-
- 「任意整理をしたのに返済が苦しい、もう1回任意整理できる?」
- 「和解後に生活の状況が変わったので交渉しなおしたい」
任意整理の手続きが成功すると、減額された後の金額を3年~5年程度かけて毎月返済していくことになります。和解をした直後は無理なく返済できていたにも関わらず、収入の状況が変化して返済が困難になるということは決して珍しくありません。
一度任意整理をした人が、もう一度任意整理をすることは可能でしょうか。この記事では2回目の任意整理ができるケースや注意点、できなかったときの解決方法について詳しく解説をしていきます。
2回目の任意整理はできる?
任意整理とは、弁護士や司法書士が金融機関と交渉し、借金の利息分を減額してもらう手続きのことを指します。法律の上では回数や期間に制限がありませんので、任意整理をすること自体は何回でも可能です。
任意整理に回数や期間の制限はない
債務整理には任意整理のほかに自己破産、個人再生があります。自己破産の場合、免責許可が下りる、つまり破産が決定してから7年が経過しないと2度目の破産手続きができません。自己破産は破産法で定められている手続きのため、法律でさまざまな規定があります。
個人再生は民事再生法に基づいて再生計画を立てる手続きのこと。個人再生は小規模個人再生と給与所得者個人再生の2種類があり、給与所得者等再生は手続きから7年経過しないと2回目の手続きができません。
小規模個人再生は借金を減額する際に債権者の同意が必要ですが、給与所得者等再生は同意がなくても減額が可能。期間を開けずに給与所得者等再生を行った場合、その都度借金が減額されて債権者が困ってしまうため、自己破産と同じ7年という制限が設けられています。
手続き | 2度目の手続きができる経過年数 |
---|---|
自己破産 | 7年 |
個人再生 | 給与所得者等再生は7年 小規模個人再生はなし |
任意整理 | なし |
任意整理は債務者から依頼を受けた弁護士・司法書士が金融機関と交渉し、借金を減額してもらう手続きです。自己破産や個人再生のように法律での規定はありませんので何回でも手続きができます。
ですが実際には「債権者が応じない」「収入がない」などの理由で2回目の任意整理ができない方のほうが多く、2回目の任意整理は1回目よりもハードルが高いものになっています。2回目の任意整理ができるかどうかより、どのような時に2回目の任意整理ができないのかを知っておくことが重要です。
相手が1回目と同じ会社かどうかで大きく異なる
2回目の任意整理ができないかどうかについての考え方は、任意整理をしたい金融会社が1回目と違うかどうかで大きな違いがあります。
1回目の任意整理と違う会社の場合
任意整理は会社ごとに手続きをするので、1つのローンだけ任意整理をして他のローンはこれまで通りに返済を続けるという人もいます。ただ状況が変わり、他の会社も追加で任意整理をしようと考えた場合「2回目の任意整理だから難しいかもしれない」と不安になる方もいるはず。
1回目の任意整理と違う会社で手続きをする場合、手続きの手順や難易度は1回目の任意整理と変わりません。今回解説をしている「2回目の任意整理」には当てはまりませんので、弁護士に依頼をすることで問題なく手続きが進むはずです。
1回目の任意整理と同じ会社の場合
注意が必要なのは、一度任意整理をしているローンを再度任意整理したいというケース。一度減額したローンをさらに減額してもらうことになりますので、通常の任意整理よりも交渉が難しくなり成功する確率も低いです。
今回の記事ではこのパターン、1度任意整理をした会社にもう一度任意整理を申し込むことについて解説しています。
2回目の任意整理ができないケース
任意整理をする回数や期間に決まった制限はありませんので、ここからは「どのような時に2回目の任意整理ができないのか?」に焦点を当てて解説をしていきます。
2回目の任意整理が困難なのは以下のようなケース。
収入が変化し、返済ができる見込みがない
任意整理はあくまでも利息分をカットする手続きです。残りの金額については債権者と債務者が毎月どれくらいの金額で返済を進めていくかを相談し合い、毎月の返済金額、返済期日が記された和解書(合意書、示談書と呼ばれることも)を取り交わします。
任意整理でどれくらいの利息がカットできるかは金融会社の方針、交渉にあたる弁護士によって左右されますので一概には言えませんが、どれほど金額をカットできても元金は残ります。つまり何度任意整理をしても借金が消えることはなく、和解手続き後は返済を必ず行わなくてはいけません。そのため返済が継続できない状況にある場合は任意整理ができません。
ただし収入ゼロの方が絶対に任意整理ができないとは限らず、配偶者や家族の収入を借金返済に充てられる場合は手続きできる可能性があります。なお生活保護を受けている場合、生活保護費を返済に充てることはできません。生活保護費で借金を返済していることがケースワーカーに知られると生活保護が打ち切られますので絶対にやめましょう。
債権者が交渉に応じない
任意整理をしたローンをもう一度任意整理する場合、相手方が交渉に応じてくれない可能性もあることを理解しておきましょう。任意整理には法的な強制力がなく、減額の交渉に応じるかどうかは債務者側の自由。任意整理には1回目でも応じないという方針の会社もあるほどです。
