- 「テレビなどで差し押さえが家に来ているが、現実でもそうなの?」
- 「差し押さえが家に来るのを回避する方法が知りたい」
テレビドラマなどで、裁判所の執行官が自宅に来て、家の中にあるものに札を貼るシーンを目にしたことがある人も多いですが、果たして本当に家にやってくるのでしょうか?こちらの記事では、差し押さえの原因や流れ、差し押さえ対象の財産など、基本的な知識を解説するほか、家に来るかどうかについてもお教えします。
さらに差し押さえを回避する方法も紹介するので、差し押さえで家に来るのをどうしても避けたいとお考えの方は参考にしましょう。差し押さえに至るまでは、回避できるポイントがいくつもあります。最悪の事態にならないよう、タイミングに応じた適切な対処方法を取りましょう。
差し押さえとは?原因と理由について
「差し押さえ」という言葉、大人なら一度は聞いたことがあるという人も多いのでは?何となく意味は分かっているものの、詳しいことまでは知らないという方のために、こちらでは差し押さえに関する基礎知識を紹介します。
強制執行により支払金の徴収を行う手段
差し押さえとは、さまざまな支払いを怠っている債務者に対し、金融機関や国といった債権者が支払金を徴収するための手段です。例えば借金をしてその返済を大幅に遅延している人に対して、給与や不動産などの財産を強制的に取り立て、競売などにかけて現金化し、借金の回収にあてるというもの。
差し押さえは民事執行法という法律で規定されている行為です。差し押さえが財産を押収する行為そのものを指すのに対し、強制執行は債権者が持つ権利を強制的に実現させるための課程そのものを指します。
債権者の権利
差し押さえは、法的に債権者に認められた権利です。裁判所に申し立てるなどして正規の手続きを踏めば、強制的に債権回収ができます。債権者は差し押さえられた財産を換金するなどして、強制的に債権の回収を行います。債権者としては、お金の支払いを請求できる法律上の権利を有していても、債務者が支払わなければ損をしてしまいます。
それを防ぐため強制的に債権を回収する手段として、「強制執行」の手続きが民事執行法で定められています。また強制執行の場面に警察が立ち会う場合もあり、一度執行されたらストップすることはできません。
差し押さえになる原因
では具体的に何を滞納すると、差し押さえになるのでしょうか。こちらでは差し押さえになる原因について解説していきます。
借金の滞納
差し押さえになる原因で多いのが、借金の滞納です。具体的にはキャッシングやローン、クレジットカードの支払いなど、金融機関から借りたお金の返済を怠ること。とはいえ民間企業が差し押さえを実行するためには、裁判所で手続きする必要があるため、返済が1日や1週間遅れたからといって、すぐに差し押さえられる訳ではありません。
借金を滞納してからも長いプロセスを経て、それでもどうしても返済が見られない場合に、最終手段として行うケースがほとんど。途中で適切な対応をすることで、いくらでも差し押さえを回避できます。
借金はいくらからヤバいかの判断基準が知りたい方は、こちらの記事を参考にしましょう。
「借金はいくらからやばい?少額でも危険な借金パターン、判断基準や対処法を解説」
税金や公共料金の滞納
税金や公共料金の滞納でも、差し押さえの可能性があります。国税の場合は税務署職員が、地方税の場合は役所の担当職員の職務権限により、裁判所の手続きなしで差し押さえできます。というのも、納税義務は法律で定められた国民の義務であり、初めから支払い義務が公的に確定しているため。
税金の滞納に関して法律上は、督促状の発送から10日以内に納付がなければ、滞納処分をしなければならないと決められています。具体的には差し押さえるべき財産の調査を行い、その財産調査に基づいて差し押さえがなされるという流れです。
保険料の滞納
国民年金保険や、国民健康保険の保険料の滞納でも、差し押さえが実施される可能性があります。税金の滞納時とは少し流れは異なるものの、督促や財産調査を経て、差し押さえが実行されます。
