- 「奨学金の返済が厳しい…自己破産できる?」
- 「奨学金を返せないときの救済措置が知りたい」
大学進学率が6割に近づいている今、奨学金を借りて大学に通っている人も多いのではないでしょうか。奨学金の返済は大学卒業後から始まりますが、何らかの理由で奨学金を返せなくなる人は少なくありません。奨学金の他にも返済できないほどの借金があると、自己破産を考えてしまうことも。
そこでこちらの記事では、奨学金を自己破産できるかについてや奨学金と自己破産にまつわる現状、奨学金を滞納するとどのようなことが起こるかについて解説。さらに自己破産をする前に利用できる救済措置についても紹介します。「もう自己破産しかない…」と思い詰めてしまう前に、できることから初めていきましょう。
奨学金を自己破産できる?
まずは奨学金を自己破産できるかについて、条件や現状について解説してきます。
奨学金を自己破産することは可能
結論から申し上げると、奨学金を自己破産することは可能です。自己破産とは裁判所に申し立てて、「免責許可決定」を受けることで、全ての借金の返済義務を免除(免責)できる手続き。破産法に基づいて手続きが行われる、法律で認められた制度です。
奨学金も借金の一種であることに変わりないため、次のような条件を満たしていれば、奨学金を自己破産してゼロにすることが可能です。
奨学金を返せないのは甘えなのではとお悩みの方は、こちらの記事を参考にしましょう。
「奨学金が返せないのは甘え?滞納リスクと返せないときの対策を知り、一日も早く生活を立て直そう!」
支払不能状態であること
個人が自己破産する場合の条件は、借金を返済できない「支払不能状態」であるということ。破産法では支払不能を次のように定義しています。
債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態
一時的な失業で支払いができない状態や、収入がなくても財産があるという状態では、支払不能状態とは言えないと判断されて自己破産ができない可能性が高いでしょう。
非免責債権ではないこと
借金が非免責債権でないことも、自己破産で免責できる条件です。非免責債権とは、自己破産手続を経ても返済義務を免れることができない債権のこと。例えば次のような債権が非免責債権に該当します。
- 税金・社会保険料
- 悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
- 故意または重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権
- 婚姻費用
- 養育費
- 従業員の給料・預り金の返還請求権
- 罰金等
このような債権は、たとえ自己破産しても支払い義務は免除されません。一方で奨学金は非免責債権に該当しないので、自己破産によって免責可能です。
免責不許可事由に該当しない
免責不許可事由に該当しないことも、自己破産で借金をゼロにできる条件です。破産法では、破産者に一定の事情(免責不許可事由)があるときには、免責を認めない扱いとなっています、免責不許可事由は全部で11項目あり、財産隠しや特定の債権者にのみ返済する行為、浪費やギャンブルが理由の借金が該当します。
奨学金は学費や生活費のために借りたお金なので、基本的に免責不許可事由に該当しません。
奨学金を自己破産した人の割合
奨学金を自己破産できることが分かったところで気になるのが、一体どの位の数の人が奨学金を自己破産しているかということではないでしょうか。奨学金事業を行っている日本学生支援機構の調査によると、平成28年度の奨学金返還者本人(約410万人)のうち、新たに自己破産となった数は2,009件となっています。
日本全体の自己破産の割合は、0.06%で、奨学金を自己破産した割合0.05%とさほど乖離がないとしていますが、本人以外の保証人と連帯保証人が自己破産した数が含まれていないので、実態はそれよりも多いと考えられます。
過去のデータを見ると、2016年度までの5年間で奨学金を自己破産した人の数は、延べ人数で15,338人、内訳は本人が8,108人で、(連帯)保証人が7,230人という結果です。日本全体の自己破産が減る中、奨学金関連の自己破産は増加傾向にあることが分かります。
参照:「奨学金返せず自己破産」増える|朝日中高生新聞・奨学金事業への理解を深めていただくために|日本学生支援機構
奨学金を自己破産する人が増えた理由
ではなぜ奨学金を自己破産する人が増えたのでしょうか。次の4つの理由からと考えられます。
貸与型奨学金利用者の増加
奨学金を自己破産するする人が増えたのは、貸与型奨学金利用者が増加したからが理由の一つです。前出の資料によると、平成16年度と平成29年度の奨学金の貸与状況は、以下の通りです。
学校の種類/年度 | 平成29年度 | 平成16年度 | ||
