- 「クレジットカードを任意整理したら他のカードも使えなくなるって本当?」
- 「ブラックになってクレジットカードが全く使えないのは困る!」
クレジットカードは任意整理によって支払い金額を大幅に軽減することができます。しかし任意整理をしたことは個人信用情報にも記録されるため、他のクレジットカードにも影響を及ぼすことになります。
任意整理後にクレジットカードが使えなくなることに対し、不安に思う方も多いでしょう。そこで今回は任意整理をすると他のカードはどうなるのか、新規発行はいつからできるのかについて解説。
任意整理をする際のクレジットカードに関する注意点や、任意整理後でも利用できるキャッシュレス決済についてもまとめています。クレジットカードと任意整理の関係について不安に思っている方はぜひ参考にしてください。
クレジットカードは任意整理ができる
任意整理とは借金問題を解決する債務整理方法の一つ。専門家に依頼をして金融機関と交渉してもらい、今後返済する予定の金額を減らし返済計画を立てる手続きのことを指します。
任意整理というと消費者金融や銀行のカードローンが対象だというイメージが強いかもしれませんが、実際にはそうではありません。クレジットカードの利用方法には以下の2種類があり、いずれのケースでも任意整理手続きが可能です。
- ショッピング
- 買い物の料金を立て替える
- キャッシング
- カードでお金を借りる
ショッピングリボ払いは任意整理が有効
クレジットカードで買い物をした分の支払方法には、以下のような種類があります。
- 一括払い
- ボーナス一括払い
- 分割払い
- リボ払い
任意整理は今後支払う利息部分(将来利息)をカットする手続きです。つまり利息があればその分減額できる可能性があるということです。分割払い・リボ払いについては手数料(利息)が加算されるため、任意整理でその分を減額できる可能性があります。
一括払い、ボーナス一括払いについては利息が加算されないため、任意整理による減額は期待ができません。もし支払総額を減らしたいのであれば、個人再生や自己破産を検討することになります。
ただボーナス一括払いや一括払いの場合は任意整理の交渉によって分割払いに変更してもらえる可能性はあります。支払総額は変わりませんが、毎月の返済の負担を軽減すること自体は可能です。
キャッシング分も任意整理ができる
クレジットカードのキャッシングはカードを使いATMで借入ができるサービスのこと。カード会社によっては振込での貸付に対応しているところもあります。
キャッシングの利息は消費者金融と同じ18.0%前後に設定されていることが大半ですので任意整理によって返済金額を軽減することが可能です。また2010年より前に利用したキャッシングを任意整理すると過払い金が戻ってくる可能性もあります。
過払い金が発生していることも
過払い金とは貸金業者に法律の上限を超えて支払った利息のことを指します。2010年より以前は出資法と利息制限法の二つの法律によって上限利息が定められており、多くの貸金業者は利息制限法の上限を超える利息で貸付を行っていました。いわゆるグレーゾーン金利と呼ばれるものです。
しかし2010年6月の貸金業改正によりグレーゾーン金利はなくなり、利息制限法の上限を超えて払った分(過払い金)は過払い金請求により返還してもらえるようになりました。ショッピングは利息制限法の対象ではなかったため過払い金は発生しませんが、キャッシングの場合は過払い金が発生している可能性があります。
過払い金請求ができる条件
以下の全てに当てはまる方は過払い金がの返還手続きができる可能性があります。
- カードのキャッシングリボを利用していた
- 完済から10年以内である
- 2007年~2009年頃より前に借入をしていた
- 対象のカード会社が倒産していない
過払い金請求は完済から10年以上経過すると無効になるので注意してください。また貸金業法の改正は2010年ですが、大手消費者金融やカード会社は2007年頃から自主的に金利の変更を行っているため、そのころから過払い金は発生しなくなっています。
自分に過払い金が発生しているかどうか気になる方は債務整理に詳しい弁護士に相談をすることで確認をしてもらえます。
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クレジットカードを任意整理するとどうなる?
