
「人を紹介すれば報酬を得られる」などの儲け話に惹かれ、気が付いたら借金を抱えてしまっていたという事例は少なくありません。
このようなマルチ商法が原因でできてしまった借金は、自己責任のため債務整理はできない…と考える方もいるのではないでしょうか。
実際にはマルチ商法が原因の借金でも債務整理をすることで減額することが可能です。また契約の状況によってはクーリングオフや中途解約ができることもあります。
この記事ではマルチ商法が原因で借金を抱えてしまった方に向け、具体的な対処法を紹介していきます。お困りの方はぜひ参考にしてください。
そもそもマルチ商法とは?
「マルチ」という言葉は聞いたことがあっても、どのような商法なのかいまいち分からないという方は多いです。それどころか、自分でも気づかないうちにマルチ商法に手を出していたというケースも珍しくありません。
マルチ商法での借金問題の解決方法について解説をする前に、まずはマルチ商法とはどのような販売形式なのかを確認していきます。
勧誘者となり報酬・紹介料を得る商法
マルチ商法とは、商品もしくはサービスを販売して利益を得るとともに、他人を販売員に勧誘することで紹介料(報酬)が得られる商法のことを指します。その販売員がさらに新しく販売員を勧誘することにより、組織を拡大していくと共に収入を得ていきます。
「ネットワークビジネス」や「コミュニケーションビジネス」「マルチレベルマーケティング(MLM)」とも呼ばれ、特定商取引に関する法律(特定商取引法)では「連鎖販売取引」と称されています。
マルチ商法自体は違法行為ではありませんが、特定商取引法で取引の手順が厳しく規制されているのが特徴です。
違法ではないが法で制限がされている
消費者の利益を守り、悪質な勧誘行為を防ぐ目的で制定されている特定商取引法では、以下の取引が連鎖販売取引と定義されています。
- 物品の販売または役務を提供する事業
- 紹介料などの利益が得られると伝えて勧誘する
- 商品購入費、入会金などの負担がある
上記全てに該当する取引については、特定商取引法で勧誘時の説明義務、契約に際する書類の記載項目などのさまざまな規制が設けられています。規制に違反した場合は行政処分の対象となるほか、一部は罰則の対象にもなります。
ネズミ講(無限連鎖講)とは別物
マルチ商法と似たような商法にネズミ講があります。同じ意味で使っている方も少なくありませんが、マルチ商法とネズミ講は全くの別物です。マルチ商法は勧誘だけでなく、物品もしくはサービスの売買が行われます。しかしネズミ講は商品のやりとりを伴わず、勧誘のみで収益が発生する取引です。
また大きな違いとして、ネズミ講は犯罪行為である点が挙げられます。無限連鎖講の防止に関する法律(無限連鎖講防止法またはネズミ講防止法)において、ネズミ講の開設や運営はもちろんのこと、加入や勧誘などのネズミ講を助長する行為は全て刑罰の対象として挙げられています。
| 行為 | 罰則 |
|---|---|
| 開設・運営 | 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金 |
| 業として勧誘行為を行う | 1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金 |
| 勧誘行為 | 20万円以下の罰金 |
マルチ商法は特定商取引法において勧誘方法などが規定されていますが、商法そのものは犯罪には該当しません。
マルチ商法ではなくネズミ講に勧誘され困っている方、ネズミ講について詳しく知りたい方は以下のページを参考にしてください。ネズミ講とマルチ商法の違いについても解説をしています。
ねずみ講で借金をしてしまったら…知らずにやっていたときの相談先や借金解決方法とは?
