- 「任意整理で住んでいる賃貸に影響はある?」
- 「任意整理後も賃貸の契約ができるか知りたい」
任意整理をすると賃貸物件が借りられない、住んでいる人は退去しなければならないという噂を聞いたことはありませんか?果たして本当にそのようなことはあるのでしょうか。こちらの記事では債務整理と賃貸との関係について、影響の有無や影響を最小限にする方法を解説。
さらには任意整理と賃貸について、よくある疑問や質問にもお答えしていきます。これから任意整理を考えているが、すでに賃貸に住んでいる、もしくは任意整理後に賃貸を契約したいとお考えの方は参考にしましょう。
すでに賃貸に住んでいる場合
すでに賃貸に住んでいる人が任意整理した場合、どのような影響があるのでしょうか。
任意整理で退去させられることはない
基本的に任意整理したことが原因で、すでに住んでいる賃貸物件を退去させられることはありません。任意整理すると信用情報機関にある個人情報費事故情報として登録されるため、以後は新たにローンを組んだりクレジットカードを作ることができなくなります。そのようなことが賃貸契約にも及ぶと誤解して、「退去させられるのでは?」と心配になる人がいるようです。
しかし仲介した不動産会社や貸主は、信用情報機関にアクセスすることができないため、借主が任意整理したことを知る術がありません。また家を借りて住んでいる人は、正当な理由なく家を追い出されないように法律できちんと保護されています。任意整理したからといって、それだけが理由で退去させられる心配はないのでご安心を。
基本的に更新にも影響がない
賃貸物件は2年に一度の契約更新があるケースが多いですが、更新のタイミングで契約を解除させられることも基本的に有りません。保証会社が信販系だと契約更新時に信用情報をチェックされて任意整理したことを知られる可能性があるものの、これまで家賃を遅延せずに支払っていた場合は、継続して契約ができます。
家賃支払いをクレジットカード以外に変更の必要
家賃の支払いをクレジットカードに設定している方は、任意整理後に支払い方法の変更が必要です。任意整理が事故情報として登録されてしまうと、現在使えているクレジットカードも更新時に解除されてしまうため。知らずにクレジットカード支払いのままにしていると、家賃の引き落としができなくなってしまうでしょう。
任意整理の対象から外したクレジットカードでも、一定期間はカードの更新が難しくなる可能性があります。できれば任意整理の前に「家賃の支払い方法を変更したいのですが」と、銀行振込や口座引き落としなどの方法に変更しましょう。
任意整理のメリット・デメリット、生活への影響を最小限にする方法に関しては、こちらの記事を参考にしてください。
「任意整理のメリット・デメリット|整理後の生活への影響を最小限にする方法とは?」
契約を解除される可能性があるケース
基本的に任意整理しても賃貸契約を解除される心配がないものの、次のようなケースに当てはまるときは、場合によって契約を解除される可能性があるでしょう。
すでに家賃を滞納している
任意整理とは関係なく、すでに数カ月の家賃を滞納している場合は、賃貸契約を解除される可能性があります。1カ月程度遅れたくらいでは問題ありませんが、3カ月以上家賃を滞納すると、家主側からの賃貸借解除が認められやすくなるため要注意。
貸主や管理会社から「契約解除予告状」などの通知が届いたら、すぐに連絡を入れ滞納分の家賃を支払わないと、賃貸契約を解除され強制退去となる可能性があるので気を付けましょう。
滞納した家賃を任意整理した
滞納した家賃を任意整理した場合、賃貸契約を解除される可能性があります。任意整理の対象を消費者金融からの借金やクレジットカードのキャッシングにしたのであれば直接の退去理由にはならないものの、滞納した家賃を任意整理すると退去理由として認められてしまうため。
他の住まいを確保できる方はいいですが、住まいを失い可能性がある方は、滞納家賃以外の借金を任意整理の対象にするようにしましょう。そして滞納した家賃は、なるべく早めに支払うようにすべきです。
任意整理で減額されない原因と理由については、こちらの記事を参考にしましょう。
「任意整理で減額されない原因と理由|減額できないときの対処法とは?」
保証会社と同じ信販会社の借金を任意整理した
保証会社と同じ信販会社の借金を任意整理した場合、手続きしたことが保証会社にも分かってしまうため、更新のタイミングで契約を解除される恐れがあります。これは事故情報として登録されるだけでなく、社内で保有される「社内ブラック」にも登録されるため。
任意整理していると契約更新のタイミングで、連帯保証人を付けるように言われたり、別の保証会社で再度審査を受けるように言われたりします。可能であれば保証会社と同じ信販会社からの借金は、任意整理の対象から外しておいた方が安全です。
任意整理後に新たに賃貸契約をする場合
任意整理の手続きが終わった後で賃貸物件を契約しようとする場合、物件を借りられないケースと借りられるケースがあります。
物件を借りられないケース
まずは物件を借りられないケースについて、詳しく見ていきましょう。
家賃の支払方法がクレジットカードのみの物件
