毎日のように督促の電話が鳴り、封筒を開けるのも怖くなっているのに、返せるあてがないという状態は、心身ともに削られていきます。「弁護士に頼めば督促が止まるらしい」と聞いても、いつから、どの相手に効くのかが分からず、依頼をためらう方も多いはずです。ただし、弁護士に債務整理を依頼して受任通知が届けば、貸金業者からの督促は原則として止まります。止まる相手と止まらない相手があるのは、根拠となる法律が債権者ごとに違うからです。止まらない相手と、止まっている間に避けるべきことを知っておけば、依頼後も落ち着いて次の手を考えられます。この記事では、督促が止まる時期の目安、受任通知の根拠、止まらない相手、通知後に返済しなくてよい理由と注意点、避けるべき行動を順に説明します。
弁護士に債務整理を依頼すると督促はいつ止まりますか?
受任通知が債権者に届いた時点で、原則として直接の請求は止まる
弁護士が債務整理の依頼を受けると、各債権者に「受任通知」という書面を送ります。通知には、弁護士が窓口になったこと、本人への直接の連絡をやめてほしいこと、取引履歴の開示を求めることなどが書かれています。法テラスも、弁護士や司法書士が債務整理の依頼を受けて貸金業者に通知を行った場合、通常は貸金業者からの連絡が止まると案内しています。
督促が止まる「起点」は依頼した瞬間ではなく、通知が届いて受け付けられた時点です。通知を発送してもらう日を確認しておきましょう。
止まるまでの日数は「通知の発送日」と「業者の受付処理」で決まる
止まるまでの日数を一律に言い切ることはできません。弁護士が受任した日かその翌営業日に通知を発送し、債権者が受け取って社内で登録した時点から止まる、という流れが一般的です。ファックスで先に送る事務所では、より早く止まる可能性があります。
債権者の数が多いと通知の作成に時間がかかることもあります。依頼したら「通知はいつ、どの方法で送るのか」を弁護士に確認し、送付先の債権者一覧に漏れがないか一緒に見直してください。漏れた債権者には通知が届かず、その相手からの督促だけが続いてしまいます。
通知が届く前に発送された督促状や、社内で共有される前の電話は、依頼後でも届くことがあります。これは違法な取り立てではなく、単なる行き違いです。電話には「弁護士に依頼した」とだけ伝え、事務所名と電話番号を案内すれば足ります。日時と内容はメモして弁護士に伝えてください。
返済日が目前でも、依頼を優先してよい理由
「今月分だけは払ってから相談しよう」と考える方は少なくありません。しかし、返済のために別の借入れをすれば債務は増え、家族に借りれば新たな債務が生まれます。受任通知が届けば、その返済日に払わなくても直接の督促は原則として止まります。まず相談する方が、結果として負担は小さくなる場合があります。
督促状そのものへの対処は、こちらの記事を参考にしてください。督促状は無視してもいい?ケース別の注意点・無視してはダメな理由と正しい対処方法
受任通知で督促が止まる法的な根拠は何ですか?
貸金業法21条1項9号:貸金業者は本人に直接請求できなくなる
消費者金融やカードローンなどの貸金業者には、貸金業法21条1項が取立て行為の規制を定めています。その9号は、債務者が債務の処理を弁護士や司法書士に委託し、その旨の書面による通知があった場合を対象にしています。正当な理由なく本人へ電話・電報・ファックス・訪問で弁済を要求し、直接請求しないよう求められてもさらに続けることを禁じる規定です。受任通知には本人への直接連絡を控えるよう求める一文が入るのが通常で、この通知が「書面による通知」と「直接請求しないよう求めること」の両方を兼ねます。
同じ21条1項は、通知の有無にかかわらず、午後9時から午前8時までの電話や訪問(貸金業法施行規則19条)も禁じています。勤務先への連絡や、第三者への借入れ事実の開示も同様です。受任通知は、その上にさらに「本人への直接請求そのもの」を止める効果を持つといえます。
この効果が実務で守られているのは、罰則があるからです。貸金業法47条の3は、21条1項の違反に2年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその併科を定めています。刑の名称は2025年6月1日施行の改正で「拘禁刑」に統一されました。登録業者にとって違反の代償は大きく、通知が届けば止まるのが通常です。
債権管理回収業に関する特別措置法18条8項:債権回収会社も同じ
