- 「公務員が自己破産すると懲戒免職される?」
- 「自己破産していても公務員になれる?」
これから自己破産を考えている公務員の中には、職場にバレるとクビになるのでは?と心配になる方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では公務員が自己破産できるのかについてや、自己破産しても公務員になれるかについて詳しく解説。
また職場をはじめとする周囲にバレる原因やバレない対処法を紹介するとともに、公務員の自己破産で気を付けることでは自己破産を回避する方法や退職金の受け取りタイミングなども分かるようになります。自己破産についてお悩みの公務員の方や、自己破産しているけどこれから公務員になりたい方は参考にしましょう。
公務員は自己破産するとクビになるのか?
まずは一番気になっている「公務員は自己破産するとクビになる?」という疑問にお答えしていきます。
処分されたり免職になることはない
結論からいうと公務員だからといって自己破産してもクビになったり懲戒処分を受けることはありません。
公務員には「欠格事由」として、公務員であるための条件が地方公務員法によって次のように決められています。
- 成年被後見人又は被保佐人
- 禁錮以上の刑に処せられ,その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者
- 当該地方公共団体において懲戒免職の処分を受け,当該処分の日から2年を経過しない者
- 人事委員会又は公平委員会の委員の職にあって,第5章に規定する罪を犯し刑に処せられた者
- 日本国憲法施行の日以後において,日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを主張する政党その他の団体を結成し,又はこれに加入した者
地方公務員法によると、前科がある人など上の条件に該当する人は公務員になれないと規定されていますが、借金がある人や債務整理した人は欠格事由に当てはまりません。公務員は自己破産できないと誤解している方もいますが、実際公務員の方で仕事をしながら自己破産の手続きをしているケースもあります。
自己破産しても公務員をクビになったり、処分を受けることはないので安心してください。
自己破産の資格制限に当たらない
自己破産すると、破産手続き開始から免責許可決定が出るまでの間は一定の職業に就けない「資格(職業)制限」がかけられます。この資格制限には国家公務員や警察官、教師や市役所職員といった地方公務員の仕事は当てはまらないため、自己破産しても職業が制限されるという心配もありません。
ただし公務員の中で次のような役職の人は資格制限がかけられます。
- 都道府県公安委員の会委員
- 人事院の人事官
- 公正取引委員会
- 教育委員会
- 公証人
上に当てはまる業種の方は、免責許可決定が出るまでの2カ月~半年程度仕事ができなくなるため、職場に事情を説明して休職や他の部署へ移動しなければなりません。ただしこれらの職業に就いている人は公務員の中でもごく限られており、期間が過ぎれば復職できるため公務員を辞める必要はないでしょう。
職種によって服務規程違反になることも
ただし特別職と呼ばれる一部の公務員の場合、服務規程違反に当たることがあります。職種によっては「自身の支払い能力を超えた借金により経済的な破綻をきたしたり職務に影響を及ぼさないようにしなければならない」などと服務規程で決められている場合があります。
自己破産などの債務整理を行うとこの服務規程違反に当たるとみなされるため自分の職種は該当するのか調べ、該当する場合は何らかの処分を受ける可能性があることを知りましょう。
【ケース別】自己破産が及ぼす影響
すでに公務員になっている人だけでなく、これから公務員になろうと考えている人や「家族が自己破産しているけど公務員になれる?」といった人のために、こちらではケース別の影響を解説していきます。
公務員試験は受けられる?
