生活保護を受けている人の債務整理|気になる手続き費用と自己破産するときの注意点とは

NO IMAGE
  • 「生活保護を受けているけど、借金を債務整理したい」
  • 「自己破産後に生活保護の受給を申請しても大丈夫?」

働くことができない人や働いてもなお最低限の生活費を得られない人が受給できるのが、最後のセイフティネット「生活保護」です。生活保護受給中もしくは受給しようとしている人のうち、多重債務に悩んでいる方の割合は少なくありません。では生活保護を受けている人も、債務整理は可能なのでしょうか?

こちらの記事では、生活保護を受給していても債務整理はできるのかという疑問や受給後の借金の可否、債務整理するときの注意点を解説。さらに気になる費用についてや、法テラスの利用方法に関しても紹介していきます。借金生活をどうにか抜け出したい方、生活保護により何とか生活を立て直したいとお考えの方は参考にしましょう。

 

 無料相談

借金のお悩みを無料で弁護士に相談できます!

当サイトでは債務整理や借金問題に強い弁護士のみを掲載! 無料相談・土日祝日・オンライン面談可能など、あなたの希望に合った弁護士事務所を探せます。まずはお気軽にご相談ください。

目次

生活保護を受給していても債務整理できる?

まずは一番の疑問「生活保護を受給していても債務整理できるか?」という点についてお答えしていきます。結論からいうと、生活保護を受給中でも債務整理で借金問題を解決することは可能です。逆に生活保護を受給しようと思って福祉事務所等に相談に行くと、借金額によっては先に債務整理を勧められることも。

債務整理にはいくつかの種類があり、それぞれで条件等が異なるので、自分にあった方法を選ぶようにしましょう。こちらでは具体的に債務整理の種類ごとの可否や、メリット・デメリットについて紹介していきます。

債務整理とは

債務整理とは、法律で認められた借金解決方法です。主に任意整理・個人再生・自己破産の3種類があり、それぞれに条件や減免割合、手続き方法が異なります。それぞれの手続きの違い等は以下の通りです。

任意整理
  • 債権者(貸金業者)との個別の交渉で、借金を減額する手続き
  • 減額できるのは、遅延損害金や将来利息などで元金は残る
  • 残った借金は3年(36回)~5年(60回)かけて返済していく
個人再生
  • すべての借金について、裁判所に申し立てて大幅な減額を求める手続き
  • 減額割合は借金総額に応じて1/5~1/10程度
  • 減額後は、再生計画案に基づいて3年~5年かけて完済を目指す
自己破産
  • 返済不能と裁判所に認めてもらうことで、全ての借金の返済義務を免除してもらう手続き
  • 財産や免責不許可事由がある場合の「管財事件」と、手続きが簡便な「同時廃止」の2種類がある
  • 返済すべき借金が残らないので、いち早く生活の再建が可能

任意整理と債務整理の違いが分からないという方は、こちらの記事を参考にしましょう。

「任意整理と債務整理の違いは何?メリット・デメリット、任意整理に向いてる人を解説」

任意整理・個人再生は難しい

上で説明した通り、任意整理と個人再生は手続き後も返済すべき借金が残ります。そのため減額を認めてもらうためには返済可能な安定した収入が必須ですが、生活保護受給者はこの2つの方法を利用するのが難しいといえます。

というのも、毎月受給している生活保護費は借金返済に充てられないためです。保護費を借金返済に充てていることがケースワーカーに知られると、不正受給として生活保護の受給を打ち切られる可能性が高いです。このようなことから、生活保護を受給している方は、任意整理と個人再生を利用するのは難しいでしょう。

個人再生のメリット・デメリットが知りたいという方は、こちらの記事を参考にしてください。

「個人再生のメリット・デメリットを徹底分析!注意点・利用条件・他の債務整理との違いは?」

自己破産なら利用可能

生活保護を受給している方が利用できる借金問題解決方法としては、自己破産が最も望ましい選択肢です。原則として返済の必要がなくなるため、無収入の人や生活保護を受給している人でも利用できます。また処分すべき財産が無いので、手続きに費用や時間がかからない「同時廃止」となります。

また生活保護と自己破産の手続きの両方を、同時に行うことも可能です。通常破産審理では、「財産を隠し持っているのでは」といった調査を念入りに行います。しかし生活保護受給者はすでに福祉事務所等によって調査済みなので、手続きを行う裁判所からしても審理する上でも安心で、一般の人に比べると審理が緩い傾向にあります。

