- 「債務整理の種類ごとの違いが知りたい」
- 「自分にはどんな債務整理が向いている?」
借金を減額したり免責できる債務整理には4つの種類があり、それぞれにメリット・デメリットや条件、向いている人などが違います。債務整理を検討中の人の中には、どの方法を選んだらいいか分からないという方も多いのではないでしょうか?そこでこちらの記事では債務整理の4つの種類ごとに詳しく解説していきます。
さらに債務整理の種類ごとの手続きにかかる費用や流れ、期間なども紹介。借金を整理して生活を立て直すまでの目安が分かります。債務整理は法律で認められた借金の解決方法です。自分がどの債務整理に適しているかを分かるようになると、借金解決までの道のりがグッと近づくはずです。
種類ごとの特徴とメリット・デメリット
まずは債務整理の種類ごとの特徴やメリット・デメリットを解説していきます。債務整理には、
- 任意整理
- 個人再生
- 自己破産
- 特定調停
の4つの種類があり、それぞれ手続きの方法や減額割合などが異なります。
任意整理
任意整理とは弁護士や司法書士といった専門家が、借金をしている人(債務者)の代わりに、貸している側(債権者)と交渉する債務整理方法です。交渉によって次のような返済条件の調整を行います。
- 将来の支払利息の免除または減額
- 遅延損害金の免除
- 返済期間の延長
債権者との交渉がまとまって和解が成立すれば、残った借金を通常3年もしくは最長でも5年かけて返済していきます。任意整理のメリット・デメリットはこちらです。
任意整理のメリット | 任意整理のデメリット |
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整理する対象の債権者を選べるので、保証人が付いた借金や住宅ローンを除外できます。また手続きに費用や時間がかからないのもメリットです。一方で元金以上の減額は難しく、裁判所を通さない手続きのため、交渉がまとまらなければ希望通りの減額ができなかったり、債権者の同意が得られないと手続きが進まないというデメリットがあります。
個人再生
個人再生は民事再生法に基づく民事再生の個人版で、裁判所に借金が返済できないことを認めてもらい、借金の総額を減らしてもらう手続きです。個人再生は5000万円未満の借金に適用できる手続きで、借金の総額に応じて最低弁済額が決まっています。残った借金は任意整理と同様に3年から5年かけて返済していきます。借金総額ごとの最低弁済額はこちらです。
借金総額 | 最低弁済額 |
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100万円未満 | 全額 |
100万円~500万円未満 | 100万円 |
500万円~1500万円未満 | 総額の1/5 |
1500万円~3000万円未満 | 300万円 |
3000万円から5000万円未満 | 総額の1/10 |
個人再生のメリット・デメリットはこちらです。
個人再生のメリット | 個人再生のデメリット |
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個人再生の大きなメリットに、住宅ローンを払い続けることでマイホームを残せる「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」という制度が利用できることがあります。自己破産などでは住宅などの財産はすべて処分して債権者への返済にあてなければなりませんが、住宅は生活再建の基盤ということで、個人再生では特例が認められています。
個人再生には利用できる人によって「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の二種類があります。それぞれに条件や利用できる人が異なるため、自分はどちらに該当するかチェックしてみましょう。
個人再生で利用できる住宅ローン特則の条件などについては、こちらの記事を参考にしましょう。
「個人再生で住宅ローンはどうなる?特則適用の条件・巻き戻し・手続き後のローンについて」
小規模個人再生
小規模個人再生とは安定した一定以上の収入があれば、個人事業主や自営業者も利用できる個人再生手続きです。個人再生の基本型で、個人再生した人の8割以上がこちらの小規模個人再生を選択しています。小規模個人再生を行うには、安定した収入や5000万円以下の借金の他に、債権者の数および債権額で1/2以上の反対がないことが条件となります。
給与所得者等再生
サラリーマンや公務員の様に、将来にわたって安定した収入が見込めるような人を対象に「給与所得者等再生」が特例的に利用できます。小規模個人再生で必要な債権者の1/2以上の同意は必要ありませんが、所得の変動幅などに次のような条件があります。
- 一定以上の収入があり、変動幅が年間で20%以下であること
- 可処分所得の2年分の返済が可能なこと
可処分所得とは月収から税金や最低限の生活費などを差し引いた金額のこと。次の3つの項目のうち一番高いものを基準として最低弁済額を決めていきます。
