「債務整理をしたほうがいいのは分かっているけれど、任意整理・個人再生・自己破産のどれが自分に合うのか分からない」という声は、借金の相談で最も多いもののひとつです。債務整理はこれら4つの手続きの総称で、任意整理はそのうちのひとつです。ただし、債務整理は「借金額」「安定収入の有無」「持ち家を残すか」「保証人がいるか」の4点を確かめれば、候補は1〜2つに絞れます。家を残したまま借金を減らす手続きもあり、自己破産だけが債務整理ではありません。この記事では、任意整理・個人再生・自己破産・特定調停の4つを一枚の比較表にまとめます。そのうえで、減額幅・期間・費用の違い、持ち家や仕事・信用情報への影響、借金額や収入に応じた選び分け、迷ったときに相談する順序を順に説明します。
債務整理の4つの手続きはどう違いますか?
まず4つの手続きの全体像を一枚の表で押さえましょう。
| 項目 | 任意整理 | 個人再生 | 自己破産 | 特定調停 |
|---|---|---|---|---|
| 裁判所 | 使わない(債権者と直接交渉) | 地方裁判所 | 地方裁判所 | 簡易裁判所 |
| 対象にする債務 | 選んだ債権者のみ | 原則すべて(住宅ローンは特則で別扱い可) | 原則すべて | 選んだ債権者のみ |
| 減額幅 | 主に将来利息のカット。元本は原則そのまま | 最低弁済額まで減額(民事再生法231条2項) | 免責が確定すれば原則ゼロ(破産法253条1項) | 話し合いで決める(主に将来利息) |
| 返済期間 | 合意による分割 | 原則3年、特別の事情で最長5年(民事再生法229条2項) | 返済なし | 合意による分割 |
| 持ち家 | 住宅ローンを対象から外せば残せる | 住宅資金特別条項を使えば残せる可能性 | 原則として処分される | 住宅ローンを対象から外せば残せる |
| 車 | ローンを対象から外せば残せる可能性 | ローン中の車は原則として引き揚げの対象(所有権留保) | ローン中は引き揚げ、完済済みでも一定額を超えると処分の対象 | ローンを対象から外せば残せる可能性 |
| 職業・資格の制限 | なし | なし | 手続き中は一部の職業に制限 | なし |
| 信用情報への登録 | あり | あり(官報にも掲載) | あり(官報にも掲載) | あり |
| 保証人への影響 | 対象から外せば避けられる | 保証人に請求が向かう | 保証人に請求が向かう | 対象から外せば避けられる |
任意整理は裁判所を通さず利息カットと分割を交渉する
任意整理は、弁護士などが債権者と直接交渉し、将来の利息をカットしたうえで元本を分割で返す約束を取り付ける手続きです。裁判所を使わないため官報に載らず、整理する債権者を自分で選べる点が特徴です。車のローンや保証人つきの借入れを対象から外す組み立ても可能です。
一方で、元本そのものは原則として減りません。減るのは主に将来の利息と遅延損害金なので、元本を3〜5年程度で返せる収入があることが前提です。
個人再生は裁判所で借金を大幅に減らし原則3年で返す
個人再生は、地方裁判所に申し立て、借金を法律で決まった最低弁済額まで減らしたうえで、原則3年で分割して返す手続きです。民事再生法221条1項により、将来も継続的に収入を得る見込みがあり、住宅ローンなどを除いた債務の総額が5,000万円以下の個人が利用対象です。
最大の特徴は、住宅資金特別条項(住宅ローン特則)を使えば、住宅ローンを従来どおり払い続けながら、それ以外の借金だけを減らせる点です。ただし、減額後の金額を返し続ける必要があるため、収入が不安定な方には向きません。
自己破産は免責で返済義務そのものを免れる
自己破産は、地方裁判所に破産と免責を申し立て、免責許可の決定が確定すれば、税金や養育費など一部を除いて返済義務を免れる手続きです(破産法253条1項)。財産が少ない場合は、破産管財人を選ばずに終わる「同時廃止」になることもあります。
返済がなくなる代わりに、一定額を超える財産は処分され、手続き中は一部の職業に就けません。また、浪費やギャンブルで借金を作った場合など、破産法252条1項の免責不許可事由に当たると、免責が認められないことがあります。ただし同条2項により、裁判所が裁量で免責を許可する場合もあるため、心当たりがあっても最初から諦める必要はありません。
特定調停は簡易裁判所で調停委員を挟んで話し合う
特定調停は、簡易裁判所に申し立て、調停委員が間に入って債権者との返済方法を調整する手続きです。東京簡易裁判所の案内では、個人の申立手数料は相手方1社につき500円分の収入印紙で、申立てから終了までおおよそ2か月程度、出頭は2回程度です。
弁護士に頼まず自分で申し立てられるため、費用を抑えやすい手続きです。一方で、減るのは主に将来利息で、合意ができなければ不成立になります。成立した調停は確定判決と同じ効力を持つため、滞るとそのまま差押えに進む可能性があります。詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
特定調停のデメリットとメリット|他の債務整理との違いを知り、本当に有効な借金解決方法を知ろう
減額幅・期間・費用はどれくらい違いますか?