たとえ自己破産していたとしても国家公務員、地方公務員に関わらず公務員試験を受けることは可能で、試験に合格したら働くことも問題ありません。成年被後見人や前科のある人などは公務員になれませんが、債務整理をしてブラックリストや官報に載っても公務員試験に影響することはないでしょう。
債務整理とブラックリストの関係性は、こちらの記事で詳しく解説しています。
「債務整理するとブラックリストにのる?気になる「ブラックリスト」についてすべてお答えします!」
基本的に上で説明した公務員の欠格事由に当てはまらない限りは、公務員試験を受けられると考えましょう。
就職時の影響
実際に就職するときになって「過去の自己破産が明らかになってしまうのでは」と心配される方もいるでしょうが、自己破産をしていても就職時にバレたり問題になることはないでしょう。就職時の提出書類には戸籍謄本や住民票、運転免許証などがありますが、それらの公的書類には債務整理について記載されることはありません。
たくさんいる就職予定者すべてに興信所などを付けて身辺調査しない限り自己破産の事実はバレることがないので心配しなくても大丈夫です。また自己破産をしても免責を受けられなかった場合は本籍地の自治体役場で作成される「破産者名簿」に載ることになりますが、きちんと免責許可が下りた場合は記録にも残らないため、公的書類からバレるという確率は低いでしょう。
親や家族など身内の自己破産
たとえ親や親戚など身内が自己破産していても、自分の就職に悪影響を及ぼすことはなく、どんな職業に就くことができます。よく「親である自分の債務整理が子どもの就職活動に影響を与えるのでは」と躊躇される人がいますが、親が自己破産により職業制限を受けたとしても、子どもの職業に影響がないので安心しましょう。
公務員の自己破産がバレるケースとバレない対処法
法律上は自己破産しても公務員をクビにならないと分かっていても、やはり上司や職場にバレてしまったら居づらくなったり出世に響くのではと不安になる方もいるのではないでしょうか。そこで公務員の自己破産が職場にバレる可能性がある原因と、バレないための対処法を紹介。極力職場に内緒にしておきたい方は参考にしましょう。
バレる可能性があるケース
公務員の自己破産がバレるのは、このようなことが原因です。
税金・借金の滞納
公務員であっても支払うべき税金や借金を滞納したままだと、給与差し押さえにより職場にバレてしまう可能性があります。特に税金を滞納したままだと、裁判所を通さずすぐに差し押さえなどの行政処分が下されるので注意しましょう。給与に関しては全額ではなく一部の差し押さえになりますが、職場に国税局などから連絡が来ます。
また借金の滞納では、借金の相手(債権者)が返済を求めて裁判を起こし支払い命令が下されれば、裁判所から職場に連絡が来て給与が差し押さえられます。少なくとも給与計算担当者にはその事実が知られてしまうでしょう。
共済組合からの借り入れがある
地方公務員の年金制度の運営や組合員への貸付を行っている「共済組合」という組織がありますが、その共済組合の貸付制度を利用してお金を借りている場合、自己破産したことがバレる可能性があります。自己破産手続きでは、すべての債権者に対して自己破産する旨を伝える「受任通知書」を送付しなければならず、裁判所からの通知も送られます。
共済組合から借り入れしている場合は、共済組合も債権者とみなされ自己破産の対象となります。共済組合からの借り入れはほぼ給与からの天引きになっていますが、自己破産するときにはすべての債権者に対して平等にしなければならず、天引きされる共済への返済もストップする必要が。こちらも職場の給与担当者に知られることを覚えておきましょう。
互助会で積み立てをしている
「互助会」を利用している場合は、職場や周囲にバレる恐れがあります。というのも互助会の積立金は自己破産では財産とみなされるため、積立金を払い戻してもらって債権者に平等に分配しなければなりません。互助会とは公務員の所属や業種によって加入できる相互扶助組織で、加入者の冠婚葬祭時のお祝い金や休職時に支払う補償金を、給与から天引きという形で積み立てています。
自己破産ではおよそ20万円を超える財産があると、破産管財人によって現金化され債権者に配当されます。長年互助会に加入しているとこの積立額が20万円を超えていることがあり、自己破産すると管財人が互助会に連絡が行き、互助会の会計担当者を通じて周囲にバレる可能性があることを覚えておきましょう。