自己破産のメリット

自己破産には、次のようなメリットがあります。

  • ほぼすべての借金の返済を免除(免責)できる
  • 生活に必要な最低限の財産は残せる
  • 戸籍や住民票等に記録が残らない
  • 無職や生活保護受給者でも手続きできる

自己破産は借金の返済を免除できるという大きなメリットの他に、生活に必要な現金や生活必需品は手元にん起こして置ける、無職や生活保護受給者でも手続きが可能というメリットがあります。

自己破産はしたもん勝ちといわれる理由については、こちらの記事を参考にしましょう。

「自己破産はしたもん勝ち?そういわれる理由と実際のデメリット、後悔しない対策とは」

自己破産のデメリット

一方で自己破産には、次のようなデメリットがあります。手続きを行う前に、それぞれの内容についてあらかじめ知っておきましょう。

過払い金が受け取れない可能性がある

今まで支払っていた借金に「過払い金」があった場合、過払い金の返還を求める権利も財産とみなされて受け取れない可能性があります。過払い金とは、2010年以前に利息制限法の上限金利を超える利息のこと。そのような借金をしていた場合に、超過分の利息を戻してもらえるという手続きが「過払い金返還請求」です。

しかし自己破産では、20万円を超える財産は処分され、債権者への返済に充てられます。過去の借金について調査して過払い金が20万円以上あると分かったときには、過払い金の返還を求める権利も処分の対象に。さらに過払い金があったことをケースワーカーや役場に届け出ないと、生活保護の不正受給とみなされる可能性があります。

不正受給とみなされると、すでに受け取った保護費の一部もしくは全額の返還に加え、その保護費に最大40%加算された金額を請求される可能性があるので気を付けましょう。

一部の財産を没収される

自己破産の手続きでは、一定以上の高額な財産を処分されてしまいます。生活保護受給の審査では、不動産や自動車などの売却できる財産は処分を促されますが、住んでいる持ち家や移動に必要な車など、生活に不可欠なものは所有が認められる場合があります。しかし自己破産で免責を受けるためには、それらの財産も処分される可能性があります。

具体的に、自己破産で処分される財産は以下の通りです。

  • 不動産(土地や建物)
  • 99万円を超える現金
  • 自動車・バイク・自転車など
  • パソコン・スマホ・テレビ
  • 有価証券(手形・小切手・株式・投資信託・国債・社債など)
  • 生命保険の解約返戻金
  • 貴金属・骨とう品など
  • 退職金

現金以下の財産は、処分価格や評価額が20万円を超えるかどうか評価の分かれ目です。20万円を越えなければ、自己破産後も手元に残せる可能性があります。詳しくは担当の弁護士や破産管財人に確認してください。

自己破産で財産がどうなるか詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。

「自己破産すると財産はどうなる?処分される・されない財産と財産隠しについて」

信用情報機関に事故情報が掲載される(ブラックリストに載る)

自己破産のみならず、債務整理すると信用情報機関に事故情報として掲載されます。いわゆる「ブラックリストに載る」といった状態です。ブラックリストに載っている期間中は、次のような制限があります。

  • クレジットカードの利用や新規契約ができない
  • ローンやキャッシングなど新規借り入れができない
  • 携帯電話やスマホの本体分割払いができない
  • ローンや奨学金などの保証人になれない
  • 賃貸物件の契約ができない場合がある

自己破産した場合のブラックリスト掲載期間は5年~10年です。期間に幅があるのは、3つある信用情報機関によって登録される期間が異なるため。それぞれの機関は独自のネットワークでつながっているため、最低でも10年間はブラックリストに登録されると考えた方がいいでしょう。

ブラックリストに載る期間など、自己破産にまつわる期間に関しては、こちらの記事を参考にしましょう。

「自己破産にまつわる期間を徹底解説!手続き・制限解除にかかる期間&短くする方法とは?」

官報に個人情報が掲載される

自己破産すると国が発行している「官報」という機関誌に、住所や氏名が記載されます。自己破産で官報に掲載されるのは、破産手続開始決定時と免責許可決定時の2回。官報に個人情報が掲載されることで、自己破産がバレる可能性があります。