- 可処分所得の2年分
- 最低弁済基準額
- 財産の清算価値
個人再生のメリット・デメリットや種類ごとの特徴については、こちらの記事を参考にしましょう。
「個人再生のメリット・デメリットを徹底分析!注意点・利用条件・他の債務整理との違いは?」
自己破産
自己破産とは裁判所を通す手続きで、借金返済不能状態を認めてもらい、財産がある場合はそれを返済に充てることで借金の支払い義務を免除(免責)する手続きです。一定の保有が認められている財産(自由財産)を除いてすべて処分しなければならないという決まりがありますが、借金は全て免責されるため債務整理方法の中で一番強力な手続きです。
自己破産のメリット・デメリットはこちらです。
自己破産のメリット | 自己破産のデメリット |
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財産を処分されるとはいえ身ぐるみはがされるという訳でなく、次のような自由財産は破産をしても引き続き持っていられます。
- 99万円以下の現金
- 衣類・寝具・家具など生活に必要な物
- 一カ月分の食料や燃料
- 破産手続き開始後の給与
- 差押禁止財産(仏像・位牌・職業上必要な物など)
- 給与・賞与・退職金の3/4
- その他差押禁止債権(年金・公的保険・企業年金・確定拠出年金)
自己破産には他に資格や職業に制限があったり、免責が許可されない借金の理由(免責不許可自由)があったりします。
自己破産には「管財事件(少額管財)」と「同時破産」という二種類が存在し、次のような違いがあります。
管財事件(少額管財)
管財事件(少額管財)は破産を希望する人に一定の財産(33万円以上の現金・20万円以上の資産)があるときや、免責不許可事由に該当する場合にとられる手続きで、破産管財人によって財産や借金理由の調査が行われ、破産手続き中に財産は換価されて債権者に分配されます。
また管財事件になると次のような制限が課されるようになります。
- 郵便物が破産管財人に転送される
- 引っ越しや海外旅行に制限がかかる
同時廃止
同時廃止は債権者に分配できるような財産がないときにとられる方法で、破産管財人が必要ないので費用や時間を節約できます。破産手続開始決定と同時に廃止決定も出されることから、同時廃止と呼ばれています。
自己破産のデメリットについて詳しくは、こちらの記事を参考にしてください。
「自己破産のデメリットを状況別に解説!誤解や嘘を解決して最適な選択へ」
特定調停
特定調停とは簡易裁判所の調停委員が債務者と債権者の間に入ることで、当事者間の合意の下で和解を目指す債務整理法です。基本的に必要書類の準備や裁判所への申立ては債務者本人が行います。特定調停のメリット・デメリットはこちらです。
特定調停のメリット | 特定調停のデメリット |
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調停委員を介した債権者との交渉がまとまらなかった場合は、自己破産など他の債務整理方法をとらなければならないこともあります。また債権者と合意できる確率が、全体のわずか3%ほどと低いため、近年では利用者が減少傾向にあります。
債務整理で変わらないこと・変わること
「債務整理をすると生活が一変してしまうのでは?」と心配になる人もいるかもしれません。こちらでは債務整理後に変わらないことと変わることを紹介していきます。
債務整理で変わらないこと
債務整理をすると就職時や勤務先にバレるのでは…と心配する人がいますが、基本的には仕事や会社にバレることはありません。特に裁判所を通さない任意整理の手続きを弁護士に依頼できれば、周囲にほとんど知られることなく手続きできるはずです。就職時の面接や履歴書にも自分から債務整理のことを知らせる必要がなく、質問されても答える義務はありません。
任意整理以外の債務整理をすると、国が発行する機関誌「官報」に掲載されますが、定期的に官報を見ている人はごく限られた職業の人のみで、官報によって債務整理のことが知られる心配はまずありません。また戸籍や住民票に債務整理したという情報は載らないので、結婚やパスポートの申請、年金の受給には影響を与えません。
ただ債務整理をしても減免できない「非免責債権」というものがあり、税金や公的年金、罰金や養育費などは債務整理後も引き続き支払っていく必要があります。
債務整理で変わること
債務整理後に変わることで一番大きいのが、個人信用情報に事故情報として掲載されることです。掲載期間は信用情報機関や債務整理の種類によって異なりますが5年~10年間です。個人の返済や契約に関する情報に債務整理したことが掲載されると、いわゆる「ブラックリスト」状態となり、次のようなことができなくなります。
- ローンが組めない
- クレジットカードが使えない
- クレジットカードが新規で作成できない
- 保証人になれない
- スマホ・携帯電話の本体分割払いができない