家賃支払いがクレジットカードのみの物件の場合、いずれクレジットカードが使えなくなるため、契約は難しいでしょう。新規で契約する場合に限らず、すでに住んでいる場合でも、クレジットカード支払い限定の物件であれば契約を継続できなくなる可能性が高いでしょう。
ただ全国的に見ると家賃支払いをクレジットカードのみにしている物件数はそう多くありません。物件を探すときに家賃の支払い方法まで確認し、クレジットカード払いでない物件を選ぶようにしましょう。
任意整理するとクレジットカードはどうなるかについては、こちらの記事を参考にしてください。
「任意整理をするとクレジットカードはどうなる?代替できるカード決済や新規発行方法を解説」
保証会社が信販系
新たに物件を借りるとき、保証会社との契約が必須で、なおかつ保証会社が信販系だと契約ができない可能性があります。上で説明した通り、信販系の保証会社は信用情報で入居者を審査するため。保証会社との契約が成立しないと賃貸契約も結べません。
ちなみに信販系の保証会社には、次のような種類があります。
- セゾンの家賃保証・Rent Quick(クレディセゾン)
- アプラス家賃サービス
- JACCSセキュアレントシステム
- ライフあんしんプラス
- Room ID(エポスカード)
- オリコフォレントインシュア
- セディナ家賃決済サービス
- イントラスト
- SBIギャランティ
- 日本レンタル保証
物件を紹介してもらった不動産会社に確認すると、保証会社の名前が分かります。上に挙げた保証会社との契約が必須な物件は避けるようにしましょう。
加盟保証会社で情報共有している場合
信販系の保証会社でないものの、加盟保証機関で情報共有していると審査に通らない可能性があります。いくつかの保証会社が加盟している団体には、次のような種類があります。
- 日本賃貸住宅管理協会
- 全国賃貸保証業協会(LICC)
- 賃貸保証機構(LGO)
- 日本賃貸住宅管理協会
- 家賃債務保証事業者協議会
- 全国賃貸管理ビジネス協会
- 賃貸保証機構
- 全国賃貸管理ビジネス協会
- 全国賃貸不動産管理業協会
例えば「全国賃貸保証業協会(LICC)」に加盟している家賃保証会社は、代位弁済等の情報を共有しているため、過去に家賃を滞納し保証会社が代位弁済したという記録があると、加盟している保証会社の審査に落ちてしまいます。
情報の登録期間は、保証委任契約終了時から5年間、家賃滞納があった場合は債務が消滅してから5年間です。この間は、同じLICCに加盟している保証会社との契約は避けるのがベスト。とはいえ、すべての賃貸保証会社が上記団体に加盟している訳ではありません。家賃を滞納すると必ず記録が残るという訳ではありませんが、こうした懸念があることを覚えておきましょう。
任意整理しても借りられるケース
一方で任意整理していても、新たに賃貸を借りられるケースがあります。
保証会社との契約が必要ない物件
保証会社との契約が必要なかったり、必須でない物件は、任意整理後も賃貸契約が可能です。保証会社が必要ない物件の多くでは、連帯保証人を立てるように要求されるため、連帯保証人になってくれそうな人を探してください。
保証会社との契約も連帯保証人も必要がない物件も稀にありますが、数はそう多くありません。また築年数が相当経過している、交通の便が悪いなど、何かしらの問題を抱えている可能性があります。物件としての条件もあわせて、しっかり確認してから契約するようにしましょう。
保証会社が信販系でない物件
保証会社が信販系でない物件も、任意整理後に問題なく借りられます。上で紹介した賃貸保証会社の団体や、次のような保証会社は信販系でないので、審査に通る可能性が高いでしょう。
- 日本セーフティー
- 全保連
- エルズサポート
- カーサ(Casa)
- 日本賃貸保証(JID)
- ジェイリース
- フォーシーズ
- ニッポンインシュア
- ルームバンクインシュア
信販系の保証会社は信用情報の内容で審査しますが、信販系以外の保証会社は信用情報機関に加盟していないため、そもそも信用情報を閲覧できません。もちろん任意整理したことを信用情報から知ることができないので、任意整理を理由に審査に落ちる心配はないでしょう。
公営住宅
都道府県が運営している公営住宅なら、信用情報を利用した審査を行わないので、任意整理後も部屋を借りられるでしょう。このような公営住宅は、自治体が定めた収入基準を下回っていることが入居条件になっているため、比較的家賃が安いのが特徴。
また入居希望者が多い住宅は抽選になる可能性が高いため、希望通りの物件に入居できない恐れも。収入基準や抽選の有無は自治体や物件によって異なります。詳しくはお住いの各自治体にお問い合わせください。
任意整理による影響を最小限にするポイント
任意整理による賃貸への影響を最小限にするには、次にあげるポイントに注意しましょう。
家賃のクレジットカード支払いは早めに変更
家賃の支払いにクレジットカードを指定している方は、なるべく早めに支払方法を変更しましょう。口座振替もしくは銀行振り込みに変更できるでしょう。ただし銀行のローンや借り入れを任意整理した方は、銀行小座を凍結される可能性があります。自分の債務整理についてよく確認し、支障のない方法を選択してください。
家賃は3カ月以上滞納しない