養育費の未払い
離婚時に養育費支払いの取り決めを行ったのにもかかわらず、養育費を支払わない場合には、差し押さえが行われる可能性があります。ちなみに養育費の未払いによる差し押さえには、認諾文言付き公正証書などの「債権名義」と「送達証明書」が必要です。
債権名義とはで詳しく紹介しますが、強制執行を行うのに必要な公文書で、送達証明書とはその債権名義を相手方に送達したことを証明する書類です。
差し押さえには事前連絡がない
基本的に差し押さえの前には、電話や通知で「○月□日に差し押さえします」などの連絡が来ることはありません。債務者からすると、ある日突然預金や財産を差し押さえられたということになりますが、財産を差し押さえられる前に財産の処分や移動をしてしまう恐れがあるので、事前連絡は行いません。
実際に差し押さえが実行されるまでに債権者が裁判を起こし、債権名義を手にしたうえで裁判所に差し押さえ命令の申し立てをするという手続きを踏まなければなりません。事前に連絡して財産を隠されてしまうと、ここまで手間と時間をかけた債権者があまりに報われません。
なお、差し押さえを妨害する目的で財産を隠す行為は、刑法第96条の「強制執行妨害目的財産隠匿罪」に該当する恐れがある犯罪です。絶対にしないようにしましょう。
差し押さえには「債権名義」が必要
債権者が強制執行を申し立てるためには、差し押さえの原因となった債権(借金)の存在を公式に証明する「債権名義」が必要です。債権名義にはいくつかの種類があり、主に次のような文書が債権名義となります。
- 確定判決
- 仮執行宣言付判決
- 強制執行認諾文言付きの公正証書
- 確定判決と同一の効力を有するもの(裁判上の和解調書など)
公正証書に付く強制執行認諾文言とは、離婚時に取り決めた養育費など「公正証書に記載された金銭債務を履行しないときには、直ちに強制執行を受けても異議のないことを承諾する」という趣旨の文章です。つまり、債務者が債務の内容と強制執行を受けることを認めたことが公正証書に記されるため、債権名義として認められます。
差し押さえ対象の財産と禁止されている財産
では一体どのような財産が差し押さえ対象となるのでしょうか。差し押さえ禁止財産の詳細と併せてみていきましょう。
差し押さえられるのは債務者名義の財産
前提として、差し押さえ可能なのは債務者名義の財産に限ります。例えば債務者をAさんとすると、差し押さえできるのはAさん名義の財産のみ。Aさんの妻名義の預金や、Aさんの親名義の不動産を、差し押さえることはできません。ただし家族との共有名義になっているマイホームなどは、差し押さえの対象となる可能性があります。
また貴金属や骨とう品など、名義を証明する書類がなく、誰の所有物か客観的な判断が難しい場合は、たとえ債務者の所有でなくても差し押さえられる恐れが。債務者が居住している空間にあるものは、差し押さえになる可能性があることを覚えておきましょう。
ただ、間違って差し押さえられた場合でも、裁判所に「第三者異議の訴え」を起こすことで、財産を取り返せる可能性が残されています。
債権
差し押さえられる財産に「債権」があります。債権とは特定の給付や行為を請求できる権利ですが、代表的なものとして預金債権・給与債権・賃料債権などがあります。
預金債権
預金債権とは、預貯金口座を持っている人が、金融機関に対して金銭の給付(出金)を請求できる権利です。この債権を行使することで、自身が預け入れしている普通預金や定期預金など預金の給付を求めることができるという訳です。差し押さえの対象となるのは、差し押さえ時点で口座に入っていた金額となります。
口座に入っていた金額よりも支払うべき金額の方が高額な場合は、全額の回収が終わるまで複数回差し押さえを行う可能性があります。
給与債権