債務整理をしても職場に知られることはほとんどありませんが、会社から借金をしている場合は弁護士からの通知で債務整理のことが分かってしまうことも。また自己破産では一定期間特定の職業や資格による仕事ができないため、これにより勤務先にバレる恐れがあります。
ブラックリストに載るとできないことについては、こちらの記事を参考にしましょう。
「債務整理するとブラックリストにのる?気になる『ブラックリスト』についてすべてお答えします!」
債務整理に向いている人
債務整理はその方法ごとに条件や減免割合が異なるため、向いている人と向いていない人がいます。こちらでは4つの種類それぞれの向いている人を紹介するので、自分がどの方法に向いているかチェックしていきましょう。
任意整理
任意整理が向いているのは次のような人です。
- 借金の総額が比較的少ない
- 安定した収入がある
- 3回以上返済している
- 保証人に迷惑をかけたくない
- 手続きに時間やお金をかけたくない
- 周囲に内緒で手続きしたい
任意整理は裁判所を通さない手続きということで、時間やお金をかけたくない人が向いています。減額した借金は3年~5年かけて返済していくため、安定した収入があることも条件です。また整理対象を選べることから、保証人に迷惑をかけたくないという人にも向いている手続きです。
ただし任意整理をするには、借り入れから最低3回は返済していることが条件になります。というのも一度も返済していないと、「返済もできないのに借り入れした」と債権者側は交渉に応じてくれない可能性があるからです。
個人再生
個人再生に向いているのは次のような人です。
- 一定以上の安定した収入がある
- 借金総額が5000万円以下
- ローン返済中のマイホームを残したい
- 過半数の債権者の反対がない
- 資格が必要な仕事をしている
家族が住む家を残したい人や安定した収入がある人は個人再生が適しています。また住宅ローン特則を利用希望する人は住宅ローン残債を除いた借金の総額が5000万円以下でなければなりません。小規模個人再生の場合は債権者の1/2以上の同意が必要です。大口の債権者や多数の債権者が反対していないことが条件となります。
自己破産
自己破産に向いているのは、このような人です。
- 減額しても完済する見込みがないる
- 借金総額5000万円以上ある
- 生活保護を受給している
- 財産を手放しても借金が残る
自己破産をするには「借金の返済が不能状態」でなければなりません。自分で返済できないと感じていても、客観的に見て十分な収入や財産があると自己破産できない可能性があります。
借金の総額が多い方は個人再生か自己破産かで迷うことも多いですが、「少しでも返済したい」と思うなら個人再生を、「借金を全てなくしてゼロからスタートしたい」という気持ちなら自己破産を選ぶのがおすすめです。
個人再生と自己破産のどちらを選んだらいいか分からないという方は、こちらの記事を参考にしましょう。
「個人再生と自己破産の違いとは?手続き・条件の比較や切り替え方法を教えます!」
特定調停
特定調停に向いている人は次の通りです。
- 債務整理に費用をかけたくない
- 自分で必要書類の準備ができる
- 指定された期日に裁判所へ行ける
- 減額後の借金を返済できる
特定調停は基本的に自分で手続きを行うため、費用をかけたくない人や書類の準備が苦にならない人、平日の昼間に裁判所に行ける人などが適しています。また特定調停は借金がすべてなくなる訳ではないので、減額後の返済が可能かどうかもポイントです。
手続きにかかる費用について
いざ債務整理をしたいと思ったとき、気になるのは費用についてです。こちらでは手続きにかかる費用について詳しく解説していきます。
任意整理
任意整理では、手続きする債権者の数によって費用が変わってきます。というのも多くの弁護士事務所では債権者1社あたりの相場金額を決めていて、債権者の数が多くなるにしたがって費用も高額になるからです。債権者1社あたりの相場は次の通りです。
着手金3万~5万円+減額報酬(減額された金額の10~20%)
減額割合によって変動しますが、1社あたり5万~8万ほどかかると見積もっておいた方がいいでしょう。尚、過払い金返還請求も同時に行う場合は、返還された金額の15~25%が成功報酬となることが一般的です。
個人再生
個人再生の場合は、住宅ローン特則を利用するかどうかで相場の費用が変わってきます。こちらは通常の個人再生と、住宅ローン特則を利用したときの個人再生の費用です。
通常の個人再生 | 住宅ローン特則を利用した場合 | |
---|---|---|
弁護士費用 | 40万円~ | 60万円~ |
裁判所費用 | 18万~28万円 | |
合計 | 58万~68万円 | 78万~88万円 |
住宅ローン特則を利用をする場合は、その分手続きが煩雑になるので弁護士費用が掛かります。また個人再生委員が選任された場合は、裁判所費用に個人再生委員への報酬が15万~25万円ほど含まれます。ただし個人再生委員への報酬は、半年かけて行われる「履行テスト」のために分割して支払った予納金の中から充てられることになります。
