- 「生活保護をもらいながら借金しても問題ない?」
- 「生活保護受給中にお金に困ったときの相談先が知りたい」
これから生活保護の受給申請をしようと思っている方、すでに生活保護を受給している方は、借金の有無がとても重要になります。場合によっては申請が却下されたり、受給できる金額が減ってしまう場合も。とくに保護費の中から借金返済しようとしている方は注意が必要です。
生活保護を受給中にお金に困ったときでもすぐに借金したりせず、適切な対処法を取る必要があります。生活保護と借金問題は、ある意味切っても切れない関係です。場合によっては自己破産を検討しながら、いち早く生活を再建できるようにしていきましょう。
生活保護の実態と現状
まずは、生活保護の実態と現状について解説していきます。
生活保護とは
生活保護とは、憲法で定められている「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するとともに、自立を促すことを目的としている制度です。困窮の程度に応じて、必要な保護を行うことを目的としています。生活保護は世帯単位で支給され、生活保護法によって次のような要件が定められています。
- 生活に困窮する世帯員全員が
- その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを
- その最低限度の生活の維持のために活用すること
さらに扶養義務者による扶養は、生活保護法による保護に優先するともしています。生活保護の相談及び申請窓口は、お住まいの地域を管轄する福祉事務所の生活保護担当です。福祉事務所は市(区)ごともしくは、町村部では都道府県が設置しています。生活保護では、以下のような生活を営む上で必要な各種費用に応じて支給されます。
生活扶助 | 日常生活に必要な食費・被服費・光熱費などの費用 |
住宅扶助 | アパート等の家賃 |
教育扶助 | 義務教育を受けるために必要な学用品費 |
医療扶助 | 医療サービスの費用 |
介護扶助 | 介護サービスの費用 |
出産扶助 | 出産費用 |
生業扶助 | 就労に必要な技能の習得等にかかる費用 |
葬祭扶助 | 葬儀等にかかる費用 |
受け取れる保護費の金額
では世帯当たりどのくらいの生活保護費を受け取ることができるのでしょうか。生活保護費は厚生労働大臣が定める基準で計算されます。収入(年金・児童扶養手当・親族による支援等も含む)と最低生活費を比較して、収入の方が少ない場合には、差し引いた金額が保護費として支給されます。
日常生活に必要な生活扶助の月額は、第1類費+第2類費+特例加算+経過的加算の合計となります。第一類費はお住いの地域によって異なり、次のような金額になります。
厚生労働大臣が定める基準で計算される最低生活費と収入を比較して、収入が最低生活費に満たない場合に、最低生活費から収入を差し引いた差額が保護費として支給されます。
保護費の内訳・詳細 | 1級地-1(東京都特別区など) | 2級地-1(地方都市) | 3級地-2(過疎地域) |
---|---|---|---|
第1類費(年齢別基準額) | 46,930円 | 43,640円 | 38,950円 |
第2類費(1世帯基準額) | 27,790円 | 27,790円 | 27,790円 |
特例加算(世帯員1人につき固定) | 1,000円 | 1,000円 | 1,000円 |
経過的加算(過去の減額状況を調整) | 700円 | 0円 | 0円 |
合計支給額 | 76,420円 | 72,430円 | 67,740円 |
参照:生活保護制度における生活扶助基準額の算出方法(令和7年4月)|厚生労働省
2025年4月時点で支給される生活保護費は、6.8万~7.6万円にとどまります。決して高い金額ではありませんが、住宅や医療などを扶助ごとにカバーするので、ギリギリ世帯を維持できる金額となっています。その代わりぜいたく品や交際費までは十分にカバーできないというのも現状です。
【2025年版】制度の拡充ポイント
物価高騰の影響は、生活保護世帯にも重くのしかかります。そこで生活困窮者自立支援制度の一部が法定化され、支援を拡充させる動きがみられます。現時点(2025年8月)での最新の変更点を紹介するので、適切な支援を受けるための参考にしましょう。
生活保護の特例加算が増額
2025年10月から、生活保護費(生活扶助)の特例加算が増額されることになりました。2023年からの2年間ですでに特別加算として1,000円増額されていたものに、さらに500円が加算されて1,500円支給されます。これは物価高騰による生活費の負担増に対応するための措置です。
500円増額される期間は、2025年度から2年間としていますが、景気の動向を判断したうえで変更になる可能性もあります。