最近はセミナー等の「モノなしマルチ」が増加
マルチ商法はもともとはアメリカで見られた販売方式であり、日本では1960年代以降に拡大を始めました。マルチ商法で扱われる商品は化粧品や健康食品等が多く、浄水器や家電製品など高額な製品を扱う企業も見られます。
しかし近年ではインターネットの発達により、物理的な商品ではなく、情報やセミナーなどの役務などを対象にしたモノなしマルチが増加しています。呼び名は「スクール契約」「投資セミナー」「代理店制度」など多種多様のため、名称だけではマルチと分かりにくい点が特徴です。
またSNSやマッチングアプリなどを介した勧誘が特徴のため、10代や20代の若者がターゲットになりやすくなっています。
マルチ商法で借金を抱えてしまう原因
マルチ商法の定義の一つとして、商品購入費や入会金など、何らかの初期費用の負担がある点が挙げられます。必要な金額は組織や商材によってさまざまですが、数万円程度のものもあれば、中には100万円以上の費用が必要になるケースも。
一度に払える金額でないにも関わらず、借金をしてまでマルチ商法に手を出してしまう人は決して珍しくありません。ではなぜマルチ商法で借金を抱えてしまうのでしょうか?
その理由として、以下の3点が挙げられます。項目に分け、詳しく解説をしていきます。
- 「すぐに元が取れる」と促され初期費用を借金
- 勧誘者が同席し半ば強引に契約させられる
- 断りづらい状況に追い込み契約を決断させる
「すぐに元が取れる」と促され初期費用を借金
勧誘者に「必ず儲かる」「最初はお金がかかるけどすぐに取り戻せる」等と誘われ、その言葉を鵜呑みにしてしまう例です。
悪徳な業者の場合、預金残高などの表示画面を偽造したり、豪華な暮らしをしているよう見せかけたり等、事業によって大きな利益が出ているように見せかけることがあります。
普段は安定した生活を送っていたとしても、少しのチャンスで莫大な収入を得られるようになるという話はたいへん魅力的に見えるものです。
気持ちが高揚した結果、初期費用を借金してもすぐに返済できるなら問題ないと考え、軽い気持ちで借金に手を出してしまいます。
勧誘者が同席し半ば強引に契約させられる
マルチ商法は人を勧誘することで利益を得られる商法です。そのため友達や家族、恋人など比較的親しい間柄の人が勧誘をしてくることが多い点が特徴です。
恩師や先輩、上司にあたる人が自分のほうが立場が上であることを利用し、断れない相手をわざとマルチ商法へ勧誘をしてくるケースもあります。
そのような勧誘者が契約の場に同席することにより「相手を傷つけたくない」「いやな人だと思われたくない」といった相手を気遣う心理が働きます。そのため本当は断りたいと思っていても半ば強制的に契約をしてしまいます。
断りづらい状況に追い込み契約を決断させる
マンションやオフィスの一室に相手を誘い、何時間もかけて勧誘を行うことで判断力を鈍らせ、契約をさせるケースです。最初は断ろうと思っていたとしても、長時間軟禁状態にされた結果、早くこの場から逃れたいという気持ちが勝ってしまいます。
その場で消費者金融に申し込みをさせ、現金を用意させようとする極めて悪質な業者も存在します。
マルチ商法で借金を抱えたときの対処法
マルチ商法で借金を抱えてしまった場合はマルチ商法の販売会社へのクーリング・オフや中途解約の手続きと平行し、借金問題の解決についても確認していくことになります。まずは被害の拡大を防ぐとともに、今後クーリング・オフや中途解約を行うための証拠を確保していきましょう。
追加借入を止め、被害拡大を防ぐ
マルチ商法はクーリング・オフの対象ですが、100%確実に返金が受けられるとは限りません。まずは現在行っている追加購入や支払いを止め、少しでも被害を増やさないことが重要です。
マルチ商法では、会員の意欲向上のために独自のランク制度を導入している団体が多く存在します。あと少しの購入でランクが上がりそうな場合、これまでお金をかけてきたからランクを上げたい、これまでの投資を無駄にしたくないという心理がどうしても働いてしまいます。
しかしそのような行動がかえって被害を広げることになるかもしれません。追加でお金を払うことは止め、マルチ商法と縁を切ることに全力を尽くしてください。
契約書やDM、資料を保存する