給与債権とは、正社員やアルバイト、派遣社員など職務形態にかかわらず所属している会社から支払われる給与を受け取ることができる権利です。毎月支払われる給与だけでなく、ボーナスや退職金も差し押さえの対象となります。また給与債権の差し押さえは、未払いになっている金額と差し押さえ手続きにかかる費用の合計額を限度として、将来にわたって継続して差し押さえられます。
給与債権が差し押さえられると、裁判所から勤務先に通知が届くので、借金や税金などを滞納したことを知られる可能性が高いでしょう。
賃料債権
賃料債権とは、債務者本人名義のマンションやアパートを所有している場合、賃借人から賃料を受け取ることができる権利のこと。この賃料債権も差し押さえの対象となり、実際に差し押さえになった場合には、賃借人にも知られることとなるでしょう。
その他の債権
生命保険に加入している場合は、生命保険金請求権や解約返戻金請求権も債権として扱われます。解約返戻金とは、積み立て型の生命保険で、保険を途中で解約したときに払い戻されるお金のこと。生命保険以外にも個人年金保険や学資保険にも解約返戻金がある商品があります。
不動産
土地や建物、マンションなどの不動産も、差し押さえ対象の財産です。不動産の場合は所在を特定できればそれほど手間がかからず差し押さえができるものの、よほど高額な借金を滞納していない限り、持ち家やマンションを差し押さえられる可能性は低いです。
住宅ローンの支払いが滞っていると、債権者である金融機関が担保設定している不動産を強制的に差し押さえ、競売にかけることで貸し付けた金額を回収する場合も。不動産が差し押さえられるケースでは、住宅ローンを滞納している場合が多いでしょう。
動産
次のような動産も、差し押さえの対象となります。
- 66万円以上の現金
- 自動車やバイク
- 骨とう品
- 美術品
- ブランド品
- 貴金属
実際に自宅や店舗に立ち入らないとどのような動産があるか分からないため、執行官が債務者の家に来て、そこで見つけた動産を売却して滞納金の返済に充てます。とはいえ、よほど価値のある宝石や特定の機械類以外は、現金化しても高額にならないことがほとんど。
差し押さえ対象外の財産
差し押さえの対象となる財産がある一方で、差し押さえの対象とならない財産もあります。憲法では、人間として最低限度の生活を送る権利があると定めていて、家にあるものすべて差し押さえて回数してしまうと、最低限度の生活を送れなくなってしまうため。具体的には次のような物が差し押さえ対象外となります。
差し押さえ禁止財産
生活する上で最低限必要なものは、差し押さえ禁止財産として、差し押さえすることはできません。差し押さえされると生活できなくなると心配する人がいますが、次のような財産は差し押さえられることがありません。
- 現金66万円未満
- 家具や衣服、台所用品などの生活必需品
- 職務上必要不可欠な道具
- 実印
- 仏像、位牌などの宗教用具
- 勲章
- ガソリンや灯油
一部の債権
一部の債権に関しても、差し押さえが禁止されています。債権で差し押さえができるのは、基本的に次のような財産に限られます。
- 給与・退職金・ボーナスなどについては、手取り金額の1/4
- 給与やボーナスの手取りが44万円を超える時は、手取り額から33万円を差し引いた金額
給与手取りの1/4を超える部分や、手取りから33万円を差し引いた以上の金額は、原則として差し押さえが禁止されています。ただし手取り額が少なく、この上限に基づいた差し押さえでも生活が厳しいという方は、裁判所に「差押禁止債権の範囲の変更の申立て」を行い、より多い収入を確保できるようにすることが可能です。
その他受給権
給与や退職金などの他にも、次のような受給権も基本的に差し押さえができません。
- 国民年金
- 厚生年金
- 生活保護
- 児童手当
ただし差し押さえが禁止されているのは、債務者の銀行口座にまだ振り込まれてない段階でのこと。いったん銀行口座に振り込まれてしまうと、預金債権として差し押さえが可能になってしまいます。この点は注意すべきポイントです。
差し押さえで家に来ることはある?
