- 「自己破産の手続きは自分でできる?」
- 「自己破産を自分でするデメリットと弁護士に依頼するメリットが知りたい」
自己破産の手続きには、裁判所費用の他に弁護士に依頼する場合にはさらに費用がかかります。自己破産の方法にもよりますが、弁護士費用だけで25万~50万円ほどかかるのが一般的。弁護士費用を節約するために、自分で手続きできないか考えている人もいるのではないでしょうか。
そこでこちらの記事では、自己破産を自分でできるかについてや自分で手続きするときの手順、注意点やデメリットなどを詳しく紹介。さらに弁護士に依頼するときのメリットや弁護士費用を支払えないときの対処法もお教えします。自己破産を自分で手続きしようかという方は参考にしましょう。
自己破産は自分でもできる?
自己破産はしたいが弁護士費用がネックになっているという方が一番知りたいのは「自己破産は自分でもできるの?」ということではないでしょうか。こちらではその疑問を解決するとともに、自分でするときの必要書類や費用などを紹介します。
本人が行うこともできる
結論からいうと、自己破産の手続きを弁護士に任せずに自分で裁判所に申し立てることは可能です。債権者自身が裁判所に破産手続開始を申し立てることを「債権者申し立て」といいます。申し立てを行う各裁判所が定める書類一式を作成、準備したうえで裁判所に提出。手間はかかるものの、絶対に弁護士に依頼しなければならないというものでもありません。
自分ですることも可能とはいえ、あまりおすすめできる方法ではありません。というのも慣れない手続きで膨大な時間や手間がかかる一方で、自分で行って成功する確率がそれほど高くないから。提出書類に記載ミスがあったりすると、最悪の場合免責が受けられなくなります。
自分でやって失敗したらどうなる?
自分で自己破産の手続きをして失敗してしまうと、借金の免責が受けられず、この苦しい生活が続いてしまうでしょう。どうしても自己破産ができない場合は、個人再生や任意整理といった他の債務整理で借金問題を解決できるかもしれません。
しかしこれらの債務整理は、自己破産と比較すると効果が限定的で、手続き後も返済すべき借金が残ります。そのため、安定した収入などの条件があります。
自己破産できないときの対処法や解決方法は、こちらの記事を参考にしてください。
「自己破産できないと言われた!その具体的原因と対処法・解決方法とは」
自分でするときの必要書類
自分で自己破産を申し立てる場合、次のような申立書類や添付資料が必要です。申立て書類は、管轄裁判所によって異なる可能性があるため、必ず次の方法で入手するようにしましょう。
- 管轄裁判所の窓口でもらう
- 管轄裁判所のHPからダウンロードする
一般的な自己破産の申立書類は以下の通りです。
- 申立書(破産手続開始及び免責申立書)
- 陳述書
- 債権者一覧表
- 滞納租税公課(税金)一覧表
- 財産目録
- 債権者宛てラベル原稿
こちらの書類を裁判所に納める予納金、申立手数料として納める収入印紙、書類等を郵送するために必要や所定の郵便切手と一緒に窓口に提出します。その他添付書類として、次のような書類が必要になります。
添付書類 | 内訳 |
---|---|
身分に関する資料 | 住民票 |
職業や収入に関する資料 | 給与明細・源泉徴収票・給与証明書・所得課税証明書・商業登記簿謄本・年金や失業保険の受給証明書・生活費碁受給証明書・退職金の試算表や支給明細書など |
現在の住居に関する書類 | 不動産登記簿謄本・賃貸借契約書・公営住宅の住宅使用許可書など |
過去の破産手続開始決定等に関する書類 | 破産手続開始決定・免責についての決定 |
資産に関する書類 | 不動産登記簿謄本・固定資産税評価証明書・ローン残高証明書・車検証・査定書・売買契約書・保険証券・解約返戻金試算表・有価証券・ゴルフ会員権証書・通帳のコピーなど |
営業関係の資料(自営の場合) | 税務申告書控えおよび決算書・所得・課税証明書・事業者用資産目録・店舗や事務所の賃貸借契約書など |
その他 | 裁判所に申立書を提出した後で、結婚・離婚・転居・就職・転職・退職をした場合は、それを証明できる書類 |
これら添付書類も、管轄裁判所によって異なる場合があります。詳しくは申し立て予定の裁判所までお問い合わせください。