参考:【2025年10月施行】《生活保護》2025年度から2年間「生活扶助」が月額500円増額!対象となる方へ「月額1500円」支給に|YAHOO!ニュース
「就労準備支援事業」と「家計改善支援事業」が法定化
2025年4月1日からは、生活困窮者自立支援制度における「就労準備支援事業」と「家計改善支援事業」が法定化されました。これにより、従来は任意事業として実施されていた支援が自治体で必須の支援となり、より多くの生活困窮者が支援を受けられるようになりました。
就労準備支援事業では、就労に向けて準備が必要な人に対して、日常生活や社会生活、経済的自立に向けた訓練を実施します。また家計改善支援事業では、家計の見直しが必要な人に対して、家計表等を使用して家計を把握して家計改善意欲を高めるための支援を行います。
参照:令和6年生活困窮者自立支援法等改正への対応ガイド|厚生労働省
子どもへの学習・生活支援が充実
2025年度からは、貧困の連鎖を防ぐために子どもの学習・生活支援事業の強化が行われます。支援の内容は次のようなものです。
・基礎学力の向上、学習の習慣付けを目的とした学習支援
・高等学校受験のための学習支援
・子どもや保護者を対象とした、生活習慣や進学等に関する教育相談支援
・子どもの居場所の提供
また自治体によっては、子ども食堂や企業等と連携し、学習会の実施やボランティアの育成などの支援も行われます。
参照:貧困の連鎖防止(子どもの学習・生活支援事業等)について|厚生労働省
生活保護を受給しても赤字になりやすい
上で示した通り、現金で支給される生活扶助費は最低限の金額となっているため、赤字になる世帯も少なくありません。とくに子どもへの教育費にお金をかけたい方や保険外医療の必要がある人、返済すべき借金がある方は赤字になりやすいです。
また緊急事態が起こり出費の必要が出た、思わぬ出費でまとまったお金が必要となった場合でも、十分な蓄えがなく困る人が出てきます。
生活保護を受けている間に借金してもいい?生活保護と借金の関係
生活保護を受給しようという人の中には、生活に困って借金を抱えている人も少なくありません。また生活保護を受給していても様々な事情で赤字になり、どこかからお金を借りたいと考えている方もいるでしょう。そこでこちらでは、生活保護と借金の関係について詳しく解説していきます。
借金があっても生活保護を受給できる
すでに借金があっても、生活保護の受給を申請できます。というのも生活保護の要件の中に、借金があると生活保護を受けられないといった規定がないからです。生活保護の要件は、簡単にいうと次のような内容です。
- 働いて収入を得ることが難しい
- 収入(年金・手当等)を得ていても、生活に十分とはいえない
- すでに自分が持っている資産を切り崩している
- 親戚や親族からの援助が受けられない
このように法律上は、借金の有無が生活保護の受給に影響を及ぼすことはありません。
受給前からの借金は免除されない
生活保護の要件を満たせば、借金があっても生活保護を受給できます。しかし生活保護を受けていても、借金が免除されることがない点が要注意です。受給申請が通り生活保護を受給できるようになったことと、借金の返済については別問題だからです。これまでの借金がゼロになるという訳ではありません。
また生活保護の受給によって、債権者からの取り立てが止むという効果も期待できません。
保護費からの返済はNG
生活保護は最低限度の生活を維持するために支給されるものなので、保護費を使って借金返済に充てることはできません。これは生活保護法第12条にも規定されていて、現金で支給される生活扶助は、衣食など日常生活に必要な物品の購入や、病気やケガなどによって自力で医療機関に行けない場合に、通院や入院のために移動する費用として使わなければならないとしています。
(生活扶助)
第十二条 生活扶助は、困窮のため最低限度の生活を維持することのできない者に対して、左に掲げる事項の範囲内において行われる。
一 衣食その他日常生活の需要を満たすために必要なもの
二 移送
厚生労働省でも、保護費で住宅ローンといった借金を返済することは認められないと明言しています。もし保護費で借金を返済したことがバレてしまうと、生活保護の支給停止や返還金の請求、刑事告訴といったリスクが生じる可能性が。さらに保護費の見直しや減額の対象となる恐れもあります。
たとえ債権者からの催促が厳しくても、保護費から返済するのは厳禁です。
借金を放置するのは危険
保護費から借金を返済できないからといって、借金をそのままにしておくのは大変危険です。それは次のようなリスクが生じる可能性があるからです。
遅延損害金が発生する