では、差し押さえで自宅に来ることはあるのでしょうか?家に来るのはどのようなケースなのかについても見ていきましょう。
来ることも来ないこともある
結論からいうと、家に来るケースも来ないケースもあります。こちらでは、家に来るケースとこないケースとに分けて解説していきます。
家に来ないケース
給与や預貯金口座が差し押さえられた場合は、基本的に家にまで来ることはありません。裁判所から勤務先や口座がある銀行に「差押命令」が送達され、債務者の知らないところで債権回収の手続きが進められます。給与や預貯金は、そのまま現金として回収できるので、手続きとしては非常に楽。
とくに給与は、毎月決まった金額が勤務先から支払われるので、自動的に回収するのに適しています。一方で不動産や家にある財産は、競売にかけるなどして現金化する作業が必要。給与や預貯金の差し押さえで債権回収ができた場合は、家にまで来ることはほとんどありません。
家に来るケース
不動産や車の差し押さえを受けた場合には、裁判所の執行官が現地調査のために家までやってくるケースがあります。
不動産の差し押さえ
自宅などの不動産が差し押さえられた場合、裁判所から差押命令が出された時点で家に来るという訳ではありません。差し押さえが実行され競売にかけられ、自宅が売却されると、明け渡し期限までに立ち退く必要があります。しかし期限までに立ち退かないでいると、裁判所の執行官が自宅に来て、強制的に追い出されることになります。
また競売にかけるための現地調査の一環で、裁判所の執行官や不動産鑑定士などが家の内外から写真を撮ったり、家の状況を記録することがあります。
動産の差し押さえ
裁判所の執行官が自宅を訪れて、差し押さえできる動産を探す場合があります。実際に家や会社の中に入り、換金できそうなものをチェックするという訳です。ただしこのような行為は債務者に対してプレッシャーをかける意味合いの方が強く、自ら支払いを促す目的で行われることも。
執行官が調査に来るまでの流れ
執行官が自宅に来るときには、あらかじめ「現況調査の予告」などの手紙で通知されるケースもあります。ただし執行官が自宅に来たからといって、すぐに財産を差し押さえられる訳ではなく、不動産や動産を差し押さえるための事前調査だと考えましょう。
周囲に差し押さえのことが知られる可能性
執行官や不動産鑑定人が自宅に来ると、隣近所や周囲に差し押さえのことが知られる可能性があります。外から家や自動車などの写真を撮影したりする姿を見られたり、訪問に応答しないと強制的に家の鍵を開けて現況調査を行ったりするためです。
近所の人の不審がられたり「競売にかけられたのでは?」とうわさをされる可能性があることを覚えておきましょう。
差し押さえ対象物には目印が付けられる
家の中にある動産が差し押さえ対象になると「封印票」というシールが物に貼られ、「差押債権目録」という書類が部屋の中に貼られます。これらを勝手にはがしたり破いたりすると、刑法第96条の「封印等葉機罪」に問われ、3年以下の懲役または250万円以下の罰金、あるいはその両方を科される可能性があるので気を付けてください。
なお家電や家具などの生活必需品は差し押さえ禁止財産となっているため、意図せず破ってしまうケースは稀です。ちなみに昔のドラマなどで、執行官が差し押さえの赤紙を貼っていくというシーンを目にしますが、督促状や催告書が赤い紙や封筒で届くことはあっても、動産の差し押さえには押印がある白い札が使用されています。
差し押さえの回避方法
差し押さえを回避する方法は、実際のところいくらでもあります。借金の場合、3カ月ほど滞納すると差し押さえ手続きが開始され、その後差し押さえ予告通知が送られてきます。その間に次のような方法を取れば、差し押さえ回避が可能です。
残高の一括返済
差し押さえを回避したいと思ったら、残高を一括返済するのが最も早い方法です。とはいえ、今まで滞納を繰り返しているということは、一括で支払える能力がない可能性が大いに考えられます。そのような場合には、家族や親族、知人などからお金を借りるようにしましょう。
また住宅ローンを滞納している場合は、リースバックを利用するという方法も。ただしリースバックの売却価格は、一般的な不動産の相場よりも安くなる傾向があるので、よく考えながら利用しましょう。
奨学金の一括請求が届いた場合のリスクと対処法は、こちらの記事を参考にしてください。
