- 「任意整理の情報でよく見かける将来利息って何?」
- 「任意整理でできるだけ借金を減らしたい。どうすればいい?」
任意整理とは弁護士や認定司法書士に依頼をし、金融機関と交渉をしてもらうことで返済金額を減らす手続きのこと。交渉がうまくいけば将来利息の全額もしくは一部をカットしてもらえます。
「将来利息」とは文字通りこの先将来にかかる利息のこと。この部分が減額できれば借金の負担を大きく軽減できます。しかし任意整理をすれば必ずカットできるわけではなく、状況によっては手続きが失敗することもあります。
将来利息は実際にどれくらい加算され、任意整理によってどれくらい軽減できるのかについて解説を行います。任意整理において将来利息のカットを成功させるポイントについても確認をしていきましょう。
将来利息とはこの先支払う予定の利息
任意整理では、弁護士や司法書士がどこまで利息をカットできるかを金融機関と交渉することになります。ただ一言で「利息」と言っても、どの部分で加算されている利息なのかによって呼び方は異なります。
- 経過利息
- 債務整理を開始してから和解までにかかる利息
- 将来利息
- 和解後、完済までにかかるはずの利息
- 遅延損害金
- 返済が遅れたときに賠償として支払う額
借金苦の原因の多くは利息
お金を借りた際にかかる利息は年率、すなわち一年間借りたときの利息です。そのため一日あたりの金額で計算すると少ない金額になりますので、それほど負担にならないと考える方も多いのですが、実際にはそのようなことはありません。元金にかかる利息は借金返済における大きな負担となります。
例えば50万円を借りて毎月2万円ずつ返済をすると計画したとします。返済までにかかる年月を概算で考えたとき、50万円÷2万円で25回、すなわち2年少しで返済できるだろうと思う方が多いはずです。
しかし実際にはそこまで返済を早く終わらせることはできません。実際に消費者金融で50万円を利息18.0%で借り、毎月2万円を返済するとしてシミュレーションを行った場合、支払総額や支払回数は以下のようになります。
利息合計 | 支払総額 | 支払い回数 |
---|---|---|
131,374円 | 631,374円 | 32回(2年8カ月) |
シミュレーション参考:アコム ご返済シミュレーション
返済が半年以上長くなるだけでなく、利息が13万円以上も加算されることになります。借りたときには「余裕で返せる」と思っていたにも関わらず、想定よりも返済期間が長くなること、支払う金額が高くなることが借金苦の原因となります。
将来利息カットによるメリット
任意整理では原則として元金はカットできず、上記で挙げた将来利息の部分をカットできるかどうかを交渉することになります。元金そのものをカットできる個人再生、借金を全て免責できる自己破産と比較すると、あまり減額ができないのでは?と考える方も多いです。
確かに借りている利息が低い場合、任意整理を行っても借金を大きく減額はできないのは事実です。しかし以下のように利率が高いローンの場合、利息カットだけでも返済の負担を大きく軽減できます。
- 消費者金融
- クレジットカードのリボ払い残高、キャッシング
- 銀行のカードローン
将来利息を全額カットできた場合、先ほどのシミュレーションでで加算された利息を一切カットできるということです。先ほどのケースの場合だと本来支払うはずの利息13万円分を減額し、残った元金だけを分割で支払うことになります。
利息合計 | 支払総額 | 支払い回数 |
---|---|---|
0円 | 500,000円 | 26回(2年1カ月) |
任意整理における将来利息カットの事例
ただ実際にどれくらい利息をカットできるかは債権者の方針や依頼する専門家、債務者の状況などによって異なります。ここでは実際の任意整理において将来利息をカットできた事例を紹介します。
将来利息を全額カットできた例
返済総額 | 月々返済額 | |
---|---|---|
債務整理前 | 285万円 | 48,000円 |
債務整理後 | 200万円 | 33,000円 |
200万円の借金残高にかかる将来利息を全額カットで和解できた事例です。任意整理を行わなかった場合は支払総額が285万円となる計算でしたが、将来利息の完全カットにより残額のみの分割払いに。それに伴い月々の返済金額も減らすことができました。
将来利息を18.0%から5.0%に減額できた例
返済総額 | 月々返済額 | |
---|---|---|
債務整理前 | 91万円 | 25,000円 |
債務整理後 | 73万円 | 20,000円 |
消費者金融からの借入の残高が70万ある状態から債務整理を行いました。将来利息の全額カットはできませんでしたが、交渉により利率の引き下げに成功した事例です。支払総額を20万円近く減額できています。
将来利息をカットできないケース