借入時の契約で決められた返済期日までに返さないと、返済期日の翌日から遅延損害金が発生します。遅延損害金とは、約束の日までに支払いができなかったことに対する損害賠償金のようなもので、通常の金利よりも高い利息(借入上限利率の1.46倍)が設定できると利息制限法で定められています。
カードローンやキャッシングでは年率20%と設定されているケースが多く、長期間放置していると、元本を超えるような多額の遅延損害金請求される場合も少なくありません。
督促を受ける
借金の返済が遅れると、支払を求めて督促を受けます。契約時に記入した電話番号への連絡と、自宅に書面で届く場合があります。これは返済が行われるまで続くので、精神的ストレスになる人も少なくありません。さらに貸金業者から届いた郵便物を訪問してきたケースワーカーに見つかってしまうと、借金があることがバレる恐れがあります。
ブラックリストに載る
借金を返済できずに延滞の状態が長期間(61日以上)続くと、信用情報機関にある自分の信用情報に、延滞しているという内容に情報が掲載されます。これがいわゆる「ブラックリストに載る」という状態です。一度ブラックリストに載ると、延滞を解消(完済)した場合でも、完済日から5年間は情報が残ります。
この期間は、次のようなことができなくなります。
- 貸金業者からの借金やローン
- クレジットカードの利用・更新・新規作成
- 携帯電話の分割購入
- 奨学金などの保証人になること
- 信販会社が保証会社となっている賃貸物件の契約
生活保護受給中に問題になりやすいのが携帯電話の購入や賃貸物件の契約です。携帯電話は現金で一括購入したり中古品を購入する必要があります。また賃貸物件の契約については、公営住宅やUR賃貸といった保証会社が不要な物件や、連帯保証人を立てて契約する必要があるでしょう。
ブラックリストがいつ消えるか知りたい方は、こちらの記事を参考にしましょう。
「ブラックリストはいつ消える?消し方は?個人信用情報をきれいにする方法」
裁判を起こされて強制執行される
借金を返済せずに放置していると、最終的には裁判を起こされて強制執行となります。生活保護を受けているからといって、裁判を止める手立てはありません。一定以上の給与や預貯金、車などが差し押さえの対象となります。
一般的に生活保護を受ける権利は差押えの対象外となりますが、保護費が一旦銀行口座に振り込まれてしまうと、それらはすべて銀行に預け入れている預貯金となります。そのため生活保護費であっても、強制執行によって差し押さえられる可能性が出てくるので注意が必要です。
受給中は新たな借金ができない
生活保護受給中は、新たに借金をすることができません。保護費だけでは足りないと感じていても、貸金業者からお金を借りるのはNGです。
生活保護制度の趣旨から外れるため
生活保護受給中に借金ができないのは、制度の趣旨から外れるためです。そもそも生活保護は、働きたくても働けない人や経済的に困窮している人に対して、生活を維持するための必要最低限の費用を支援する制度。制度の中ではぜいたく品を購入したり娯楽のための支出は基本的に認められず、資産の管理にも規定があります。
この規定の一環として、借金や借入に関する行為も制限されているという訳です。
借入審査に落ちる可能性がある
法律の趣旨から外れるだけでなく、借入審査に落ちる可能性があるということも覚えておきましょう。消費者金融等の貸金業者から借入するときには、通常収入審査や勤め先への在籍確認などが行われます。とくに消費者金融は安定した収入の有無が重要となるため、収入が生活保護費のみでは審査に通りにくいという傾向があります。
黙って借りようと思っても、他社借入額の調査や収入証明書の提出が求められるため、バレる可能性が高いでしょう。
受給中でも借りられる(ソフト)闇金は危険!
正規の貸金業者からお金が借りられないからといって、「審査なし・即日融資・在籍確認なし」といった条件の業者からお金を借りるのは大変危険です。表向きは親切丁寧な対応で、魅力的な条件に見えますが、このような業者の実態は違法な取り立てや高金利で貸し付けを行う「闇金」「ソフト闇金」の可能性が高いです。
一度お金を借りてしまうと、年利数百%といった暴利を要求されたり、返済不能に陥ると厳しい取り立て被害にあいます。最近では、借入時に提出した個人情報をネット上に拡散されるなどの被害にあう可能性も。たとえ切羽詰まった状況になっても、違法業者には絶対に近づかないようにしましょう。
闇金に申し込みしてしまった後の対処法は、こちらの記事を参考にしましょう。
「闇金に申し込みしてしまった!闇金との取引をキャンセルしたい時に今すぐ取るべき行動」
親族からの借金もNG
生活保護受給中に、親族や知人からお金を借りるのもNGです。これらは収入と判断され、貸金業者からの借入と同じにみなされます。場合によっては生活保護の打ち切りや減額、すでに支給を受けた分の返還を求められる可能性があります。
黙って借金するとどうなる?