債務整理に必要な書類と流れについては、こちらの記事を参考にしましょう。
「債務整理の流れと必要書類 | 期間や手続きの注意点も解説」
自分でするときの費用
破産手続開始の申立時に必要な費用の相場は、以下の通りです。
裁判所費用 | 相場金額 |
---|---|
予納金 | 同時廃止:11,859円
管財事件:50万円~ 少額管財:20万円~ |
収入印紙(申立手数料) | 1,500円分 |
郵便切手 | 84円×債権者の数
84円×10枚など |
管轄裁判所によって予納金や必要な郵便切手の内訳が変わってきます。詳しくは、自分が申立てる予定の裁判所に確認しましょう。
自己破産にかかる費用については、こちらの記事を参考にしてください。
「自己破産にかかる費用相場・内訳を解説!安く抑えるコツや払えないときの対処法も紹介」
自分で手続きするときの流れ
自分で自己破産の手続きする流れを説明する前に、手続きにかかる期間について。自己破産を弁護士の依頼した場合の期間は、破産手続開始の申立から免責許可決定まで一般的に3カ月~1年ほどです。免責不許可事由や処分する財産がないときに選択される同時廃止の場合で3カ月前後、破産管財人が選任される管財事件で6カ月~1年ほどです。
これにプラスして書類を集めたり作成するのに必要な準備期間が2~3カ月ほどかかると覚えておきましょう。ただしこの目安期間はあくまで弁護士に依頼した場合です。自分で一から準備して裁判所とのやり取りもすべて自分だけでしようと思うと、さらに時間がかかることを覚えておきましょう。
1.裁判所に破産申立てをする
上で紹介した申立書と必要書類、添付書類をすべてそろえて裁判所に持参して、破産申立てを行います。無事申立書類が受理された後は「破産事件受理証明書」を取得します。これは次項で説明する用途に必要なため。破産事件受理証明書の申請手数料は1通当たり150円です。
2.破産事件受理証明書を債権者に送付
破産事件受理証明書を入手したら、証明書のコピーを債権者に送付します。これは以降の取り立てをストップするためです。弁護士に自己破産を依頼すると、その数日後には弁護士から債権者宛てに「受任通知」が送付されます。これにより債権者は取り立て行為ができなくなります。
しかし自分で自己破産を申し立てる場合には、何もしないままだと取り立てがストップしません。そこで破産事件受理証明書を債権者に送付して、取り立てをやめさせるという訳です。
3.債務者審尋(裁判官との面接)
申立書類が受理されると、裁判官との面接があります。面接では申立書類の内容確認や借り入れの経緯、生活状況などについて尋ねられます。その後裁判官により、同時廃止事件(A)とするか管財事件(B)とするか決定されます。
A.同時廃止の場合
同時廃止が適当であると判断されると、次のような順序で手続きが進められます。
A-1.同時廃止決定
同時廃止事件となった場合、破産手続開始決定と破産手続開始決定が同時に行われます。これが「同時廃止事件」呼ばれる理由です。破産手続は省略となり、ただちに免責の手続きに移ります。
A-2.免責審尋
申立てから1~2カ月後に免責審尋が行われます。尚、債務者審尋で裁判官と債務者が直接面接した場合には、そのときに免責に関する審尋も行われるため、免責審尋が省略されるのが通常です。
免責審尋では、担当裁判官から次のような確認があります。
- 住所や氏名、本籍地などに間違い、変更がないか
- 提出書類に間違いがないか
- 免責制度について理解しているか
- 現在の生活を再建するための心構え
申立て書類や裁判所の調査で、特に大きな問題が見られない場合には複数の破産申立人が法廷に集められて「集団審尋」という方法で免責審尋が行われることが多いです。自分の順番が来たら、上記の内容について正直かつ簡潔に述べましょう。
A-3.免責の許可・不許可の決定
免責審尋後、債権者からとくに反対意見が出されなければ、免責許可決定が出ます。同時廃止では免責不許可事由がないことが前提になっているため、ほとんどのケースで免責が許可されるでしょう。
A-4.免責許可決定の確定
その後債権者から正式な不服申し立てがなければ、免責許可決定からおおむね一カ月後で免責許可決定が確定となります。これをもって以後の借金返済義務が免除されるという訳です。
A-5.「免責決定確定証明書」を取得
