- 「事業が失敗して借金が増える一方…」
- 「事業でできた借金の解決方法は?」
個人事業主としてフリーランスで仕事をする場合や、起業して新規事業を立ち上げるなど、最近では既存の会社に属さず仕事をする人が増えています。事業をするにはどうしても資金が必要です。中には銀行から融資を受けるなど、借金して事業を始めたという人もいるでしょう。
そこでこちらの記事では、事業失敗による借金について、ケース別の返済義務や借金解消方法などを紹介していきます。さらに返済できないほどの借金が増えた場合にどうなるかや、それらの借金の解決方法についても解説。これから借金して事業を始める予定の方や、事業がうまくいかず借金を抱えている方は参考にしましょう。
事業と借金の関係・ケース別の返済義務について
まずは事業と借金との関係、ケース別の借金返済義務について解説していきます。
事業には借金がつきもの
新規事業を始めるにあたって、借金することは珍しいことではありません。各金融機関では、創業や起業する顧客を対象としたローンを展開しています。また日本政策公庫など政府系の銀行でも、独自に「新規会合資金制度」や「女性、若者/シニア起業家支援資金」などの融資制度を準備しています。
起業しようとする人は必ず必要な資金を貯めてからという必要もなく、家賃や備品の購入費といった事業のための借金はある意味仕方のないこと。また初めは事業がうまくいっていても、徐々に利益が減少し、事業継続のために追加で借り入れを行うというケースもあるでしょう。
事業失敗は借金増加に直結
事業の失敗は借金の増加に直結します。とくに自営業は会社員のように、定期的かつ安定した収入がありません。売上が支出を上回っていればいいものの、直近の新型コロナの影響や景気の後退などで売り上げが減少しても、オフィスの賃料や光熱費、人件費や仕入れなどの出費を抑えることは難しいでしょう。
そうなると毎月必要になる事業の運転資金はもちろん、生活費さえ確保できない恐れも。すでに融資を受けている場合には、毎月の返済にも影響が出てきます。最悪の場合には、返済が滞り借金の金額だけが増えていく可能性も大いにあります。
【ケース別】借金の返済義務について
こちらでは、ケース別に借金返済の義務の有無について解説していきます。
起業した場合
起業とは、新しい事業を考案して開始すること。個人事業主として起業する場合もあれば、法人を立ち上げる場合もあるでしょう。いずれのケースでも起業するには、1000万円前後の資金が必要だとされています。企業資金には会社設立費用や当面の運転資金、税金や当面の生活費が含まれます。
これらすべてを自己資金でまかなえるケースは少なく、ほとんどは融資や出資を受けて開業資金としています。企業資金を調達するには次のような方法があり、それぞれ返済義務の有無に違いがあります。
資金調達方法 | 特徴 | 返済義務の有無 |
---|---|---|
銀行融資 |
|
基本的に有り |
ノンバンクローン |
|
基本的に有り |
日本政策金融公庫からの融資 |
|
基本的に有り |
ファクタリング |
|
なし |
クラウドファンディング |
|
返済義務はないが、新サービスリリース時や新商品完成時には何らかの形で出資者に還元するケースが多い |
補助金・助成金 |
|
返済義務なし |
投資家からの出資 |
|
返済義務はないが株式の一部を譲渡するなどが必要で、経営権に影響あり |
個人事業主の場合
法人を作らず起業する場合も、会社に属さず独立して事業する場合も個人事業主となります。個人事業主の場合は、事業で生じた借金は個人事業主の借金とイコールです。借入したすべての借金について、返済義務があります。
法人の場合
法人を立ち上げて事業をした場合、借金返済義務は個人補償の有無によって変わってきます。銀行などの金融機関から融資を受ける場合、代表者の個人保証を付けるケースが一般的です。個人保証のある借入に関しては、個人事業主の借入同様に、保証人である代表者に返済義務があります。
事業継続が難しい場合、廃業して借入等を清算するという方法がありますが、清算してもなお借金が残るときには廃業後も返済義務が継続します。
借金が膨らみ経営が苦しくなるとどうなる?
