- 「個人再生の手続きの流れを知りたい」
- 「個人再生の申立に必要な書類と入手方法は?」
個人再生は債務整理の方法の一つですが、裁判所に申し立てるということで手続きにかかる期間が長く、必要書類が多いのが特徴です。そこでこちらの記事では、個人再生の手続きの流れやかかる期間、必要書類の内容や入手方法を詳しく解説。
個人再生を考えているがどのような流れで進むのか不安という方や、必要書類を準備しておきたいという方は必見です。個人再生の手続きに失敗しないために何をすべきかよく確認し、スムーズに手続きを進められるようにしましょう。
個人再生の手続きの流れ・期間
まずは個人再生ではどのような手続きが必要で、どうして借金が減額できるかを手続きの流れから解説していきます。手続きにかかるもろもろの期間も紹介するので、参考にしましょう。
個人再生手続きの流れ
個人再生の手続きは、次のような順序で進んでいきます。
弁護士への相談・委任契約締結
個人再生する人のほとんどは、司法書士や弁護士などの専門家に手続きを依頼します。司法書士の方が支払う費用がおさえられますが、裁判所に代理で出席できなかったり、個人再生委員が選任されたりするケースでは、かえって手続きに必要な費用が高くついてしまいます。そのためこちらでは弁護士に依頼する前提で話を進めていきます。
弁護士事務所の多くは初回の相談を無料にしています。相談の段階で借金や収入の詳細を説明できるようにすると、スムーズに話を進められるでしょう。そのような無料相談を利用して、手続きを依頼する弁護士を決定します。弁護士とはその日のうちに委任契約を結ぶことが可能。
正式に個人再生を依頼することに決まった弁護士は、早いと委任契約を結んだ当日に、債権者に「受任通知」を送付します。同時に、債権の金額や内容をすべて記した「取引履歴」の開示請求も債権者に対して行います。
借金総額の確定・過払い金返還請求
弁護士は債権者からの取引履歴をもとに、過去に支払った分を利息制限法上の法定金利(15~20%)に基づいて再計算しなおす「引き直し計算」をします。このとき過払い金が発生していることが分かれば、債権者に返還請求を実施。過払い金が多く発生している場合は、個人再生から任意整理に切り替える可能性もあります。
弁護士が受任通知を送付してから、債権者から取引履歴が開示されるまではおよそ1~3カ月ほどかかります。
家計・収支・財産の調査
借金総額を確定させるのと同時に、個人再生を希望する人の家計や収支、財産の調査を行います。個人再生をする上で最も大切なのは、個人再生の手続き後に再生計画に基づく弁済を行っていけるか。そのためには継続的に一定以上の収入があるか、家計の収支がどうなっているかの調査が欠かせません。
また個人再生には、再生計画における返済は破産における配当以上でならなければならないという「清算価値保証原則」があります。破産手続では一定以上の財産を処分換価して債権者に分配されますが、個人再生では破産したとき以上に債権者に返済しなければなりません。
これらの調査のために、給与明細や家計調査表など収入や支出に関する書類、不動産の登記簿謄本や車の査定表など財産に関する書類を提出する必要があります。
申立て書類の作成・準備
個人再生することが決まったら、裁判所に提出する申立書類の作成や準備に移ります。上で説明した通り、個人再生では収入や支出、財産などに関する多くの書類が必要になるため、作成や集めるのに非常に手間がかかります。
弁護士に依頼した場合は、申立書類などを代わりに作成してもらえます。それでも収入や財産に関する書類は申立人本人でないと入手できないものも多くあるため、効率的に動かないと無駄に時間を費やすことに。弁護士にアドバイスしてもらいながら、最短で書類を準備できるようにしましょう。
裁判所に個人再生を申立てる
申立に必要な書類がすべて集まったら、申立人が住んでいる地域を管轄している地方裁判所に書類を提出して、個人再生の申立を行います。弁護士に依頼した場合は、弁護士が裁判所に提出し、個人再生の申立をします。裁判所で書類の不備をチェックして、特に問題がなければ個人再生の手続きが開始されます。