マルチ商法と縁を切ろうとしていることが業者に気づかれた場合、クーリングオフや中途解約などの手続きに必要な書類や資料を削除されたり、連絡先をブロックされたりする恐れがあります。
相手に解約の意思表示をする前に、確保できる証拠は可能な限り保管することを強くお勧めします。
契約書類
契約書や申込書は契約内容を確認するための基本的な資料です。契約日や商品・サービスの内容、支払金額、解約に関する条件などを確認できるため、最優先で確保したい書類です。
相手が違法な営業を行っているか否かの判断材料になる規約や同意画面も重要です。オンラインの場合はpdf化もしくはスクリーンショットを撮影し、オフラインで手元に保存しましょう。
勧誘時の記録
勧誘を受けた際のLINEやDMでのやりとり、SNS投稿や広告、セミナーの資料も相手が違法な営業を行っているかを判断する重要な材料になります。契約を勧められた経緯を確認する材料になるため、不要になったからといって削除しないようにしましょう。
商品・サービスのパンフレットや説明資料、料金表なども保存しておきます。インターネット上で掲載されていた情報は後から内容が変更される可能性もあるため、保存した日時が分かる状態にしておくとよいでしょう。
支払いに関する記録
商品代金や入会金などを支払った場合、その記録も残しておきましょう。銀行振込の明細やクレジットカードの利用明細、領収書などが該当します。
クーリング・オフや中途解約の可否を確認する
特定商取引法では、連鎖販売取引について一定の条件のもとでクーリング・オフや中途解約が認められています。契約書などを確認して早めに対応することが重要です。
クーリング・オフ
クーリング・オフとは、一定期間内であれば消費者が一方的に契約を解除できる制度です。連鎖販売取引(マルチ商法)では、法定の契約書面を受け取った日などを起算日として原則20日以内であればクーリング・オフができます。
クーリング・オフが成立すれば、すでに支払った代金の返還を求めることができます。また違約金などを支払う必要も原則としてありません。
クーリング・オフには期限がありますが、期限を過ぎている場合でも、契約書面に不備があるなどの事情によってはクーリング・オフが認められる可能性があります。期限が過ぎてしまったからといって自己判断で諦めず、専門家に確認することをお勧めします。
中途解約
クーリング・オフの期間を過ぎた場合でも、中途解約によって契約を終了できる場合があります。特定商取引法では、以下の要件を全て満たしている場合はクーリング・オフの期間を過ぎていても返金を求めることが可能であると定められています。
- 入会後1年未満
- 商品の引き渡しから90日未満
- 商品を使っていない
- 商品を紛失・破損していない
- 商品を再販売していない
消費生活センターや弁護士に相談する
自分だけで解約や返金を進めることが難しい場合、第三者に相談する方法もあります。特に相手から強く引き止められている場合や、高額な商品を購入してしまった場合は、早めに相談したほうがよいでしょう。
消費生活センター
消費生活センターでは、マルチ商法をはじめとした消費者トラブルについて相談できます。クーリング・オフについての疑問や質問にも答えてもらうことが可能です。
最寄りの消費生活センターに直接連絡することで相談が可能ですが、消費者ホットライン(188)に電話をすることで地域を管轄する消費生活センターへ相談の案内をしてもらえます。
(参考:消費者庁|消費者ホットライン)
弁護士
弁護士に相談すれば、契約の内容や勧誘の経緯を踏まえ、法的にどのような対応ができるのか確認できます。クーリング・オフや中途解約が可能かどうかだけでなく、支払ったお金の返還を求められるかについても相談が可能です。
また、相手との交渉を弁護士に任せることも可能です。自分で相手とやり取りすることに負担を感じている場合にも、弁護士への相談は有力な選択肢になります。
マルチ商法と関係を断つ
契約を解約するだけでなくマルチ商法と継続的な関係を断つことも大切です。退会の意思を明確に伝え、必要な手続きを済ませたら勧誘してきた人との連絡を控えるようにします。
マルチ商法は止めたいが勧誘者との関係は断ちたくないと考え、なかなかマルチ商法から抜け出せない人もいます。しかし断りきれずに再び商品を購入したり、新たな人を勧誘したりすれば、さらに負担が大きくなるおそれがあります。