「ケースワーカーや福祉事務所に黙って借金すればバレないのでは?」と考える人がいるかもしれません。しかし次のような理由でバレる可能性が高く、バレると次のような事態に陥る可能性があります。
訪問調査で借金がバレる可能性
生活保護は信頼を前提とした制度なので、金銭の出入りについては例外なくケースワーカーに報告する必要があります。これだけ見ると黙って借金してもバレないように思われますが、定期的に行われる訪問調査で借金をしていることがバレる可能性があります。
訪問調査は「年に2回以上」という決まりがあるだけで、いつどのような形で訪問されるかはケースワーカーの裁量にゆだねられます。場合によっては事前連絡なしで「たまたま近くに来たから寄ってみた」という理由で訪問することもできます。
この訪問調査は原則として拒否できず、収入の状況や家計のやりくりなど家計にかかわることのほか、スマホの利用履歴や郵便物などから不正受給をしていないかも厳しくチェックされます。意図していない場合でも、申告漏れや説明不足とみなされれば、受給できなくなる可能性があります。
生活保護費が減額される
生活保護受給中に借金したことがバレると、保護費が減額される可能性があります。借金で得た金額が収入とみなされるためです。毎月7万円の保護費を受け取っている人が5万円の借入をすると、次の月の保護費は7万円から5万円を差し引いた2万円に減額されます。
それだけでなく借入には利息が発生します。5万円の借入でも5万円以上の金額を返済しなければなりません。受け取れる保護費が減っただけでなく、借金返済の負担が重くのしかかるとなれば、家計はより苦しくなってしまうでしょう。
支給停止や打ち切りとなる
黙って借金したことが後から収入と認定され、保護費の不正受給とみなされると、生活保護が支給停止されたり打ち切りとなる可能性があります。さらに悪質とみなされると借金額に応じた4割増の保護費を返還するように求められることも。例えば100万円の不正受給があった場合には、最大で140万円の請求が可能です。
場合によっては刑事告発され、「3年以下の懲役または100万円以下の罰金」に処される可能性があります。罰金刑や懲役刑が科されることも。福祉事務所では、受給者の収入状況や銀行口座を確認する権限があります。借金を隠し続けることは難しいでしょう。
生活保護受給中にお金に困ったときの対処法
では生活保護受給中にお金に困ったとき、何か手立てはないのでしょうか。こちらでは受給中でも生活が苦しいときの対処法を具体的に紹介していきます。
福祉事務所・ケースワーカーに相談
生活保護を受給している中で生活が苦しいというときには、不安を一人で抱え込まずにまずは福祉事務所やケースワーカーに相談してください。ケースワーカーは地域の福祉資源や生活状況に応じた公的支援に詳しいので、状況に応じた様々なサポート制度を紹介してもらえます。
また受給中でも利用できる公的支援制度や貸付制度について教えてもらえる可能性も。保護費だけではお金が足りないときには、真っ先にケースワーカーに相談するようにしましょう。
収支を見直す
自力で何とかしたい場合には、収支の見直しから始めてみましょう。収入と支出のバランスを確認するとともに、支出に無駄なものがないかチェックしてください。家計簿をつけることで、支出の内容が分かり、削減可能な項目を見つけやすくなります。
受給者の人の中には、仕事をしていない(できない)人も多く、時間がある分ギャンブルなどで浪費したり、家計管理をしていないために出費がかさんだりしているケースがあります。こうした現状を変えるためにも、収支を見つめ直すことは大切です。
公的支援制度を利用する
生活保護受給前や生活保護受給中に生活が苦しいと感じたら、次に紹介する公的支援制度を利用できます。まずはお住まいの地域の福祉事務所やケースワーカーに相談したうえで、どのような制度が利用できるか確認してください。
生活福祉資金貸付制度
低所得世帯や障害者世帯、高齢者世帯向けに世帯の自立を目指して資金を貸し付ける制度です。生活保護受給中の場合は、福祉事務所が必要と認めていることが前提となります。また返済に関しては、保護費以外の収入からとするのが前提です。
金利は無利子~年利1.5%と低く、緊急小口資金では最大で10万円までの貸付が可能。返済が難しいときには相談に応じてくれるというメリットがある一方で、入金までに2~3週間ほどかかってしまうのがデメリットです。
生活保護の一時扶助制度
