個人再生の最低弁済額が知りたい!手続き別の計算方法や減額できないケース、滞納後の対処方法

個人再生の最低弁済額が知りたい!手続き別の計算方法や減額できないケース、滞納後の対処方法
個人再生の最低弁済額が知りたい!手続き別の計算方法や減額できないケース、滞納後の対処方法
  • 「個人再生の最低弁済額って?」
  • 「最低弁済額が返済できないときの対処法が知りたい」

債務整理の一つに借金を大幅減額できる「個人再生」がありますが、借金の総額や所有する財産によって手続き後の返済額が変わることをご存じですか?こちらの記事では手続きの種類別の返済額の計算方法を詳しく解説するとともに、減額できないケースも紹介。

個人再生後にやむを得ない事情で返済できなくなったときに取れる対処法もお教えするので、個人再生を考え中の方は必見です。まずは自分の「最低弁済額」を知って、本当に個人再生すべきか考えましょう。

 

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個人再生の「最低弁済額」とは

まずは個人再生の「最低弁済額」について解説していきます。

手続き後も最低限返済が必要な借金のこと

最低弁済額とは、読んで字のごとく最低限弁済(返済)が必要な金額のこと。個人再生は借金を大幅に減額できる債務整理方法ですが、減額した後の残りは手続き後も返済し続けなければなりません。最低弁済額の要件や基準は民事再生法第231条で定められているので、いくらでもいいという訳ではありません。

個人再生ではこの最低弁済額を「再生計画案」の中で決めます。同時に返済期間や返済方法も決められ、手続き後は再生計画案通りに分割返済していきます。

返済期間は原則3年、最長で5年

個人再生で減額された借金は、原則3年間で分割払いしていきます。逆に考えると最低弁済額を3年で分割払いできそうであれば、個人再生を使えるといっていいでしょう。3年の起算日は「再生計画認可決定確定日」から3年です。

支払いは毎月1回が基本となりますが、3年で完済できれば2カ月や3カ月に1回でも構いません。また次のような特別な事情があるケースでは、弁済期間を5年にまで延長可能です。

  • 3年では返済不可能な場合
  • 財産が多く最低弁済額が高額になった場合
  • 住宅資金特別条項(住宅ローン特則)を利用する場合

個人再生にかかる期間や返済までの流れについて詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしましょう。

「個人再生にかかる期間はどれくらい?申立から再生手続開始決定、返済までの流れと注意点」

住宅ローン特則を利用する場合は負債総額に含めない

個人再生には、住宅ローンを今まで通り支払い続けていくかわりにマイホームを手放さずに済む「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」という制度があります。この制度を利用する場合、住宅ローンは借金総額に含まれません。

最低弁済額は借金総額によって変動するため、住宅ローン特則を利用するかどうかで借金総額が変わってきます。下で詳しく計算方法を紹介するので、参考にしましょう。

手続きの種類によって計算方法が異なる

個人再生には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2種類があり、どちらを選択するかで最低弁済額の計算方法が変わってきます。まずはそれぞれの手続きの特徴などを紹介します。

小規模個人再生

小規模個人再生は、個人再生の基本となる手続きです。個人再生を申立てる人の約9割が小規模個人再生を選択しています。利用できるのは個人商店や個人で事業をおこしている個人事業主、パートやアルバイト、会社員などです。

小規模個人再生では再生計画案を認可する場合に、債権者による書面決議が行われるのが特徴。再生計画案に反対の債権者が、債権者数の総数で半数以上いるケースや、借金総額の1/2を超える場合には、再生計画案が認可されません。とはいえ給与所得者等再生よりも最低弁済額を低く抑えられる可能性が高いため、給与所得者等再生を利用できる方でも小規模個人再生を選ぶケースがあります。

給与所得者等再生

給与所得者等再生は会社員や公務員など、安定した収入が確実に入る方が利用できる個人再生手続きです。民事再生法第239条では、毎月の収入の変動幅が年間で20%以下と定めています。また小規模個人再生とは異なり、債権者による決議が不要なので手続きがスムーズに進む可能性が高いでしょう。しかし小規模個人再生と比べると最低弁済額の計算が複雑で、高額になる場合があります。

個人再生の種類ごとの必要書類や書類の入手方法は、こちらの記事を参考にしてください。

「個人再生の流れと必要書類とは?手続きにかかる期間と書類の入手方法も解説!」

【手続き別】最低弁済額の計算方法

では実際に手続きの種類別に、最低弁済額の計算方法を紹介していきます。個人再生を検討する場合は、前もって借金がいくらまで減額できるかを知る必要があります。そのためにも正しく計算して判断の材料にしましょう。