自己破産
自己破産の場合、手続きの種類によって弁護士費用や裁判所費用が変動します。こちらは自己破産の種類ごとの費用相場です。
自己破産の種類 | 同時廃止 | 管財事件 | 少額管財 |
---|---|---|---|
弁護士費用 | 20万~35万円 | 30万~50万円 | 30万~50万円 |
裁判所費用(予納金) | 1.5万~3万円 | 52万円~ | 22万円~ |
合計 | 21.5万~38万円 | 82万~102万円 | 52万~72万円 |
処分する財産がない同時廃止が一番安く、次いで少額管財となります。破産管財人が付く管財事件では破産管財人に支払う引継予納金が裁判所費用に含まれるため高額になります。
自己破産手続きにかかる費用や安くする秘訣を知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
「自己破産にかかる費用相場・内訳を解説!安く抑えるコツや払えないときの対処法も紹介」
特定調停
特定調停は基本的に弁護士などに手続きを依頼しないため、裁判所でかかる手数料や切手代のみです。1社あたりの申立手数料(収入印紙)は500円で切手代は1,500円の合計2,000円です。さらに1社増えると収入印紙代500円と切手代が756円追加でかかる計算に。債権者5社でも7,000円~8,000円で手続き可能です。
手続きの流れと期間
こちらでは債務整理の種類ごとの手続きの流れや期間を解説していきます。
任意整理
任意整理の手続きの流れは次の通りです。
- 弁護士や司法書士に手続きを依頼
- 受任通知の発送・取引履歴の開示請求
- 引き直し計算による債務額・利息額の再計算
- 和解案の作成
- 債権者との交渉
- 和解契約の締結
- 返済の再開(3年~5年)
3の引き直し計算で過払い金があることが分かった場合は、過払い金返還請求で払い過ぎた利息を返金できる可能性があります。
実際に債務整理を弁護士などに依頼して、手続きが全て終わるまでは最低でも3か月かかり、場合によっては半年程度かかることも。過払い金請求について債権者と裁判になった場合は、6カ月~12カ月かかる場合があります。
個人再生
個人再生の手続きの流れは以下の通りです。
- 弁護士や司法書士に手続きを依頼
- 受任通知の発送・取引履歴の開示請求
- 引き直し計算による債務額・利息額の再計算
- 申立て書類の作成・準備
- 個人再生の申立て
- 個人再生委員の選出・面談
- 履行テストの開始
- 再生手続きの開始
- 債権届出書・債権認否一覧表の提出
- 再生計画案の提出
- 意見聴取(給与所得者再生の場合)
- 書面による決議
- 再生計画案の認可・不認可の決定
- 再生計画案に基づく返済の再開
申立てる裁判所によって期間は異なりますが、東京地方裁判所の場合は申立から再生計画案の認可までおよそ6カ月ほどです。ただし個人再生委員の選任がないところでは期間が4~5カ月に短縮されることも。弁護士事務所を探すところからだとトータルで8カ月から1年ほどかかると考えておきましょう。
自己破産
自己破産の手続きの流れは、管財事件と同時廃止とで異なります。こちらでは同時廃止について解説していきます。
- 弁護士や司法書士に手続きを依頼
- 受任通知の発送・取引履歴の開示請求
- 引き直し計算による債務額・利息額の再計算
- 申立て書類の作成・準備
- 自己破産の申立て
- 裁判所での面談
- 破産手続開始決定・同時廃止決定
- 免責審尋
- 免責許可決定
- 免責許可決定確定
申立て書類に不備がなければ裁判所での面談後すぐに破産手続開始決定・同時廃止決定が出されます。同時廃止で手続きすると4~5カ月、管財事件では7~12カ月ほどかかります。
自己破産に関する様々な期間については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
「自己破産にまつわる期間を徹底解説!手続き・制限解除にかかる期間&短くする方法とは?」
特定調停
特定調停の場合、全て自分で手続きすることになるので、流れはしっかりと頭に入れておきたいものです。
- 申立て書類の作成・準備
- 特定調停の申立て
- 債権者へ通知書が送付される
- 調停期日通知書が届く
- 調停準備日・調停期日に裁判所へ行く
- 合意した内容が調停調書にまとめられる
- 返済の再開
裁判所に申立てしてから調停が終わるまで、月一回の調停期日に全部で3~4回出席することになります。申立てから調停が終わるまでは3~4カ月ですが、書類の作成などに手間取ると半年以上かかることもあります。
債務整理の手続きの流れや期間について詳しくは、こちらの記事を参考にしましょう。
「債務整理の流れと必要書類 | 期間や手続きの注意点も解説」
債務整理に関するQ&A
債務整理をするうえで、知っておきたいことや誤解していることなどをQ&A方式で紹介していきます。
債務整理と過払い金請求は違う?