事業の借金が増え経営が苦しくなると、一体どのようなことが起きるのでしょうか。
自分の身の回りのことを犠牲にしがち
事業失敗による借金が膨らんでいくと、自分の身の回りのことを犠牲にしがちです。衣食住といった生活する上で必須のこともないがしろにしてまでも、事業を継続することが収入につながると考えるように。そうした努力で収入が上向いて借金返済ができればいいのですが、うまくいかなかった場合は一体どうなるのでしょうか。
諸経費に圧迫される
事業を継続するためには、借金返済だけでなく毎月の家賃や光熱費、人件費や材料代などがかかります。このような諸経費に圧迫されて、借金がさらに膨らむということも大いにあるでしょう。家賃がより安いところに引っ越し、材料費を抑えるなどの努力も有効ですが、引っ越しや材料の調達の間もすべて自分の責任で行う必要があります。
そうなると時間的・精神的余裕がなくなり、経営者にどんどん負荷がかかってしまうでしょう。諸経費を抑えても借金返済の目途が立たない場合には、消費者金融などでキャッシングしてまで、何とか自身の家計と事業の経営をキープしようとします。
融資を断られる
事業の資金繰りが危なくなると、事業継続のために金策に走ることになります。しかし金融機関から融資や借金を断られるような段階にまで状況が悪化してしまうと、ここから挽回するのは至難の業です。ここまで来てしまうと、早急に方針を改める必要があるでしょう。
融資先を間違うと借金地獄に
いくら資金繰りが厳しいからといえ、闇金やソフト闇金といったところからお金を借りないようにしましょう。もし借入先が正規の貸金業者ではなく、闇金のような違法業者だった場合は、嫌がらせや執拗な取り立てにあう可能性が。
またこれらの業者はクレジットカードの現金化や闇バイトなど、違法もしくはグレーな資金調達方法をすすめてくるかもしれません。そしてこのような方法に一度でも手を出してしまうと、後に犯罪となるなどより深刻な事態に陥る恐れも。いくら切羽詰まっているからといって、このような資金調達方法には絶対に手を出さないようにしましょう。
闇金からうっかりお金を借りて、取り立てがひどいときには、こちらの記事を参考にしてください。
「闇金の取り立てをやめさせる方法|最適な相談先や対処法を知ってトラブルを解決!」
家族関係が悪化する
事業の経営状態が悪化すると、夫婦仲がギクシャクしたり家族間で喧嘩が起きやすくなります。さらに事業が悪化すると家族関係まで悪化し、最悪の場合離婚や一家離散といった事態になることも。事業は失敗してもリベンジすることができますが、大切な家族は失ってしまうと元に戻れません。
そうなる前に家族との関係を天秤にかけてまで事業を継続すべきか、一度立ち止まって冷静に判断すべきでしょう。
廃業せざるを得なくなる
借金返済ができず家賃や光熱費まで滞るようになると、廃業せざるを得なくなります。持ち家を住居兼事務所にしている場合でも、固定資産税を支払えなければ住宅の差し押さえを受けるかもしれません。仕入れが必要な事業は、仕入れるお金を確保できず事業を継続できなくなります。
借金の返済はもちろん、諸経費の支払いも滞るようなら、すでに経営状況は危機的です。これ以上借金を増やさないために、きっぱりと撤退することも考えましょう。
最終的に財産を差し押さえされる
借金や税金を滞納していると、最終的には財産を差し押さえられます。差し押さえの対象になるのは、次のようなものです。
- 土地や建物などの不動産
- 銀行預金
- 売掛金
- 個人の財産(個人事業主の場合)
- 設備機械
- その他事業継続に必要な財産
売掛金が差し押さえられれば、その債権者に借金を滞納していることがバレてしまいます。債権者によっては、借金滞納から3カ月程度で裁判所に訴えを起こす可能性があります。税金を滞納していた場合は、督促状が発送されてから10日経過すると法的に差し押さえが可能になります。
「まだ大丈夫だろう」と甘い考えで事業を続けていると、ある日突然財産が差し押さえられる可能性があることを覚えておきましょう。
裁判所から訴状が届いたときの対処法については、こちらの記事を参考にしましょう。
「裁判所から訴状が届いた…どうすればいい?適切な対処法&借金解決方法とは」
事業失敗でできた借金を解消する方法
事業失敗でできた借金があっても手遅れになる以前であれば、資金を調達したり支払いを猶予してもらったりして借金を解消できる可能性があります。こちらでは、事業者が利用できる主な資金調達先や猶予制度について紹介していきます。
公的支援制度を利用する
まずは、公的な支援制度の利用を検討しましょう。公的支援制度は条件にさえ当てはまれば個人事業主・法人問わず利用できる可能性があるからです。
税金の猶予制度