免責許可決定確定となった後は、裁判所から「免責決定確定証明書」を取得してください。免責決定確定について裁判所では特に通知がないため、免責許可決定が確定したことを証明したいときに必要です。
B.管財事件の場合
債務者審尋の結果、管財事件に該当するとなった場合は、次のような手順で手続きが進められます。
B-1.破産管財人との面談
管財事件となると、まずは破産管財人との面談が行われます。面談では破産に至った経緯や財産状況、債権者に関してなど様々な質問をされます。浪費やギャンブルなど免責不許可事由がある場合は、以降も毎月1回程度破産管財人との面談が継続され、その都度家計収支表などの提出が求められるケースがあります。
B-2.債権者集会
裁判所では月1回の頻度で、債権者集会が行われます。その間に破産管財人が財産の換価(現金化)や債権者への配当準備を進めます。不動産など処分に時間がかかる財産を持っている場合は、破産手続にかかる期間が長期化する可能性が高いでしょう。なお債権者集会では、財産の換価や処分に関する報告が破産管財人から行われます。
B-3.債権者への配当
財産の換価や処分が完了したら、破産管財人から債権者に対して配当が行われます。ただし自己破産を選択する債務者のほとんどは、債権者に配当できるような財産を持っていないのが実情。そのため、配当率は0~10%ほどになるのがほとんどです。
B-4.破産手続の終結および廃止
破産管財人による債権者への配当が完了した時点で、裁判所は破産手続終結および廃止の決定を出します。
B-5.免責審尋
同時廃止と同様に、裁判所での免責審尋が行われます。基本的には破産管財人による調査をもとに判断されますが、破産者の対応も判断の材料となります。
B-6.免責許可決定
免責審尋で問題がない場合は、免責許可決定が下ります。免責が許可されたら官報という国の機関誌に、破産者の氏名や住所が掲載されます。その後は同時廃止と同じ流れとなります。
自己破産に関する期間と短くするポイントは、こちらの記事を参考にしてください。
「自己破産にまつわる期間を徹底解説!手続き・制限解除にかかる期間&短くする方法とは?」
自分で手続きする場合のデメリットと注意点
自分で自己破産の手続きすることは不可能ではないものの、次のようなデメリットや注意点があります。
そもそも自己破産が適していない可能性がある
自己破産を選択したものの、そもそも自己破産が最適でない可能性があります。借金問題を解決する方法は自己破産だけでなく、任意整理や個人再生などの方法があります。しかし債務整理や法律に詳しくない素人では、どの方法が自分に適しているか判断するのが難しいでしょう。
自分では「自己破産しかない」と思い込んでいても、実際にはよりデメリットの少ない任意整理で済んだということも。また自己破産では持ち家を含むすべての財産を処分されてしまいますが、持ち家を残したい方には個人再生の方が向いている場合があります。
債務整理の種類ごとの向いている人については、こちらの記事を参考にしてください。
「債務整理の種類は4つ!メリットデメリット・変わること・向いている人を解説」
準備・手続きに時間がかかる
自分一人でやろうとすると、準備や手続きのために膨大な時間がかかります。ほとんどの人にとって、自己破産は初めての経験。どのような書類を準備してどのように書類に記入すればいいか、専門的な知識がない人がすべてクリアするのは簡単なことではありません。
申立て後も書類が不足していたり不備があった場合には、追加書類の提出や修正が求められます。これらの対応もすべて自分でしなければならないため、普段の生活や仕事をしながらでは大変です。ここで速やかに補正ができないと、いつまでたっても破産手続がスタートできません。結果としていつまでも借金が免責されず、その分経済的な立て直しが遅れる可能性があります。
取立が長引く
弁護士に自己破産を依頼すると、早いと翌日、遅くても数日以内に受任通知が送付されるので、すぐに債権者からの取り立てがストップします。しかし自分で手続きすると、取り立てをストップできるのは破産申立てが受理され破産事件受理証明書を取得し、債権者に送付してから。
破産申立書の作成や書類の準備に時間が必要ですが、その間も債権者からの取り立ての電話や督促が止まることはありません。複数の債権者がいる場合にはそれぞれへの対応が必要で、精神的にも辛いものがあるでしょう。