「奨学金を一括返済するよう請求された!無視した場合のリスクと対処法を解説」
債権者に相談
借金を滞納して2カ月前後なら、債権者に相談すれば返済額や返済期間などの返済計画を見直してもらえる可能性が高いです。借金で困ったときの相談は、早ければ早いほど効果的。滞納から3カ月以上経過してしまうと、債権者が差し押さえのための準備を開始するためです。
すでに裁判所に申し立てを起こしている段階では、もろもろの費用がすでに掛かってしまっているため、相談に応じるより差し押さえを実行した方がより多く回収できると判断する可能性があります。従って、債権者に相談できるのは差し押さえ予告通知書が届く前までと考えましょう。
税金や保険料は減免・猶予制度を利用
税金や年金、国保の支払いは、下で紹介する債務整理をしても減額や支払い免除の対象になりません。その代わり減免制度や支払い猶予制度が設けられています。国税の場合は税務署へ、市県民税や保険料は役所の担当部署に相談し、このような制度を利用できないか確認しましょう。
裁判所からの通知に対応する
裁判所から支払督促や訴状が届いた場合は、通知に対応することで差し押さえを回避できます。支払督促の内容に同意できないときは、2週間以内に裁判所に「異議申立書」を提出します。また内容に同意できる場合は、口頭弁論の場で、債権者と減額や分割払いといった返済計画について話し合い、和解を目指します。
和解に至れば、決まった返済計画通りに返済を進めていく限り、差し押さえに至ることはありません。これら裁判所からの通知に何も反応せず裁判にも出廷しないと、債権者の主張が全面的に認められてしまいます。遅くないタイミングで差し押さえが実行されることは間違いありません。
裁判所から訴状が届いたときの対処方法は、こちらの記事を参考にしてください。
「裁判所から訴状が届いた…どうすればいい?適切な対処法&借金解決方法とは」
弁護士に相談
「差押予告通知書」が届いた段階でも、すぐに借金問題に詳しい弁護士に相談すれば、差し押さえを回避できる可能性が残されています。とはいえ、差押予告通知書が届いてから実際に差し押さえが実行されるまではあまり時間がありません。すぐに弁護士に相談した方がいいでしょう。
債務整理
差押予告通知書が届いた段階で弁護士に相談すると、債務整理をすすめられます。債務整理とは、国が認めた借金解決方法で、減免の割合や手続きの違いに応じて3種類があります。税金や年金は債務整理をしても減免できませんが、他にも借金がある場合に借金を債務整理することで家計にゆとりが生まれ、税金や年金を支払えるようにも。
まずは弁護士に相談し、自分にはどのような債務整理方法が適しているか知りましょう。
任意整理
任意整理とは、裁判所の手続きなしに債権者と直接交渉し、借金の利息や遅延損害金を減額してもらう手続き。減額後の借金は、3~5年かけて返済していきます。任意整理の交渉により、債務者が自発的に返済してくれることを期待して強制執行の申し立てを取り下げる可能性はゼロではないものの、すでに給与などが差し押さえられてしまった後は、任意整理ではストップすることができません。
任意整理で借金が減額できるのは、債権者が差し押さえの行動に入る前と覚えておきましょう。
任意整理で減額されない理由や対処法は、こちらの記事を参考にしましょう。
「任意整理で減額されない原因と理由|減額できないときの対処法とは?」
個人再生
個人再生とは、裁判所に申し立てて「民事再生法」で定められた基準に従って借金を減額する手続きです。任意整理よりも減額の効果が高く、住宅を残しながら手続きできる「住宅ローン特則」があるのも特徴。一方で減額後も返済が続くので、継続的に安定した収入があること、借金総額が5000万円いかであることが条件です。
個人再生は裁判所を介した手続きなので、手続きを開始した時点で、差し押さえをはじめとする強制執行は中止されます。給与の差し押さえも途中でストップできますが、すでに差し押さえられたものを取り返すことはできません。個人再生は申し立てから手続開始決定まで時間がかかる場合があるので、こちらも早めの行動が肝心です。
個人再生の流れと期間を知りたい方は、こちらの記事を参考にしましょう。
「個人再生の流れと必要書類とは?手続きにかかる期間と書類の入手方法も解説!」
自己破産