とはいえ一般の人が日常的に目にするものではなく、金融機関などごく一部の職業の人だけがチェックしているので、周囲にバレる心配はほとんどないと考えていいでしょう。

官報に掲載されるタイミングや確認方法は、こちらの記事を参考にしてください。

「自己破産すると載る官報について解説!掲載のタイミングや確認方法、バレる可能性とは」

特定の資格や職業が制限される

自己破産のデメリットに、特定の資格や職業が制限されるというものがあります。具体的には次のような資格や職業です。

  • 士業(弁護士・税理士・司法書士・行政書士・公認会計士・弁理士など)
  • 生命保険募集人
  • 証券会社外務員
  • 警備員
  • 質業
  • 有価証券投資顧問業者
  • 宅地建物取引業者
  • 旅行業者
  • 建設業者

制限を受ける期間は、破産手続が開始されて免責が決定するまでの間。早ければ3カ月以内に、遅くとも6カ月ほどで制限は解除されます。無職で生活保護受給中の方は問題ありませんが、自己破産手続中にアルバイト程度の仕事をしている方やスポット的に仕事をしようと思っている方は注意が必要です。

自己破産のデメリットについて詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしましょう。

「自己破産のデメリットを状況別に解説!誤解や嘘を解決して最適な選択へ」

(連帯)保証人に影響がある

自己破産しようと思っている借金に、保証人や連帯保証人がいる場合は、これらの人に影響が出るので気を付けましょう。自己破産すると借金した本人の返済義務はなくなりますが、今度は債権者が保証人や連帯保証人に残った借金を一括で返済するように請求します。そのため保証人や連帯保証人は、破産者の代わりに返済することに。

返済ができないと最悪の場合、保証人や連帯保証人の家や財産を差し押さえられる恐れがあります。家族や知人に借金の保証人になってもらっている場合には、自己破産前に必ず相談するようにしてください。

自己破産すると連帯保証人がどうなるかに関しては、こちらの記事を参考にしてください。

「自己破産すると連帯保証人はどうなる?借金の前と後&パターン別の対処法」

免責されない債権がある

自己破産による直接的なデメリットではありませんが、手続きしても免責できない債権があることを覚えておきましょう。自己破産で免責できない債権のことを「非免責債権」といい、破産法では次のようなものが該当するとしています。

  • 公租公課(税金・国民年金・国民健康保険料・下水道料金)
  • 悪意で加えた不法行為に対する損害賠償
  • 故意または重大な過失で与えた人の生命・身体を害する不法行為に対する損害賠償
  • 親族関係に関係する費用(養育費・婚姻費用など)
  • 雇用している従業員への賃金

これらの債権は、自己破産しても免責できません。税金や保険料に関しては担当の役所に直接相談して、分割払いや減額ができないか交渉しましょう。

生活保護を受けながら借金・自己破産するときの注意点

生活保護を受けながらの自己破産や借金の可否、返済についてなど注意した方がいい点がたくさんあります。

借金があっても生活保護申請は可能

これから生活保護を申請しようと思っている方の中には「借金があるから申請が認められないのでは?」と心配になっている方がいるかもしれません。しかし前出の通り、借金があっても生活保護を受給できます。というのも借金の有無と生活保護の申請が認められるかどうかには関係がないからです。

生活保護の申請が認められる要件は、生活保護法により次のように規定されています。

  • (急迫した事情がある場合を除き)生活保護の申請がある
  • 本人の資産だけでは最低限度の生活の需要を満たすのに十分でない
  • 利用できる資産や能力、その他あらゆるもの(親族からの援助など)を、その最低限度の生活のために活用している

上記の内容には、借金の有無の規定がありません。そのため借金があっても、問題なく生活保護の申請は可能です。

個人間の借金も生活保護費から返済してはいけない

前項で保護費を借金返済に充ててはいけないと解説しましたが、個人間の借金でも保護費から返済してはいけません。たとえ親族からの借金であっても、金融機関や貸金業者からの借金と同様に扱われるからです。また借金をして借りたお金は収入として認定されます。場合によっては保護費が減額される可能性があることも忘れずに。

生活保護を受けていても借金の返済義務はある

一方で生活保護を受給していても、借金の返済義務はなくなりません。そのため、借金返済を求める督促は続くと思った方がいいでしょう。また借金を延滞し続けると、利息とは別に高い利率の遅延損害金が1日ごとに加算されます。元金は少額だったのに、いつの間にか借金が膨れ上がっているということになりかねません。