家賃は3カ月以上滞納しないように気を付けてください。任意整理の事実だけで賃貸契約を解除することは難しいですが、3カ月以上の家賃滞納がある場合は、裁判などで契約解除が認められやすいため。また家賃を滞納し、保証会社が代位弁済を行った過去がある方は、物件や保証会社によってはその後の家探しに影響が出ることは避けられません。
家賃滞納分は任意整理しない
すでに滞納している家賃がある方は、滞納家賃を任意整理しないようにしましょう。家賃滞納分を任意整理してしまうと、住んでいる家を追い出される可能性があるため。任意整理の手続きを開始すると、全てが終了するまで半年前後かかります。家賃滞納分を任意整理するということは、さらに半年家賃を支払わない状態に。
任意整理の最中に貸主が裁判所に退去を求める訴えを起こせば、ほとんどのケースでその訴えが認められるでしょう。結果的に住んでいる家からは強制的に退去となり、荒らしい住まいを探す場合は、相当限られた条件で探すしかなくなります。
不動産会社を味方につける
任意整理した後で賃貸をスムーズに契約したいという場合は、不動産会社を味方につける方法がおすすめ。正直に任意整理したことを話し、自分の条件でも契約できる賃貸がないか相談できれば、任意整理していても審査に通りやすい物件を一緒に探してもらえるため。
必ず任意整理のことを話す必要はありませんが、後から発覚して審査に落ちることを考えれば、あらかじめ伝えていた方がいいでしょう。不動産会社には守秘義務があるので、任意整理したことを不動産会社以外の人にバレる心配はありません。
任意整理のことを正直に伝えること以外に、内覧時に清潔な身なりをする、常識的なふるまいを心がけるなど、「安心してこの人に貸せる」と思わせることも大切です。
不安な点は弁護士に相談
任意整理後の賃貸契約などについて、不明な点や不安な点がある場合は、手続きを依頼した弁護士に相談しましょう。法律の専門家である弁護士が、あなたの生活により影響の少ない方法を見つけてくれます。また近いうちに賃貸に引っ越そうと思っている人は、そのことも話すといいでしょう。
任意整理と賃貸についてよくある疑問・質問
こちらでは任意整理と賃貸について、よくある疑問や質問にお答えしていきます。
任意整理すると賃貸の保証人になれない?
自分が賃貸を契約する場合ではなく、家族や親せきが賃貸を契約するときに「連帯保証人になってほしい」と依頼されたら、保証人になれるのでしょうか。結論からいうと、賃貸契約の保証人になることは可能です。ただし本人名義の契約と同様、信用情報のチェックがある場合は、保証人になれないケースがあるでしょう
なお住宅ローンや奨学金等、借り入れの保証人になることはできません。
任意整理中は引っ越しできない?
「任意整理の手続き中は引っ越しできない」という噂を聞いたという方がいるかもしれません。しかしこの情報は誤りです。任意整理前や手続き中、任意整理が終わった後でも引っ越しに制限がかかることは一切ありません。債務整理で引っ越しに制限がかかるのは、管財事件を選択した自己破産のみ、こちらと勘違いして伝わった可能性が高いでしょう。
管財事件で自己破産すると、破産管財人が破産理由や所有している財産について調査する必要があります。そして破産手続き中は常時居所を明らかにしておかなければならず、破産法により勝手に旅行に行ったり引っ越しをすることができません(居住地の制限)。とはいえ、裁判所(東京地方裁判所の場合は破産管財人)に申請して許可を得られれば、破産手続き中でも引っ越しや旅行も可能です。
任意整理で退去を求められたらどうすればいい?
任意整理が理由で今住んでいる賃貸物件から退去を求められたら、早めに弁護士に相談すべきです。賃貸契約をしている物件から出ていくように言われた場合でも、必ずそれに従う必要はありません。貸主が一方的に契約を解除するには、長期間に及ぶ滞納など正当な理由が必要。
「クレジットカード支払いができなくなった」「何となく今後の家賃支払いが心配」などのような理由で、契約解除が認められる訳はありません。ただ何も対処しないでいると、最終的に裁判を起こされる恐れが。この段階になると簡単には事が収まらないため、なるべく早い段階で弁護士に相談してください。
まとめ
すでに賃貸に住んでいる方が任意整理しても、それを理由に退去を求められることはありません。しかし更新のタイミングで信用情報をチェックされ、保証会社を変更するように求められる可能性があります。また家賃をクレジットカード払いにしている方は、早めに支払い方法を変更するのがベスト。
任意整理後に賃貸を契約したいと考えている方は、信販系の保証会社が付く物件や、クレジットカード払い必須の物件は避けてください。不動産会社を味方につけると、契約が問題なくでき、希望に合った物件が見つかりやすいでしょう。条件が合えば、保証会社が付かない物件や公営住宅も候補に入れてみてはいかがでしょうか。
任意整理の手続き中は引っ越しに制限がかからず、賃貸の保証人になることもできます。賃貸の契約で不安なことがある場合や、任意整理が理由で契約を解除されそうな場合は、早めに弁護士に相談するのがベスト。法律の知識や債務整理の経験に基づいて、より依頼人の利益になるように動いてくれるでしょう。