「債務整理をしたいけれど、分割払いの途中のスマホはどうなるのだろう」と手続きをためらっている方は少なくありません。スマホは仕事や家族との連絡に欠かせないため、取り上げられたら困る、手続き中に機種変更できるのかも気になる、と感じるのは当然です。ただし、債務整理をしても、スマホの端末そのものが没収されたり、回線がその場で止まったりするわけではありません。 端末代の分割払いは「借金」として扱われますが、任意整理なら通信会社を対象から外して払い続ける選択が一般的で、個人再生や自己破産でも回線を維持できる場合があります。この記事では、端末代の分割払いが債務整理でどう扱われるのか、手続きごとの違い、没収や回線停止の実際、信用情報と機種変更の注意点を順に説明します。
任意整理・個人再生をすると、スマホの分割払いはどうなりますか?
まず、スマホの契約の仕組みを整理しましょう。「通信料金」と「端末代の分割払い」は、同じ請求書に載っていても性質が異なります。この違いを知っておくと、手続きごとの扱いが理解しやすくなります。
端末代の分割払いは「割賦販売」で、借金と同じ扱いになる
スマホの端末代を24回や48回で支払う契約は、割賦販売法2条1項1号にいう「割賦販売」(2か月以上・3回以上の分割で代金を受け取る販売)にあたるのが一般的です。信販会社が間に入る形なら、同法2条4項の「個別信用購入あっせん」に該当します。どちらも、通信会社や信販会社が先に端末を渡し、代金を後から受け取る信用取引です。
端末代の残りは「まだ払っていない借金」であり、債務整理は借金全体を整理する手続きですから、端末代の残債も原則として整理の対象になり得ます。「通信費だから関係ない」とは考えず、残っている端末代の金額と回数を、まず明細で確認してください。
通信料金(回線契約)は端末代とは別の契約である
一方、通話やデータ通信の料金は、電気通信サービスの利用料であり、端末代の分割とは別の契約です。2019年10月施行の改正で電気通信事業法27条の3が設けられ、大手の通信会社は「端末を買うことを条件に通信料金を有利にする」ことを禁じられました。総務省はこれを「通信料金と端末代金の完全分離」と説明しています。
この分離があるため、端末代の分割契約と回線契約は、法律上も切り離して考えられます。債務整理で端末代の扱いが変わっても、通信料金を払い続けている限り、回線契約が直ちに解除される仕組みにはなっていません。ただし、規約によっては端末代の不払いを理由に回線の利用が制限される場合があるため、契約内容は確認しておきましょう。
端末代の分割は信用情報機関に登録される
端末代の分割契約は、割賦販売法上の指定信用情報機関である CIC に登録されるのが一般的で、信販会社を通す契約では JICC にも登録される場合があります。そのため、債務整理で端末代の支払いが止まったり、和解で条件が変わったりすると、その事実が信用情報に記録されます。信用情報の登録内容と期間については、こちらの記事も参考にしてください。
任意整理で信用情報に載る内容・期間を解説!ポイントを知って効率的に信用情報を回復
通信会社を債務整理の対象から外すことはできますか?
結論から言うと、任意整理では対象から外せるのが一般的ですが、個人再生と自己破産では原則として外せません。
任意整理なら、通信会社を外して端末代を払い続ける選択が一般的
任意整理は、裁判所を通さず、弁護士などが債権者と個別に交渉して返済条件を見直す手続きです。すべての債権者を対象にする法律上の決まりはないため、どの債権者と交渉するかを選べるのが実務上の一般的な扱いです。
そのため、カード会社や消費者金融だけを対象にし、通信会社は外して端末代の分割を払い続ける方法が広く取られています。この場合、通信会社との契約関係はこれまでどおりで、端末も回線もそのまま使える可能性が高いといえます。ただし、対象から外した債務は減額されないため、端末代の残りを払い続けられる家計かどうかは、弁護士と一緒に確認してください。
個人再生では、端末代の残りも再生債権として平等に扱われる
個人再生は、裁判所に再生計画を認めてもらい、借金を減額したうえで原則3年(特別な事情があれば最長5年)で分割返済する手続きです。裁判所は、小規模個人再生を「継続的に収入を得る見込みがあり、無担保債務の総額が5,000万円以下の人」が申し立てられる手続きと説明しています。
個人再生では、民事再生法229条1項により、再生計画による権利の変更は再生債権者の間で平等でなければならないとされています。また、同法85条1項により、再生手続開始後は、再生計画によらずに特定の債権を弁済することが原則として禁止されます。つまり、通信会社だけを特別扱いして端末代を全額払い続けることは、原則として認められません。端末代の残りは、他の借金と同じ「再生債権」として、減額と分割の対象になります。
自己破産でも、通信会社だけを優先して払うことはできない
自己破産は、裁判所が破産手続の開始を決定し、財産を換価して債権者に配当したうえで、免責許可によって残りの債務の支払い義務を免れる手続きです。ここでも債権者の平等が基本原則です。