自己破産は、裁判所に申し立てを行い、借金返済が不能だと認めてもらうことで、全ての借金返済義務を免除(免責)できる手続きです。破産法で定められた一定以上の財産は処分され、債権者への返済に充てられます。またギャンブルや浪費など、借金の理由によっては「免責不許可事由」と判断され、免責ができない可能性も。
すでに差し押さえを含む強制執行がなされている場合でも、自己破産を裁判所に申し立て、破産手続開始決定が出た時点で中止されます。自己破産には「同時廃止」と「管財事件」の二種類があり、それぞれ差し押さえのタイミングが異なる場合があります。詳しくは、手続きを依頼した弁護士に確認しましょう。
自己破産のデメリットに関しては、こちらの記事を参考にしてください。
「自己破産のデメリットを状況別に解説!誤解や嘘を解決して最適な選択へ」
自己破産で家に来るケース
破産手続開始決定が出されると差し押さえは中止できます。しかし今度は自己破産の手続きのために、裁判所から選任された破産管財人などが自宅や事業所に現地調査に来る可能性があります。現地調査に来る可能性があるのは、次のようなケースです。
換価できる財産がある場合
不動産など売却し借金返済に充てられる財産がある場合は、その財産を調査する目的で家に来る可能性があります。というのも破産管財人は、破産者の財産を調査し、その財産を万全に管理する役割があるため。実際に財産がある場所に行き、そこで管理されている財産の保管状態などを目で見て確認するとともに、財産がきちんとした状態でチェックするのも仕事です。
また実際に査定するときや、買主に財産を引き渡すときにも、現地に来ることがあります。
自己破産で処分される財産について詳しくは、こちらの記事を参考にしてください。
「自己破産すると財産はどうなる?処分される・されない財産と財産隠しについて」
悪質な財産隠しが疑われる場合
悪質な財産隠しが疑われる場合も、破産管財人が家に来る可能性が高いでしょう。自己破産では、財産の処分を逃れる目的で財産を隠すなどの行為は「破産法」で禁止されています。万が一財産隠しが発覚すると、自己破産しても借金が免責できない恐れがあるため、破産管財人は財産隠しの有無を念入りに調査します。
同時に申告漏れの借金、財産がないかや、その他の免責不許可事由がないかも調べます。あらゆる財産について過去にさかのぼって徹底的に調べられるため、財産を隠そうとしても見つかる可能性が高いでしょう。
自己破産で財産隠しがバレるとどうなるかについては、こちらの記事を参考にしましょう。
「自己破産で財産隠しがバレるとどうなる?主な手口やバレる理由、対処法を教えます」
差し押さえに関する疑問や質問
差し押さえに関して、次のような疑問や質問にお答えします。
仮差し押さえとは?
差し押さえと似た言葉に「仮差し押さえ」がありますが、これらはどう違うのでしょうか。通常差し押さえを実行するには「債権名義」が必要です。しかし裁判所の判決が出るまでの間でも、債務者が財産を処分する可能性があるときなどに、裁判所が認めれば「仮差し押さえ」として財産を保全することができます。
債権名義に基づいて行われるのが「差し押さえ」で、それ以前に財産を処分される恐れがあるときに行われるのが「仮差し押さえ」です。
差し押さえできる財産がない場合はどうなる?
差し押さえできる財産がないときには、そもそも債権者は強制執行を申し立てても意味がありません。例えば銀行に債務者名義の口座があるものの、残高がほとんどないというような場合です。強制執行を申し立て、その口座を差し押さえることは可能ですが、残金が数十円しかないとなると、そもそも費用倒れになる可能性が高いです。
強制執行を申し立てるかどうかの判断は債権者次第ですが、財産がほとんどないと分かっている場合には、そもそも申し立てをしないでしょう。ただ借金(債権)が消滅するまでの期間(時効)は5年あり、その間に給与や何かしらの財産を得たときには、差し押さえを受ける可能性が高いです。
保証人がいる場合はどうなる?
連帯保証人が付いている借金を滞納すると、連帯保証人の財産が差し押さえにあうことがあります。というのも連帯保証人は主債務者と同等の返済義務を負っているため。債権者から返済を求められたら拒むことができません。すでに公正証書などの債権名義がある場合は、裁判を通さずに連帯保証人の財産が差し押さえられる可能性があることを覚えておきましょう。
差し押さえの前に財産を隠すことはできる?