借金が長く滞ると、債権が債権回収会社(サービサー)に譲渡されたり、回収を委託されたりすることがあります。債権回収会社には、債権管理回収業に関する特別措置法18条8項が適用されます。債務者が弁護士に処理を委託した旨の通知があったときは、正当な理由なく訪問や電話で弁済を要求してはならないと定められています。
貸金業法24条2項は、貸金業者から債権を譲り受けた者にも21条の取立て規制を準用しています。譲渡先が変わっても、受任通知の効果は原則として引き継がれます。
銀行・クレジット会社のショッピング枠は法の直接対象ではないが、実務上は止まる
銀行のカードローンや、クレジットカードのショッピング利用分は、貸金業法の直接の対象ではありません。法テラスは、貸金業者や債権回収会社以外の債権者(銀行、個人債権者など)は法的に直接の取立てが禁じられているわけではないとしています。それでも、弁護士や司法書士が受任すれば直接の連絡が止まることがほとんどだという案内です。
| 債権者の種類 | 根拠 | 通知後の直接請求 |
|---|---|---|
| 消費者金融・カードローン(貸金業者) | 貸金業法21条1項9号 | 原則として禁止 |
| 貸金業者から債権を譲り受けた者 | 貸金業法24条2項(21条を準用) | 原則として禁止 |
| 債権回収会社(サービサー) | 債権管理回収業に関する特別措置法18条8項 | 原則として禁止 |
| 銀行・信販会社のショッピング枠 | 直接の禁止規定なし | 実務上は止まることがほとんど(法テラス) |
| 家族・知人などの個人 | 直接の禁止規定なし | 止まらない場合がある |
受任通知を送っても督促が止まらない相手はいますか?
税金・社会保険料・養育費・罰金は止まらない
住民税や国民健康保険料などの滞納は、貸金業法の対象外です。役所は裁判所の手続きを経ずに差押えができる立場にあり、弁護士からの受任通知で税金の督促や差押えが止まることはありません。破産法253条1項は、租税等の請求権のほか、養育費などの扶養義務、悪意で加えた不法行為の損害賠償、罰金等も免責の対象外としています。
これらは自己破産をしても消えません。税金の滞納がある方は、債務整理とは別に、役所の窓口で分割納付や猶予の相談を進めてください。
闇金には通知が効かないが、そもそも返す義務がない
無登録の闇金は、貸金業法の規制を初めから守る気がありません。受任通知を送っても嫌がらせが続くことがあります。ただし、法テラスは、闇金からの貸付けは無効で、民法708条の不法原因給付の考え方から元金についても返済する必要はないと案内しています。
出資法5条は、業として年20%を超える利息の契約や請求を5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金の対象としています。年109.5%を超えるとさらに重い刑です。闇金が絡む場合は、通常の債務整理とは別に、闇金対応に慣れた弁護士や警察に相談してください。具体的な対処法は、こちらの記事を参考にしてください。闇金の取り立てをやめさせる方法|最適な相談先や対処法を知ってトラブルを解決!
家族・知人からの借入れと、保証人への請求は止まらない
友人や親族からの借入れは、貸金業法の対象ではありません。受任通知を送ること自体は可能ですが、法的に直接の請求を止める効力はなく、相手が連絡を続けることもあります。対象に含めるかどうかは、関係を保ちたいかどうかも含めて弁護士と相談して決めることになります。
保証人への請求も別です。民法446条1項により、保証人は主たる債務者が履行しないときに履行する責任を負うため、本人が返済を止めると債権者は保証人に請求する可能性があります。保証人がいる債務については、依頼前に事情を話しておくか、その債務だけ任意整理の対象から外すかを弁護士と検討してください。
止まる相手と止まらない相手を整理すると、次のとおりです。
| 相手 | 受任通知で直接請求は | 補足 |
|---|---|---|
| 消費者金融・カードローン | 原則として止まる | 貸金業法21条1項9号 |
| 債権回収会社 | 原則として止まる | 特別措置法18条8項 |
| 銀行・信販のショッピング枠 | 実務上ほとんど止まる | 法的な禁止規定はない |
| 税金・社会保険料 | 止まらない | 役所に分割・猶予を相談 |
| 闇金 | 止まらないことがある | 貸付けは無効。警察・弁護士へ |
| 個人間の借入れ | 止まらない場合がある | 対象に含めるか要検討 |
| 保証人への請求 | 止まらない | 民法446条1項 |
| 養育費・罰金 | 対象外 | 破産法253条1項 |
受任通知の後、返済しなくてよいのはなぜですか?注意点はありますか?