支払不能になった後に通信会社だけへ端末代を払うと、破産法162条の「特定の債権者に対する担保の供与等の否認」の対象になる可能性があります。支払不能後の弁済を、破産管財人が取り消せる仕組みです。さらに、他の債権者を害する目的で、期限前の一括返済のように本来の義務にない方法や時期で特定の債権者だけに払った行為は、破産法252条1項3号の免責不許可事由にも挙げられています。こうした「偏頗弁済(へんぱべんさい)」については、こちらの記事で詳しく説明しています。
偏頗弁済はバレる?個人再生・自己破産でやりがちな例とバレた後で起こること、回避術とは
手続き別の扱いを比較する
3つの手続きで、端末代の分割払いがどう扱われるかを整理すると次のようになります。
| 項目 | 任意整理 | 個人再生 | 自己破産 |
|---|---|---|---|
| 通信会社を対象から外す | 実務上可能なことが多い | 原則不可(民事再生法229条1項・85条1項) | 原則不可(破産法162条・252条1項3号) |
| 端末代の残りの扱い | 外せばそのまま支払い継続 | 再生債権として減額・分割の対象 | 免責許可が確定すれば原則として支払い義務を免れる |
| 端末を使い続けられるか | 契約どおり払えば通常そのまま | 取り上げられる法的な仕組みは基本的にない | 同左(通信会社の対応による) |
| 回線契約 | 影響しないのが一般的 | 通信料金を払い続ければ維持できる場合がある | 同左(規約により解除される場合もある) |
弁護士に依頼した後は、手続きの対象にした債権者への支払いを止めるのが通常です。個人再生や自己破産では、原則としてすべての債権者が対象になり、通信会社の端末代金だけを払い続けることはできません(任意整理なら、通信会社を対象から外して払い続ける方法があります)。「スマホを守りたい」という理由だけで手続きを選ぶのは適切ではありません。借金の総額や収入、他の財産も含めて、どの手続きが向いているかを判断しましょう。自己破産後の携帯契約については、こちらの記事も参考にしてください。
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債務整理をするとスマホは没収されますか?
ここでは、端末と回線がそれぞれどうなるのかを分けて見ていきます。
端末そのものを取り上げられるケースは一般的ではない
個人再生は、財産を処分して配当する手続きではなく、収入から再生計画に沿って返済する手続きです。したがって、裁判所が使用中のスマホを回収する仕組みは、基本的にありません。 契約に「完済まで端末の所有権は販売者に残る」旨の定めがある場合の扱いは通信会社ごとに異なるため、弁護士に確認してください。
自己破産では財産が換価の対象になりますが、破産法34条3項2号により、差し押さえることができない財産は破産財団に属しません。民事執行法131条1号は「生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具」を差押え禁止動産として挙げています。スマホが明文で列挙されているわけではありませんが、日常生活に不可欠な通信手段である使用中の端末を換価する運用は一般的ではないとされています。
回線が止まる可能性があるのは「通信料金の滞納」と「規約による解除」
回線が止まる主な場面は2つあります。ひとつは、通信料金そのものを滞納している場合です。債務整理を始めても、手続き後の通信料金は通常どおり払う必要があります。
もうひとつは、通信会社の規約に基づく契約解除です。端末代の分割を債務整理の対象にした場合、通信会社によっては契約違反として回線契約を解除することがあります。対応は各社で異なるため、手続きを依頼する前に、弁護士に通信会社の扱いを相談しておくことが大切です。通信料金を払えなくなった場合の対処については、こちらの記事も参考にしてください。
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すでに滞納している場合は、契約解除後の記録に注意する
すでに滞納しているなら、放置しないでください。滞納が続いて契約解除に至ると、一般社団法人電気通信事業者協会(TCA)の「不払者情報の交換」の対象になります。契約解除後に料金の不払いがある人の情報を携帯電話事業者の間で交換し、新規契約の審査に使う仕組みです。
TCA によると、交換される情報は氏名・生年月日・住所・契約解除前の携帯電話番号・料金不払いの状況などで、保有期間は契約解除後5年以内です。料金を完済した場合は対象から外れ、自己破産などで免責が決定している方も含まれないと公表されています。逆にいえば、通信料金を払い続けている限り、この記録は原則として残りません。滞納中の方は、解除に至る前に通信会社へ連絡し、支払いの相談をするか、弁護士に早めに相談してください。
手続き中・手続き後に機種変更はできますか?