奨学生数 | 割合 | 奨学生数 | 割合 | |
大学 | 959,067 | 37.1% | 588,249 | 23.5% |
短期大学 | 53,751 | 44.9% | 47,878 | 21.2% |
大学院 | 58,564 | 30.0% | 80,178 | 39.6% |
高等専門学校 | 3,947 | 41.3% | 6,605 | 11.8% |
大学院で微減したものの、その他の学校では奨学生数は軒並み増えています。奨学生数を合計すると、全体の約40%が奨学金を利用していることが分かります。
また2022年9月に労働者福祉協議会が実施した「奨学金や教育費負担に関するアンケート調査」によると、日本学生支援機構の奨学金利用者の平均借入額は、3,366,000円です。借入総額500万円以上の割合も、13.4%となっています。
貸与型の奨学金は、無利子の第一種奨学金と有利子の第二種奨学金の二種類がありますが、それぞれの貸与額に大きな差はなく、330~340万円台が平均的です。
参照:奨学金事業への理解を深めていただくために|独立行政法人 日本学生支援機構・奨学金や教育費負担に関するアンケート報告書|労働者福祉中央協議会
奨学金400万円の完済についてや減額方法については、こちらの記事を参考にしましょう。
「奨学金400万円は返済するまで何年かかる?奨学金を延滞した時の流れや対処法、減額方法について調査」
授業料の増額
大学の授業料や入学金が上がったのも、奨学金を利用する人が増加し、結果的に自己破産する人が増えた理由です。昭和50年からの国立大学・公立大学・私立大学の授業料、入学金の金額の平均を見ると、この30年で国立大学の授業料は国立大学で約16万円、私立大学では約30万円も増額しています。
入学年度 | 国立大学 | 公立大学 | 私立大学 | |||
授業料 | 入学金 | 授業料 | 入学金 | 授業料 | 入学金 | |
昭和50 | 36,000 | 50,000 | 27,847 | 25,068 | 182,677 | 95,584 |
昭和60 | 252,000 | 120,000 | 250,941 | 179,471 | 475,325 | 235,769 |
平成7 | 447,600 | 260,000 | 440,471 | 363,745 | 728,365 | 282,574 |
平成17 | 535,800 | 282,000 | 530,586 | 401,380 | 830,583 | 280,033 |
平成27 | 535,800 | 282,000 | 537,857 | 397,721 | 868,447 | 256,069 |
令和3 | 535,800 | 282,000 | 536,363 | 391,305 | 930,943 | 245,951 |
卒業後の平均給与は横ばい
大学の授業料や入学金が上がる一方で、卒業後の平均給与はほぼ横ばいで推移しています。こちらは年次統計による大卒初任給の平均金額です。1968年以降平均金額は右肩上がりで上昇していますが、1995年に194,200円になると、2000年代はほぼ横ばいで推移している状態です。
大学の授業料等が上がり借りる奨学金の金額が増えているにもかかわらず、大学卒業後の給与が上がらないのでは、返済が苦しくなるのは目に見えています。このようなことからも奨学金を自己破産する人が増えていることが分かります。
西暦 | 大卒初任給の平均 |
---|---|
1970 | 39,900 |
1980 | 114,500 |
1990 | 169,900 |
2000 | 196,900 |
2010 | 200,300 |
2020 | 209,014 |
参照:大卒初任給|年次統計
非正規雇用の増加
卒業後の給与が上がらない原因の一つに、非正規雇用の増大が関係しています。国税庁の「民間給与実態統計調査」によると、正社員の平均給与が508万円に対して、正社員以外の平均給与は198万円。正社員のおよそ4割しか給与をもらえないという計算です。
非正規雇用の割合は、1994年で20%ほどでしたが、令和2年には38%にまで増加。内訳は男性22.2%、女性54.4%と女性の方が圧倒的に高いことが分かります。給与が低い非正規雇用が増加しているという現状では、生活費以外に奨学金を返済するのが難しい人が増えていることは容易に想像できるのではないでしょうか。
参照:年齢階級別非正規雇用労働者の割合の推移|男女共同参画局・民間給与実態統計調査|国税庁
ワーキングプアを何とか脱出したいとお考えの方は、こちらの記事を参考にしましょう。
「ワーキングプアを脱出したい…利用できる公的支援&ワーキングプアから抜け出す方法とは?」
奨学金を滞納するとどうなる?