債務整理と過払い金請求を同じようなものだと勘違いしている人がいるかもしれませんが、厳密には異なります。どちらも元々借金がない人には無縁の手続きですが、債務整理は借金の負担を軽くする手続きなのに対して、過払い金返還請求は過去の払い過ぎた利息を返してもらう手続きです。
過払い金は2010年以前に消費者金融やカードのキャッシングを利用した方に発生していることが多いです。かつての出資法と利息制限法の上限金利の間には「グレーゾーン金利」と呼ばれる利率が存在し、そのグレーゾーン金利でお金を借りていた場合、利息を払い過ぎたとして返還請求ができます。
債務整理は現在返済途中の借金がないと手続きできませんが、過払い金返還請求はすでに完済した借金について調べて手続きすることが可能です。また債務整理の引き直し計算で過払い金があることが分かった場合は、利息を返してもらえることで借金の返済に充てられることも。まずは過払い金があるか調査してもらってから、債務整理について検討してみてもいいかもしれません。
債務整理以外に借金の解決方法はある?
「債務整理すると官報やブラックリストに載るからなるべくやりたくない」という方に、債務整理以外の方法はあるのでしょうか?消極的な方法としては「消滅時効援用」という制度があります。借金には一定期間特則や借金を認める言動がないと消滅時効が成立し、借金の返済義務がなくなります。消費者金融などの貸金業者が相手だと5年、知人や知り合いからの借金では10年が時効です。
ただし5年の時効を迎えるまでに債権者から督促があったり、裁判をされてしまうと時効が中断します。貸金業者相手では、5年も放置されることはほとんどないので、消滅時効の成立はとても難しいのが現状です。
もしもリストラや病気で収入が途絶え、住宅ローンの返済が難しくなった場合は住宅の「任意売却」という方法があります。任意売却とは裁判所に差し押さえされる前に、ローンを組んでいる金融機関の同意の元で住宅を売却する手段。少しでも高い金額で売却でき、引っ越し時期などを自分で決められるというメリットがあります。
法人の債務整理方法には何がある?
今回紹介している債務整理は全て個人を対象とした方法ですが、会社などの法人にも債務整理の方法があります。法人の場合は、債務整理の目的によって「清算型」と「再建型」の二種類があります。それぞれの特徴や種類ごとの債務整理方法はこちらです。
債務整理の種類 | 債務整理の目的 | 種類ごとの方法 |
---|---|---|
清算型 | 会社の財産を債権者に分配して会社を畳む方法 |
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再建型 | 会社の再建を目指す方法 |
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債務整理は自分でもできる?