任意整理は金融会社にとって利益分を減らす手続きです。2回目の任意整理は1回減額した利息をさらに減額できるか交渉することになりますので、2回目の任意整理は受け付けしていないという会社も多いです。
しかし再和解の交渉を行った経験のある弁護士・司法書士に依頼して交渉してもらうことにより、2回目の任意整理(再和解)が成功する可能性もあります。どの会社が2回目の任意整理に応じてくれるかについても熟知していますので、効率よく手続きを進めることができます。
1回目の任意整理から年数が経過していない
任意整理ではお互いに支払計画を相談して和解書を取り交わします。しかし和解から年数が経っていないにも関わらず2回目の任意整理をするということは、その和解書をすぐに取り消そうとする行為です。そのため債権者側が「信頼できない」とみなし、交渉に応じない可能性が高いです。
逆に任意整理から年数が経っている場合、1回目の任意整理から収入状況が変化しているという方も多いはず。そのことを交渉の材料にできるため、状況次第では2回目の任意整理が成功するかもしれません。
2回目の任意整理を成功させるためのポイント
繰り返しになりますが、2回目の任意整理は1回目の任意整理よりも大きくハードルが上がります。それでもどうしても任意整理をしたいと考えている方に向け、成功させるためのポイントや心がけたいことを解説します。
実績豊富な弁護士に依頼する
任意整理においてどれくらい減額できるか、和解に成功するかは弁護士・司法書士の手腕にかかっていると言っても過言ではありません。2回目の任意整理を考えているのであればその実績がある弁護士、再和解の交渉をしたことがある弁護士に依頼しましょう。
顧客からの任意整理への対応は金融機関によって異なります。再和解の交渉経験がある弁護士であれば、相手の会社がそもそも2回目の任意整理に応じるのか、応じた場合は最大でどれくらい減額してもらえるかを知っていますので、スムーズに手続きを進めることができます。
収支状況を見直す
繰り返しになりますが、2回目の任意整理はハードルが高いです。金融会社に「もう一度任意整理をしても大丈夫だろう」と納得させる理由がないと、交渉に応じてもらえない可能性が高くなります。
収支状況を見直して借金を完済する意志があるということを債権者に示すことができれば、任意整理の交渉がしやすくなります。
上記はあくまでも例ですが、収入を増やして支出を減らそうとする姿勢が交渉にプラスに働きます。
2回目の任意整理ができない時の対処法
返済が苦しいにも関わらず2回目の任意整理を断られてしまった場合は一体どうしたらよいのでしょう。具体的な対処法を解説します。
まだ任意整理をしていない会社と交渉する
先にも触れましたが、まだ任意整理をていない会社がある場合は1回目の任意整理と同様に交渉を進めることができます。任意整理は会社ごとに行う手続きですので、他の会社で手続きをしたから不利になるということはありません。
新たに任意整理をすることで、今ままで支払った利息の引き直し計算ができます。引き直し計算とは、今までの返済履歴を参考に利率計算をしなおし、払い過ぎていた利息(過払い金)を算出して元金返済に充てることを指します。
貸金業法が改正される2010年以前から返済をしていた場合は過払い金が発生している可能性が高く、引き直し計算をすることで逆にお金が返ってくるケースもあります。過払い金がない場合でも交渉で利息がカットできるため、支払いを大きく軽減できるでしょう。
ただし任意整理の場合、金融機関は専門家を通しての交渉しか受付していないため、弁護士もしくは司法書士への依頼が必要です。1回目に依頼した弁護士と違う専門家に相談をしても問題ありませんが、すでに他の会社で任意整理をしたことを先に伝えるようにしてください。
他の債務整理を検討する
任意整理をしても返済が継続できそうにない場合、任意整理ができない場合は他の債務整理を検討してはどうでしょうか。個人再生・自己破産は任意整理と違い元金そのものを減らせるため、借金の負担を大きく軽減でき、生活を立て直すことができるでしょう。
個人再生
個人再生とは裁判所で返済ができないことを認めてもらい、借金を大きく減額して再生計画を立てる手続きを指します。法律で最低限返済しなくてはいけない「最低弁済額」が以下のように決まっており、その金額を3年~5年かけて返済していくことになります。
借金総額 | 最低弁済額 |
---|---|
100万円未満 | 全額 |
100万円~500万円未満 | 100万円 |
500万円~1500万円未満 | 借金総額の1/5 |
1500万円~3000万円未満 | 300万円 |
3000万円~5000万円未満 | 借金総額の1/10 |
借金総額が100万円未満の場合は全額返済しなくてはいけませんが、総額が100万円以上の場合は条件次第で1/5~1/10まで借金を減らすことができます。住宅ローンを残すことができることや職業や資格に制限がないことがメリットですが、収入がないと手続きができないことに要注意。
個人再生の手続き方法やメリット・デメリットについて知りたい方は、こちらの記事を参考にしましょう。
個人再生のメリット・デメリットを徹底分析!注意点・利用条件・他の債務整理との違いは?