様々な理由で奨学金を返済(返還)できなくなると、どのようなことが起きるのでしょうか。こちらは、人的保証を選択した奨学金利用者に対する対応の流れです。
文書や電話による督促
決められた期日までに奨学金の返済ができないと、文書や電話による督促が始まります。このような督促は延滞後3カ月間続きます。通常、奨学金の返済は口座引き落としによって行います。口座残高が不足すると引き落としができず、「引き落としができなかった」という電話や「返還が難しい事情がある場合には相談してください」といった内容の案内文が届きます。
他にも「返還期限猶予制度等のご案内」として、返済できなかったときの救済制度の案内が届くことも。電話や文書による督促は毎月続きます。
債権回収会社からの督促
滞納後3~4カ月経過すると、債権回収会社(サービサー)に回収業務が委託されます。債権回収会社とは、「債権管理回収業に関する特別措置法(サービサー法)」に基づいて法務大臣の許可を得た業者で、金融機関から委託を受けて債権の管理回収を行う業者のこと。
債権回収会社からは文書や電話、訪問による個別返還指導があるほか、返還猶予制度等の案内もあります。債権回収会社からの連絡は滞納後9カ月までの間続きます。
債権回収会社から手紙が届いた理由や対処法については、こちらの記事を参考にしましょう。
「債権回収会社からの手紙が届いた…理由とこれから起こること、対処法を詳しく解説」
信用情報機関に事故情報として登録
日本学生支援機構の奨学金を3カ月以上滞納した場合、信用情報機関の一つである「KSC(全国銀行個人信用情報センター)に延滞の情報として登録されます。尚、2009年以前に貸し付けを受けた方で「個人信用情報の取り扱いに関する同意書」を提出していない方は登録されません。
このような情報のことを事故情報(ブラックリスト)といい、その後の与信審査にマイナスになります。KSCの延滞情報は、延滞が解消した日から最長で3年間はその記録が残ります。その間は次のようなことができなくなります。
- クレジットカードが作れない・利用できない
- ローン審査に通らない
- 携帯電話などの分割払いが利用できない
- 保証人になれない
- 賃貸物件の審査に通らない可能性がある
大学を卒業して社会に出たとき、このようなことができないと生活に大きな支障が出ます。うっかり滞納した場合でも3カ月以内に解消できれば、ブラックリストに載ることはありません。
支払督促申立ての予告
滞納から9カ月を過ぎると、「支払督促申立ての予告」という書類が届きます。この書類は「このまま滞納を続けると裁判所へ支払督促の申し立てを行います」ということを知らせるもの。文書や電話による督促を受けても連絡が取れず、入金も返還猶予制度の申し込みもない場合、最終的に裁判所への手続きを取ることになります。
一方で、人的保証ではなく機関保証を選択した場合は、日本学生支援機構から保証機関の請求が行われ、保証機関が利用者に変わって弁済をします(代位弁済)。その後保証機関から利用者に対して代位弁済した奨学金の請求が行われる(求償権の行使)という流れです。
支払督促の申立て
支払督促申立ての予告文書を無視し続けていると、順次裁判所へ申立てが実行されます。ちなみにここ20年の奨学金滞納による支払督促申立て件数の推移は以下の通りです。
平成 | 16年度 | 19年度 | 22年度 | 25年度 | 29年度 |
---|---|---|---|---|---|
支払督促申立件数 | 208件 | 2,857 | 7,390 | 9,043 | 8,659 |
全返還者に占める割合(%) | 0.01 | 0.12 | 0.25 | 0.29 | 0.20 |
参照:奨学金事業への理解を深めていただくために|独立行政法人 日本学生支援機構
平成16年度は208件、全体の0.01%だった支払督促申立て件数が、平成29年には8,659件、0.2%にまで増加していることが分かります。
自己破産を選択するとどうなる?
