弁護士に頼みたいのに費用が払えない、と相談をためらう方は少なくありません。ただし、債務整理の費用は、手元にまとまったお金がなくても、分割払いや法テラスの立替制度で依頼できる場合があります。手元に数十万円の余裕があれば悩まない問題だからこそ、この段階で止まってしまう方が多いのです。返済に追われている方ほど、着手金や裁判所に納めるお金という壁の前で立ち止まりがちです。催促の電話や通知だけが続く状態は、心身ともに消耗します。弁護士に依頼すると原則として返済がいったん止まるため、その分を費用に充てる形が一般的です。この記事では、手続き別の費用の内訳、分割・後払いの実務、法テラスの条件、司法書士との違い、費用倒れの判断と無料相談の使い方を順に説明します。
債務整理の費用はどのような内訳になっていますか?
「債務整理の費用」は、弁護士に支払う費用と裁判所に納める費用の二つに分かれます。どちらがいくらかかるかは、任意整理・個人再生・自己破産のどれを選ぶかで大きく変わります。
弁護士費用は着手金・報酬金・実費に分かれる
弁護士費用は、依頼時に支払う着手金、結果に応じて支払う報酬金、郵送料や交通費などの実費に分かれるのが一般的です。日本弁護士連合会(日弁連)の説明でも、着手金は結果にかかわらず受任時に受け取る報酬、報酬金は成功の程度に応じて受け取る報酬と整理されています。
日弁連も「弁護士に事件を依頼するときの報酬額には一律の基準はありません」と明記しており、金額は事務所ごとに異なります。見積もりでは、着手金・報酬金・実費を分けて確認しましょう。
任意整理には日弁連が定めた報酬の上限がある
任意整理は、裁判所を通さず、弁護士が貸金業者と直接交渉して返済条件を見直す手続きです。その報酬金は、日弁連の「債務整理事件処理の規律を定める規程」で上限が決められています(2011年4月1日以降の受任分に適用)。
| 報酬金の種類 | 上限(消費税別) |
|---|---|
| 解決報酬金(業者との解決自体に対する報酬) | 1社あたり2万円以下が原則(商工ローンは5万円以下) |
| 減額報酬金(減った金額をもとに計算する報酬) | 減額分の10%以下 |
| 過払金報酬金(取り戻した過払金をもとに計算する報酬) | 訴訟によらない場合は回収額の20%以下、訴訟による場合は25%以下 |
着手金には上限規制がありませんが、「管理手数料」「計算手数料」といった名目の個別手数料は原則として禁止されています(同規程第11条)。この上限は消費者や零細事業者の任意整理事件が対象で、自己破産や個人再生は対象外です。任意整理の費用については、こちらの記事も参考にしてください。
任意整理の費用は30万円以上かかる?費用相場と金額をおさえるコツを知って手続きを成功させよう
自己破産・個人再生は裁判所に納める費用が別にかかる
自己破産と個人再生は裁判所の手続きなので、弁護士費用とは別に、申立手数料(収入印紙)・予納郵券(郵便切手)・予納金(官報公告費など)が必要です。破産法22条は、破産手続開始の申立てをするときは裁判所の定める金額を予納しなければならないと定めています。金額は裁判所ごとに異なるため、参考として東京地方裁判所民事第20部が公表している金額を示します。
| 手続き | 申立手数料 | 予納郵券 | 予納金 |
|---|---|---|---|
| 自己破産(個人・同時廃止) | 1,500円 | 4,950円 | 13,046円 |
| 自己破産(個人・管財事件) | 1,500円 | 4,950円 | 最低20万円+20,397円 |
| 個人再生 | 1万円 | 1,990円分+110円×3枚+140円×2枚×債権者数 | 15,120円 |
東京地裁「破産事件の手続費用一覧」(2026年1月1日現在)と「個人再生手続の申立てに当たって」(2025年11月1日以降適用)の数値です。同時廃止(財産がほとんどなく、破産手続の開始と同時に手続きを終える形。破産法216条)なら裁判所費用は2万円弱ですが、管財事件になると予納金が20万円以上に跳ね上がります。
つまり「費用が払えない」と感じたとき、足りないのが弁護士費用なのか裁判所費用なのかで、使える対処法が変わります。弁護士費用は分割や法テラスで対応しやすい一方、裁判所の予納金は原則として自己負担です。自己破産の費用の内訳は、こちらの記事も参考にしてください。
自己破産にかかる費用相場・内訳を解説!安く抑えるコツや払えないときの対処法も紹介
費用が払えなくても債務整理を依頼できますか?