税金を滞納していて期限内に納めることが難しい場合は、税務署に相談すれば納付を猶予してもらえる可能性があります。最大1年間の猶予が可能で、猶予中は延滞税がかからず差し押さえを実行される心配もありません。「事業に著しい損失を受けた場合」などの条件がありますが、事業収入の悪化が深刻な自営業者なら利用できる可能性が大いにあります。
衛生環境激変特別貸付
日本政策金融公庫では「衛生環境激変特別貸付」という制度を実施しています。この貸付制度は、食中毒や感染症といった衛生環境の著しい辺かが原因で経営難になり、衛星水準の維持向上に支障をきたしている生活衛生関係営業者の経営安定を目的とした制度です。該当する業種は以下の通りとなっています。
- 飲食店
- 食肉販売業
- 美容店
- 理容店
- クリーニング店
- 旅館業
- 公衆浴場
- 興行場
衛生環境が激変した理由ごとに、それぞれ最大で1000万円の融資が可能。据置期間3年以内を含む15年以内が返済期間となっています。
参考:衛生環境激変特別貸付<特別貸付>|日本政策金融公庫
コロナ関連支援制度各種
新型コロナ関連の支援制度も充実しています。こちらは新型コロナに関連した支援制度各種です。時限的な制度もあり、内容が変更になる可能性が高いため、利用するときは必ずホームページ等で最新の情報を確認してください。
制度名 | 融資限度額 | 貸付期間 |
---|---|---|
新型コロナウイルス感染症特別貸付 (日本政策金融公庫) |
8000万円(別枠) | 設備資金・運転資金とも20年以内 |
危機対応融資 (商工組合中央金庫) |
3億円 | 設備資金20年以内
運転資金15年以内 |
生活衛生新型コロナウイルス感染症特別貸付 (日本政策金融公庫) |
8000万円(別枠) | 設備資金・運転資金とも20年以内 |
危機関連保証 (中小企業庁) |
普通保証2億円以内
無担保保証8000万円以内 無担保無保証人保証2000万円以内 |
保証協会によって異なる |
既往債務の借り換え(東京都など) | 実質無利子化の限度額:6000万円~
借換え限度額:8000万円~ |
各機関による |
小規模事業者経営改善資金
小規模事業者経営改善資金は、別名マル経融資ともいい、商工会議所や商工会より経営指導を受けている小規模事業者が、経営改善に使うための資金を最大で2000万円まで融資してもらえる制度。基本的に無担保、無保証で利用でき、返済期間は運転資金で7年以内(1年以内の据置期間含む)、設備資金で10年以内(2年以内の据置期間含む)です。
緊急経営安定貸付
緊急経営安定貸付は、小規模企業共済に加入している事業者を対象とした制度。経営環境の変化が原因により、一時的に売り上げが減少し資金繰りが難しくなったときに、経営を安定させる目的で資金を借り入れられます。借入限度額は掛け金の範囲内で50万円~1000万円(5万円単位)。
比較的低金利で借入できるので、資金繰りが厳しい方は共済相談室に問い合わせてみてはいかがでしょうか。
経営セーフティ共済
こちらも小規模企業共済に加入している契約者向けの制度です。取引先が倒産したときに無担保、無保証人で掛け金の10倍まで事業資金を借り入れられます。詳しくは「経営セーフティ共済」のページをご確認ください。
経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)
経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)は、日本政策金融公庫が実施する融資制度。融資限度額は4800万円(国民生活事業)・7億2000万円(中小企業事業)で、設備資金の返済期間は15年以内、運転資金の返済期間は8年以内となっています。
社会的経済的環境の変化といった外的要因で、一時的な売上の減少はあるものの、中長期的に発展することが見込める事業が対象。担保や保証人の有無は相談のうえで決められます。
不動産売却前提ローン
自分名義の不動産がある方は、不動産売却前提ローンの利用が可能です。不動産売却前提ローンとは、売却予定の不動産を担保に資金を借り入れ、不動産の売却資金で一括返済するローンです。売却までは毎月利息分の支払いで済むため、負担が軽く、急いで無理やり売却して損をするという心配もありません。
とはいえ融資を受けるまである程度の時間がかかり、利息の他事務手数料や登記費用、印紙代といった諸経費の負担があります。借入額が大きいと完済までに時間がかかるなどのデメリットもあるため、綿密に計画を立てる必要があるでしょう。
任意売却を検討
廃業を目の前にし、引っ越し資金や新生活を始める資金が不足しているという方は、ローン返済中の不動産の任意売却を検討してはいかがでしょうか。任意売却とは住宅ローンの返済が不能になったときに、ローンを借り入れている金融機関の了承のもと、一定の条件で不動産を売却することをいいます。