弁護士が債権調査と方針決定を行う期間だから
受任通知を送ると、弁護士は各債権者から取引履歴を取り寄せ、利息制限法に基づいて引き直し計算を行い、正確な債務額を確定します。そのうえで、任意整理・個人再生・自己破産のどれが適しているかを決めます。この間に返済を続けると手続きの前提が崩れ、自己破産では債権者間の公平も欠くため、原則として返済を止めるのが通常です。
返済を止めた分は、生活費と弁護士費用、和解後の返済原資として積み立てるよう求められることが一般的です。「払わなくてよくなった」のではなく、「払い先が一時的に変わった」と捉えてください。
なお、返済を止めている間も契約上は遅延損害金が日々加算されます。ただし任意整理では、和解の際に将来利息や遅延損害金をカットする内容で合意することが多く、増えた分がそのまま請求されるとは限りません。
一部の債権者だけに返す「偏頗弁済」は避ける
親しい相手や保証人がいる相手にだけ返したくなるのは自然ですが、自己破産では問題になります。破産法252条1項3号は、特定の債権者に特別の利益を与える目的で、義務に属しない弁済をしたことを免責不許可事由としています。
返したい相手がいるときは、自分の判断で払わず、先に弁護士に相談してください。方針が任意整理であれば、特定の債権者を対象から外す形で対応できる場合があります。
信用情報への登録は依頼前から始まっていることが多い
「依頼すると信用情報に載る」と心配する方は多いのですが、返済の遅れが続いていれば、依頼の前から延滞の情報が登録されている場合が多いのです。CIC は、クレジット情報を契約期間中および契約終了後5年以内保有すると公表しています。JICC も、延滞などの返済状況や債務整理などの取引事実を、契約継続中および契約終了後5年以内(2019年10月1日以降の契約)登録します。
登録を避けるために依頼を遅らせるより、早く整理して完済し、5年の起点を早める方が回復は早くなります。任意整理で登録される内容と期間は、こちらの記事を参考にしてください。任意整理で信用情報に載る内容・期間を解説!ポイントを知って効率的に信用情報を回復
時効はこの期間も進むが、更新や完成猶予に注意
民法166条1項は、債権者が権利を行使できることを知った時から5年で債権が時効により消滅すると定めています。受任通知を送っても時効の進行は止まりませんが、通知や交渉の中で債務を認めると民法152条の「承認」として時効が更新され、そこから改めて5年が進みます。
何年も払っていない借入れがある場合は時効の援用を検討できることがあるので、依頼時に弁護士へ伝えてください。
受任通知の送付から和解までの流れ
この期間、弁護士は一般に次の流れで手続きを進めます。
- 相談・契約後、弁護士が各債権者へ受任通知を発送し、取引履歴の開示を求める
- 開示された履歴をもとに引き直し計算を行い、正確な債務額を確定する
- 家計の収支を確認し、任意整理・個人再生・自己破産のどれにするかを決める
- 任意整理なら債権者ごとに返済条件を交渉し、和解書を取り交わす
- 和解内容に従って返済を再開する(個人再生・自己破産なら裁判所へ申立て)
任意整理の和解までの流れと再和解の考え方は、こちらの記事を参考にしてください。任意整理の「和解」って?和解までの流れと対処方法、再和解を成功させるコツを解説
依頼後にやってはいけないことは何ですか?
債権者からの連絡に自分で応じない・勝手に約束しない
通知後に債権者から連絡があっても、返済の約束や分割の合意を自分で結ばないでください。弁護士の交渉と食い違い、和解案に影響することがあります。
裁判所からの書類は別です。支払督促や訴状は、受任通知の後でも届くことがあり、放置すると差押えに進むおそれがあります。裁判所名の入った封筒を受け取ったら、その日のうちに弁護士へ連絡し、書類の種類と期限を確認してください。
新たな借入れをせず、給与振込口座と引き落としを確認する
督促が止まると気持ちに余裕が生まれますが、この期間に新たな借入れやカード利用をすると、手続きの前提が崩れます。自己破産では、返せないと分かっていながら返せるように装って借りると、破産法252条1項5号の「詐術を用いた信用取引」に当たるおそれがあります。免責不許可事由の一つです。任意整理でも、新たな債権者が増えると和解のやり直しになります。
借入先の銀行に給与振込口座がある場合、返済の遅れを理由に口座が凍結され、預金と相殺されることがあります。受任通知を送る前に、給与振込口座を借入れのない銀行に変えるよう弁護士から指示されることが一般的です。公共料金や家賃の引き落としが止まった債権者のカードに紐づいていないかも確認してください。
弁護士との連絡を絶やさない