依頼時にまとまったお金がなくても、債務整理を依頼できる場合があります。弁護士に依頼すると返済が原則として止まるため、これまで返済に回していたお金を費用に充てる、という組み立てが実務では一般的です。
受任通知で返済が止まり、その分を費用に回せる
弁護士が依頼を受けると、各債権者に受任通知を送ります。貸金業法21条1項9号は、弁護士等から書面で通知を受けた貸金業者が、正当な理由なく本人に電話や訪問で支払いを要求することを禁じています。このため通知後は督促が原則として止まり、返済に回していたお金を手元に残せるようになります。受任通知が届いて返済が止まったら、これまでの返済額をそのまま費用の積立に回してください。この積立が、分割払いの原資になります。
分割払い・後払いに応じる事務所が多い
債務整理を扱う事務所では、着手金を分割で受け取る、受任後の積立から充当するなど、支払い方法を柔軟にしている例が少なくありません。ただし、分割の回数や月額は事務所によって異なります。契約前に、月々いくらを何か月払うのか、着手金と報酬金のどちらが分割の対象なのかを、委任契約書で確認しましょう。
費用の積立中に新たな借入をしない
積立の期間中に、別の業者から借りて費用を用意することは避けてください。破産法252条1項5号は、支払不能を知りながら詐術によって信用取引で財産を取得した行為を、免責不許可事由として挙げています。新たな借入が、後の免責(借金の支払い義務を免れること)の判断に影響するおそれがあります。特定の債権者だけに返済を続けることも避け(破産法252条1項3号)、積立中の家計の扱いは弁護士の指示に従ってください。
裁判所の予納金は原則として自己負担
弁護士費用は分割にできても、裁判所に納める予納金は依頼者の負担です。法テラスの案内でも、自己破産と民事再生申立事件の予納金は本人の負担であり、裁判所の決定に従って早急に用意する必要があるとされています。
同時廃止なら東京地裁の例で予納金は1万円台ですが、管財事件になると最低20万円以上が必要で、手続きの選択に影響することがあります。納付の方法や時期は裁判所ごとに扱いが異なるため、依頼する弁護士を通じて確認しましょう。
法テラスの立替制度はどんな条件で使えますか?
法テラス(日本司法支援センター)は、国が設立した公的な法人です。収入と資産が一定の基準以下の方を対象に、無料の法律相談と、弁護士・司法書士の費用の立替え(民事法律扶助)を行っています。後から返す必要はありますが、利息はかからず、月々の負担を抑えられるのが特徴です。
立替制度の3つの要件と、収入・資産の資力基準
立替制度の利用には、次の3つの要件があります。
- 収入と資産が一定の基準を超えていないこと
- 勝訴の見込みがないとはいえないこと
- 民事・家事・行政に関する法的手続きで、民事法律扶助の趣旨に適すること(刑事事件は対象外)
1の資力基準は家族の人数で変わり、東京都特別区や大阪市などの生活保護一級地では高めに設定されています。
| 家族人数 | 手取月収の基準 | 資産(現金・預貯金等)の基準 |
|---|---|---|
| 単身 | 182,000円以下(東京都特別区等は200,200円以下) | 180万円以下 |
| 2人家族 | 251,000円以下(同276,100円以下) | 250万円以下 |
| 3人家族 | 272,000円以下(同299,200円以下) | 270万円以下 |
| 4人家族 | 299,000円以下(同328,900円以下) | 300万円以下 |
法テラス「民事法律扶助のしおり」(2026年3月現在)の基準です。5人以上の家族は1人増えるごとに3万円(一級地は3万3千円)が加算されます。家賃や住宅ローンを負担している場合は、単身で41,000円(特別区は53,000円)までを収入基準に上乗せできます。手取月収が基準をわずかに上回っていても、家賃加算で対象になることがあります。
立て替えてもらえるのは着手金と実費