結論として、機種変更そのものは可能ですが、分割払いでの購入は難しくなるため、支払い方法を工夫する必要があります。
分割審査で参照される記録と、残る期間
端末を分割で買うときの審査では、信用情報機関と TCA の記録が参照されます。いわゆる「ブラックリスト」という名簿は存在せず、これらの記録に債務整理や不払いの事実が載っている状態を指します。CIC はクレジット情報を「契約期間中および契約終了後5年以内」保有し、JICC は 2019年10月1日以降の契約について債務整理などの取引事実を「契約終了後5年以内」登録すると、それぞれ公表しています。
| 記録の種類 | 運営機関 | 何が記録されるか | 保有・登録期間 | 主な影響 |
|---|---|---|---|---|
| クレジット情報 | CIC | 端末代の分割契約の内容・支払状況 | 契約期間中および契約終了後5年以内 | 端末の分割審査、クレジットカード・ローンの審査 |
| 取引事実情報 | JICC | 債務整理・破産申立・強制解約など | 契約終了後5年以内(2019年10月1日以降の契約) | 同上 |
| 不払者情報 | TCA | 契約解除後の通信料金の不払い | 契約解除後5年以内(完済で対象外) | 携帯電話の新規契約の審査 |
期間はいずれも各機関の公表値ですが、起算点(契約終了日・解除日)は個々の契約によって異なります。正確な時期を知りたい場合は、各機関に開示を申し込んで確認するのが確かな方法です。記録が残っている間は、分割審査に通りにくくなるのが一般的です。
手続き中に新たな分割契約を結ぶのは避ける
任意整理・個人再生・自己破産のいずれでも、手続きの途中で新しい分割契約を結ぶことは避けてください。自己破産では、破産法252条1項5号により、支払不能などの事実を知りながら、それがないと信じさせるために詐術を用いて信用取引で財産を取得した行為が免責不許可事由とされています。支払えないと分かっていて端末を分割で買う行為は、この事由に該当するおそれがあります。
個人再生や任意整理でも、手続き中に新たな借金を作れば、返済計画の前提が崩れ、裁判所や債権者からの信頼を損ないます。どうしても端末が必要なときは、次に説明する一括購入や中古端末を検討し、弁護士に一言相談してから動いてください。
一括購入・中古端末・SIM フリー端末なら審査を伴わない
端末を一括で購入する場合、割賦販売にはあたらないため、信用情報機関への照会は行われないのが一般的です。店頭で一括払いにするほか、家電量販店やメーカー直販で SIM フリー端末を買い、今の回線をそのまま使う方法もあります。
中古端末も選択肢のひとつです。購入時は、前の所有者の端末代が未払いで「ネットワーク利用制限」がかかっていないかを確認しましょう。
家族への名義変更や家族名義での分割契約は避けた方がよい
分割中の回線を家族名義に変更するには端末代の残債の精算や通信会社の審査が必要になるのが一般的で、手続き中に行うと財産の移転と見られるおそれもあります。「自分の名義で審査が通らないなら、家族の名義で」と考える方もいますが、注意が必要です。家族が契約者となって端末代を分割で払う場合、法律上の債務者は家族です。実際に払うのが本人でも、支払いが滞れば家族の信用情報に記録が残り、家族のクレジットカードやローンにも影響が及びます。
また、契約者と実際の利用者が異なることを通信会社が認めていない場合、規約違反として扱われるおそれもあります。家族名義での契約は最後の手段と考え、その場合も家族に事情を正直に伝えたうえで判断してください。
格安 SIM(MVNO)でも端末の分割は同じ扱いになる
格安 SIM に乗り換えれば審査がないと思われがちですが、回線契約と端末の分割は分けて考える必要があります。回線契約だけでも、TCA の不払者情報が参照されることがあります。
端末を分割で買う場合は、格安 SIM でも信販会社を通じた個別信用購入あっせんになることが多く、CIC などへの照会が行われるのが一般的です。つまり、格安 SIM だから分割審査が緩い、とは限りません。回線は格安 SIM、端末は一括や中古という組み合わせが現実的です。
スマホの契約を守るために、まず確認しておくこと
契約内容と残債を書き出す
まず、通信会社のマイページや請求書で、次の内容を確認して書き出してください。
| 確認するもの | 書き出す内容 |
|---|---|
| 端末代の分割契約 | 残りの回数・残債の金額・契約先(通信会社か信販会社か) |