官報に掲載される
自己破産をすると破産開始決定が出されたときと免責許可決定が出たときの合計2回「官報」に掲載されます。この官報が誰かに見られて自己破産が職場にバレる可能性が。官報とは政府が発行する機関誌で、法令や法律の制定、入札情報や裁判所の公告などが掲載されます。自己破産は裁判所を通す手続きのため、決定が出たタイミングで破産者の住所氏名が官報に掲載されるという訳です。
ただ官報を日常的に見るのは消費者金融などの金融機関や保険会社、不動産業者など限られた一部の人に過ぎません。まれに市役所の納税課の職員や税務署職員がチェックすることもありますが、官報に載ったことで職場にバレる確率はごくまれだと考えていいでしょう。
バレないための対処法
では公務員の自己破産が職場にバレないためには、どんなことに気を付けて対策すればいいでしょうか。
周囲の人に話さない
自分の口から周囲にはなるべく自己破産のことを話さないのが一番の対策です。借金問題や返済できないといった大きなストレスを抱えていると、つい親しい人や周囲の人に話したくなってしまいます。「誰にも言わないでと約束したのに…」と思うかもしれませんが、人の口には戸を立てられないもの。
いつの間にか周囲にその噂が広がってしまうこともあるため、職場にバレたくなければ借金のことや自己破産のことは絶対に自分から話さないようにしましょう。
任意整理を検討する
自己破産ではなく任意整理を検討するのも、周囲にバレない方法のひとつです。任意整理は自己破産と同じ債務整理の手続きですが、裁判所を通さずに債権者と直接交渉することで、借金の利息や遅延損害金を減額したり返済期間を延長できます。通常は3年から長くても5年かけて減額された借金を返済していきます。
任意整理では整理する債権者を選べることから、職場に知られる可能性が高い共済組合からの借り入れを対象から除外したり、積み立てている互助会費に手を付けずに済みます。公務員は収入が安定しているので、任意整理をしても毎月の返済に困るということは少ないでしょう。もし弁護士に相談して任意整理も可能だということなら、任意整理を検討した方がいいかもしれません。
弁護士に相談
法律の専門家である弁護士に相談すると、あなたの希望や借金の総額に応じた債務整理の方法を提案してくれるでしょう。債務整理を弁護士に相談すると次のようなメリットがあります。
- 返済の催促がストップできる
- その人のケースに合った債務整理を検討してもらえる
- 無料相談できることが多い
その中でも借金問題に詳しく、債務整理の実績が豊富な弁護士ならなお安心です。「職場に絶対に知られたくない」「どんな債務整理の方法が自分に合っているか知りたい」という方は、まず弁護士事務所の無料相談に行ってみてはいかがでしょうか。
公務員の自己破産で気を付けること
公務員が自己破産しないためには、次のようなことに気を付けましょう。また自己破産する場合は退職金受け取りのタイミングがポイントです。
民間企業より借り入れしやすいことを自覚
公務員は収入が安定し、社会的信用度が高いため他の民間企業よりも借り入れの与信審査に通りやすく借金がしやすいということをよく理解しましょう。公務員の中には借り入れしやすいということで、複数のところから借金する、いわゆる「多重債務」に陥る方がいます。
多重債務により借金が膨らんで返済できなくなると自己破産するしか方法がありません。何かのきっかけで職場にバレ、仕事がしにくくなって最悪の場合は退職せざるを得なくなります。公務員という立場は他の社会人よりも借金がしやすいということを自覚し、節度ある借り入れに抑えることが自己破産しないための一番の秘訣です。
ギャンブルによる借金は自己破産できない
自己破産は借金が免責されるというメリットがありますが、借金の原因がギャンブルだというケースでは自己破産できない可能性があります。自己破産には免責できない要件「免責不許可事由」というものがあり、ギャンブルや浪費、FXや先物取引といった「射幸行為」とみなされる投資行為による借金は、手続きしても免責されません。
ストレスを感じやすい職場にいるとついギャンブルなどでストレス発散しがちですが、これらの行為が原因で作った借金は自己破産による免責はできないことを理解するのが自己破産しないために必要です。