法テラスが立て替えるのは、弁護士・司法書士の着手金と実費です。法テラスのしおりでは、債権者10社の自己破産事件を代理援助で依頼した場合の標準額が示されています。着手金132,000円と実費23,000円の合計155,000円です(2026年3月現在。困難性により増額あり)。
法テラスを通す場合の弁護士費用は法テラスが定める基準で決まるため、金額の見通しが立てやすい点は安心材料です。ただし裁判所の予納金は立替えの対象外で本人負担です。生活保護を受給している方に限り、自己破産の予納金の一部を立て替える場合があるとされています。
返済は月5,000〜10,000円程度の分割で、利息はつかない
立て替えてもらった費用は、援助開始決定後に月5,000〜10,000円程度の分割で法テラスに返します。事件終了後は原則として3年以内に完済する金額で返済月額が決まり、利息はつきません。事情によっては月額が減額または増額される場合もあります。
望んだ結果にならなかった場合でも全額を返す必要はありますが、月々数千円で弁護士に依頼できる仕組みは、まとまった費用のない方にとって現実的な選択肢です。
生活保護受給者は返済の猶予・免除が受けられる場合がある
生活保護を受けている方は、申請により事件進行中の返済が猶予され、事件終了後に未返済分の免除が認められることがあります。生活保護に準じる程度に生計が困難な方も対象になり得ますが、法テラスは多重債務事件では原則として猶予を認めないとしています。
ただし、生活保護受給者であれば自動的に免除されるわけではありません。法テラスが挙げる免除の要件は次の3つです。
- 生活保護法による保護を受けていること
- 事件の結果得た利益の25%を返済していること(または不要とする特別の事情があること)
- 免除を認める相当性があること
申請は事件終了後に、所定の申請書と収入・資産を確認する書類を添えて行います。
審査に通らない場合の対処法
法テラスの立替制度には審査があり、収入・資産が基準を超える場合のほか、刑事事件や行政窓口への手続きなど扶助の趣旨に合わない相談も対象外です。通らなかったときは、事務所に直接依頼して分割払いを相談する、家計を見直して積立額を確保する、といった方法に切り替えます。審査の基準や落ちたときの対処法は、こちらの記事で詳しく説明しています。
法テラスの審査は落ちることもある!審査基準や落ちた時の対処法を解説
弁護士と司法書士では費用と対応範囲がどう違いますか?
費用の安さを理由に司法書士を検討する方もいます。ただし、司法書士が代理人として動ける範囲には法律上の上限があり、借金の額や手続きによっては弁護士でないと対応しきれない場面があります。
司法書士が代理できるのは1社あたり140万円以下
司法書士法3条1項6号・7号は、司法書士が代理できる範囲を簡易裁判所の手続きなどに限っています。民事紛争の相談や和解も、紛争の目的の価額が裁判所法33条1項1号の額(140万円)を超えないものに限られます。このため、任意整理で司法書士が交渉の代理人になれるのは、原則として1社あたりの債権額が140万円以下の場合に限られます。
複数社の合計ではなく1社ごとの金額で判断されますが、借入額が大きい方は最初から弁護士に相談したほうが、途中で依頼先を変える手間を避けられます。
自己破産・個人再生では司法書士は代理人になれない
自己破産と個人再生は地方裁判所の手続きです。司法書士の代理権は簡易裁判所に限られるため、司法書士に依頼した場合は申立書類の作成までで、申立て自体は本人が行う「書類作成」の形になります。
個人再生では個人再生委員(裁判所が選任し、財産や収入の調査や再生計画案の助言を行う。通常は弁護士)が関与し、予納金の額は裁判所ごとに異なります。裁判所費用まで含めた総額で比較しないと、司法書士のほうが安いとは言い切れません。
法テラスの立替えは司法書士への依頼にも使えるので、費用の安さだけで司法書士を選ぶ必要はありません。対応範囲の違いは、こちらの記事で詳しく比較しています。
【債務整理】弁護士と司法書士の違いとは?対応範囲・費用・手続き別解説&弁護士に依頼するメリット
費用倒れを避けて無料相談を使うにはどうすればよいですか?