減額幅は個人再生の最低弁済額と自己破産の免責で決まる
任意整理と特定調停では元本は原則として減らず、将来利息と遅延損害金のカットが中心です。減額幅が法律で決まっているのは個人再生で、小規模個人再生では民事再生法231条2項3号・4号により、借金の総額に応じて次の金額を下回る再生計画は認可されません。
| 借金の総額(住宅ローン等を除く) | 最低弁済額 |
|---|---|
| 100万円未満 | 借金の総額(減額なし) |
| 100万円以上500万円以下 | 100万円 |
| 500万円超1,500万円以下 | 総額の5分の1 |
| 1,500万円超3,000万円以下 | 300万円 |
| 3,000万円超5,000万円以下 | 総額の10分の1 |
借金が400万円なら100万円、1,000万円なら200万円が下限です。ただし、手元の財産の合計額がこれを上回る場合は、その財産額まで返す必要があります。給与所得者等再生(定期収入が安定した方向けの型)では、可処分所得の2年分以上という基準も加わります(民事再生法241条2項7号)。返済期間は民事再生法229条2項2号により、原則として認可決定の確定から3年、特別の事情があれば5年を超えない範囲です。
自己破産では、免責許可の決定が確定すると破産債権について責任を免れます(破産法253条1項)。ただし同項には例外があり、税金、養育費や婚姻費用、罰金、故意や重大な過失で人を傷つけた損害賠償などは免責されません。
費用は裁判所に納める実費と弁護士費用に分かれる
費用は「裁判所に納める実費」と「弁護士などに払う報酬」の2層で考えると整理しやすくなります。公的に確認できる金額は次のとおりです。
| 手続き | 裁判所に納める実費(公表値) | 弁護士費用の目安(法テラス立替基準) |
|---|---|---|
| 任意整理 | なし(裁判所を使わない) | 債権者1社で着手金33,000円+実費10,000円、5社で着手金110,000円+実費25,000円 |
| 個人再生 | 申立手数料10,000円(民事訴訟費用等に関する法律 別表第一)+郵便料・予納金 | 法テラスの公表ページなし(相談時に確認) |
| 自己破産 | 申立手数料1,500円(破産1,000円+免責500円)。東京地裁の予納金は同時廃止13,046円、管財事件は最低20万円(2026年1月1日現在) | 債権者1〜10社で着手金132,000円+実費23,000円 |
| 特定調停 | 収入印紙は相手方1社につき500円(東京簡裁)+郵便切手 | 本人申立てなら不要 |
弁護士費用の欄は、法テラス(日本司法支援センター)が公表している民事法律扶助の「費用の目安」で、収入や資産が一定基準以下の方が立替制度を使う場合の基準額です。なお、日本弁護士連合会の規程により、任意整理の減額報酬は減額分の10%以下、過払金の報酬は訴訟によらない場合は回収額の20%以下、訴訟による場合は25%以下と上限が決まっています。
法テラスの立替金は原則として月々の分割で返す仕組みで、利息はつきません。なお、自己破産の予納金は生活保護受給中の方を除いて、個人再生の予納金はどなたも立替の対象外です。生活保護を受給中は返済が猶予され、事件終了後も受給が続いていれば免除の申請が可能です。
持ち家・仕事・信用情報・保証人はどうなりますか?