借金原因を追究し適切に対処する
どうして借金が増えたかの原因を追究し、適切な対策を取ると自己破産しなくても済む場合があります。例えば利息が高すぎて元本がなかなか減らないなら、利息の低い銀行のおまとめローンなどへ借り換えるのが有効です。またリボ払いで借金が減らない場合は一括払いへ変更するのがおすすめ。
また消費者金融やカーローン、闇金融といった借金の相手先によっても返済のコツが異なります。ギャンブルや買い物が止められないという依存症が根底原因の場合は、カウンセリングに行ったり余計な現金を持たない等の工夫が必要です。
借金の減らし方や返済のコツについてはこちらの記事を参考にしましょう。
「借金の元金が減らない!7つの原因の解決法&種類別の減らし方」
「【種類別・ケース別】借金を返済するコツは?返済が厳しい場合の解決法も解説!」
退職金受け取りのタイミングと差し押さえ額
公務員が自己破産する場合は、退職金受け取りのタイミングで差し押さえの金額が変わってきます。というのも公務員の退職金は他の一般企業と比べても高額になる可能性が高いため、「退職金は給与の後払い」という法的な解釈から住宅や預貯金同様に財産としてみなされます。
退職金は
- 退職金をすでに受け取っている
- 近い将来に受け取り予定になっている
- 当分受け取り予定がない
という3つのタイミングごとに、債権者への返済のために支払う金額が変わってくるので注意が必要です。
すでに受け取っている
すでに公務員を退職して退職金を受け取っている場合、現金や預貯金と同じ扱いになるため
- 99万円以下の現金
- 20万円以下の預貯金
しか手元に残せません。20万円以下の預貯金を残した場合は、現金は99万円から預貯金額を除いた金額しか残せません。たとえ退職金を数千万円受け取っていたとしても、これら手元に残せる限度額以上は処分され、債権者への返済に充てられます。
近い将来受け取り予定
近いうちに退職することが決まっていて、退職金もそのときに手にできる場合は、破産管財人に退職金見込み額の1/4相当を支払わなければなりません。退職金を受け取ることが確実だと「退職金請求権が確定」している状況と考えられ、給与やボーナスと同様に破産法での「差押禁止債権」に該当します。
差押禁止債権は総額の3/4は差し押さえできないと決まっているので、残りの1/4が債権者への支払いに回されます。退職金が後で入ってくるとはいえ、数千万円の退職金の1/4の金額を退職前のタイミングで準備しなければ自己破産できないということは気を付けたいポイントです。
退職予定はない
当分退職する予定がなく退職金もいつ貰えるか分からないという場合は、今退職したと仮定した時に受け取れる「退職金見込み額」の1/8を債権者への分配に回すことになります。これは自己破産しても退職金を受け取れるのは何十年も先になることや、本当に退職金を受け取れるか不確実なため、1/4ではなく1/8を処分するという扱いです。
さらにこの1/8が20万円に満たない場合は、退職金全額を手元にのこせる「自由財産」にできます。勤続年数が短い方や若い方は当てはまるでしょうが、1/8相当でも数百万円になる恐れのある方は、自己破産手続き時に準備できないと免責が許可されないので注意が必要です。
もしも退職金見込み額の準備が難しいと判断したら、任意整理といった他の債務整理の方法を検討したり、自由財産の拡張を要請するなどの方法で、借金問題を解決しなければなりません。
まとめ
法的には公務員が自己破産しても懲戒免職になることはなく、自己破産しても公務員試験や就職時にバレる心配がほとんどないため問題なく公務員になれるでしょう。しかし共済組合からの借り入れや互助会の積み立て、税金や借金の滞納により職場に知られてしまう恐れがあります。
職場に知られても必ずしも辞める必要はありませんが、周囲とぎくしゃくしたり昇進の査定にマイナスに響く可能性はあります。もしどうしても知られたくない方は、任意整理で借金を減額することや弁護士に相談することを考えましょう。
公務員が自己破産しないためには、公務員は借り入れのハードルが低いことを自覚して借金の原因を追及するのがポイント。また公務員は退職金の金額が高い傾向があるため、自己破産するタイミングを良く見極める必要があります。