生活保護制度の中に「一時扶助」というものがあります。通常予測される出費は前出の8種類の扶助で賄われますが、予想外の出来事により臨時に多額の出費が必要なときには、一時扶助が受給できます。例えば火災で家財道具が失われたときや、独り身の方が長期入院後に新たに住居が必要になったときなどです。
一時扶助には被服費や家具什器非など細かく種類が別れていて、種類ごとに基準額が設定されています。一時扶助を受給するには申請書類の提出や、ケースワーカーとの面談が必要です。正当な理由があれば認められやすいので、困ったときには相談しましょう。
参考:生業扶助及び一時扶助について|厚生労働省社会・援護局保護課
臨時特例つなぎ資金
生活保護申請中だったり住居を失ったりした失業者が、公的給付・貸付制度を申請し受給されるまでの間、生活が苦しいときに利用できるのが臨時特例つなぎ資金制度です。一定の条件があり、限度額は10万円以内で保証人なし、無利子で借入できます。
臨時特例つなぎ資金の申し込みは、お住まいの地域の社会福祉協議会もしくは、生活保護等給付制度・貸付制度の窓口です。
住宅確保給付金
すでに生活保護を受給している方は申請できませんが、受給開始前に申請すれば、支援を受けながら就職活動や生活再建を進められます。離職・廃業後2年以内、世帯収入合計額や世帯の預貯金合計額が一定以下、ハローワーク等に申し込みをして求職活動をしているなどの要件があります。
支給上限額はお住まいの地域や世帯の人数によって変動し、実際の家賃額を原則3カ月支給してもらえます。住まいを失うことは、生活基盤そのものを揺るがします。家賃が支払えなくなったときには、早めに相談しましょう。
債務整理を検討する
生活保護受給前からの借金返済が困難なときには、なるべく早めに債務整理を検討してください。債務整理は法律で認められた借金解決方法で、借金額を減額・免除できたり、返済条件を見直して負担を減らすことが可能です。具体的には次の3つの方法があります。
生活保護受給中の方の債務整理について詳しくは、こちらの記事を参考にしましょう。
「生活保護を受けている人の債務整理|気になる手続き費用と自己破産するときの注意点とは」
任意整理
任意整理は、債権者と直接交渉することで、利息・遅延損害金のカットや返済期間の延長を目指す手続き。特定の債権者だけを対象にできるので、保証人がいる借金や手続きすると車を引き上げられる恐れのあるカーローン等を除外できます。
また裁判所を通さない手続きなので、比較的簡単で費用や時間を節約できる点もメリットです。ただし借金の元本を大幅に減額できないため、支払い能力に不安がある方には不向きです。
任意整理と債務整理の違いを知りたい方は、こちらの記事を参考にしましょう。
「任意整理と債務整理の違いは何?メリット・デメリット、任意整理に向いてる人を解説」
個人再生
個人再生は、裁判所に申し立てて借金の総額を大幅に減額できる手続きです。残った借金は3~5年で完済を目指します。任意整理と違い大幅に減額できるというメリットがあるので、多額の借金を抱えている方に向いています。また住宅ローン特則を利用すれば、自宅を維持したまま手続きを進められます。
しかし個人再生には一定の条件があり、安定した収入がないと再生計画が認められません。無職や生活保護しか収入が無い方は、手続きできない可能性が高いです。
個人再生のメリット・デメリットについて詳しくは、こちらの記事を参考にしてください。
「個人再生のメリット・デメリットを徹底分析!注意点・利用条件・他の債務整理との違いは?」
自己破産
自己破産は、個人再生と同様に裁判所に申し立てて借金の返済義務をすべて免除できる手続きです。生活保護を受給しているなどで、返済が不可能な状況に陥っている人にとっては、借金問題を解決する有効な手段です。債務整理には他に任意整理や個人再生がありますが、生活保護受給中は保護費を返済に充てることができません。そのため自己破産以外の方法は取れないと考えましょう。
生活保護受給中の借金で困ったら…自己破産がベストな理由
生活保護受給中の方が借金問題を解決しようと思ったら、自己破産が最適な方法です。借金がある状態でも生活保護の申請は可能ですが、ケースワーカーに相談すると「先に自己破産して借金をなくしましょう」と提案されることが少なくありません。借金があり生活保護を申請しようとお考えの方は、先に自己破産を検討した方がいいかもしれません。
自己破産のメリット
自己破産は裁判所に借金返済が不可能と認めてもらうことで、全ての借金の返済義務を免除(免責)できる手続きです。つまり自己破産すると、その後は借金返済する必要がなくなります。これが自己破産最大のメリットといえます。返済すべき借金がないということは、いち早く生活を再建できるということ。返済や督促によるストレスからも解放されるでしょう。