裁判所へ行く必要がある
自己破産は裁判官や破産管財人との面談があるので、複数回裁判所へ行く必要があります。弁護士に依頼しない場合には、全て自分で対応しなければなりません。裁判所が開いているのは平日の日中です。仕事をしながらだと、相当な負担となることは間違いありません。
手続き費用が高くなる
弁護士を代理人としないと、裁判所費用が高くなる可能性があります。下の弁護士に依頼するメリットで詳しく説明しますが、弁護士に依頼しないと受けられない「少額管財」という制度があるため。
また弁護士に依頼すると財産や借金理由の調査をしっかりと行い、適切に申立書類を作成してもらえるので、同時廃止になる可能性が高いでしょう。引継予納金が高い管財事件を避けられるので、弁護士費用を考えても自分でやるより安くなるケースも。手続き費用を節約するために自分でしたのに、結局費用がかかるということになりかねません。
免責が受けられない可能性
自分で手続きすると、最悪の場合免責が受けられない可能性があります。自己破産でスムーズに免責が認められるためには、破産法にある「免責不許可事由」に該当しないことが大切。免責不許可事由に該当する可能性があるときには、裁判所による「裁量免責」が受けられるように努力しなければなりません。
どのような行為が免責不許可事由に当たるかや、裁量免責を受けるための対応策を取るためには、法律や自己破産についての知識が欠かせません。しかし自分でやろうとすると、知らない間に免責不許可事由に当たる行為をしていたり、裁判所を説得することができずに、免責を受けられない可能性があるという訳です。
知らない間にしがちな免責不許可事由には、次のような行為があります。
- 債権者名簿の抜けもれ
- クレジットカードの現金化
- 自己破産直前の名義変更
- 特定の債権者にのみ偏った返済
- 自己破産手続き中の借り入れ
とくに自己破産においては、債権者隠しや財産隠しは厳しい目でチェックされます。このような行為が発覚すると、免責を受けられない可能性が高まります。またその行為が悪質だとみなされると、破産詐欺罪として刑事罰が科される恐れも。故意でないまでも不正行為を行わないようするためには、弁護士に依頼することをおすすめします。
自己破産ができないケースと適さない人については、こちらの記事を参考にしましょう。
「自己破産ができない9つのケースとは?対処方法や自己破産に適さない人について解説」
後でトラブルになるリスク
せっかく免責を受けられた後でも、トラブルになるリスクがあります。もし破産手続である債権者が漏れていた場合、その債権者から免責決定後に督促が来る可能性があり、自己破産の効果が半減してしまうでしょう。また債権者から裁判を申し立てられてしまうと、給与や預貯金が差し押さえられる危険も。
自己破産の申し立て時に債権者名簿に記載しなかった借金の請求権については、非免責債権に該当するため、債権者名簿は抜け漏れがないように記載しなければなりません。
弁護士に依頼する8のメリット
自分で手続きをするとたくさんのリスクやデメリットがありますが、弁護士に依頼すると次のようなメリットを受けられます。
督促がストップする
自己破産を弁護士に依頼すると、遅くても数日のうちに債権者からの督促を止められます。消費者金融やクレジットカード会社などの貸金業者は、貸金業法に則って営業を行っています。貸金業法第1条9項によると、弁護士や司法書士に借金問題の解決を委託し、弁護士事務所からその旨の通知を受け取った時点で、取り立て行為を禁止しています。
つまり弁護士への依頼は、督促や取り立てからの解放と同じ捉えていいでしょう。自分一人ですると、裁判所から破産事件受理証明書を取得し、債権者に送付するまで督促をストップできません。同じ手続きをするにしろ、督促に気を取られながらするのとそうでないのとでは、心のゆとりにも大きな差が出るのではないでしょうか。
裁判所費用を貯められる
弁護士が受任通知を送付すると、その段階から借金返済の必要がなくなります。今まで借金返済のために充てていたお金は、裁判所費用として貯められるのも大きなメリットです。自己破産をしようか悩んでいる人の中には「手続き費用を確保できない」という方も多いのでは?
