|---|
5,000円未満 | 1.7% |
5,000~10,000円未満 | 11.9% |
10,000~15,000円未満 | 33.5% |
15,000~20,000円未満 | 22.3% |
20,000~25,000円未満 | 11.0% |
25,000~30,000円未満 | 5.0% |
30,000~35,000円未満 | 4.2% |
35,000円以上 | 4.3% |
わからない・無回答 | 6.1% |
毎月の返済金額の平均が16,880円、中央値が16880.2円となっています。毎月10,000円~30,000円の返済が全体の7割以上を占めています。
返済期間の平均
日本学生支援機構の奨学金は、最長で20年の返済期間が決まっています。奨学金は4年制大学で、4年生の卒業時(3月)が貸与終了月となっています。そこから半年の待機期間があり、7カ月目から返済がスタートします。返済金額とともに、返済期間についても見ていきましょう。
返済期間 | 割合 |
---|---|
5年未満 | 7.8% |
5~10年未満 | 9.3% |
10~15年未満 | 24.8% |
15~20年 | 33.5% |
20年超 | 15.0% |
わからない・無回答 | 9.6% |
奨学金の返済期間の平均が14.7年、中央値が15.5年です。22歳で大学を卒業すると考えると、平均36~38歳で返済を終える計算になります。奨学金を600万円借りた場合の返済期間は、MAXの20年に設定する人が多く、毎月の返済額は単純に12カ月×20年の240カ月で割ると、25,000円+利息という金額になります。
参照:「奨学金や教育費負担に関するアンケート調査」調査結果の要約|労働者福祉中央協議会
大学生におすすめの借金解決方法は、こちらの記事を参考にしてください。
「大学生におすすめ借金解決方法を解説|目的別の返済のコツと親にバレない注意点とは」
返済を負担に感じる人が増えている理由
労働者福祉協議会による「奨学金や教育費負担に関するアンケート調査」を見ると、奨学金の返済が「苦しい」もしくは「かなり苦しい」と感じている人の割合が、全体の約4割を占めています。また今後の奨学金返済に不安を感じるかというアンケートでは、正規雇用で5割以上、非正規雇用では7割強の人が不安を感じると回答しています。
実際、日本学生支援機構が行った「令和元年度奨学金事業に関する実態調査」によると、2019年度末時点で全体の3%以上の人が3カ月以上奨学金を延滞していることが分かっています。それはコロナ禍という喫緊の問題だけでなく、次のような理由があるからと考えられます。
卒業後の給与が低い
奨学金の返済が苦しいと感じる理由の一つに、卒業後の給与が低いことが挙げられます。厚生労働省が令和元年に行った「賃金構造基本統計調査(初任給)の概況」によると、企業規模別・学歴別の初任給(男女計)は以下の通りです。
学歴 | 大企業初任給 | 中企業初任給 | 小企業初任給 |
---|---|---|---|
大学院修士課程修了 | 242,000円 | 232,100円 | 229,300円 |
大学卒 | 213,100円 | 208,600円 | 203,900円 |
高専・短大卒 | 185,600円 | 183,600円 | 183,200円 |
高校卒 | 168,500円 | 166,100円 | 168,600円 |
大学や大学院を卒業していても、就職した会社規模が中小だと初任給の金額が少なくなります。とくに学校を卒業したてででは初任給が20万円前後というケースが多く、毎月2.5万円もの奨学金返済分をねん出するのが大変だと感じる人がいるのも頷けます。
非正規になる可能性
大学卒業後に非正規になる可能性もあります。大学を卒業して無事に正社員になれれば、安定した収入が得られるので、奨学金を返済し続けることは不可能ではないでしょう。しかし大学を出たからといって、安定した職に就けるとは限らないのが今の日本の現状です。