「債務整理は弁護士に頼むとお金がかかるから、自分で手続きしたい」と考える人がいるでしょうが、法律や専門知識のない人が一人で債務整理するのは不可能ではありませんがとても難しいです。とくに個人再生や自己破産は、準備する書類が多岐に渡り、裁判所や破産管財人とのやり取りや手続きが非常に複雑です。
また裁判所を通さない任意整理でも自分一人で債権者と交渉しなければならず、債権者が相手にしてくれなかったり、知らないうちに不利な条件で合意させられていたというケースも。弁護士費用を節約したいという気持ちはよく分かるのですが、弁護士費用を支払ってでも依頼した方が得られるメリットが大きく、確実に借金問題が解決できます。
債務整理を弁護士に依頼するといい理由
実際に債務整理を弁護士に依頼した場合、どのようなメリットがあるのでしょうか。
取り立てがストップする
弁護士が債務整理の依頼を引き受けると、債権者からの督促や取り立てをストップできます。貸金業法第21条1項では、弁護士から代理人として手続きを行うことを知らせる「受任通知」が届いたら、借金の督促を止めなければならないと定められています。
通常弁護士に依頼してから1週間以内に受任通知を送付するので、割と早い段階で取り立て行為をストップさせられるでしょう。これにより催促の電話や手紙が来なくなり、ストレスが軽減されて気持ち的にも軽くなるはず。取り立てがストップするのは手続きが終わるまでずっとです。合意した内容で返済が再開されて、キチンと支払っている間は取り立てに苦しめられることはありません。
手続きが終わるまでは返済の必要がない
受任通知が送付されると、借金の督促や取り立てがストップできるだけでなく、借金返済の必要もなくなります。毎月の返済が無くなれば、浮いたお金を生活再建のための費用や弁護士費用に回せます。毎月大変だった借金返済がないだけでも、心にゆとりが生まれて前向きな気持ちになれるでしょう。
債権者との交渉や書類の作成を代行してもらえる
弁護士に債務整理を依頼すると、書類の作成や準備のほか、債権者との交渉や裁判所とのやり取りも任せられます。手続きのほとんどを代行してもらえるため、依頼者は債務整理中でも普段の生活を送ることができるでしょう。
裁判は基本的に平日の日中に行われます。仕事などで都合が付かないときも弁護士に代わりに行ってもらえます。また裁判所で本人の審尋(面接)があるときも、弁護士が同席できるので心強いはずです。
周囲にバレるリスクを減らせる
弁護士に依頼すると家族や勤務先に債務整理のことを知られるリスクを減らせます。弁護士に依頼すると、裁判所からの書類は弁護士事務所に行きます。また債権者からの連絡も、弁護士が「受任通知」を送ってからは全て弁護士の元にいき、依頼者のところに直接連絡が行く可能性はほとんどありません。
このように裁判所や債権者からの連絡がほとんど来なくなるので、債務整理していることを周囲にバレにくくなります。
手続き費用や期間をおさえられる
弁護士に債務整理を依頼すると、手続きにかかる費用や時間をおさえられるというメリットがあります。例えば自己破産では、東京地方裁判所など一部の地方裁判所で「即日面接制度」が利用できます。通常は申立てから面接までは1週間前後かかることがほとんどですが、この即日面接制度を使うと1~2日以内で面接ができ、手続きにかかる時間を大幅に短縮できます。
また裁判所に納める予納金を減額できる「少額管財」も弁護士が付いていないと手続きできません。少額管財とは、弁護士がいるということで手続きが煩雑な管財事件を少しでも運用しやすくするための制度で、予納金の金額を半額以上に減額できます。
個人再生でも弁護士が付いていると裁判所で選任する再生委員が必要ない場合も。このように弁護士に債務整理を依頼すると、費用や期間を抑えられる制度がいくつもあります。
まとめ
債務整理には任意整理・個人再生・自己破産・特定調停の4種類があり、手続きの方法や特徴、向いている人が異なります。自分はどの債務整理が適しているか分かるようになると、スムーズに手続きに移せるはず。また債務整理の種類ごとの手続きにかかる費用や期間などが明らかになると、事前準備や心構えがしやすくなるでしょう。
債務整理と過払い金は厳密には異なりますが、自分が該当しそうだと思ったら調べてもらって損はありません。債務整理のかわりとして借金の消滅時効を待ったり住宅を任意売却するという方法がありますが、いずれも限定的であったり消極的な方法となるためおすすめできません。
費用をかけたくないからといって自分で債務整理する方法もありますが、手間や時間ばかりかかって思うような結果にならないことも多いでしょう。やはり債務整理は弁護士に依頼するのがベスト。すぐに取り立てがストップでき返済の必要が無くなります。手続きを代行してもらえるのはもちろん、周囲に知られるリスクも減らせます。