個人再生委員の選任・面談
申立の当日から1週間以内のうちに、裁判所によって個人再生委員が選任されます。裁判所から誰を個人再生委員に選任したか連絡が来るので、その委員に申立書の副本を送付するとともに、三者(申立人・代理人弁護士・個人再生委員)による面談の日時が調整されることに。
三者による面談では申立書の内容に従って、借金や資産、家計の状況の確認が行われます。万が一不足書類があった場合は、ここで書類の提出を求められます。この面談は、裁判所が個人再生手続開始決定をしてよいか判断するために必要です。面談では虚偽の説明をしないように気を付けましょう。
履行テストの開始
申立から1週間前後で「履行テスト」が開始されます。履行テストとは、申立書に記載した個人再生後の返済額を本当に継続できるのかを確認するもので、「積立トレーニング」と呼ばれることも。履行テストの運用は申立てた裁判所によって異なり、東京地方裁判所では6カ月間の履行テストを実施しています。
認可決定までの期間、個人再生委員が指定した銀行口座に1カ月当たりの返済予定額と同額の予納金を毎月振込みます。個人再生委員が問題ないと判断すれば、半年よりも早く終わる可能性も。履行テストで支払ったお金は、個人再生委員への報酬を差し引いて、後日返金されます。
再生手続きの開始決定
履行テストで問題ないと再生委員が判断し、裁判所に意見書を提出。個人再生の申立からおよそ1カ月程度で、再生手続きの開始決定が裁判所から出されます。この段階で国の機関誌である「官報」に、申立人の氏名や住所、個人再生の開始決定が出された旨が記載されます。
金融機関から書類(債権届出・債権認否一覧表)提出
個人再生手続きが開始されると、裁判所から債権者に通知が行き、同時に申立人が裁判所に提出した「債権者一覧表」が債権者の元へ送られます。債権者は一覧表の内容に間違いがないか確認し、裁判所へ債権の届出を行います。
債権の届出の提出期限は、申立日から8週間前後に設定されるのが一般的。万が一債権者から返送がなくても記載された内容について届出がなされたとみなされるので、手続きが無駄に長引くことはありません。
裁判所に再生計画案を提出
債権の届出で確定した債務額に基づいて、再生計画案を作成して裁判所と個人再生委員に提出。再生計画案とは減額後の借金を、毎月いくらずつどのくらいの期間をかけて支払うかまとめた書類のこと。再生計画案の提出期限は、申立日から3~4カ月に設定されるのが一般的です。
再生計画案の提出は、一日でも期限を過ぎるとその時点で個人再生手続きは廃止(中止)になります。絶対に期限を守るよう十分に気を付けましょう。
書面による決議(小規模個人再生のみ)
個人再生には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2種類がありますが、このうち小規模個人再生で手続きすると、各債権者に送付した再生計画案について議決書による決議(書面議決)を得る必要があります。
ここで債権者の過半数が再生計画案に同意しなかったり、同意しない債権者からの債務金額が全体の過半数に達した場合は、再生計画の認可に進むことはできません。一方の給与所得者等再生で債権者の意見聴取は行いますが、同意までは必要ありません。
裁判所による再生計画案の認可・不認可の決定
再生計画案が債権者に認められれば、正式に裁判所から再生計画案の認可が下ります。認可されるとその約2週間後に、官報に掲載されます。裁判所による認可(不認可)決定書は、申立人(代理人がいる場合は代理人)と債権者のそれぞれに送達されます。
再生計画に基づいた返済の開始
再生計画認可決定が確定した翌月から、作成した再生計画案に基づいて返済を開始していきます。返済は債権者が指定する口座に銀行振り込みで行われるのが通常です。しかし振込先が複数あり手続きが大変という場合には、一部の弁護士事務所が行っている返済代行サービスを利用することができます。
返済代行とは、あらかじめまとまった金額を弁護士事務所の口座に振り込んでおくことで、事務所が代わりに指定した日に指定した金額を指定口座に振り込んでくれるというサービスです。振込先がたくさんありすぎて個人では約束通りに返済できそうもないという方は、このようなサービスを利用してみてはいかがでしょうか。