持ち家は個人再生の住宅ローン特則か任意整理なら残せる可能性がある
自己破産では、破産手続開始時に持っている財産は原則として破産財団に組み入れられ、換価して債権者に配当されます(破産法34条1項)。持ち家も例外ではなく、原則として手放すことになります。
これに対して個人再生では、民事再生法196条以下の住宅資金特別条項を使えば、住宅ローンはこれまでどおり払い続け、それ以外の借金だけを減らす再生計画を立てられます。任意整理や特定調停でも、住宅ローンを対象から外せばそのまま住み続けられるのが一般的です。特則を使える条件は、こちらの記事を参考にしてください。
個人再生で住宅ローンはどうなる?特則適用の条件・巻き戻し・手続き後のローンについて
職業・資格の制限は自己破産の手続き中だけに生じる
破産手続開始の決定を受けてから復権するまでの間、一部の職業に就けなくなる定めがあります。たとえば警備業法3条1号は「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」を警備業の欠格事由とし、保険業法279条1項1号も生命保険募集人の登録拒否事由として同じ定めを置いています。免責許可の決定が確定すれば復権し(破産法255条1項1号)、制限はなくなります。
任意整理、個人再生、特定調停には、こうした職業・資格の制限はありません。
信用情報はどの手続きでも登録され、期間は5〜7年が公表値
どの手続きを選んでも信用情報機関には債務整理の事実が登録され、いわゆるブラックリストの状態になります。
| 信用情報機関 | 登録される情報 | 公表されている登録期間 |
|---|---|---|
| CIC | クレジット情報(契約内容・支払状況) | 契約期間中および契約終了後5年以内 |
| JICC | 契約内容・返済状況・取引事実(債務整理・破産申立て等) | 契約継続中および契約終了後5年以内(2019年10月1日以降の契約) |
| KSC(全国銀行個人信用情報センター) | 取引情報 | 契約期間中および契約終了日(未完済なら完済日)から5年を超えない期間 |
| KSC | 官報情報(破産・民事再生の開始決定等) | 決定日から7年を超えない期間 |
個人再生と自己破産は官報に掲載されるため、KSCの官報情報として決定日から最長7年間残る点が、任意整理・特定調停との違いです。どの手続きでも信用情報への登録は避けられませんが、延滞を続けても同じく登録されます。
保証人には裁判所の手続きの効果が及ばない
自己破産の免責も個人再生の減額も、効果が及ぶのは本人だけです。破産法253条2項は、免責許可の決定は保証人に対する債権者の権利に影響を及ぼさないと定め、民事再生法177条2項も、再生計画は保証人に対する債権者の権利に影響を及ぼさないと定めています。本人が裁判所の手続きで支払いを免れると、その分の請求は保証人に向かうということです。
親や配偶者が保証人の借入れがある場合は、任意整理や特定調停でその借入れを対象から外し、本人が払い続ける組み立てが選択肢になります。難しい金額なら、保証人にも事前に伝え、保証人自身の債務整理も含めて一緒に相談するのが現実的です。
借金額・収入・持ち家の有無でどう選び分けますか?
冒頭に挙げた4つの軸で、選び分けの入口の目安を整理します。
利息を止めれば3〜5年で返せるなら任意整理から考える
借金の元本を利息なしで36〜60回に分けたときの月々の金額が、家計から無理なく出せるなら、任意整理が第一候補です。財産を手放さず、官報にも載らず、対象にする債権者を選べるからです。元本180万円なら、60回払いで月3万円が目安になります。自分で進めたい方は、特定調停も候補になります。
反対に、月々の金額が手取りから生活費を引いた残りを超えるなら、任意整理では解決しません。無理な和解を結んで途中で払えなくなると、かえって状況が悪化します。任意整理が向かないケースは、こちらの記事を参考にしてください。
任意整理をしない方がいい14のケースとありがち誤解とは?悩んだときの解決方法も解説
返せないが収入が続き家を残したいなら個人再生を検討する
元本が多くて任意整理では返しきれないものの、給与などの継続的な収入があり、持ち家を手放したくない方には、個人再生が合う可能性があります。民事再生法221条1項の要件を満たし、最低弁済額を原則3年で返せるかが判断の軸です。
小規模個人再生と給与所得者等再生のどちらにするかで返済額が変わるため、収入の内訳を持って弁護士に相談しましょう。自己破産と迷う方は、こちらの記事も参考にしてください。
個人再生と自己破産の違いとは?手続き・条件の比較や切り替え方法を教えます!