小規模個人再生の最低弁済額は①と②の多い方

小規模個人再生では、次に紹介する①と②の項目のうち、金額の多い方が最低弁済額になります。

①最低弁済基準

最低弁済基準額は、借金の総額(基準債権額)に応じて算出される最低弁済額のこと。再生手続開始前に加算された利息や遅延損害金も基準債権額に含みます。ただし個人再生を申立てるときに支払った申立て費用や税金などは含まれません。住宅ローン特則を利用する場合は、住宅ローンの金額を除いた借金の総額で計算します。

基準債権額に応じた最低弁済額は以下の通りです。

基準債権額 最低弁済額
100万円未満 借金総額の全額
100万円以上500万円未満 100万円
500万円以上1500万円未満 基準債権額の1/5
1500万円以上3000万円未満 300万
3000万円以上5000万円未満 基準債権額の1/10

例えば600万円の債権額がある場合は、最低弁済額が120万円になります。4000万円の場合は400万円に減額され、借金の総額が高額になる程、減額される割合も多くなります。

②清算価値保証基準

清算価値保証基準とは、債務者が財産を保有している場合に、債権者に配当される財産の価値(清算価値)に応じて算出される最低弁済額のこと。というのも、債権者に分配される清算価値よりも最低弁済額の方が高額でなければならないという原則(民事再生法第174条)があるためです。

もし債務者が所有している財産の価値よりも借金が減額されてしまうと、債務者を破産させて財産を分配した方が債権者にとって得になります。そうならないために、所有している財産よりも多くの金額を債権者に支払うことで納得してもらうという制度です。実際には自己破産のように財産を処分する必要はありませんが、次のような財産は清算価値として最低弁済額を算出する材料となります。

  • 現金(99万円を超える部分)
  • 預貯金(※20万円を超える部分)
  • 不動産(土地・建物)
  • 生命保険の解約返戻金(※)
  • 自動車の査定額(※)
  • 退職金見込み額の1/8
  • 有価証券(時価で算出)
  • その他20万円以上の価値のある財産

20万円未満の財産は清算価値に含まれません。住宅ローンが残っているケースでは、ローン残額よりも住宅の清算価値の方が高ければ、清算価値として加算されます。財産の査定額や時価の算出方法など詳しくは、債務整理を依頼する弁護士に確認しましょう。

給与所得者再生の最低弁済額は①・②・③のいずれか多い方

給与所得者等再生の最低弁済額は、上で示した①と②の他に③の可処分所得基準を比較したときに、最も高い金額が採用されます。①と②の算出方法は、小規模個人再生と同じです。

③可処分所得基準

可処分所得基準は、毎月の給与から社会保険料や税金、本人と被扶養家族の最低生活費を控除した金額の2年分で算出されます。

直近2年分の収入合計額-直近2年で支払った所得税額・住民税額・社会保険料の合計額-債務者と被扶養者の最低生活費の2年分の金額

収入は毎月の給与とボーナスの合計ですが、児童手当や児童扶養手当、その他の就学援助金は含みません。本人と被扶養家族の最低生活費は、お住いの市区町村ごとに定めている「生活保護基準」に基づいて、以下の費用の合計額とされています。

  • 個人別生活費
  • 世帯別生活費
  • 冬季特別生活費
  • 住居費
  • 勤労必要経費

家族構成や被扶養家族の人数、居住地によって多少の変動がありますが、おおむね生活保護受給者と同レベルの生活費と考えてください。可処分所得基準は個別に計算していくわけでなく、裁判所が提示している一覧表に基づいて、属性に応じて一律に算出します。

日本弁護士連合会が提供している個人再生手続参考書式で、事前に大まかな数字を計算することが可能です。上の計算式で算出する可処分所得基準での最低弁済額は、①最低弁済基準や②清算価値保証基準で計算した額よりも高くなる場合が多く、給与所得者等再生では小規模個人再生よりも最低弁済額が高くなるケースがよくあります。

現在返済中の住宅ローンがあるケース

前項で住宅ローン特則を利用する場合は、住宅ローンの額を借金総額に含めないといいましたが、ここでは具体的な計算方法や住宅がどうなるかについて解説します。

住宅ローン特則を利用する場合

例えば住宅ローンが2000万円、その他の借金が600万円あるケースで住宅ローン特則を利用する場合、住宅ローンを含めない金額が借金総額になるので、600万円の1/5の120万円が最低弁済額になります。住宅ローンは今まで通り返済することになるので、最低弁済額にプラスして住宅ローンの支払いが発生します。しかしその代わりマイホームには引き続き住み続けられることになります。