文部科学省が令和4年に行った「学校基本調査」によると、令和3年に大学卒業後就職した人の割合は74.2%、大学院に進学した人は11.8%で、それ以外の約14%の人は定職に就けないもしくは進路が不明という結果に。定職に就けない人はアルバイトや派遣社員といった非正規雇用になる可能性が高いでしょう。
非正規雇用だと給与も20万円を下回ることが多く、奨学金を返済するどころか、毎月の生活を維持していくのに精いっぱいという人も。そもそも奨学金は、卒業後に安定した収入が得られることを前提とした制度です。卒業後の無収入や低収入は、奨学金が返済できなくなる大きな原因となっています。
借金生活から抜け出したいフリーターの方は、こちらの記事を参考にして相談先や回避術を知りましょう。
「借金生活から抜け出したいフリーター必見!3つの方法・相談先・回避術をくわしく解説」
結婚を躊躇する
奨学金を負担に感じる人の中には、結婚を躊躇してしまう人も一定数います。令和元年の厚生労働省のデータによると、初婚年齢の平均は男性が31.2歳、女性が29.6歳となっています。600万円の奨学金を借りた場合、最長の20年かけて返済することが多いので、完済するのが42歳前後ということに。
20代後半から30代にかけて結婚を考えたとしても、あと10年以上は奨学金の返済が残るため、配偶者になる人の負担になるのではと考えて結婚を躊躇する人がいます。逆に相手が返済中でも「結婚してからも返済が続くのが不安」と考えてしまう可能性も。
本人は気にしていなくても、その親が気にして結婚に反対するケースもあります。このように奨学金の返済は、結婚という人生で最も幸せな時期にも大きな影を落としてしまう原因となります。
ライフステージごとの出費と重なる
奨学金の返済を続けたまま結婚できても、ライフステージごとの出費と重なるのも不安な点です。通常は結婚前よりも結婚後の方がお金がかかるのはご存じの通り。出産・子育て・マイホーム購入・子どもの進学などそのたびごとにまとまったお金が家計から出ていきます。
とくに教育費は子どもの年齢が上がるにつれ、その負担は大きくなります。また子どもが小さいうちは共働きが難しく、家計負担が片方に重くのしかかってくる可能性も。42歳で奨学金を完済するまで、奨学金の返済とその他の出費をやりくりしながら生活する必要があります。
奨学金を返済できないと起こること
上で説明した通り、奨学金の返済は家計を大きく圧迫します。では奨学金を返済できなくなったら、どのようなことが起きるのでしょうか。奨学金の返済ができないと、約10日後に日本学生支援機構から督促の電話がかかってきます。それ以降に起こることを、順を追って解説してきます。
保証人に請求が行く
奨学金返済を滞納してから約2週間後には、連帯保証人や保証人宛てに「奨学金の返還について」という書面が届きます。つまり本人に代わって保証人に請求が行くということです。保証人を利用するときには「機関保証」と「人的保証」のどちらかを選ぶようになっています。
このうち人的保証を選んで、親や親せきに保証になってもらうと、返済を滞納したときに返済義務が保証人に移ります。これから詳しく説明しますが、滞納が続くと債権が債権回収会社(サービサー)に移り、サービサーから残金を一括請求されます。一括請求に応じられないと、最終的には強制執行による差し押さえが行われます。
奨学金を一括請求するように請求されたときにどうしたらいいか知りたい場合は、こちらの記事を参考にしましょう。
「奨学金を一括返済するよう請求された!無視した場合のリスクと対処法を解説」
延滞金がかかる
奨学金を期日通りに返済できないと、他の借金と同じように延滞金がかかります。延滞金の金利は、第一種・第二種といった奨学金の種類や貸与年月日によって以下のように異なります。
延滞期間 | 第一種奨学金の延滞金利 | 第二種奨学金の延滞金利 |
---|---|---|
平成26年3月27日以前 | 5% | 10% |
平成26年3月28日~令和2年3月27日 | 2.5% | 58% |
令和2年3月28日~ | 1.5% | 3% |