借金問題を解決するには、生活保護の申請だけでは不十分です。自己破産などの債務整理を早急に検討した方がいいでしょう。

借金を隠して生活保護を受けるのはNG

借金しているのを隠して生活保護を受けるのは、絶対に止めましょう。受給中に借金していたことがバレると、さかのぼって収入と判断されて不正受給とみなされる可能性があります。返還を求められるのは当然ながら、金額や背景によっては生活保護が打ち切られてしまう恐れも(生活保護法28条5項)。

いくら借金を隠そうと思っていても、ケースワーカーや福祉事務所には、生活保護受給者の銀行口座の入出金の状況を調べることができます(同法29条1項)。そのため、借金していることはすぐにバレると考えてください。

生活保護費を借金返済に充ててはいけない

上で説明した通り、受給した保護費を借金返済に充ててはいけません。というのも生活保護費は、最低限の生活を保障するための費用として、使い道が決まっているからです。具体的には次のような扶助の種類と内容になっています。

扶助の種類 支給内容
生活扶助 食費、被服費、日用品費、光熱費など日常生活に必要な費用
住宅扶助 アパート等の家賃、地代、リフォーム費用など
教育扶助 義務教育に必要な学用品費や給食費など
医療扶助 医療機関にかかる受診料や薬代など
介護扶助 介護サービスを利用するのに必要な費用
出産扶助 出産に関する費用
生業扶助 就労に必要な費用や機材などを購入するための費用
葬祭扶助 葬祭費用

見ての通り、借金の返済費用は含まれていません。保護費から借金返済したことが発覚した場合には、不正受給とみなされて保護費の支給が打ち切りになる可能性が高いです。また打ち切りにならない場合でも、借金返済に充てた金額を一括請求される可能性が。さらに不正受給分の140%を徴収されたり、刑事告訴されて懲役や罰金刑を科される恐れがあります。

生活保護を隠して借金するのはNG

生活保護を受給していることを隠して借金するのもNGです。金融機関や貸金業者からお金を借りるときには、審査が必要です。生活保護を受給していると申告すると返済能力が疑われて、審査に通るのが難しくなります。そのため生活保護を受給していることを隠して借金の申し込みを行う人がいます。

しかしたとえ審査に通ったとしても、何らかのタイミングで受給していることがバレてしまうでしょう。虚偽の申告をしたとなると、一括返済や差し押さえを受ける場合があります。また金融機関独自のブラックリスト(社内ブラック)に掲載され、次に申し込みしようと思っても審査に通らなくなります。

もちろん保護費の打ち切りにつながる可能性もあるので、受給していることを隠して借金するのは絶対に止めましょう。

不正受給がバレると自己破産できない可能性

生活保護の不正受給がバレると、自己破産ができなくなる恐れがあります。というのも生活保護の不正受給が発覚した時点で本人の勘違いなど悪質度が低いと判断されると「返還金」という扱いになります。そして返還金は免責対象となるので、保護費を没収される心配はありません。

しかし明らかに生活保護の不正受給を目的とした悪質なケースとみなされると「徴収金」という扱いに。徴収金は支払い義務が免除されないため、免責の対象とはなりません。また裁判所に悪質と判断されると、刑事罰が科されるので、絶対に不正受給はしないようにしましょう。

自己破産手続にかかる費用はどうする?

生活保護を受給している人が自己破産しようというとき、気になるのは手続きにかかる費用です。こちらでは費用の内訳や費用を準備できないときに利用できる「法テラス」について詳しく解説していきます。

自己破産にかかる費用

自己破産は裁判所を通す手続きなので、裁判所費用がかかります。また個人で手続きをするのが難しいので、弁護士などの専門家に依頼するのが一般的です。では自己破産の種類ごとに、裁判所費用や弁護士費用がいくらかかるのでしょうか。

自己破産の種類 弁護士費用 裁判所費用
同時廃止事件 約30万~50万円

(着手金30万円~、報酬金20万円~)

1万~3万円
管財事件 約30万~50万円 約50万円
少額管財事件 約30万~50万円 約20万円

裁判所費用は、自己破産の種類に応じて変動します。財産や免責不許可事由がないときに利用できる同時廃止事件では、数万円程度の裁判所費用で済みます。一方の弁護士費用は、種類にかかわらず30万~50万円というのが相場です。事務所によって多少の幅はあるものの、大体このくらいかかると見ていいでしょう。