住宅ローン特則を利用しない場合

一方ローン返済中の住宅がありながら住宅ローン特則を利用しない場合、借金総額である2000万円+600万円の計2600万円が基準債権額になります。最低弁済額は住宅ローンを含めて300万円ということに。

ただしこの場合はローン契約している金融機関により抵当権が設定されている不動産を処分して、優先的に住宅ローンの返済にあてます。つまり住宅はローン会社によって売却されてしまうため、個人再生の手続き後はその家に住み続けられなくなるという訳です。

個人再生で住宅ローンがどうなるか?については、こちらの記事を参考にしてください。

「個人再生で住宅ローンはどうなる?特則適用の条件・巻き戻し・手続き後のローンについて」

個人再生で借金が減額できないケース

個人再生で借金が減額できないケースはいくつかあります。自分のケースに当てはまっていないかチェックしましょう。

借金が100万円以下または5000万円以上

借金の総額が100万円以下の方や5000万円以上の方は、借金が減額できないかそもそも申し立てを許可されません。上で説明した通り、借金の総額が100万円以下だと最低弁済額は借金の総額とイコールになります。従って大幅減額が可能な個人再生のメリットが得られないという訳です。

また借金総額が5000万円以上の方は、そもそも個人再生を利用できません。民事再生法では、個人再生ができる借金総額の限度が5000万円と定めているためです。5000万円以上の場合は、自己破産を検討するか一般の「民事再生」という手続きを選ぶ必要があります。

所有財産額が多い

所有している財産の額が大きいと、個人再生をしても減額しにくくなります。例えば借金総額が500万円でも、財産の総額が700万円だと、最低弁済額が700万円になってしまうため。債権者からすれば「財産を売却すれば借金を返済できるのでは?」と思うのは当然で、個人再生の手続きの決まりからもそうなっています。

どうしても財産を処分せずに借金を減額したい場合は、任意整理がおすすめ。任意整理なら財産を処分することなく、債権者との直接交渉で利息や遅延損害金利息を減額できます。また個人再生と同様に3年~5年で返済していくので、場合によっては返済期間を延長できる可能性があります。

可処分所得が高額すぎる

給与所得者等再生を利用する方は、可処分所得が高額過ぎると借金が減額できません。前項で解説した通り、給与所得者等再生では、最低弁済基準・清算価値保証基準・可処分所得基準のうち最も金額が高いものを最低弁済額にするため。

可処分所得基準の算出は自分でも可能ですが、計算方法が複雑なため間違ってしまうリスクも。正確な金額を出すには、弁護士などの専門家に依頼しましょう。

個人再生が失敗した

個人再生が様々な理由で失敗してしまうと、借金が減額されません。個人再生の成功率は令和3年の統計で小規模個人再生が92.8%、給与所得者等再生が91.3%と高い割合ですが、それでも約7%の人が失敗しています。個人再生が失敗する理由は、以下の通りです。

  • 個人再生申立の要件を満たしていない
  • 申立時に必要な書類の不備・不足
  • 期日までに予納金を納められなかった
  • 再生計画の提出期限に間に合わなかった
  • 再生計画の内容に無理がある
  • 借金総額や返済額の計算ミス
  • 個人再生の手続きに不正があった
  • 債権者の過半数から反対された(小規模個人再生)
  • すでに債権者から破産を申し立てられた
  • 個人再生後の返済滞納による再生計画の取り消し

個人再生が失敗しても2度目の個人再生は可能ですが、前回失敗した点を改めないと難しいでしょう。また給与所得者等再生は、再生計画が取り消されてから7年間は同様の手続きが利用できないので注意しましょう。

参照:第109表 再生既済事件数-事件の種類及び終局区分別-全地方裁判所|裁判所

税金や罰金などは減額できない

税金や罰金などは、個人再生しても減額できません(民事再生法第229条)このように債務整理しても減額できない借金は「非免責債権」といい、次のような種類があります。

  • 税金
  • 国民年金保険料・国民健康保険料
  • 罰金・科料・追徴金
  • 刑事訴訟費用
  • 養育費・婚姻費用
  • 悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
  • 故意または重大な過失により加えた人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権