元々利息が付かない第一種奨学金は、1.5~5%の金利が、返済期限(返還期日)から6カ月を経過した日ごとに、延滞金が加算されます。利息の付く第二種奨学金は3~10%の金利が、返済期限の翌日から返済した日までの日数に応じて加算されます。
ブラックリストに載る
奨学金の返済を延滞すると、ブラックリストに載ることになります。ブラックリストとは、個人信用情報機関に登録されている個人信用情報に「事故情報」として登録されること。登録されるのは返還開始から6カ月経過後に、延滞が3カ月以上続いたときです。
返済ができなかった日から3週間ほどで「奨学金の返還及び個人信用情報機関への登録について」という通知が届き、それでも返済ができないと、予告通り個人信用情報に登録されてしまいます。いわゆるブラックという状態になった後は、ローンが組めなかったり、クレジットカードを新規で作れないなどの不都合が生じます。
ブラックリストに載るのは、完済後から5年を超えない期間です。つまりあと18年分の返済が残っていた場合は、18年+5年の合計23年間はブラックの状態が続くことになります。近い将来家を建てる予定がある、車をローンで購入する計画がある方は、支障が出てしまうでしょう。
奨学金を延滞すると載るブラックリストについては、こちらの記事を参考にしましょう。
「債務整理するとブラックリストにのる?気になる『ブラックリスト』についてすべてお答えします!」
一括請求される
延滞後、日本学生支援機構に連絡や手続きがないまま放置していると、奨学金の返済を要求できる権利「債権」が、債権回収会社(サービサー)に移ります。その直後にサービサーから、残金を一括で返済するようにとの「一括請求」を受けることに。
一括請求までの流れは利用している保証(人的保証・機関保証)によって若干の違いはありますが、最終的には本人の給与や財産が差し押さえられることになります。本人が無職で給与の差し押さえが不可能な場合は、代わりに保証人や連帯保証人の財産が差し押さえられます。
給与が差し押さえられるということは、勤務先に奨学金を滞納していることがバレ、肩身が狭い思いをする場合が。保証人に請求が行くと、親や親族に多大な迷惑をかけてしまうでしょう。
600万の奨学金の返済プランの算出方法
では実際に、600万円の奨学金の返済プランを算出してみましょう。日本学生支援機構では、奨学金の返済プランを試算するのに便利な「返還シミュレーション」をインターネット上に提供しています。奨学金に特化したシミュレーションになっているので、ぜひこちらを活用しましょう。
主な入力内容
日本学生支援機構の返還シミュレーションを利用するには、次のような項目を入力する必要があります。利用時に提出した「返還誓約書」などの書類を確認しながら、自身の奨学金の内容を入力していきましょう。
- 学校の種類(大学・短大・専修学校・高専・大学院)
- 奨学金の種類(第一種・第二種・併用貸与)
- 貸与総額の計算方法(貸与期間と月額を入力・貸与総額を直接入力)
- (貸与期間と月額を入力の場合)入学年度・貸与明細・貸与利率
- (貸与総額を直接入力の場合)貸与総額・貸与利率
- 返還方式(定額返還方式・所得連動返還方式)
- 機関保証の利用の有無
- 返還開始年月
尚、割賦方法の入力欄は特にありませんが、結果画面には「月賦返還」と「月賦・半年賦返還」それぞれの返済額が表示されます。
返済プランからみる月々の返済額の一例
では実際に、600万円以上の奨学金を借りたときの返済シミュレーションをしてみましょう。こちらは自宅外通学の大学生が借りた、大学4年間でかかるすべてに費用を奨学金で賄ったケースです。返済期間はMAXの20年(240回払い)、第二種の金利は固定金利・0.5%で計算しています。
大学の種類 | 奨学金の総額 | 毎月の返済額 |
---|---|---|
国立大学 (4年間) |
6,288,000円 (第一種月額54,000円と第二種月額80,000円の併用) |
27,055円 (第一種10,200円+第二種16,855円) |
私立大学 (4年間) |