任意整理を紹介している広告やネット記事は「任意整理をすれば必ず負担が減る」と思わせる表現が多い傾向があります。確かに任意整理をすれば返済が楽になるケースが大半です。
しかし実際には任意整理をしても負担が減らない、つまり将来利息のカットに成功しない場合もあります。実際に将来利息のカットに成功しないのはどのようなケースなのか、詳しく解説をしていきます。
金利が低い
任意整理でカットができるのは利息部分です。そもそも借りている利息が低い場合、任意整理をしてもほとんど効果がありません。
例えば50万円を借りて毎月2万円を返済していく場合を考えます。利息が18%の時と3%のとき、それぞれ完済までに支払う将来利息を計算すると以下の通り。
利率 | 利息合計 | 支払総額 | 支払い回数18.0% |
---|---|---|---|
18.0% | 131,374円 | 631,374円 | 32回(2年8カ月) |
3.0% | 16,943円 | 516,943円 | 26回(2年2カ月) |
もし年率3.0%で返済をしている方が「返済が苦しい」と考え任意整理を検討しても、カットできる将来利息は最大でも17,000円程度ということになります。
任意整理を行うには専門家に費用を支払う必要がありますが、カットできる金額が少ないのでは費用を払って任意整理をしても意味がないように思えます。
利率が低いローンを借りていて返済が苦しい場合、元金自体を減らせる個人再生、もしくは自己破産を検討したほうがよいでしょう。
借金総額が低い
将来利息は借りている金額に乗じて加算されますので、借金総額が低いと加算される将来利息も低くなります。先ほどの金利が低いケースと同様にカットできる部分が少なくなるため、任意整理をしてもあまり意味がありません。
複数のローンを抱えている方は残高が高いローンを優先して任意整理を行うとよいでしょう。残高が低いと任意整理の効果がないからといって、おまとめローンを組んで一本化を行い任意整理をするのはお勧めしません。
詳しくはこの後に解説を行いますが、契約をしてからすぐに任意整理をしようとしても失敗するケースが大半だからです。
一度も返済をしていない
一度も返済しないまま任意整理を行おうとした場合も将来利息をカットしてもらえない、そもそも任意整理自体に応じてもらえない可能性が高いです。
借りてすぐに将来利息をカットしてほしいと交渉しても、最初から支払をしないつもりだったのでは?と思われ、減額に応じてもらえません。支払いから数回しか経っていない場合も同様、任意整理の交渉を断られる恐れが。
困っているのだから取引期間に関係なく利息をカットしてほしいと思うかもしれません。しかし貸金業者にとっては利息部分が利益。利息を払ってもらえないと経営自体が成り立たないため止むを得ないことです。
ただし一度も返済をせず長期間借金を放置している場合、借金の時効が成立している可能性も挙げられます。時効の成立条件は以下の通り。
- 最終返済日から5年が経過している
- 時効の中断事由がない
この両方に当てはまった場合に「消滅時効の援用」の手続きを行うことができ、そこで初めて時効が成立します。時効について詳しく知りたい方は以下のページも併せてお読みください。
借金の時効援用が失敗するケースを解説|失敗を防ぐ確認方法と失敗したときの対処法
任意整理が2度目である
実は任意整理には回数、期間に制限がありません。そのため任意整理自体は何回も行うことができます。一度任意整理をして返済を始めたものの、また返済が苦しくなったため再度任意整理の依頼をしようと考えるケースは決して珍しくありません。
しかし一度任意整理をしたローンに対してもう一度任意整理をしようとする場合、将来利息のカットには応じてもらえないケースがほとんどです。1回目で減額した将来利息をさらに減額することになるため、そもそも2回目の交渉自体を受付していない債権者も。
ただ状況によっては2回目の任意整理が成功することもあります。詳しくは以下の記事でまとめていますので、2回目の任意整理を検討している方はぜひお読みください。
2回目の任意整理はできる?失敗しないための注意点、成功のコツを解説
返済能力がない
任意整理でカットできるのは利息部分のみで原則として元金はそのままです。減額する金額を決定したあとは、残った金額を毎月どれくらい返済ができるか、どれくらいの期間で完済するかを債務者と債権者で話し合います。
そして以下の内容を記載した和解書(合意書、示談書とも)を交わします。
- 今後の支払総額
- 毎月の返済金額
- 返済期日
- 返済方法
- 支払いが遅れた際の処遇
すなわち任意整理は返済計画の立て直しでもありある程度の返済能力があることを前提にして手続きを行うことになります。すなわち返済能力がない場合は任意整理そのものができません。
自分で交渉している
任意整理では自己破産・個人再生のように裁判所で手続きをするのではなく、債権者に直接減額ができないかどうかを交渉します。交渉のために弁護士を依頼するとお金がかかりますので、自分で任意整理をしようと考える方もいます。