個人再生のメリット・デメリットや利用条件等を詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
「個人再生のメリット・デメリットを徹底分析!注意点・利用条件・他の債務整理との違いは?」
個人再生に関わる期間
個人再生にかかる期間は、トータルで1年から1年半前後と長期に及びます。こちらでは手続きにかかる期間や、そのた個人再生にまつわる期間について解説してきます。
弁護士を探すところから申立てまでの期間
個人再生を依頼する弁護士を探すところから裁判所に申立てするまでの期間は、早いと数カ月で済みますが長いと半年程度かかることも。依頼する弁護士をなかなか見つけられないケースや、書類の準備などに手間取ると長引く傾向にあります。
申立てから再生計画案の認可までの期間
個人再生の申立てから再生計画案の認可までの期間は、最短で5カ月。個人再生委員が選任されたり履行テストがあったりすると期間が長引き、1年以上かかる場合があります。それぞれの手続きにかかる期間は以下の通りです。
手続の流れ | かかる期間 |
---|---|
申立てから個人再生手続き開始決定まで | 約1カ月 |
個人再生手続き開始決定から再生計画案の提出まで | 2~3カ月 |
履行テストがある場合 | +3~6カ月 |
債権者による決議・意見聴取から裁判所による再生計画案の認可・不認可決定 | 1~3カ月 |
個人再生委員や履行テストは申立てる裁判所によって運用が異なるため、あらかじめ裁判所のスケジュールを確認しておくといいでしょう。
個人再生にかかる期間を詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしましょう。
「個人再生にかかる期間はどれくらい?申立から再生手続開始決定、返済までの流れと注意点」
手続き後の返済期間
個人再生の場合、手続き後の返済期間は原則として3年、最長でも5年です。3年から5年の間で自由に選べるということではなく、以下のようなやむを得ない事情で返済が難しくなったときに限り、裁判所に「個人再生計画の変更」を申し立てて認められれば最長2年の延長が可能になります。
- 勤務先が倒産した
- リストラにあった
- ケガや病気で休業した
- 家族の医療費や養育費で想定外にかかった
信用情報に掲載される期間
個人再生をすると他の債務整理同様、信用情報機関にある個人信用情報に事故情報として登録されます。いわゆるブラックリスト状態のことで、ローンが組めなくなったりクレジットカードの新規契約ができなくなります。事故情報が掲載される期間は、個人再生手続き開始決定日から5~10年の間です。
3つある信用情報機関ごとに掲載期間が異なるため、この期間以降にローンを組むというときは、前もって信用情報機関すべてに情報開示請求をして、事故情報が消えているかをチェックしましょう。
ブラックリストがいつ消えるか知りたい方や、個人信用情報をきれいにする方法を知りたい方は、こちらの記事を参考にしましょう。
「ブラックリストはいつ消える?消し方は?個人信用情報をきれいにする方法」
個人再生の手続きに必要な書類
個人再生の手続きに必要な書類は、申立てに必ず必要や書類や状況に応じて必要な書類など多岐にわたります。それぞれに必要な書類について、記入する内容や入手するときに注意すべきポイントなどを解説していきます。
申立てに必要な書類
個人再生を申立てるときに必要な書類はこちらです。申立てまでの時間を短縮するには、集められる書類は早めに入手するようにしましょう。
必ず必要な書類
申立に必ず必要になる書類はこちらです。
書類の種類 | 記入する内容 |
---|---|
申立書 | 個人再生を行う申立人の住所、氏名、連絡先、申し立ての趣旨を記入 代理人弁護士の氏名や月々の返済予定額についても記載する |
陳述書 | 申立人の職業、収入、住まい、家族構成などをもとに、どうして個人再生することになったのかを説明 自営業者の場合は事業の内容、開始時期、確定申告書に基づく1カ月の所得など |