自己破産にかかる費用の相場については、こちらの記事を参考にしてください。

「自己破産にかかる費用相場・内訳を解説!安く抑えるコツや払えないときの対処法も紹介」

費用を準備できないときは法テラスに相談

自己破産の費用を準備するだけの余裕がないという方は、法テラスに相談するのがおすすめ。生活保護を受給している人が自己破産する場合でも、利用できる様々な制度があります。

法テラスとは

法テラスとは、正式名称を「日本司法支援センター」といい、2006年に国が設立した機関です。法的トラブルを解決するための総合案内所として、経済的に余裕がない方向けに無料の法律相談や弁護士費用の立て替えなどを行っています。

法テラスを利用するメリット

生活保護を受給している人が法テラスを利用すると、次のような様々なメリットを受けられます。

無料の法律相談 弁護士や司法書士に無料の法律相談ができる(1回30分を3回まで)
弁護士費用を安くできる 弁護士事務所に直接依頼するよりも、法テラス経由で依頼した方が費用が抑えられる
弁護士費用の立て替え・分割払い 自己破産申立書等の作成費用の立て替えや弁護士費用の立て替え制度が利用できる

5,000円もしくは10,000円ずつの分割払い(原則3年以内)が可能(利息なし)

立替費用の猶予・免除 弁護士費用を立て替えてもらった場合、生活保護受給中は返済の猶予や免除が受けられる
「持ち込み方式」で弁護士を選べる 法テラスに直接相談した場合は担当の弁護士を選べないが、法テラスと契約している弁護士を先に自分で見つけて「持ち込み方式」を利用すれば、依頼する弁護士を選べる

法テラスは、経済的に余裕がない方が利用できる法律総合案内所です。そのため自己破産に関する手続き費用や弁護士費用の立て替えや分割払いが可能です。とくに生活保護受給者の場合、建て替え費用の返済猶予や免除が利用できることも。返済猶予は破産手続完了までの期間に受けられ、破産手続完了後も生活保護を受けている場合には、弁護士費用だけでなく裁判所に支払う予納金の返還も免除されます。

また通常、法テラスを利用すると依頼する弁護士を選べませんが、「持ち込み方式」の利用により自分で弁護士を選ぶことができます。しかし選べるのは法テラスと提携契約している弁護士のみ。そのためあらかじめ法テラスと契約している弁護士事務所を探すようにしましょう。

お住いの地域で、債務整理に強い弁護士を見つける>>

法テラスを利用する条件

法テラスを利用するには、次の3つの条件に該当する必要があります。

  • 収入や資産が一定基準以下であること
  • 勝訴の見込みがないとはいえないこと
  • 民事法律扶助の趣旨に適していること

法テラスを利用できるのは、収入や資産が一定基準以下の人に限られます。基準は同居家族の人数やお住いの地域によって次のように変わります。

家族人数 東京特別区・大阪市などの地域 左記以外の地域
収入基準 資産基準 収入基準 資産基準
1人 200,200円 180万円以下 182,000円 180万円以下
2人 276,100円 250万円以下 251,000円 250万円以下
3人 299,200円 270万円以下 272,000円 270万円以下
4人 328,900円 300万円以下 299,000円 300万円以下

参考:弁護士・司法書士費用等の立替制度のご利用の流れ|法テラス

法テラスに依頼するまでの流れ・期間

法テラス経由で弁護士に自己破産の手続きを依頼するまでの流れは、次の通りです。

1.電話・メールで問い合わせ 居住地域に近い法テラス事務所を紹介してくれる
2.無料相談の予約を取る 1で紹介してもらった事務所に連絡して、法律相談の予約を取る
3.法律相談を受ける 1回30分×3回まで無料
4.弁護士との委任契約 法テラスの審査条件を満たしていれば委任契約を結ぶ

法テラスへの申し込みから決定まで、2週間程度かかります。そして提出した書類に不備がある場合や長期休暇期間中はさらに時間がかかる場合があります。法テラスの利用を検討される方は、時間に余裕をもって申し込みするようにしましょう。

法テラスの審査で必要な書類

法テラスには利用できるかどうかの審査があります。審査に必要な書類は以下の通りです。

  • 援助申込書
  • 住民票(3カ月以内のもの、本籍・筆頭者・続柄・世帯全員の記載があるもの)
  • 収入を証明する資料
  • 資力申告書・固定資産評価証明書・固定資産納税通知書
  • 債務一覧表
  • 通帳のコピー