7,872,000円 (第一種月額64,000円と第二種月額100,000円の併用) |
33,869円 (第一種12,800円+第二種21,069円) |
600万円の奨学金を借りたときの月々返済額は3万円前後となります。奨学金は金利が他の借金とくらべものにならないほど低いので、年利0.5%で借りたとしても最終的に支払う利息の合計は30,000円前後です。
奨学金400万円の返済に困ったら、こちらの記事を参考にしましょう。
「奨学金400万円は返済するまで何年かかる?奨学金を延滞した時の流れや対処法、減額方法について調査」
600万の奨学金が返せなくなったら…
毎月3万円前後の返済といえど、就職後すぐに会社を辞めたり非正規雇用で給与が低かったりすると、奨学金を返すことができなくなります。こちらでは奨学金を返済できなくなったときの対処法や利用できる制度などを詳しく解説していきます。
滞納する前に申告しよう
たとえ返済するお金の目途がたたなくても、滞納しそうだと思ったら早めに連絡を入れて申告しましょう。また督促の電話を無視したりするのもNGです。とくに督促の電話を無視してしまうと、支払能力があるのに返済を怠っているとみなされて、通常よりも早く事故情報として登録され、一括請求される可能性が高まります。
一度事故情報として登録されてしまうと、上で説明した通り完済後5年間はローンなどが組めず、自分や家族のライフプランが狂う原因に。返済できないと分かった時点でなるべく早めに連絡を入れれば、状況にあった制度を案内してくれるほか、事故情報として登録されるのを防ぐことができます。
各種制度の活用を検討
病気や災害、失業や休職等で返済が難しい場合は、日本学生支援機構が設けている制度各種の手続き申請が可能です。自分にはどの制度が向いているのか、内容をよく確認して、手続き方法などをチェックしましょう。
減額返還制度
奨学金の減額返還制度は、やむを得ない理由で奨学金の返済ができないときに毎月の返済額を減額できる制度です。制度の適用期間は12カ月で、当初契約した返済額の1/2まで減額。平成29年以降に第一種の適用を受けた方は1/3までの減額が可能です。
減額返還制度の利用ができるのは、減額すれば完済が可能な人。減額しても完済できる見込みがない方は、こちらの制度を利用できません。減額返還制度の適用を申し込むには、次のような書類を提出します。1年ごとに更新できれば、最長で15年間適用できます。
- 罹災証明書
- 傷病証明書や診断書
- 生活保護受給証明書
- 休職・休業証明書
- 失業中を示す証明書(雇用保険受給資格者証・雇用保険被保険者離職票など)
- 減収・減給を示す書類(直近3か月分の給与明細など)
なお減収・減給が原因の場合は、給与所得のみで年収325万円(所得225万円)以下、給与所得以外に収入がある方は年間の収入総額が225万円以下であることが条件です。
参考:月々の返還額を少なくする(減額返還制度)|日本学生支援機構
返還期限猶予制度
返還期限猶予制度とは、やむを得ない事情で奨学金の返済ができなくなった場合に、毎月の返済を猶予できる制度です。猶予の適用期間は1年で、毎年申請すれば最大で10年間は期限を延ばすことができます。ただこちらはあくまで期間を延ばすだけの制度で、返済額は減額されません。
利用できるのは年収300万円(所得200万円)以下の方で、返済を猶予している期間は延滞金はもちろん、利息もかかりません。ブラックにもならないので、十分時間をかけて生活を立て直すことが可能です。
返還免除制度
奨学金の返済をすべて免除できる返還免除制度は、本人が死亡したときもしくは、心身に障害を負って回復の見込みがなく働けない状態になったときに限って利用できます。こちらの制度の利用には、きわめて厳正な手続きを伴うため「免除が受けられるかも」と軽い気持ちでは免除申請ができないようになっています。
第一種奨学金を利用して大学院で優れた成績を残した学生も同様に奨学金を免除されますが、非常に厳しい条件となっているため利用できるのはほんの一握りです。
在学猶予制度