債権者一覧表 | 金融機関(債権者)の会社名(氏名)、住所、連絡先、借入額、借入期間、担保の有無など |
家計収支表(家計表) | 給与や自営の収入、年金といった収入と家賃・光熱費・食費などの支出を記入した者 |
住民票の写し | 世帯全員かつ本籍や続柄の記載があるもの |
財産目録 | 個人再生を認可するかの判断に用いられるため、申立人名義の財産の種類や評価額、詳細などが必要 財産の種類に応じて財産の内容を証明するための添付書類も必要 |
債権者宛ラベル | 債権者に書類などを送付する場合に必要 |
収入額を明らかにする書類 | 給与(賞与)明細・源泉徴収票・所得税課税証明書 本人および同居家族のもの 給与明細は申立前3カ月以内のものを3カ月分賞与明細・源泉徴収票は直近1年分 |
借金に関する添付書類 | 借用書・返済予定一覧表・取引明細書など |
大阪地方裁判所では申立書と陳述書がセットになっているなど、裁判所によって必要書類が異なる場合があります。
状況に応じて必要な書類
状況に応じて必要になってくる書類は以下の通りです。自分が当てはまる場合は、こちらの書類も申立てに必要です。
個人事業主・自営業の場合
個人事業主や従業員を雇って自営業をしている方が個人再生する場合は、これらの書類が必要になります。
書類の種類 | 書類の内容 |
---|---|
確定申告書の控え | 再生手続開始の申立日前3年以内に法令の規定に基づき作成されたもの |
資金繰りの見込みを明らかにする書面 | 再生手続開始の申立日前1年間の書類および再生手続開始の申立ての日以後6カ月間の書類 |
労働協約または就業規則 | 労働協約を締結した労働者がいるとき |
確定申告書と一緒に、貸借対照表や損益計算書などの決算書類が必要になる場合があります。
給与所得者等再生の場合
2種類ある個人再生の手続きのうち、給与所得者等再生を申立てる場合は、「可処分所得額算出シート」の提出が必要です。可処分所得額とは毎月受け取る給料の手取りのこと。総支給額から税金や社会保険料を差し引かれた金額になります。
給与所得者等再生では、再生計画が認可される要件として「計画弁済(返済)総額は、可処分所得の2年分以上でなければならない」という決まりがあるため、この要件を満たしているか可処分所得額算出シートで確認が必要になります。この書類を作成するのに必要な書類は以下の通りです。
- 源泉徴収票(直近2年分)
- 市県民税課税証明書(直近2年分)
住宅ローン特則を利用する場合
住宅資金特別条項(通称:住宅ローン特則)を利用する場合は、住宅ローンや不動産についてこれらの書類を準備する必要があります。
- 住宅資金貸付契約(住宅ローン)の証書の写し
- 保証会社と交わした保証委託契約書
- 住宅ローン返済計画表(償還表)
- 弁済許可申立書(ひな形あり)
- 土地及び建物の登記事項証明書
- その他の不動産の登記事項証明書(ローンを支払っている住宅以外の不動産を抵当権に設定している場合)
- 住宅部分の床面積が分かる書類(居住用以外の用途にも使用している場合)
住宅ローンの返済状況によっては、上記以外の書類が必要になるケースも。詳しくは依頼する弁護士に確認しておきましょう。
個人再生で住宅ローンがどうなるか心配な方は、こちらの記事を参考にしましょう。
「個人再生で住宅ローンはどうなる?特則適用の条件・巻き戻し・手続き後のローンについて」
賃貸物件に住んでいる場合
申立人が賃貸物件に住んでいる場合は、住所を確認するためと敷金などの預かり金の有無を調査するため、次のような書類が必要です。
- 賃貸借契約書
- 更新契約書
- 社宅証明書(社宅に住んでいる場合)
同居人が契約している賃貸物件に住まわせてもらっている場合は、「住宅使用許可証」などの書類を同居人に書いてもらうケースもあります。
その他添付が求められる書類
上で説明した以外にも、状況に応じて添付を求められる書類があります。
該当する状況 | 必要な書類 |
---|---|
弁護士が代理人として就くとき | 委任状 |
財産目録に記載した財産があるとき |
|