そのような方でも、弁護士に依頼することで受任通知の送付から破産手続の申立ての間の数カ月間に、裁判所費用を貯めることが可能です。
債務整理のプール金の種類や目的については、こちらの記事を参考にしてください。
「債務整理のプール金って何?必要な債務整理の種類や目的を知り、手続きを成功させよう」
自己破産以外の方法を提示してもらえる
弁護士に借金問題を相談すると、自己破産以外の解決方法をアドバイスしてもらえるでしょう。自己破産には、借金をすべて免除できるという大きなメリットがある一方で、財産を処分されるなどのデメリットもあります。場合によっては自己破産せずに借金問題を解決できる可能性があるので、自分で決めつける前に弁護士に相談することをおすすめします。
書類の作成や収集に関する指示をもらえる
弁護士に手続きを依頼すると、書類の作成や準備に関するアドバイスがもらえます。上で説明した通り、自己破産を申し立てるには、さまざまな書類が必要です。これらの書類について、言葉の意味を理解して手続きの内容を習得しつつ作成していくには、相当な手間や時間がかかります。
しかし弁護士に依頼できると、「この言葉はこのような意味です」「この資料を準備してください」など、一つ一つの資料を間違えることなく準備できます。管轄の裁判所ごとに必要な資料が変わってきます。また申立人の状況や裁判所の運用に応じても必要書類が異なります。そのあたりも弁護士に確認しながら、確実に準備することができるでしょう。
手続きを代行してもらえる
弁護士に依頼すると、申立書類の作成や裁判所での面談など自己破産の手続きを代行してもらえます。そのため申立人の負担が大変軽減されるでしょう。法律の専門家である弁護士なら、必要書類の種類や記載方法を熟知しています。
また東京地裁の場合、申立て時の面談は弁護士が代理で出席することが可能です。債権者集会や免責審尋では、基本的に本人の出頭が必要ですが、それでも平日の昼間に何度も裁判所に呼び出される心配がなくなります。
同時廃止になる可能性が高い
弁護士に依頼すると、費用も期間もかからない同時廃止になる可能性が高まります。自己破産には管財事件と同時廃止という二つの手続きがあり、破産管財人が選任される管財事件だと裁判所費用が30万円以上も高くなります。手続きにかかる期間も同時廃止なら3カ月ほどですが、管財事件だと半年~1年近くかかることも。
同時廃止として認められるためには、財産や破産理由、債権者についてなど裁判所が必要としている調査がしつくされ、配当できる財産がないことが分かる書類が必要です。自分一人だけで準備しようとすると、裁判所を納得させるのは大変困難でとてもハードルが高いものとなるでしょう。
しかし自己破産についての経験や知識が豊富な弁護士に依頼できれば、完璧な資料や書類を準備でき、円滑な申立てによって管財事件になる可能性が高くなります。
免責を得られやすくなる
弁護士に自己破産を依頼すると、免責を受けられやすくなります。そもそもどのような行為が免責不許可事由当たるのか、素人では判断が難しいこともあるでしょう。とくに免責不許可事由がある場合は、裁量免責が受けられるかがカギに。裁量免責には、次のような判断基準があると考えられています。
- 免責不許可事由の悪質性
- 破産者本人の反省度合い
- 破産手続に対する態度
- 破産者側の事情
- 破産者が経済的に更生可能か
裁判所や破産管財人に誠実な態度で対応する、協力的かどうか、反省の態度が見られるかなどを総合的に判断されます。場合によっては反省文の提出を求められることもあり、どのようなことを書けば裁量免責を得られやすいのかアドバイスが受けられます。
弁護士に依頼しないと受けられない制度がある
管轄の裁判所によっては、弁護士に手続きを依頼しないと受けられない制度があります。
自己破産の場合、弁護士に依頼すれば利用できる制度がいくつかあります。例えば、即日面接制度や少額管財制度などです。即日面接は自己破産の申立て期日に裁判官と面談を行う制度です。
少額管財
少額管財とは、通常の管財事件よりも簡略化された手続きのこと。東京地裁や名古屋地裁など、一部の裁判所で運用されている制度です。予納金の金額も、通常の管財事件よりも20万円からと安くすみます。ただし少額管財は、弁護士が代理人についている場合のみ利用可能となっています。
即日面接制度