これらはたとえ払いきれずに滞納していても、個人再生で減額することは不可能です。個別に自治体役場や税務署などと分納の交渉をすることをおすすめします。

最低弁済額が支払えなくなったときの対処方法

個人再生の手続き後、再生計画に基づく最低弁済額が支払えなくなったときは、次のような対処方法を取りましょう。

弁護士に相談

事情があってどうしても返済ができそうもないときは、滞納してしまう前に必ず手続きを依頼した弁護士に相談しましょう。これから紹介する再生計画の延長やハードシップ免責などの方法を検討し、あなたのために力を尽くしてくれるはず。

「怒られたらどうしよう」などと心配する必要はありません。もし「今月分の返済、難しそうだな」と思ったら、なるべく早めに弁護士に連絡してください。

債務整理を弁護士に依頼したい場合は、こちらの記事を参考にして安心して任せられる弁護士を探しましょう。

「【相談前・相談時】債務整理を依頼する弁護士の選び方を解説!失敗しない6つの注意点も紹介」

再生計画の変更・延長

個人再生後の返済がどうしても難しい方は、最長で5年まで延長が可能です。やむを得ない事情で最低弁済額が払えなくなった場合、裁判所に「再生計画変更申立書」を提出し認可されれば、最大で2年の支払い期間の延長が可能になるため。

最低弁済額の減額が認められる訳ではありませんが、3年から5年へ返済期間を延長することで、毎月の返済額を減らすことができます。再生計画の変更が認められるのは、次のようなケースです。

  • 勤務先の倒産や業績悪化による著しい収入減
  • 債務者本人の病気やケガによる長期入院
  • 債務者の家族の病気やケガによる長期療養

このような事情が起こり、それが長期的に継続する可能性が高い場合に認められます。

ハードシップ免責

すでに最低弁済額の3/4を返済している方に限り、「ハードシップ免責」という制度が利用できます。ハードシップ免責とは要件を満たした債務者が裁判所に申し立て、免責の決定を得ることで残債をすべて免除できる制度です。ハードシップ免責が利用できる要件は以下の通りです。

  • 再生計画に基づく最低弁済額の3/4以上を返済済みであること
  • 債務者がその責めに帰すことができない事由により、再生計画の遂行が極めて困難であること
  • 債権者の一般の利益に反するものでないこと
  • 清算価値保証の原則を満たしている

「責めに帰すことができない事由」というのは、債務者本人に責任がない理由のこと。例えばリストラによる収入減、ケガや病気などによる失業、交通事故や病気での入院、個人事業者が天災によって設備を喪失し事業継続が難しくなったなどの理由です。

またハードシップ免責を申し立てた時点で、清算価値よりも多い金額を返済済みというのも条件です。ハードシップ免責の対象には住宅ローンも含みますが、この制度を利用するとローン返済が免責できる代わりに抵当権を実行されて住宅を手放すことになるので気を付けましょう。

さらにハードシップ免責で残債を免除した後7年間は、自己破産や給与所得者等再生の申し立てが認められません。

自己破産を検討する

再生計画の延長やハードシップ免責が認められなかった方は、自己破産を検討してください。自己破産は個人再生よりも強力な借金解決方法で、一定上の財産を手放す代わりに、借金をすべて免責(ゼロに)できる手続きです。収入減や失業などにより、60回(5年)の分割にしても返済が難しい場合も検討すべきでしょう。

ただし自己破産には、一定上の財産(現金・預貯金・不動産・自動車など)を手放す必要があります。また破産手続き中は一定の資格や職業に制限がかかるので注意が必要。担当の弁護士に相談すると、自己破産に切り替える手続きをしてもらえるので、一度相談してみましょう。

個人再生から自己破産へ切り替えるときの手続き方法や、主な違いについてはこちらの記事を参考にしてください。

「個人再生と自己破産の違いとは?手続き・条件の比較や切り替え方法を教えます!」

まとめ

個人再生の最低弁済額は手続きの種類ごとに算出方法が異なり、借金総額や所有財産の金額、可処分所得などの基準で最も高い金額となります。また住宅ローン特則を利用するかどうかでも最低弁済額が変わってきます。

個人再生で減額できないケースには、借金金額が100万円以下もしくは5000万円以上、清算価値や可処分所得が高すぎる場合、個人再生に失敗したなど様々あります。また手続き後の返済を滞納した場合も、借金が手続き前の金額に戻ってしまいます。

そのようなときは返済計画の変更やハードシップ免責などの制度を利用できます。また自己破産を検討することも可能。いずれの場合もなるべく早いタイミングで弁護士に相談してください。最低弁済額の算出は自分でも可能ですが、計算方法が複雑で間違う可能性が高いため、必ず債務整理に強い弁護士に調べてもらいましょう。

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