「費用を払ってまで債務整理する意味があるのか」という不安も、相談をためらう理由のひとつです。費用倒れ(費用が減額の効果を上回ること)を避けるには、手続きごとの費用の性質と自分の状況を照らし合わせ、無料相談で見積もりをもらって判断します。
任意整理は「減った分の10%以下」が報酬の目安になる
任意整理の減額報酬金は、日弁連の規程で減額分の10%以下と上限が決まっています。減った分の一部が報酬になる構造なので、費用倒れは起きにくい仕組みです。一方、解決報酬金は1社あたり2万円以下が原則なので、債権者の数が多いほど合計は増えます。少額の借入が多数ある場合は、業者ごとの残高と報酬金を並べて、整理する価値のある業者を弁護士と見きわめてください。
自己破産は同時廃止か管財事件かで費用が大きく変わる
自己破産の裁判所費用は、同時廃止なら東京地裁の例で1万円台の予納金で済みますが、管財事件では最低20万円以上の予納金が必要です。一定以上の財産がある場合や、免責不許可事由を調べる必要がある場合は管財事件になることがあります。どちらになるかは裁判所が判断しますが、弁護士は事前におおよその見通しを立ててくれます。管財事件が見込まれるなら、早めに見通しを聞いておきましょう。
個人再生は借金が大きいほど費用対効果が出やすい
個人再生は、無担保の借金の総額が5,000万円以下で、将来も継続して収入を得る見込みがある方が利用できる手続きです。裁判所の案内では、原則として3年間で債務の一定割合を分割返済する仕組みとされています。費用は任意整理より高くなる傾向がありますが、借金が大きいほど減額幅が費用を上回りやすく、住宅ローンを払いながら家を残せる可能性がある点も特徴です。どの手続きが費用に見合うかは借金の総額・収入・財産で変わるため、複数の選択肢を並べて弁護士に見積もってもらいましょう。
法テラスの無料相談は同じ問題につき3回まで各30分
法テラスの無料法律相談は、収入と資産が基準以下の方を対象に、同じ問題につき3回まで、1回30分で利用できます。3回分をまとめて1回90分にすることはできません。1回30分は短いので、相談に行く前に、借入先・残高・毎月の返済額・収入を紙に書き出しておいてください。状況が整理されていれば、30分で手続きの候補と費用の目安まで聞きやすくなります。
相談前に用意し、見積もりで確認するもの
相談前に、次のものを手元にそろえておきましょう。おおよその数字があるだけで、弁護士は手続きの候補と費用の見通しを示しやすくなります。
- 借入先の一覧(業者名・借入時期・現在の残高・毎月の返済額)
- 収入がわかる書類(給与明細、源泉徴収票、年金の通知など)
- 家計の状況(家賃・光熱費・食費などの月々の支出)
- 財産の状況(預貯金、車、保険の解約返戻金、不動産の有無)
- 届いている書類(督促状、裁判所からの通知、業者との契約書)
見積もりをもらったら、着手金と報酬金の区別、分割の可否、法テラスに対応しているか、裁判所費用の見込みまで確認します。可能なら2か所以上で相談し、費用倒れの可能性を率直に教えてくれるかどうかも比べてください。日弁連の規程も、弁護士が事件処理の方針や不利益になる事項を自ら説明することを原則としています。
返済の見通しが立たなければ、法テラスや弁護士に相談する
毎月の返済のために新たに借りている、督促が続いている、裁判所から書類が届いた。こうした状況なら、費用の心配より先に相談の予約を入れてください。受任通知で督促が止まれば、そこから費用の積立と生活の立て直しが始められます。
東京商工リサーチの集計(最高裁判所の司法統計・速報値に基づく)によると、2025年の個人破産件数は速報値で83,100件と、13年ぶりに8万件台に達しました。費用が払えないことは、相談を先送りする理由にはなりません。一人で抱え込まず、法テラスや弁護士に早めに状況を伝えましょう。
よくある質問
債務整理の費用は、依頼した日に全額払う必要がありますか?
全額を依頼時に払う必要があるとは限りません。分割払いや受任通知後の積立から充当する事務所が多く、法テラスの立替制度なら月5,000〜10,000円程度の返済で依頼できる場合があります。
任意整理の費用は借金がいくら減るかで変わりますか?
減額報酬金は、日弁連の規程で減額分の10%以下と上限が決まっているため、減った金額に応じて変わります。解決報酬金は1社あたり2万円以下が原則です。着手金には上限規制がないので、事務所ごとの基準を事前に確認しましょう。
生活保護を受けていても債務整理できますか?
できる場合があります。法テラスの立替制度では、生活保護受給者は事件進行中の返済が猶予され、事件終了後に免除が認められることがあります。ただし免除には要件があり、受給しているだけで自動的に免除されるわけではありません。
債務整理の費用の仕組みを知り、払えないままあきらめずに相談しよう
債務整理の費用は、弁護士に払う費用と裁判所に納める費用に分かれます。弁護士費用は分割払いや法テラスの立替制度で対応できる場合が多く、受任通知で返済が止まった分を積み立てる考え方が実務の基本です。裁判所の予納金は原則として本人負担なので、同時廃止か管財事件かの見通しを早めに立てましょう。
まずは法テラスや弁護士の無料相談で、自分の場合の費用と支払い方法を具体的に聞いてみてください。借入先と残高を書き出して相談に行けば、30分でも手続きの候補と費用の目安がつかめます。最初の一歩は、費用の心配を専門家に話すことです。
参考:日本弁護士連合会「債務整理の弁護士報酬のルールについて」/法テラス「民事法律扶助のしおり」/法テラス「無料法律相談に関するよくあるご質問」/東京地方裁判所「破産事件の手続費用一覧」/裁判所「個人再生」/e-Gov 法令検索「貸金業法」
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の事案については弁護士にご相談ください。
最終更新:2026-09-30/執筆:債務整理相談 弁護士ほっとライン 編集部/弁護士監修:準備中