給与以外の収入があるとき |
|
差押えや滞納があるとき |
|
とくに財産目録に記載しただけでは、本当にその財産を所有しているかの判断が付きません。そこで財産を所有しているか判断するための証拠書類が必要になるという訳です。貴金属や骨とう品、株式やゴルフ会員権など換価性がある財産は、別途査定証明書が必要です。財産の種類によって査定方法が異なるため、詳しくは弁護士までお問い合わせください。
申立後に必要な書類
個人再生の申立後に必要になる書類もあります。
書類の種類 | 書類の内容・注意点 |
---|---|
積立状況等報告書 | 個人再生を弁護士等に依頼した場合は手続き後の返済のために積み立てを行う
その積立状況を裁判所に報告する書類で、積立額や積立ができない場合の理由、今後の返済が可能なことを明記する |
財産状況等報告書 | 個人再生手続きすぐに提出
所有財産に追加がある場合は、申立時に準備した財産目録と同様に記入 |
異議書 | 異議のある債権者の会社名や異議の内容をまとめる |
債権者認否一覧表 | 債権者があらかじめ届け出た債権額に意義がある場合は認めない旨を記入 |
再生計画案 | 個人再生後の返済額や返済期間を記入した計画書 個人再生の認可・不認可の判断に必要な書類のため、1日でも提出が遅れると手続きが打ち切られる |
弁済計画案 | 再生計画案に基づいて、どの債権者にどのように返済するかを示した書類 再生計画案と同じタイミングで提出する |
こちらも裁判所によって必要な書類が変わってきます。債務整理に慣れた地元の弁護士に依頼できれば、必要な書類で困ることはないでしょう。
必要書類の入手方法
必要書類は裁判所から取り寄せられるものから、自分で集めなければならないものまで様々です。とくに自分で集めなければならない書類はどこからどのような内容の書類を集めなければならないか、よく確認するようにしましょう。
裁判所から取り寄せる書類
裁判所から取り寄せる必要があるのは、次のような書類です。
- 申立書
- 陳述書
- 財産目録
- 家計収支表(家計表)
- 債権者一覧表
弁護士に依頼する書類
弁護士に作成を依頼するのは委任状の原本です。債務整理に詳しい弁護士なら、あらかじめ委任状が必要だということを分かっているので、こちらから依頼する前に準備していることがほとんどです。
自分で集める書類
自分で集めなければならないのは、住所や収入、借金や財産に関する書類です。
住所に関するもの
住所に関する書類で、自分で集めなければならないのは下記の通りです。入手先やコピーの可・不可、発行日から○カ月以内の日付のものなど、ミスがないように確認しましょう。
書類の種類 | 入手先など | 備考 |
---|---|---|
住民票 | 住所地がある自治体役場 | 発行日から3カ月以内のもの(コピー不可) 世帯全員の記載があり、本籍や属柄が記されているものマイナンバー(個人番号)が省略されたもの(マイナンバーが記載されていると添付資料として使用不可) |
戸籍謄本 | 戸籍がある自治体役場 | 裁判所で必要と認められた場合
発行日から3カ月以内のもの(コピー不可) |
居住証明書 | 公共料金の請求書
賃貸物件の賃貸借契約書など |
住民票を移していない場合に必要
氏名と住所の両方が記載されているもの 3カ月以内のもの |
居住証明書は住民票を現住所に移していないときに必要で、特定の書式がある訳ではありません。申立人の氏名と住所の両方が記載されていれば、公共料金の請求書や領収書、賃貸物件の契約書などでも差し支えありません。
収入・勤務先に関するもの
収入や勤務先に関する必要書類はこちらです。
書類の種類 | 入手先 | 備考 |
---|---|---|
給与(賞与)明細書 | 勤務先 | 本人および同居家族のもの 給与明細は申立前3カ月以内のものを3カ月分賞与明細書は直近1年分 |
源泉徴収票 | 勤務先 | 直近2年分のものが必要 自宅に見当たらない場合は勤務先に再発行してもらう |
確定申告書 | 税務署 | 個人事業主や自営業の場合は直近2年分の確定申告書の写しが必要
紛失した場合は税務署で再発行が可能 |