奨学金の返還が猶予される制度として、在学猶予制度があります。こちらは奨学金を利用している人が、学校に通っている間は、奨学金の返済を猶予できるという制度。最大で10年間は奨学金の返済を延期できます。この制度を利用するには在学届の提出が必須で、毎年の申請が必要です。
二種奨学金を利用している方は、利息まで免除できますが、こちらもあくまで期限の猶予となるので、返済金額の総額は変わりません。在学猶予制度の申し込みは、日本学生支援機構の「スカラネット・パーソナル」が便利。利用条件や利用方法は、日本学生支援機構のHPを参考にしましょう。
自治体の支援制度を利用
都道府県や市区町村によっては、新たな人材確保を目的とした奨学金の支援制度があります。対象の地域への就職や、特定の職種に就職した人に対し、返済が必要な奨学金の一部または全額を助成してくれるという制度。このような支援制度を設けている自治体は、2022年8月時点で26の都府県と71の市町村があります。
ただしこの制度を利用できるのは、一定期間指定の地域に居住することや地元の企業に就職するなどの条件があります。自治体の詳細と併せて詳しくは、日本学生支援機構のHPをご確認ください。
肩代わり可能な企業に就職
奨学金の返済を肩代わりしてくれる会社に就職したり、特定の職業を選ぶという方法もおすすめです。学生は奨学金返済を支援してくれる会社を選んで就職することで、以降の返済から解放されます。2021年4月からは、会社から直接日本学生支援機構に送金できるようになっています。
現在奨学金の肩代わりが可能な企業や団体は全国で32あります。詳しい企業情報や条件、返済額の上限などは、日本学生支援機構のホームページを参考にしてください。
支援団体に相談
就職後に奨学金の返済が難しいという場合は、支援団体に相談する方法があります。奨学金の返済ができないという問題は社会現象化してきており、返済できない人を支援する団体が増えています。とくにNPO法人POSSEでは、奨学金を返済できない人の相談を受け付けていたり、返還猶予などの制度申請手続きのサポートを行っています。
「奨学金を返済できない…」と一人で悩まず、このような支援団体に相談し、解決策を見出してみてはいかがでしょうか。
奨学金の返済に困ったときの対処方法については、こちらの記事を参考にしましょう。
「【裏技5選】奨学金の返済に困ったら…注意点や最終手段も詳しく解説!」
奨学金は債務整理できる?
国が行っている借金解決方法に「債務整理」がありますが、奨学金も債務整理できるのでしょうか。こちらでは3種類(任意整理・個人再生・自己破産)ある債務整理は奨学金でも利用できるかについてや、それぞれの手続きの特徴、注意点などを解説していきます。
奨学金は任意整理に向かない
将来利息や遅延損害金を減額できる任意整理は、奨学金の減額には向きません。というのも任意整理は年利が15~20%と高い消費者金融・カードローンなどで効果が高いのですが、そもそも奨学金の利息や遅延損害金の年利は低く、手続きしても思うようなメリットが得られないからです。
日本学生支援機構のHPを見ると、第二種奨学金に平成19年4月以降に採用された方で、令和3年度の基本月額当たり貸与利率は、利率固定方式で0.161~0.369、利率見直し方式で0.003~0.040となっています。また遅延損害金の利率も年利3%前後と極めて低いため、弁護士に依頼する費用の方が高くつく可能性も。
参考:利息付奨学金の貸与利率(平成19年4月以降に採用された方)|日本学生支援機構
任意整理に向いている人やメリット・デメリットについては、こちらの記事を参考にしてください。
「任意整理と債務整理の違いは何?メリット・デメリット、任意整理に向いてる人を解説」
個人再生で大幅減額
奨学金の残額を大幅に減額できる債務整理方法が個人再生です。個人再生とは裁判所に申し立てて、借金を1/5~1/10に減額できる手続き。借金の総額によって手続き後に残る借金(最低弁済基準額)が変わり、600万円の奨学金が残っている場合は、1/5つまり120万円にまで減額されます。