場合によっては残債が残ってしまう可能性もありますが、競売によって強制的に相場より低い価格で売却されるより、はるかに好条件で売却できます。また引っ越し費用や売却に伴う諸費用を、売却した中から負担してもらえるのもメリット。リースバックにより住み続けられる場合もあるため、不動産業者に確認してみましょう。
事業失敗による借金の返済が難しいときは…
事業がどうしてもうまくいかず借金返済が難しい場合は、次のような順序で対処していきましょう。
融資元の金融機関へ相談
金融機関から受けていた融資の返済が難しいときは、なるべく早めに融資元の金融機関へ相談してください。滞納前に相談できると、次のような対応を取ってもらえる可能性があります。
返済の猶予を依頼
滞納前に融資の相談をすると、返済の猶予をしてもらえることがあります。これは「リスケジュール」とも呼ばれ、その後1年ほどは利息のみの返済にしてもらうという方法です。毎月の返済額の負担が少ないうちに、経営を立て直し、再び返済できるようにします。
追加融資の申し込み
新たな事業さえうまくいけば挽回が可能という方は、事業計画書をもとに金融機関に追加融資を申し込むという方法がおすすめ。日本政策金融公庫でも追加融資を受けられる可能性がありますが、返済期間中の人は受けられないなどの条件も。審査に通るかは事業計画書の内容によるという面はあるものの、追加融資が受けられれば経営の立て直しに大いに役立つでしょう。
継続か廃業かを検討する
すでに借金を滞納していてリスケジュールができない、追加融資も難しいという場合は、事業継続か廃業かを真剣に検討する時期に来ています。とくに入ってくる売り上げよりも出ていくお金の方が継続的に多い状態では、廃業を考えた方がいいでしょう。
もしどうしても事業を継続したいという方は、価格変更はPR方法を変更するなどの戦略を練り直した上で、借金返済の目途が立つのかや事業の立て直しが可能かについて考えてください。ひとりで答えを出せないときは、税理士などの専門家や商工会議所の相談窓口などに決算書を持参して相談することをおすすめします。
会社の破産手続きを行う
様々な方法を検討、実践しても経営が上向きにならないときの最終手段は会社の倒産です。会社を倒産させるには「破産手続き」が必要。そして破産手続は、弁護士に依頼しなければなりません。会社の破産手続きの流れは以下の通りです。
- 弁護士に相談
- 債権者に破産予定だということを通知する
- 従業員を解雇し、テナントから立ち退く
- 申立書や必要書類の準備
- 弁護士を通じて裁判所へ「残財産のすべて」を納付
- 「破産申請書」を提出し破産の申し立てをする
- 裁判所による審議で「破産決定」となり倒産が決定
- 専任された破産管財人により財産を調査、売却
- 債権者集会で破産の経緯を説明
- 売却した財産で債権者への配当を行う
弁護士に相談してから裁判所に申し立てるまでの期間は3カ月~6カ月ほど。裁判所に申し立ててから手続きが完了するまでも平均して半年程度かかります。
超過債務が残った場合は債務整理
個人事業主の場合、会社を倒産させることはできないため、個人の資産や財産を処分して借金を返済する必要があります。それでもなお超過債務が残った場合には、債務整理の手続きを行うことを検討しましょう。債務整理とは、現状で支払えなくなった借金を減免してもらう手続きのこと。
個人の方が対象ですが、個人事業主や自営業者の方、法人の保証人となっていた経営者の方も手続き可能。債務整理には3種類あり、債務の大きさや返済能力に応じて最も適した方法を選べます。
超過債務が少額なら任意整理
超過債務が少額で元本程度なら完済可能な場合は、任意整理が適しています。任意整理は利息の減額や分割返済などの条件を債権者と直接交渉することで、3年~5年での完済を目指す手続き。任意整理を認めてもらうには安定した収入が必要ですが、アルバイトやパートなどでも認められる可能性があります。
ただ借金の金額によっては効果が限定的で、元本以上の減額は見込めないのがデメリット。すべての債務整理に共通するデメリットとしては、信用情報に事故情報として登録されることがあります。登録期間中5年~10年の間は、ローンが組めず新たにクレジットカードを作ることができません。
任意整理で減額できる利息については、こちらの記事を参考にしてください。
「任意整理で減額できる『将来利息』とは?カットできる条件や金額、事例を解説」
任意整理で効果が得られないときは個人再生
利息の減額程度では効果が得られないときは、個人再生を検討しましょう。個人再生は、裁判所に申し立てて再生計画案が認められることで、借金を大幅減額できる手続き。残った借金は3~5年かけて返済していきます。個人事業主の方は、比較的手続きが簡単な「小規模個人再生」を選択できます。
個人再生は5000万円までの借金に適用でき、借金総額を最大で1/10にまで圧縮できます。またローンを継続返済することで持ち家を維持できる「住宅ローン特則」があるのも特徴。