課税証明書 | 住所地のある自治体役場 | 源泉徴収票が準備できない人、確定申告書の控えがない人、給与所得者で副業の収入がある人 |
退職金(見込み)額証明書 | 勤務先 | 勤続5年以上の場合のみ |
積立金の証明書 | 勤務先 | 給与明細に「財形貯蓄」「社内積立」「事業保証」などの項目がある場合 |
退職金に関する書類は、正社員のみならず契約社員や派遣社員でも必要です。退職金制度がない場合は、その旨が分かる就業規則や雇用契約書の提出が求められます。勤務先に個人再生のことを知られたくない場合は、退職金規定が分かる書類と陳述書で代用できる可能性があります。また同居家族に収入がある場合は、家族の収入に関する書類も忘れずに入手しましょう。
家計に関するもの
家計に関する書類は、主に支出の詳細が分かる次のような書類です。
書類の種類 | 入手先 | 備考 |
---|---|---|
水道光熱費請求書 (電気・ガス・水道) |
契約先の自治体・会社 | 直近2カ月分 口座振替の場合は通帳で確認できれば必要なし |
通信費請求書
(携帯・インターネット料金など) |
契約先の会社 | 直近2カ月分 口座振替の場合は通帳で確認できれば必要なし |
借金に関するもの
借金に関する書類で必要になるのは、債権者一覧表の内容を裏付けるような添付書類です。
- 借用書
- 借入の請求書
- 取引明細書
- 返済予定一覧表
金融機関からの借金以外に、税金を滞納していたり督促されている場合も関係書類の準備が必要です。ただし税金は債務の一種ですが借金とはみなされないため、個人再生で減額することはできません。
財産に関するもの
財産に関する書類で添付が必要になるのは、財産の種類ごとに次の通りです。
預貯金・積立金
書類の種類 | 入手先 | 備考 |
---|---|---|
預貯金通帳の写し | 各金融機関 | 申立日から2週間以内の時点から1年分のコピーが必要 ネット銀行の場合はWeb明細をダウンロードして印刷解約済みも含む |
取引明細書 | 各金融機関 | 通帳をなくした・紙の通帳がない場合
一括記帳の部分がある場合 |
積立額証明書 | 勤務先など | 積立金がある場合 |
不動産
書類の種類 | 入手先 | 備考 |
---|---|---|
登記全部事項証明書(登記簿謄本) | 不動産の住所地がある法務局 | コピー不可 申立前3カ月以内に発行したもの 処分済み(売却・競売・財産分与)のときも必要 |
固定資産評価証明書 | 不動産がある自治体役場もしくは郵送 | コピー不可 申立前3カ月以内に発行したもの 基本的に所有者もしくはその同居家族しか取得できない 郵送の場合は手数料分の郵便定額小為替を同封し、担当宛てに郵送する 郵送での取得までには1~2週間必要 |
不動産評価書類 | 無料査定サイトなど | コピー不可 |
自動車・バイク
書類の種類 | 入手先 | 備考 |
---|---|---|
車検証 | 車に保管 | コピー可 同居家族が所有している場合も必要 |
登録事項証明書 | 最寄りの運輸支局または自動車検査登録事務所窓口 | 車検証がない場合など |
自動車任意保険証券 | 車に保管 | コピー可 |
査定書 | 無料の一括査定など | 登録から普通車:7年以内・軽や商用車:5年以内、新車価格が300万円以上、所有権留保が付いている、のいずれかに該当する場合 |
売買契約書 | ローン会社 | ローンで購入した場合 |
すでに処分している車やバイクがある場合は、処分時の売買契約書や領収書が必要になるケースが。ローン返済が残っている車は、個人再生すると所有権留保に基づいて債権者に引き上げられてしまいます。ローンがない車は処分される心配はありませんが、車の査定額が財産としてカウントされます。
保険
書類の種類 | 入手先 | 備考 |
---|---|---|
保険証券・契約書 | 各保険会社 | 手元にない場合は契約先に問い合わせる |
解約返戻金(見込み)額証明書 | 各保険会社 | 解約返戻金がある保険に加入している場合に必要 |