では実際にクレジットカードを任意整理した場合、どのようなデメリットが起こるかについて解説をしていきます。任意整理の影響は対象のクレジットカードだけでなく他のクレジットカードにまで及びます。そしてしばらくの間新しくカードを発行することもできなくなります。
カードは強制解約になる
クレジットカードを任意整理した場合、そのカードは強制的に解約(退会)処分となるケースが大半です。カード会社のほとんどは会員規約に「信用状態が著しく悪化したときは会員資格を取り消す」という旨を記載しています。
第19条(カード利用の停止、会員資格取消し)
3.当社は、会員が次の各号のいずれかの事由に該当した又は当社が該当したと判断した場合、会員資格を取消すことができ、加盟店等に当該カードの無効を通知又は登録することがあります。(中略)
(4)差押・破産・民事再生申立・取引停止処分があった場合等会員の信用状態が著しく悪化した場合。引用元:楽天カード会員規約
任意整理は条項中の「信用状態が著しく悪化した場合」に該当します。任意整理を開始すると弁護士からそのことを知らせる受任通知がカード会社へ発送され、カード会社がそれを確認した時点で解約手続きが取られることが大半です。
会員資格を取り消されると、持っているカードは切れ込みを入れて返還、もしくは自分で処分するよう指示されます。家族カードやETCカードを発行している場合はそれらも全て使えなくなることに留意してください。
他のカードも使用不可になる
任意整理を開始した後でも、任意整理の対象にしなかったカードはしばらくの間使える場合があります。しかしカード会社は途上与信を定期的に行っているため、そのタイミングでカードが使えなくなります。
途上与信とは会員の限度額を定期的に見直すことを指し中間審査と呼ばれることも。申込時と同じように個人信用情報をチェックし、他の会社で延滞等の事故情報がないかを確認をしています。任意整理をすると事故情報が個人信用情報に登録されるため、途上与信のタイミングで任意整理が他の会社に知られて利用停止になります。
購入した商品を回収されるケースも
高額な品物をカードで購入し、その支払が終わっていない状況で任意整理をした場合は購入したものを回収されることがあります。
カードやローンで購入した商品には支払が終わるまで所有権は債権者にあるという「所有権留保」という規定があります。残高が高額であり支払期間が長い自動車ローンではよく使用される言葉ですが、自動車ローン以外でも適用されることは知らない方も多いでしょう。
回収された品物は換金処分されて残高の返済に宛てられます。実際にどれくらいの金額の商品が回収されるのかについてはカード会社によって異なるため一概には言えません。
完済後約5年間は新規発行ができない
クレジットカード会社は申込時に必ず個人信用情報を確認し、他社との取引状況をチェックします。任意整理をすると信用情報に事故情報が記録される事は前述の通り。申込時に事故情報があることが判明した場合、審査に通ることはほぼありません。いわゆるブラックと呼ばれる状態です。
クレジットカード会社や銀行、消費者金融は以下のいずれかの信用情報機関に必ず加入しています。
機関名 | 略称 | 主な加盟会社 |
---|---|---|
株式会社シー・アイ・シー | CIC | クレジット会社 |
株式会社日本信用情報機構 | JICC | 消費者金融・信販会社 |
全国銀行個人信用情報センター | KSC | 銀行・信用金庫 |
異動情報が記録される期間は事故情報や信用情報機関の種類によって異なりますが、任意整理の場合はいずれも完済から最長で5年間は情報が消えません。その間は新しくカードが作れないと考えてください。
(なおJICCは2019年9月30日以前の契約の場合、完済日ではなく受任通知の受領日が起点になります。)
審査なしで使えるキャッシュレス決済
任意整理を行い信用情報がブラックになると新しくカードが作れなくなります。しかしそれはあくまでも審査があるクレジットカードの場合です。審査がないクレジットカードの場合はブラックでも利用ができます。
そこで任意整理をきっかけにブラックになった人に向け審査がないキャッシュレス決済方法を紹介します。
デビットカード
デビットカードとは、利用した分を銀行口座から即時に引き落とす仕組みのカードのことです。店舗でクレジットカードと同じように使うことができ、デザインも似ているものが多いため、他の人に「クレジットカードが発行できない人なのか」と不審に思われる心配がありません。
銀行口座の残高がそのまま利用可能額になるため、残高の管理に注意しながら使っていく必要があります。
家族カード