書類の提出が遅れたり、連絡が取れない状態が続いたりすると、弁護士が辞任することがあります。辞任すると債権者にその旨が通知され、督促が再開するのが通常です。積立てが難しくなったときや、収入が変わったときも、隠さず早めに伝えてください。方針を見直せば、無理のない形に組み直せる場合があります。
督促が止まっている間に選ぶ債務整理の3つの方法
任意整理:裁判所を使わず、債権者と直接返済条件を話し合う
法テラスは、任意整理を「裁判所などの公的機関を利用せず、当事者が私的に話合いをして、支払額や支払方法について合意をする手続」と説明しています。将来利息のカットと分割回数の見直しが中心で、保証人がいる債務や車のローンを対象から外せる柔軟さがあります。一方で元本は原則として減らないため、収入の範囲で返し切れる見込みが前提になります。
個人再生:裁判所の認可で債務を減らし、原則3年で返す
裁判所の案内では、個人再生は将来継続的に収入を得る見込みがあり、無担保債務の総額が5,000万円以下の人が申し立てられる手続きです。再生計画が認可され、原則として3年間で定められた額を返済すると、残りの債務の免除を受けられます。養育費や税金など一部の債務は免除されませんが、住宅ローン特則を使えば自宅を残せる可能性があるのが特徴です。
自己破産:免責許可で原則として債務の支払義務を免れる
裁判所の案内では、破産手続は裁判所が開始を決定し、債務者の財産を金銭に換えて債権者に配当する手続きで、債務を免れるには免責の許可が必要です。破産法253条1項により、免責が確定すると租税や養育費などを除く破産債権について責任を免れます。浪費やギャンブルが原因の場合は免責が受けられないこともあると裁判所も注意しており、事情を正直に弁護士へ伝えることが大切です。
どの手続きが合うかは、債務額・収入・持ち家の有無で変わります。返済の見通しが立たなければ、法テラスや弁護士に早めに相談してください。お住まいの地域で、債務整理に強い弁護士を見つける>>
よくある質問
司法書士に依頼しても督促は止まりますか?
貸金業法21条1項9号は弁護士と司法書士の両方を「弁護士等」として通知の主体に含めています。そのため司法書士の受任通知でも、貸金業者からの直接請求は原則として止まります。ただし、司法書士が代理できる範囲には債務額の制限があるため、債務の総額や手続きによっては弁護士への依頼が必要になります。
受任通知を送った後に督促の電話が来たら違法ですか?
通知が届く前の行き違いであれば違法とは限りません。通知の到達後も貸金業者が本人に直接弁済を要求し、やめるよう求めても続く場合は、貸金業法21条1項9号に違反する可能性があります。日時と内容を記録して弁護士に伝えてください。
家族や会社に知られずに督促を止められますか?
受任通知が届くと、貸金業者からの自宅や勤務先への連絡は原則として止まるため、依頼後に家族や会社へ知られる経路は減ります。ただし、保証人になっている家族には請求が向かうことがあり、自己破産では同居家族の収入資料が必要になる場合があります。
受任通知を送ると時効は止まりますか?
止まりません。民法166条1項の消滅時効は通知の送付とは無関係に進みます。逆に、交渉の中で債務を認めると民法152条により時効が更新されます。長く払っていない借入れがある場合は、通知を送る前に時効援用の可否を弁護士に確認してください。
受任通知で督促が止まる仕組みを知り、早めに弁護士へ相談しよう
弁護士に債務整理を依頼して受任通知が届けば、貸金業者や債権回収会社からの直接の督促は原則として止まります。根拠は貸金業法21条1項9号と債権管理回収業に関する特別措置法18条8項です。銀行やクレジット会社も実務上はほとんど止まりますが、税金・闇金・個人間の借入れ・保証人への請求は止まらないため、これらは別の対応が必要です。
止まっている間は返済を止め、その分を積み立てながら、弁護士と一緒に任意整理・個人再生・自己破産のどれにするかを決めていきます。一部の相手だけに返す、新たに借りる、裁判所の書類を放置する、といった行動は避けてください。国民生活センターには2025年度も23,937件の多重債務相談が寄せられており、督促に追われている方は決して少なくありません。受任通知という仕組みを使って落ち着いて考える時間を取り戻すことが、解決への近道です。
参考:e-Gov法令検索「貸金業法」/e-Gov法令検索「債権管理回収業に関する特別措置法」/e-Gov法令検索「破産法」/法テラス「弁護士や司法書士に債務整理を依頼すると、貸金業者からの連絡が止まるのですか」/裁判所「個人再生」/CIC「CICが保有する信用情報」/JICC「信用情報の内容と登録期間」
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の事案については弁護士にご相談ください。最終更新:2026-09-30執筆:債務整理相談 弁護士ほっとライン 編集部/弁護士監修:準備中