一度契約したことを理由に無理に関係を続ける必要はありません。解約や退会の手続きを済ませたうえでマルチ商法と接触しないための環境を整えることが大切です。
マルチ商法の悩みを弁護士に相談するメリット
マルチ商法に関するトラブルは、契約の内容や勧誘の経緯によって取れる対応が異なります。自分だけで解決しようとすると、相手とのやり取りに時間や負担がかかることもあります。
弁護士に相談すれば、契約を解約できる可能性や返金を求められるかどうかを確認できます。また、相手との交渉を任せたり、マルチ商法が原因で抱えた借金について相談したりすることも可能です。
解約や返金の可否を判断してもらえる
繰り返しになりますが、マルチ商法はクーリングオフや契約の解除、返金請求ができる可能性があります。自分では解約や返金が難しいと思っていても、法的手段が残されている場合があります。
弁護士に相談すれば契約書やこれまでの経緯を確認したうえで、どのような対応が考えられるのか判断してもらえます。
相手との交渉に応じてもらいやすくなる
マルチ商法の運営者や勧誘した相手に、自分で解約や返金を求めるのは簡単ではありません。連絡をしても話をはぐらかされたり、契約を続けるよう説得されたりすることもあります。
弁護士に依頼すれば、本人に代わって相手と交渉してもらえます。法律的な根拠を示しながら請求することで、相手が交渉に応じる可能性もあります。またあなたが相手と直接やり取りする必要がなくなるため、精神的な負担を減らせる点もメリットです。
借金の減額相談ができる
弁護士には、任意整理や個人再生、自己破産などの債務整理についても相談ができます。借金の金額や収入、生活状況などを踏まえて、自分に合った方法を検討してもらえます。
マルチ商法の契約トラブルと借金を同時に相談できるのは、弁護士に相談する大きなメリットです。まずは現在の状況を伝え、解約や返金請求、借金問題についてどのような対応が可能なのか確認してみるとよいでしょう。
マルチ商法でできた借金を減額する方法
マルチ商法のために借金をしてしまい、返済が難しくなった場合は債務整理によって負担を軽くできる可能性があります。債務整理には、主に任意整理、個人再生、自己破産があります。
どの方法が適しているかは、借金の額や収入や財産などによって異なるため、自分で判断をせず弁護士や認定司法書士に相談をすることをお勧めします。
任意整理
任意整理は債権者と交渉し、将来利息のカットや返済期間の見直しなどを行う方法です。裁判所を通さずに手続きを進められるため、個人再生や自己破産に比べて手続きの負担が小さい傾向があります。
しかし借金の元金そのものを大幅に減らせるわけではなく、あくまでも利息部分のみです。手続き後は残った金額を3年~5年かけて返済していくことになります。そのため安定した収入があり、返済が続けられる見込みがある場合に適した方法です。
個人再生
個人再生は裁判所に申し立てて借金を大幅に減額し、減額後の借金を原則3年をかけて分割返済する方法です。借金の総額や収入などによって減額される金額は異なります。
住宅ローンのある自宅を一定の条件のもとで残せる場合がある点も特徴です。ただし、裁判所への申立てや再生計画の作成などが必要になるため、手続きは任意整理より複雑です。
自己破産
自己破産は、裁判所に申し立てて、原則として借金の返済義務を免除してもらう手続きです。返済の見込みがなくなってしまった場合でも、生活を立て直すための選択肢になります。
ただし、一定の財産が処分の対象となるほか、手続き中は一部の職業や資格が制限される場合があります。また、税金など一部の債務は免除されない点にも注意が必要です。
まとめ
マルチ商法が原因の借金でも任意整理、個人再生、自己破産などによって返済の負担を軽くできる可能性があります。ただしそれぞれメリットと注意点があり、どの方法を選ぶべきかは個々の状況により異なります。
ただしマルチ商法はクーリング・オフや中途解約が可能な場合もあるため、泣き寝入りは禁物です。まずは取引の証拠を確保し、手続きができるかどうかを確認するようにしましょう。
弁護士に相談をすることでクーリング・オフや中途解約ができるかを確認できる上、相手との交渉も依頼することが可能です。借金が残ってしまった場合も債務整理を依頼できるため、マルチでお困りの方はぜひ弁護士への相談も視野に入れてください。