家族カードとは、カード契約者の家族向けに発行できるカードのこと。家族カードの審査はカード契約者本人が対象ですので、自分自身(家族カードを持つ人)がブラックでも影響は一切ありません。クレジットカードを問題なく使えている親族がいる場合はその人に家族カードを発行してもらいましょう。
ただ家族カードの場合、利用料金の引き落としは契約者本人の銀行口座になることに注意。自分で契約したカードと比較すると限度額が低めというデメリットもあります。
プリペイドカード
プリペイドカードとは前払い式のクレジットカードのことです。前もってカードにお金をチャージしておくことにより、その金額分だけクレジットカードとして使うことができます。
プリペイドカードは大きく以下の3つに分類されます。
- 国際カードブランド系カード
- VISA・JCB・Mastercardなど
- 交通系カード
- PASMO・Suicaなど
- 流通系カード
- nanaco・WAON・楽天Edyなど
国際カードブランド系カードはカードのデザインがクレジットカードに近い上、ブランド加盟店やネットショッピングでも利用ができるためお勧めです。いずれも審査が一切ないため最短数分で発行ができますが、前もって利用する分を用意しチャージをしておかなくてはいけない点がデメリットです。
キャリア決済
キャリア決済とは、購入した商品の代金を携帯電話の料金と一緒に支払うサービスのこと。サービス名は各キャリア毎に以下のように呼ばれています。
- docomo
- d払い
- au
- auかんたん決済
- ソフトバンク
- ソフトバンクまとめて支払い
スマホから手軽に利用できる利便性の高さから、ネットショッピングの決済方法として取り入れている会社も増えつつあります。ただいずれの会社でも上限金額が最大でも10万円までと低めに設定されているため注意してください。
QRコード決済
QRコード決済はスマホにアプリをダウンロードし、QRコードを読み取ることで決済を行うサービスを指します。クレジットカードを持っていない場合でも、銀行口座と紐づけを行う、もしくはあらかじめコンビニATMよりチャージをすることで利用できます。
QRコード決済サービスには主に以下のものが挙げられます。
- PayPay
- LINE Pay
- 楽天ペイ
- メルペイ
なおメルペイが導入しているメルペイ後払いは、後払い決済方法でありながら信用情報を参照しない独自の審査を採用しています。最初はごく低い限度額に設定されていますが取引を経ることで限度額が上がるため、ブラックでしばらくカードが発行できない方にお勧めです。
クレジットカードの任意整理前にすべきこと
クレジットカードの任意整理は消費者金融等からの借入の債務整理とは異なり、気をつけなくてはいけない点がいくつかあります。これからクレジットカードを任意整理する予定の方に向け、任意整理前の注意点を解説します。
公共料金などの支払いを変更する
公共料金や携帯電話料金などの支払い方法をクレジットカード払いにしていた場合、任意整理によってカードが解約になると支払ができなくなり、滞納となる恐れがあります。公共料金を滞納すると延滞料金が加算され、最悪の場合ライフラインに影響が及ぶ場合もあり危険です。
任意整理を検討しているクレジットカードの利用明細をよく確認し、自動振替やコンビニ払いなどクレジットカード払い以外の方法に変更しましょう。
ETCカードを変更する
任意整理をすると付帯カードも使えなくなるためETCカードも使えなくなります。ETCカードが使えないことに気づかず高速道路を利用すると、料金所のバーが開かず急に停止することになり非常に危険です。
これから任意整理をするという方は、ETCカードを以下のような代替カードに変更することを忘れないようにしましょう。
- ETCパーソナルカード
- ETCコーポレートカード
- 法人ETCカード
ETCパーソナルカード
ETCパーソナルカード(パソカ)とは、NEXCO東日本・中日本・西日本など6社が共同して発行しているETCカードです。ETC料金の支払機能のみに特化したカードのため、信用情報を参照されることなく発行できます。
年会費が1,257円(税込)かかること、デポジット(保証金)を最低2万円から納める必要がある点に注意。利用できる限度額はデポジットの80%まで、つまり20,000円を納めた場合は16,000円が限度額となります。
参考:ETCパーソナルカード
ETCコーポレートカード
ETCコーポレートカードはNEXCO東日本・中日本・西日本の3社が共同で発行しているカードで、大口利用者に向け発行しているものです。法人向けカードという訳ではなく、毎月NEXCO高速道路を30,000円以上利用する車両であれば個人でも申込が可能です。
発行のためには保証金を最低10万円預けるか、金融機関や保証会社を連帯保証人にする必要がありますが、高速情報協同組合に加入することで保証金・保証人不要でカードを発行できます。