ただし任意整理と同様に、一定以上の安定した収入がないと再生計画案が認められず、手続きが複雑です。すべての債権者が対象となるので、保証人が付いた借金については、保証人に減額分の請求が行きます。
個人再生のメリット・デメリットについて知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
「個人再生のメリット・デメリットを徹底分析!注意点・利用条件・他の債務整理との違いは?」
減額しても返済が不可能なときは自己破産
任意整理や個人再生で減額しても返済ができないときは、自己破産一択です。自己破産とは、一定以上の財産を債権者への返済にあてることで、全ての借金の返済義務を免除(免責)してもらえる手続き。債務整理の中では最も強力な借金解決方法です。
自己破産には借金がすべてゼロになるという大きなメリットがある一方で、次のようなデメリットがあります。
- 信用情報に事故情報として登録される
- 国の機関誌である官報に住所や氏名が掲載される
- 生活に最低限必要な財産を除いてすべてを処分しなければならない
- 破産手続き中は旅行や引っ越しに制限がかかる
- 破産手続き中は郵便物が転送される
- 一定期間職業や資格に制限がある
事業の失敗で自己破産する場合、次のような注意点があります。
起業していると管財手続きになる
起業をしていた人や法人の個人保証をしていた代表者が自己破産する場合、「管財事件」で自己破産する必要があります。自己破産には、管財事件と同時廃止の二種類があり、財産を持たない個人は、費用がかからず時間がかからない同時廃止で手続きできます。
しかし事業をしていた人が自己破産する場合は、直近の帳簿の精査や事業に関するお金のやり取りに財産隠しがないか調査するために、破産管財人が選任される管財事件となります。破産管財人に支払う予納金が必要で、裁判所と弁護士に支払う費用が100万円近くなることも。
裁判所に支払う費用を工面できなければ自己破産できないので、事業に失敗した方であっても、できるだけお金に余裕があるうちに手続きを始めるようにしましょう。
自己破産にかかる費用や安く抑えるコツについて詳しくは、こちらの記事を参考にしましょう。
「自己破産にかかる費用相場・内訳を解説!安く抑えるコツや払えないときの対処法も紹介」
法人の場合は会社の破産と同時にする
会社を設立して起業した事業が失敗した場合は、会社の破産と代表者の自己破産を同時に申し立てます。会社という法人と、代表者という個人は別の人格であるため、法的には会社のみ破産させることも可能です。
しかし現実的には会社の債務に対して保証人になっている代表者がほとんどで、会社を破産させるとその債務の請求がすべて保証人に来てしまいます。そのため、保証人になっている代表者は、会社の破産と同時にするのが基本となります。
返済義務が免除されない借金がある
自己破産しても返済義務がなくならない借金があることも注意しなければなりません。ローンや融資、借入などの金融機関からの借金は、自己破産するとすべて返済の義務はなくなりますが、税金や国民年金など「非免責債権」といわれる借金は、個人再生しても減額できず自己破産しても返済義務は免除されません。
非免責債権には次のような種類があります。
- 税金
- 国民年金保険料
- 国民健康保険の保険料
- 養育費
- 婚姻費用
- 罰金・科料・過料・追徴金・刑事訴訟費用
- 雇用関係に基づく使用人の給与請求権や預かり金返還請求権
- 損害賠償金
これらの債権は債務整理の効果が得られないため、支払いが困難な事情を先方に説明し、減額や猶予の手続きができないか相談しましょう。
自己破産ができないケースについて気になる方は、こちらの記事を参考にしてください。
「自己破産ができない9つのケースとは?対処方法や自己破産に適さない人について解説」
まとめ
事業で失敗したことでできた借金でも、個人事業主や連帯保証人になっている代表者は返済の義務があります。借金が膨らんで経営が苦しくなると、自身の衣食住を犠牲にしてまで事業を継続しようとしますが、諸経費の支払いに追われたり追加融資を断られたりして次第に追い詰められ、最終的には廃業せざるを得ません。
直近の支払いを何とかすれば立ち直れる可能性がある場合は、公的な支援制度や日本政策金融公庫の融資制度を利用しましょう。また小規模企業共済の融資制度や新型コロナ関連支援制度、不動産の任意売却や不動産売却前提ローンなども検討してみては?
それでもどうしても借金返済が不可能なときには会社を倒産させ、自身も債務整理を検討しましょう。自分に最も適した債務整理方法は、弁護士に相談するのがベスト。現状がこれ以上悪化する前に、まずは無料相談を利用して、最適な方法を弁護士と一緒に探していきましょう。