差し押さえされると困る財産を事前に隠そうと考える人もいるでしょう。しかし名義がはっきりしている財産(不動産・預金など)を隠すことはほぼ不可能です。差し押さえについて定めた民事執行法には、「財産開示手続」や「第三者からの情報取得手続」という制度があります。
債務者の財産を調査する場合には、裁判所の命令に従って役所や法務局、金融機関は情報を提供しなければなりません。そして名義を変更しようと思っても、差押予告通知書が届いた時点で、債権者はある程度財産の調査を済ませているため、バレる可能性が非常に高く名義変更は取り消しとなります。
そのほかにも、差し押さえを回避する目的で次のような行為が禁止されています。刑事罰や損害賠償請求の対象となる恐れがあるため、絶対にやめましょう。
- 他人への譲渡
- 故意に財産を隠す・壊す
- 財産に貼られた封印を破る
アルバイトでも差し押さえされる?
アルバイトやパートの給与も、差し押さえの対象となります。またボーナスや賞与が支給される会社なら、それらも差し押さえられると考えましょう。給与の差し押さえは債権名義で認められた金額に達するまで継続されますが、その前に会社を辞めたときにはいったん中止されます。ただ転職後、債権者が再び強制執行を申し立てると、転職先の給与を差し押さえられることもあります。
差し押さえ禁止財産でも差し押さえられることはある?
差し押さえ禁止財産でも、差し押さえられてしまうことがあります。例えば口座に振り込まれる給与や年金などです。給与は手取りの1/4(44万円以上なら33万円を差し引いた額)、年金債権は全額が差し押さえ禁止となっていますが、一旦口座に振り込まれてしまうと、結局全額を差し押さえられる可能性があるため。
そのような場合には、民事執行法に基づいて「差押禁止債権の範囲の変更の申し立て」を行い、差し押さえ禁止債権の範囲を拡張してもらいましょう。
差し押さえになったことは何で分かる?
銀行口座や給与は、裁判所の執行官が家に来るわけでないので、差し押さえが実行されたことに気づかない可能性があります。銀行口座が差し押さえられると、ある日突然残高がゼロになり、摘要欄には「差押(サシオサエ)」と記入されます。給与が差し押さえられると、勤務先に裁判所から「差押命令正本」が届きます。
スマホやパソコンがないと困るのだが…
スマホやパソコンは、今や生活に欠かせない物。差し押さえられると困るという方がほとんどではないでしょうか。しかし実際、スマホやパソコンが差し押さえられるというケースはほとんどありません。これらは生活必需品として、民事執行法第131条に差し押さえ禁止財産に当たるとみなされているためです。
ただしこれらを複数台所有している方は、生活のためにそれぞれ1台ずつあれば十分と判断されるため、1台を残して差し押さえられる可能性があるでしょう。
まとめ
差し押さえとは、借金や税金を長期間滞納したときに、債権者に裁判を起こされ裁判所の命令のもとで強制的に財産を没収、支払金の徴収にあてられることをいいます。給与や銀行口座の差し押さえで家に来ることはありませんが、不動産や動産が差し押さえられると、その調査のために裁判所の執行官が家に来る場合があります。
差し押さえには「債権名義」が必要で、滞納してから差し押さえにあうまでの期間は、最短でも半年ほど。事前連絡なしに突然預金口座の残高がゼロになったり、勤務先に裁判所から突然差し押さえの通知が届きます。差し押さえを回避するには、一括返済に応じる、裁判に出廷する、弁護士に相談するなどの方法が有効。
差し押さえが実行された後でも中止できるのが、個人再生や自己破産など、裁判所を通して行う債務整理です。自分に適した債務整理方法が分からないという方は、借金問題に詳しい弁護士に相談することで解決可能。差し押さえされそうで怖い、すでに差し押さえの通知が届いたという方は、なるべく早めに弁護士に相談しましょう。