しかし自分で交渉をした場合は以下のいずれかに陥るケースが大半であり、将来利息をカットすることが難しくなります。
- 専門家に依頼するように言われる
- 不利な条件で和解になる
専門家に依頼するように言われる
まずそもそも個人からの任意整理を受付していないケースです。法的知識がない素人を相手に任意整理をする場合、債権者側に時間や手間がかかります。専門家相手であれば少しのやりとりで済む話を、詳しく説明をしながら進めなくてはいけません。
銀行や大手消費者金融は膨大な数の顧客を抱えており、業務内容も多いため、このような個人の任意整理に対処するほどの余裕はありません。そのためマニュアルで個人からの任意整理は受け付けないと既に決まっている会社も多いです。
このような債権者には任意整理をしたいといくら持ち掛けたとしても「専門家に依頼してください」の一点張りで、いわゆる門前払いとなります。
不利な条件で和解になる
個人からの任意整理を受け入れている債権者でも交渉がまとまらない、もしくは債務者に不利な条件での和解になることが大半です。
過去に何件もの任意整理を行っている弁護士であれば、過去の減額実績と照らし合わせながら交渉を行うことができます。もし債権者が過去のケースよりも不利な条件を提示した場合、なぜ今回は減額できないのかを確認し、完済までの年数や金額を臨機応変に調節してくれます。
しかし個人の場合は過去の基準は全く分かりません。相手が「当社はここまでしか将来利息をカットできない」と提示してきた場合はその条件で和解せざるを得ません。
また本来であれば過払い金があるにも関わらず、あえて自分からは言及しない債権者もいます。結果として弁護士や認定司法書士に依頼をしたほうが有利になることが多いです。
会社の方針で決まっている
多くの債権者は任意整理に応じてくれますが、中にはそもそも任意整理自体に全く応じない業者もいます。任意整理自体ができないのであれば将来利息はカットできません。
任意整理を何件も請け負っている弁護士であればどの業者が任意整理に応じないのかについても知り尽くしていますので、自分が借りている業者が協力的なのか気になる方は無料相談などで確認をしてみてください。
任意整理は実績豊富な弁護士に依頼を
任意整理において将来利息のカットに成功したいのであれば任意整理の実績が豊富な弁護士に依頼をしましょう。
弁護士の数は現在約4万人ですが、弁護士の業務は多岐に渡りますので得意な業務内容・交渉は様々で、中には任意整理の実績が少ない方もいます。できるだけ将来利息をカットしたいのであれば、弁護士が得意とする分野を確認してから依頼をするようにしてください。
任意整理は債権者との交渉
繰り返しになりますが、任意整理はあくまでも債権者との交渉です。任意整理手続きをしたからといって相手が必ず決まった分を減額してくれるわけではありません。
将来利息は債権者側の利益にあたる部分ですので、債権者側も本来ならばできるだけカットしたくありません。そのため「今までの返済期間が短い」「一回あたりの返済金額が低い」など理由をつけ、将来利息の全額カットに応じないこともあります。
任意整理の実績が豊富な弁護士であれば、どの債権者がどこまで交渉に応じるか、譲歩できない部分は何なのかを知りつくしているため、強気に交渉を行うことができます。そして最良な和解条件を引き出すことが可能です。
会社によってカットできる利息は異なる
任意整理が成功すれば将来利息をカットできますが、全額を必ずカットできるわけではありません。経営が厳しい債権者の場合、5%程度までの利息引き下げしか行わないことも。そもそも任意整理に協力しない債権者もいます。
任意整理に携わる弁護士は債権者ごとの特徴、傾向もよく理解しています。複数のローンを抱えている場合、どのローンを任意整理すれば返済がより軽減できるのかについても判断してもらうことができます。
まとめ
将来利息とは今ある借金に対し完済までにかかる利息のことを指します。正確には債務整理をした和解後~完済までの利息の呼称です。
消費者金融や銀行のカードローンなどの利息が高い会社から借りている場合、将来利息は大きな負担となります。追加で借金をした場合、一回の返済金額が少ない場合は完済までの期間は長くなり、その分利息が加算され続けるためです。
任意整理では将来利息の部分をカットすることができ、それにより支払総額や月々の返済金額を減らせます。しかし任意整理は債権者と交渉をする手続きですので、必ず将来利息をカットできるわけではなく状況によっては減額に成功しないこともあります。
将来利息の減額をしたいのであれば任意整理を得意とする弁護士に相談をしましょう。様々な任意整理に携わった弁護士であれば、債権者ごとの交渉のコツや傾向を知りつくしていますので、依頼者の状況に合わせて臨機応変に交渉を行ってくれます。依頼費用はかかりますが、将来利息のカットに成功すればかなりの金額が減額でき、結果として返済を軽減することが可能です。