法人ETCカード
法人ETCカードはETC協同組合が法人・個人事業者向けに発行しているETCカード。カードを発行するためには最初に出資金10,000円を支払い組合員になる必要があるほか、所定の発行手数料や年会費がかかります。
ETC決済に特化したカードのため信用情報機関による審査はありませんが、個人事業者の方が申し込む場合は所得税確定申告書が必要になります。
参考:ETC法人組合
ポイントがあれば利用する
クレジットカードの多くにはポイントが貯まるサービスが付帯していますが、カードが強制解約になると貯めたポイントは全て失効します。クレジットカードの任意整理を検討している方は、あらかじめポイントを商品に交換しておきましょう。
ただ商品が発送される前に任意整理を行った場合、発送が取り消しになる恐れがあるため注意してください。余裕がない方は電子マネーや他社ポイントへの移行など、日数がかからない交換方法を選びましょう。
任意整理後にカードを申込む時の注意点
任意整理を行った後でも完済してから5年を経過すれば再びカードの発行ができるようになります。ただ異動情報が消えた後に申込をしても必ずカードの審査が通るわけではありません。
カードの申込時には他社との取引状況、クレジットヒストリー(クレヒス)を必ず確認されます。任意整理を行った場合5年間はカードが使えない状態です。つまり取引状況が全くない状態になるため、逆に「債務整理をしたのでは?」と疑われる可能性があります。ネット上で「喪明け」「スーパーホワイト」と呼ばれることも。
そのような方がカードを申し込む場合は以下の事に注意しましょう。
自分の信用情報を確認する
信用情報がブラックになった場合、逆に解除された場合いずれも本人には一切連絡がありません。任意整理をした方がクレジットカードを契約する場合、まずは自分の信用情報を確認して異動が消えていることをチェックしましょう。
日本の金融機関が加入する信用情報機関には3つあり、いずれも本人であれば自分の信用情報を確認することが可能です。クレジットカード会社は大半がCICに加入していますが、複数の機関に加盟している会社もあるため、3箇所全てで開示手続きを行うことをお勧めします。
信用情報機関 | 開示方法 |
---|---|
株式会社シー・アイ・シー(CIC) | インターネット・郵送 |
株式会社日本信用情報機構(JICC) | スマートフォンアプリ・郵送 |
全国銀行個人信用情報センター(KSC) | インターネット・郵送 |
※2022年11月現在、いずれの機関も窓口での開示を休止しています。
任意整理した会社以外に申し込む
信用情報の記録は年月が経過すれば消えますがクレジットカード会社が保持している顧客情報は数年程度では消えません。任意整理をした場合は当然そのことも記録されていますので、5年後に再度申し込みをしても審査には確実に通りません。
任意整理をした会社には申し込まず、今までに使ったことがないカード会社に申込をしましょう。
同時に複数枚は申し込まない
クレジットカードの審査には日数がかかることもあります。そのため一度に複数枚を申し込んだり、一枚申込をした後に結果が待ちきれず別の会社に申し込んだりする人がいます。
クレジットカードに申込を行うとそのことが個人信用情報機関に記録され、他の会社から分かる状態になります。つまり複数回申込をした場合はそのことがバレるため、カードを既に複数枚発行していると疑われ審査落ちすることがあります。カードを申し込む際は1カ月に2枚程度に抑えるようにしましょう。
利用限度額は最低にする
任意整理の経験の有無に関係なく申込時の希望額を高く申込すると審査に通りにくくなる傾向があります。過去の取引情報がないのであれば猶更です。
申込時に希望の利用可能額を最低にし、キャッシング枠を希望しないことで審査に通りやすくなります。最初は利用できる金額が低くても取引を重ねることで限度額は上がっていきます。
まとめ
クレジットカードのキャッシング枠、リボショッピング枠は任意整理によって支払を軽減することができます。しかし任意整理をすると対象のクレジットカードは強制解約となり、信用情報に任意整理をしたことが記録される影響により完済から最大5年の間は他のカードが利用不可になります。
しかし完済から5年経過すればまたクレジットカードを使えるようになります。延滞等が原因で既に信用情報がブラックになっている場合まずは完済をすることが最重要です。
任意整理をすることでどれくらい返済が軽減できるかについては弁護士に相談をすることで確認をしてもらえます。カード会社との取引が長い場合は過払い金の有無についてもチェックをしてもらえます。弁護士への相談は無料であることが大半ですので、まずは気軽に相談をしてみてください。