即日面接制度とは、自己破産の申立て当日または申立日から休日を除く3日以内に裁判官と面接ができる制度。通常は自己破産の開始決定が出るまで2週間~1カ月前後かかることも多く、かなりの時間短縮になります。この制度は東京地方裁判所でのみ行われている制度で、こちらも弁護士が代理人になっていることが条件です。
弁護士費用が支払えないときの対処法
弁護士に自己破産を依頼するときにネックになるのが弁護士費用。こちらでは依頼時に一括で弁護士費用を支払えないときの対処法を紹介していきます。
分割払い
弁護士事務所の中には、弁護士費用の分割払いに対応しているところもあります。分割払いができれば、破産後の生活のためにお金を回すこともできるでしょう。費用の面で弁護士に依頼することを躊躇している方でも、弁護士頼みやすくなります。
多くの弁護士事務所では、初回の相談料を無料で実施しています。そのときに弁護士費用を分割で支払うことができるか確認してみてもいいでしょう。裁判所費用は今まで督促に充てていたお金で何とかできます。また事務所の中には裁判所費用が準備できるまで待ってくれるところがあります。
「お金がないから…」と弁護士に依頼することを簡単にあきらめず、思い切って相談してみると道が開けてくるでしょう。
法テラス
収入や資産など、「資力基準」と呼ばれる一定の条件をクリアすれば、弁護士費用を「法テラス」に立て替えてもらうことができます。法テラスとは、国が設立した法的トラブルを解決するための機関。
立て替えてもらった費用は、毎月5,000円~1万円の分割で返済できます。返済するときの利息や手数料がかからないのも法テラスのメリット。収入や資産に関する条件は、世帯人数に応じて以下のように変わってきます。
世帯人数 | 手取り月収(東京・大阪など生活保護一級地) | 資産合計額 |
---|---|---|
単身者 | 182,000円以下(200,200円以下) | 180万円以下 |
2人家族 | 251,000円以下(276,100円以下) | 250万円以下 |
3人家族 | 272,000円以下(299,200円以下) | 270万円以下 |
4人家族 | 299,000円以下(328,900円以下) | 300万円以下 |
また法テラスには、自己破産の手続きを依頼する弁護士を紹介してくれる制度もあります。ただし経験豊富な弁護士など、選んで紹介してもらうことはできず、自動的に割り当てられた弁護士になる可能性が高いでしょう。また利用できるまでに審査があるため、債権者からの督促がストップするまで時間がかかるなどのデメリットもあるため、事前によく検討することをおすすめします。
司法書士に依頼する
弁護士費用がどうしてもねん出できない方は、司法書士に依頼するという方法があります。通常、自己破産における弁護士費用が50万円~に対し、司法書士費用は20万円からと費用をおさえられるため。
ただし弁護士と司法書士とでは、できる業務の範囲に違いがあるので気を付けましょう。
弁護士 | 司法書士 |
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弁護士は債権者1社当たりの上限がなく、書類作成はもちろん裁判所との審尋も任せられます。司法書士は費用そのものを安くできるというメリットがありますが、トータルでできることを考えた場合には、弁護士に依頼した方が負担ははるかに少なくなると言えるでしょう。
まとめ
自己破産の手続きを自分ですることは、法的に可能です、しかし一人で手続きしようとすると、たくさんの書類を記入ミスなく作成したり、抜けもれなく準備することはとても大変。また実際に督促がストップするのは裁判所に申立てた後。裁判所が開いている平日の日中に何度も出頭する必要があり、手続きそのものに時間がかかります。
何より免責が受けられない可能性があり、自己破産後にトラブルになる可能性が高いのもデメリットです。しかし弁護士に依頼できると、管財事件になっても裁量免責が受けられやすく、自己破産以外の方法があることもアドバイスしてもらえます。さらに弁護士に依頼した人だけが利用できる制度があるのも大きなメリット。
弁護士費用が心配で依頼するのを躊躇している方は、無料相談を利用して分割払いができないか確認してみましょう。法テラスの立て替え制度を利用するのも一つの方法です。自己破産を成功させるには、法的な知識や豊富な経験が欠かせません。信頼できる弁護士に依頼して、なるべくスムーズに手続きを進めていきましょう。