確定拠出型年金額証明書 | 保険会社もしくは勤務先 | 個人または勤務先で加入している場合 |
保険証券は保険の種類にかかわらず、加入しているすべての保険について必要です。申立人が保険料を支払っていなくても、本人が契約者になっている保険は対象となり、契約者になっていなくても保険料を支払っている場合でも保険証券の添付が必須です。
解約すると返戻金が戻ってくる保険に関しては財産として、最低弁済額を決める清算価値に影響します。ただし個人再生しても保険を解約される心配はありません。
個人再生の手続きに失敗しないために
個人再生の手続きに失敗しないためには、次のようなことに気を付けましょう。
虚偽の申告をしない
弁護士から何か聞かれたときや個人再生委員との面談では、絶対に虚偽の申告はしないようにしましょう。借金の金額を少なく申告したり、持っている財産を故意に隠したりすると虚偽の申告とみなされて再生手続きが廃止されてしまいます。
再生手続きが廃止になるともちろん借金を減額できず、以前のように返済の督促や催促が再開されることに。手続きの途中で弁護士が代理人から降りたとしても、それまでに支払った着手金や費用は返金されません。弁護士や個人再生委員に聞かれたとは、どんな質問でも正直に答えるようにしましょう。
書類の提出期限を守る
個人再生の手続きに必要な書類には必ず提出期限があるので、期限は絶対に守るようにしましょう。とくに手続きの流れで紹介した再生計画案の提出期限を1日でも遅れると、再生手続きが廃止されて個人再生が失敗に終わってしまいます。再生計画案の提出期限は申立てから3~4カ月後に設定されているので、余裕をもって作成を進めましょう。
特定の債権者を優先したり、手続き後の返済を遅らせない
特定の債権者を優先して返済したり、再生計画案で決められた返済は遅らせないようにしましょう。個人再生の手続き前や手続き中に特定の債権者に偏って返済してしまうと、個人再生の許可が降りない可能性があるためです。お金を借りた相手が家族や知人などでも同様です。
また作成した再生計画案通りに返済できず、途中で返済がストップしたりすると、せっかく減額できた借金が元に戻ってしまいます。もしも当初の計画案通りに返済できそうもないときは、早めに依頼した弁護士に相談してください。
弁護士に依頼するのがベスト
個人再生の手続きを成功させるには、債務整理や借金問題に詳しい弁護士に相談するのがベストです。法律の専門知識があり裁判所を介しての手続きに慣れているので、個人再生できると判断されれば、失敗することはほぼないでしょう。
個人再生は債務整理の中でも特に手続きが複雑な方法です。個人再生委員が選任されるケースでは、弁護士を代理人にしている方がトータルの費用を抑えられます。それ以外にも手続きを弁護士に依頼すると、次のようなメリットがあります。
- 依頼者に合った借金解決方法をアドバイスしてもらえる
- 受任通知で督促や返済をストップできる
- 書類作成や手続きの多くを代理してもらえる
- 過払い金が発生したときの対応を依頼できる
個人再生を依頼する弁護士の選び方は、こちらの記事を参考にしてください。
「【相談前・相談時】債務整理を依頼する弁護士の選び方を解説!失敗しない6つの注意点も紹介」
まとめ
個人再生の手続きは弁護士に依頼するところから申立てを経て、再生計画認可決定が確定するまでトータルで1年から1年半という期間がかかります。弁護士探しから申立てまでは2~5カ月、申立てから再生計画案の認可まで最低5カ月程度かかると考えましょう。
弁護士探しや書類の準備に手間取ったり、履行テストが実施されると手続き期間が延びる傾向にあります。極力手続き期間を短縮するには、効率よく申立てに必要な書類を準備するのがポイントです。そのためには自分のケースに必要な書類の内容を把握して、こちらの記事を参考にしながら一覧にしましょう。
個人再生を成功させるには、嘘をつかず約束を守ること。さらに弁護士に依頼するのが一番の近道です。自宅や裁判所から近い弁護士事務所から債務整理の実績が豊富なところを探し、無料相談などを通して相性を見ましょう。複数の事務所で迷ったときは、費用の見積もりをもらい、判断の材料にするのがおすすめです。