すでに100万円以上返済済みの場合は、最低弁済基準額が一律で100万円になります。個人再生は債権者の合意が必要な手続きですが、過去の実績を見ても日本学生支援機構が再生計画案に不同意の意見を出す可能性は低いと考えます。つまり個人再生で手続きできる可能性は高いという訳です。
ただし個人再生を行うと国の機関誌「官報」に計3回、氏名や住所が載ります。また人的保証を付けている場合、個人再生で減額した分は保証人が肩代わりする必要が出てきます。さらに全ての債務整理に共通するデメリットとして、個人信用情報に事故情報として登録される点も挙げられます。
個人再生のメリット・デメリットや他の債務整理との違いについては、こちらの記事を参考にしてください。
「個人再生のメリット・デメリットを徹底分析!注意点・利用条件・他の債務整理との違いは?」
自己破産はデメリットと天秤にかける
借金をゼロ(免責)にできる自己破産は、デメリットとメリットを天秤にかけて判断しましょう。自己破産は借金を免責できるという債務整理の中で最も強力な手続きですが、次のようなデメリットがあります。
- 一定額以上の財産を処分される
- 官報に公告される
- 事故情報として掲載される
- 資格や職業の制限がある
- 連帯保証人に返済義務が移る
これら自己破産のデメリットと、借金がゼロになるというメリットを比べて、どちらを選ぶのが今後のためになるかをよく検討しましょう。
自己破産のデメリットやその解決方法については、こちらの記事を参考にしましょう。
「自己破産のデメリットを状況別に解説!誤解や嘘を解決して最適な選択へ」
人的保証だと保証人に請求が行く
奨学金を債務整理する大きなデメリットに、手続きすると連帯保証人・保証人に請求が行くという点が挙げられます。個人再生では減額した分が、自己破産では免責された分全額が保証人に請求されます。とくに奨学金は保証を付けるのが必須で人的保証を付けている場合が多いため、保証人に迷惑をかけるケースが多々あります。
そのため、本来なら自己破産してもおかしくない借金があるのにかかわらず、奨学金の保証人に迷惑かけられないと債務整理を躊躇する人が増えています。
自己破産すると連帯保証人がどうなるかについては、こちらの記事を参考にしましょう。
「自己破産すると連帯保証人はどうなる?借金の前と後&パターン別の対処法」
奨学金以外の借金も債務整理がおすすめ
奨学金以外にキャッシングやカードローンの借金を抱えている方は、債務整理を検討してもいいかもしれません。任意整理では整理する対象の債務者を選べるので、奨学金を整理対象から外せば保証人に迷惑をかけずに済みます。
また人的保証でなく機関保証を利用している方は、その他の借金と一緒に個人再生や自己破産を検討してもいいでしょう。個人再生は住宅ローンを抱えていても手放さずに済む「住宅ローン特則」があり、同時廃止で自己破産できると、費用や手続き期間を最小限に抑えられます。
債務整理にかかる費用や時間、手続きの流れについてはこちらの記事を参考にしましょう。
「国の『借金救済制度』は信頼できる?債務整理の特徴と依頼手順、その他の解決方法を解説」
まとめ
600万円の奨学金は最長の返済期間20年かけて返済することが多く、結婚やライフプランに狂いが生じる可能性があります。実際奨学金を返済している人の約4割が、卒業後の給与の低さや、雇用形態の不安定さから返済が苦しいと感じているようです。
とはいえ何も連絡せずに返済を延滞してしまうと、信用情報がブラックになったり一括請求されたりする可能性が。また保証人にも請求が行くなどして、最終的には財産を差し押さえられてしまいます。それを防ぐためには、日本学生支援機構が行っている各種制度や自治体、企業の支援制度を積極的に利用してみては?
利用できる支援制度がない場合は、債務整理を検討することをおすすめします。奨学金には個人再生や自己破産が有効ですが、自分に合う債務整理方法が分からないという方は、借金問題に強い弁護士に相談するのがベストです。他の借金と併せて、どんな解決方法があるかを教えてくれるでしょう。