このうち収入を証明する資料は、次のようなものです。

給与所得者
  • 給与明細および賞与明細
  • 源泉徴収票
  • 課税(所得)証明書
  • 非課税(所得)証明書
自営業者
  • 確定申告書の写し
  • 課税(納税)証明書
年金受給者
  • 年金振込通知書
  • 年金支払通知書
  • 年金証書
無職
  • 非課税(所得)証明書
  • 雇用保険受給者証明書
  • 離職票
  • 解雇通知
生活保護受給者
  • 生活保護受給証明書
  • 生活保護(開始・変更)決定書
  • 生活保護受給者証

発行期限や記載内容については、それぞれの書類によって異なります。詳しくは「審査に必要な書類について」をご参照ください。さらに立替費用の猶予・免除を受けるときには、それぞれに応じた資料の提出を求められます。

生活保護を受給している人の自己破産に関する疑問・質問

生活保護を受給している方が自己破産を検討したとき、次のような疑問や質問が出る場合があります。

何度でも自己破産できる?

自己破産には上限金額や回数に制限が定められていません。そのため、2回目以降の自己破産を行うことも可能です。しかし2回目の免責を受けるには、前回の自己破産や個人再生から7年以上経過している、前回の破産理由とは異なるなどの条件をクリアしないと認められません。

前回の自己破産の理由がギャンブルによる散財で、2回目の理由も同じだとすると、申立人は反省しておらずまた同じことを繰り返す可能性があるとして、免責を許可しない可能性が高いでしょう。

自己破産ができないケースやその対処方法は、こちらの記事を参考にしてください。

自己破産ができない9つのケースとは?対処方法や自己破産に適さない人について解説

自己破産の手続きと生活保護申請のタイミングはどっちが先?

自己破産の手続きと生活保護の申請、どちらもこれからという場合には、どちらの手続きを先にしたらいいかお悩みの方もいるかもしれません。どちらを先にしたらいいかは、それぞれのケースによって変わってきます。自分で判断がつかないときには、弁護士などの専門家に相談しましょう。

ケース①自己破産手続き→生活保護申請

自己破産の手続きをしてから生活保護の申請をする場合、どちらの要件も満たしていれば問題なく手続きを進められます。中には生活保護を受ける前に借金問題を解決しておいた方がいいと考えるケースワーカーもいて、一般的には自己破産の手続きを先にするのが現実的といえます。

ケース②生活保護申請→自己破産手続き

生活保護を受給している最中に、自己破産をしてもとくに問題ありません。生活費を先に確保したい方はもちろん、自己破産の費用が捻出できない人は生活保護を受給してから手続きする方が、法テラスによる立て替え制度の利用や免除の対象となる場合があるのでいいでしょう。

なお生活保護費から借金返済に充てることは認めてないので、この点は十分に注意してください。

ケース③生活保護と自己破産手続を同時に進める

両方の手続きを同時進行しても、何か不都合が生じることはありません。かえって手続きにかかるタイムラグを少なくできるので、早く手続きを終わらせたいという方におすすめです。

まとめ

生活保護を受給中の方やこれから申請しようと思っている方が利用できる債務整理は、自己破産が適しています。裁判所費用や弁護士費用が支払えないときは法テラスの利用をおすすめします。費用の立て替えや返還猶予、免除などが受けられる他に、「持ち込み方式」で弁護士を選べるという利点も。

一方で自己破産には様々なデメリットがあるので、手続きを進める前に内容を把握しましょう。また生活保護費から借金を返済したり、生活保護を受給していることを隠して借金したり自己破産の手続きを進めるのはNGです。不正受給とみなされて保護費の返還を求められたり徴収金や刑事罰を科される可能性があります。

生活保護と自己破産の手続き、どちらを先にしたらいいか分からないという方は、ケースワーカーや弁護士などの専門家に相談するのがおすすめ。法テラスを利用したいという方は、法テラスと民事法律扶助の契約を締結している弁護士事務所を選ぶようにしましょう。

債務整理の相談なら専門家にお任せください!

  • 借金で首が回らない
  • 人生を一からやり直したい
  • 自己破産のメリット、デメリットが知りたい
人生はいつからでもやり直せます。弁護士はあなたの味方です。

借金解決の基礎知識カテゴリの最新記事

PAGE TOP