収入が乏しく返済の見込みがなければ自己破産を検討する
減額後の金額でも返済の見込みが立たない方、収入が不安定で3年間の返済計画を組めない方は、自己破産が現実的な選択肢です。最高裁判所の司法統計(速報値)によると、2025年の個人の破産申立ては83,100件と3年連続で増え、8万件台は2012年以来13年ぶりです(東京商工リサーチ 2026年6月7日のまとめによる)。
不安になりやすいのは職業の制限や財産の処分ですが、制限は手続き中の一部の職業に限られ、破産法34条3項により99万円までの現金は手元に残ります。無理な返済を続けるより、早く相談したほうが失うものが少ないケースは少なくありません。
保証人や免責不許可事由がある場合は手続きの組み合わせで考える
保証人つきの借入れがあるなら、前の章のとおり、任意整理や特定調停でその借入れを対象から外すか、保証人と一緒に相談するのが基本です。
ギャンブルや浪費で借金を作った場合は、破産法252条1項4号の「浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと」に当たります。この場合、免責が認められないおそれがあります。ただし同条2項により、裁判所は経緯やその後の事情を考慮して裁量で免責を許可することができます。それでも不安が残るなら、免責の有無に左右されない個人再生を選ぶ方法もあります。詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
自己破産の免責不許可事由の11項目を解説!免責が下りなかったときの対処法とは?
迷ったときは何から相談すればよいですか?
まず借金と家計の全体を書き出す
相談を実のあるものにするには、借金の全体像を紙1枚にまとめておくことが近道です。借入先ごとの残高・金利・毎月の返済額・保証人の有無と、手取り収入・生活費・財産を書き出し、家計から返済に回せる金額を確かめるところから始めましょう。借り始めた時期と主な使い道も添えておきましょう。
督促の書類や契約書もまとめておいてください。
返済の見通しが立たなければ法テラスや弁護士に相談する
費用が心配な方は、法テラスの相談から始めるのがひとつの方法です。収入や資産の基準を満たせば無料の法律相談を受けられ、弁護士費用の立替制度もあります。ただし、債権者との交渉や申立てそのものは弁護士に依頼する必要があります。
弁護士が債権者に受任通知を送ると、貸金業法21条1項9号により、貸金業者は正当な理由なく電話や訪問などで本人に返済を求めることを禁じられ、取り立ては原則として止まります。「自分の状況で、どの手続きが向くか」を最初に聞き、複数の選択肢と理由を説明してくれるかどうかを判断材料にしましょう。
よくある質問
借金が100万円以下でも個人再生や自己破産は使えますか?
法律上、借金額の下限はありません。ただし、個人再生では100万円未満の借金は減額されない(民事再生法231条2項4号)ため、少額の借金には任意整理や特定調停のほうが向くのが一般的です。借金が少額で低金利の場合は、弁護士費用のほうが減額分を上回ることもあるため、費用の見積もりも一緒に確かめましょう。
家族に知られずに債務整理を進められますか?
任意整理と特定調停は官報掲載がないため、同居家族に知られにくい手続きです。個人再生と自己破産は官報に掲載され、家族の収入を示す書類が必要になることもあるため、完全に伏せるのは難しい場合があります。
弁護士と司法書士のどちらに相談すればよいですか?
任意整理と特定調停は、1社あたりの債権額が140万円以下であれば認定司法書士の代理も可能です(司法書士法3条1項6号・7号)。個人再生と自己破産は地方裁判所の手続きで、代理人になれるのは弁護士だけです。候補が定まっていない段階では、4つすべてに対応できる弁護士への相談が近道です。
4つの手続きの違いを知り、自分に合う債務整理を早めに選ぼう
任意整理と特定調停は利息のカットが中心で財産を残せ、個人再生は最低弁済額まで減らして家を残せる可能性があり、自己破産は免責で返済義務そのものがなくなります。どれが合うかは、借金額、安定収入の有無、持ち家を残すか、保証人がいるかの4点で大きく変わります。
まずは借入先と家計を書き出し、利息なしで3〜5年で返せるかを確かめてください。返せるなら任意整理、返せないが収入が続くなら個人再生、返済の見込みが立たないなら自己破産という順に候補を絞り、法テラスや弁護士に相談して自分の数字で確かめましょう。迷う時間が長いほど遅延損害金は増えるので、早めに相談に進んでください。
参考:e-Gov法令検索「民事再生法」/e-Gov法令検索「破産法」/裁判所「個人再生」/裁判所「破産」/東京簡易裁判所「特定調停」/法テラス「自己破産 費用の目安」/CIC「CICが保有する信用情報」/JICC「信用情報の内容と登録期間」/全国銀行個人信用情報センター「センターのご案内」
本記事は一般的な情報の提供を目的としており、個別の事案については弁護士にご相談ください。
最終更新:2026-09-30/執筆:債務整理相談 弁護士ほっとライン 編集部/弁護士監修:準備中