| 回線契約 | 契約者名義・月額料金・滞納の有無 |
| 家族の回線 | 家族の端末代を自分の名義で分割していないか |
| 支払い方法 | クレジットカード払いか口座振替か(カードが整理対象なら変更が必要) |
特に、通信料金をクレジットカードで払っている方は、そのカードを任意整理の対象にすると引き落としができなくなります。手続きの前に口座振替へ変更しておきましょう。
手続きの前後で通信会社にどう対応するかを決める
確認した内容をもとに、弁護士と次の順番で方針を決めます。
- 端末代の残債を払い続けられるかを、家計の収支から判断する
- 任意整理なら通信会社を対象に含めるか外すかを決める
- 個人再生・自己破産なら、通信会社も債権者として申告することを前提に、回線維持の見通しを弁護士に確認する
- 支払い方法を口座振替に変え、通信料金の滞納を作らない
- 手続き中に新たな分割契約を結ばない
この順番で進めれば、「スマホが使えなくなって連絡が取れない」という事態を避けやすくなります。
返済の見通しが立たなければ、法テラスや弁護士に相談する
端末代を含めた借金全体の返済に見通しが立たないなら、早めに専門家へ相談してください。法テラスでは、収入や資産が一定の基準以下の方を対象に、弁護士・司法書士による無料法律相談と依頼費用の立替え制度を設けています。審査はありますが、費用面でためらっている方の入口になります。
弁護士に依頼すれば、通信会社を含めた債権者との対応を任せられ、どの手続きが向いているかも整理してもらえます。スマホの扱いは各社で対応差が大きいため、債務整理に詳しい弁護士に相談するとよいでしょう。
よくある質問
任意整理の途中で、スマホの端末代だけ払い終えても問題ありませんか?
任意整理で通信会社を対象から外している場合、端末代を契約どおり払い続けることは問題ありません。個人再生・自己破産では、手続き前に通信会社だけへ払うと偏頗弁済と判断されるおそれがあるため、弁護士に確認してください。
個人再生をすると、家族名義で契約している私のスマホはどうなりますか?
契約者が家族であれば、その契約は家族の債務であり、あなたの個人再生の対象にはなりません。ただし、実際に払っていたのが本人なら、手続き後もその支払いを続けられるかを家計の中で確認しておきましょう。
自己破産の免責後、TCA の不払者情報は消えますか?
TCA は、自己破産などで免責が決定している方は不払者情報の交換に含まれないと公表しています。ただし、CIC や JICC の信用情報には手続きの事実が契約終了後5年以内の期間残るため、端末の分割審査には引き続き影響する可能性があります。
債務整理後、いつから分割でスマホを買えますか?
明確な時期は決まっていません。CIC・JICC の記録(契約終了後5年以内)と TCA の不払者情報(契約解除後5年以内または完済)が消えた後、各社の審査を受けることになります。消えたかどうかは各機関へ開示を申し込んで確認しましょう。
スマホの分割払いと債務整理の関係を知り、早めに相談しよう
スマホの端末代の分割払いは、割賦販売法上の信用取引であり、債務整理では借金と同じように扱われます。任意整理なら通信会社を対象から外して払い続ける選択が一般的ですが、個人再生では民事再生法229条1項・85条1項、自己破産では破産法162条・252条1項3号により、通信会社だけを優先して払うことは原則として認められません。一方で、端末が没収されたり、通信料金を払っているのに回線が直ちに止まったりする仕組みは基本的になく、手続き後もスマホを使い続けられる可能性は十分にあります。
大切なのは、端末代と通信料金を分けて把握し、滞納を作らず、手続き中に新たな分割契約を結ばないことです。「スマホがどうなるか」を含めて、債務整理に詳しい弁護士に早めに相談してください。相談が早いほど、選べる手続きも、スマホを守る方法も多く残ります。
参考:e-Gov 法令検索「破産法」/e-Gov 法令検索「民事再生法」/e-Gov 法令検索「割賦販売法」/裁判所「個人再生」/一般社団法人電気通信事業者協会「不払者情報の交換」/CIC「CICが保有する信用情報」
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の事案については弁護士にご相談ください。
最終更新:2026-09-30
執筆:債務整理相談 弁護士ほっとライン 編集部/弁護士監修:準備中