自己破産で財産がどうなるか詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
「自己破産すると財産はどうなる?処分される・されない財産と財産隠しについて」
自己破産のデメリット
自己破産には大きなメリットがあるものの、次のようなデメリットもあります。自己破産を後悔しないためには、デメリットについてもしっかり理解しておきましょう。
- 信用情報に事故情報が掲載される
- 一定以上の財産が処分される
- 連帯保証人に返済義務が移る
- 住所や氏名などの個人情報が官報に載る
- 手続きが終わるまで特定の資格・職業に制限がかかる
すでに長期間の滞納状態となっている方は、新たに事故情報が掲載されても大きな影響はありません。官報とは国が発行する機関誌のようなものですが、そこに住所や氏名が載ったとしても日常的に見ている人はほとんどいないので、周囲に自己破産のことが知られる心配もないでしょう。
もちろん生活保護受給中に自己破産しても問題はありません。そして手続き中も自己破産後も、継続して受給し続けられます。
自己破産のデメリットについて詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしましょう。
「自己破産のデメリットを状況別に解説!誤解や嘘を解決して最適な選択へ」
自己破産にかかる費用
自己破産にかかる費用は、手続きの種類によって次のように異なります。
自己破産の種類 | 弁護士費用 | 裁判所費用 |
---|---|---|
同時廃止事件 | 約30万~50万円
(着手金30万円~、報酬金20万円~) |
1万~3万円 |
管財事件 | 約30万~50万円 | 約50万円 |
少額管財事件 | 約30万~50万円 | 約20万円 |
ここでいう管財事件(少額管財)とは、破産法で定められている免責不許可事由がある場合や処分できる財産があるときに取られる方法。財産もなく免責不許可事由にも当たらないときには同時廃止事件となり、数万円程度の裁判所費用で済みます。
自己破産にかかる費用の相場については、こちらの記事を参考にしてください。
「自己破産にかかる費用相場・内訳を解説!安く抑えるコツや払えないときの対処法も紹介」
法テラスが利用できる
生活保護受給中の自己破産で問題になりやすいのは、弁護士費用です。同時廃止事件でも数十万円の弁護士費用がかかるので、生活保護を受けながら準備できないという人もいるのではないでしょうか。そのようなときに利用できるのが、法テラスの弁護士費用等の立て替え制度です。
法テラスとは国が設立した公的な機関で、金銭的に余裕がない方でも法的サービスを受けられるようにとの目的で作られました。収入や資産など一定の条件を満たせば、自己破産を依頼する弁護士費用を立て替えてもらえます。
さらに生活保護を受給している方は、立て替えてもらった費用の返済の必要がありません。弁護士費用を準備せずに自己破産ができるのが大きなメリットです。
弁護士に相談
生活保護受給中に自己破産をしたいという方は、先に弁護士に相談するのもおすすめです。弁護士に相談したうえで、ケースワーカーにどのように伝えたらいいかを一緒に考えてもらえます。さらに依頼後は、ケースワーカーとの面談や福祉事務所の窓口にも一緒に行ってもらえます。
また法テラスの「持ち込み方式」を利用することで、法テラスと提携契約している弁護士の中から、自分で依頼する弁護士を選べます。安心して手続きを任せられる弁護士に依頼するためにも、まずは法テラスと提携契約している事務所の中から、自分に合う弁護士を探しましょう。
まとめ
借金があっても生活保護は受給できますが、受給中に新たに借金をすることはNGです。不正受給とみなされて保護費の減額や生活保護の打ち切り、返還請求や刑事罰を受ける可能性があります。また保護費から借金返済をするのも法律で禁止されています。
受給中に生活が苦しくなったら、ケースワーカーや福祉事務所に相談してください。そのうえで収支の見直しや公的支援制度の利用を検討しましょう。場合によっては、生活保護申請前に債務整理をすすめられることもあります。
無職もしくは収入が安定していない場合、自己破産で借金をすべて免責するのがベストな選択です。法テラスを利用して弁護士費用や裁判所費用を立て替えてもらいながら、一日でも早く借金返済のストレスから解放されて下さい。