自己破産
自己破産は裁判所に返済ができないことを認めてもらい、一部を除いた財産と引き換えに借金を免責してもらう手続きです。収入に関係なく手続きができる上借金が全て免責されることがメリットですが、その分デメリットが大きいことも特徴。
自己破産のデメリットについてはこちらの記事で解説していますので、自己破産を考えている方は併せて読んでおきましょう。
自己破産のデメリットを状況別に解説!誤解や嘘を解決して最適な選択へ
2回目の任意整理に関するQ&A
もう一度任意整理を行いたいと考えている方からよく寄せられる質問・答えをまとめました。
2回目の任意整理ができるかどうかについては、個々の収入や借金の状況、借入先によって異なるため一概には言えません。自分が2回目の任意整理ができるか気になる方、自分に向いている債務整理を知りたい方は弁護士事務所が設けている無料相談も活用することをお勧めします。
1回目と同じ弁護士に依頼するべき?
任意整理を行う弁護士については特に制限がないため、1回目と違う弁護士でも問題ありません。ただ2回目の任意整理は1回目よりもはるかに交渉が難しいため、再和解の実績がある弁護士を選ぶことをお勧めします。依頼の際は必ず2回目の任意整理であることを伝えてください。
任意整理の返済を延滞したらどうなる?
何らかの理由で和解後の返済が遅れる場合は1回であれば待ってもらえますので、事情を伝えましょう。2回以上支払ができなかった場合、残高を一括で支払うよう要求されることが大半です。任意整理後に取り交わした和解書に記載があるはずですので確認してみましょう。
「2回以上支払を怠った場合は期限の利益を失い、遅延損害金を加えた残高を一括で支払う」といったような文言があるはずです。期限の利益とは、借りた側が残高を分割で支払ができる権利のこと。2回以上返済ができないと分割で支払う権利がなくなるため、一括で支払うよう請求されます。
任意整理の返済ができなくなった時、すでに2回以上延滞し残高の一括請求をされた時は弁護士に相談し、他の債務整理を検討しましょう。
収入がないと2度目の任意整理はできない?
任意整理は手続き後も借金が残りますので、継続して返済できる見込みがないと手続きができません。ただ本人の収入がなければ無理とはっきり決まっているわけではなく、家族の収入など、返済に充てられるお金があれば手続きができることがあります。
ただ任意整理に詳しくない弁護士に依頼をすると「本人に収入がないと難しい」とみなされて自己破産に誘導される恐れが。任意整理の実績が多い弁護士であれば様々なパターンの手続きを知り尽くしているため、本人に収入がなくてもうまく交渉を進めてくれる可能性があります。自分が任意整理ができるか不安な方は債務整理を得意とした弁護士に依頼しましょう。
まとめ
任意整理には回数の制限がありませんので、一つの借金に対して2回目の任意整理をすること自体は可能です。しかし1回目の際に引き直し計算を行った上で減額手続きを行っているため、相手方が「これ以上は下げられない」と交渉を断る可能性があります。
2度目の任意整理は1回目よりもはるかにハードルが高いですので、交渉する弁護士の手腕が問われます。できれば再和解の実績がある弁護士に依頼することをオススメします。
また返済を継続できる見込みがない場合、任意整理をしても負担が軽減しない場合は個人再生・自己破産手続きも視野に入れましょう。いずれも任意整理よりデメリットが多い手続きですが、借金を確実に減らす、もしくはゼロにできます。