では奨学金を返済できずに、自己破産を選択した場合はどのようなことが起きるのでしょうか。
奨学金を外して手続きできない
前提として、奨学金を外して自己破産の手続きを取ることはできません。よくあるのが「親や親戚が奨学金の連帯保証人になっているので自己破産したことを知られたくない」という理由です。しかし残念ながら、奨学金だけを自己破産の対象から外すことはできません。
自己破産はすべての債務を手続きに加えなければならないので、保証人が付いている借金があれば自己破産のことが保証人にもバレてしまいます。自己破産をする前には、必ず保証人とも相談の上で手続きを進めていってください。
保証人に返済義務が移る
保証人や連帯保証人が付いている借金を自己破産すると、保証人にその返済義務が移ります。日本学生支援機構の奨学金を借りるときに人的保証を利用すると、連帯保証人(原則父母のどちらかと保証人(4親等以内の親族)の2名を用意しなければなりません。
奨学金を自己破産するとこれら保証人2人に返済義務が移ることになります。そもそも保証人とは主債務者がその借金を返済できないときに代わりに返済することを保証する役割があります。自己破産によって主債務者の返済義務がなくなる場合でも、保証人の返済義務まではなくなりません。
連帯保証人は支払い拒否できるかについては、こちらの記事を参考にしましょう。
「連帯保証人は支払い拒否できる?種類・状況ごとの対処法を知って差し押さえを回避しよう」
保証人は一括払いが原則
これまで分割払いできていた奨学金の返済ですが、保証人に返済義務が移ると債務残額を一括請求されるのが原則です。主債務者が返済できなくなると、返済は分割払いでいいという「期限の利益」という権利が喪失するため。
請求金額が高額だったり現在の収入や財産から見て一括払いが難しい場合は、保証人自身も自己破産などの債務整理を検討する必要が出てきます。人的保証を付けた奨学金を自己破産するときには、保証人に対する影響についてもよく考えてからにしましょう。
奨学金を一括返済するように請求されたときの対処法は、こちらの記事を参考にしてください。
「奨学金を一括返済するよう請求された!無視した場合のリスクと対処法を解説」
事故情報が登録される
前項で出た信用情報機関の事故情報ですが、自己破産した場合にもその内容が登録されます。信用情報機関ごとの、登録される内容や期間は以下の通りです。
信用情報機関 | 登録される情報 | 登録される期間 |
---|---|---|
CIC | 破産開始決定・免責の有無 | 免責許可決定が登録された日から5年以内 |
JICC | 破産申立の有無 | 【契約日が2019年9月30日以前】
破産申立の日から5年を超えない期間 【契約日が2019年10月1日以降】 契約継続中+契約終了5年以内 |
KSC | 破産手続開始決定の有無 | 破産手続開始決定の日から7年を超えない期間 |
自己破産して免責を受けたのが奨学金だけという方はKSCに、それ以外の借金も自己破産したという方は債権者が加盟する信用情報機関に自己破産の情報が登録されます。延滞記録は延滞が解消されてから3年でしたが、自己破産の情報は5年~7年と登録機関が長くなります。
機関保証の場合は支払い義務がなくなる
機関保証を利用している場合は、自己破産によって支払い義務がなくなります。上で説明した通り、機関保証は保証会社が代位弁済してくれたものを自己破産するためです。機関保証の場合は、基本的に自己破産しても家族に迷惑がかかることはありません。
一定以上の財産は処分される
自己破産すると一定以上の財産は処分され、債権者への配当に充てられます。処分される財産のことを「破産財団」といい、次のような財産が該当します。
- 99万円を超える現金
- 持ち家などの不動産
- 20万円以上の価値がある財産(車・バイク・家電・有価証券・生命保険の返戻金など)
一方で99万円以下の現金や生活に必要な家具、家電、生活用品、食料、寝具などは「自由財産」として処分の対象から外れます。自己破産したからといって、日常生活を送れなくなるという心配はありません。
「自己破産すると財産はどうなる?処分される・されない財産と財産隠しについて」
特定の職業・資格を有する仕事に就けない
裁判所に破産申立を行い「破産手続開始決定」が出されると、一定の職種に就くことが制限を受けます。制限を受ける職業や資格は次の通りです。
- 士業(弁護士・弁理士・公認会計士など)
- 証券外務員
- 警備員
- 探偵業
- 派遣元責任者
- 風俗営業の管理者
- 銀行・組合・保険会社・各種法人の役員
- 公正取引委員会などの委員
- 宅地建物取引主任者の登録
- 貸金業の登録
資格が制限されるのは、破産手続開始決定から免責許可決定確定までの3カ月~6カ月間です。この期間中は、資格を使った仕事ができないので、勤務先には自己破産の手続きをしている旨を報告し、求職や配置転換を依頼してください。
一方でそれ以外の職業の方は、自己破産を理由に解雇されることはありません。自己破産は法律上の解雇理由に当たらないため。基本的には、自己破産したことを会社に報告する義務もありません。
自己破産のデメリットについて詳しくは、こちらの記事を参考にしましょう。
「自己破産のデメリットを状況別に解説!誤解や嘘を解決して最適な選択へ」
自己破産を選択する前に…利用できる救済措置
奨学金を自己破産すると、自分や家族、仕事などに影響を及ぼすことは避けられません。そこで自己破産を選択する前に利用できる救済措置を紹介します。まずはこれらの制度を利用できないか検討しましょう。
返還免除制度
日本学生支援機構には、「返還免除制度」という制度があります。その条件は「特に優れた業績をおさめた場合」と「本人が死亡し返還できなかったとき」、「精神又は身体の障害により労働能力が喪失したとき」の3つ。極めて限定的なので、ほとんどの方は利用できない制度となっています。
参照:死亡又は精神若しくは身体の障害による返還免除|日本学生支援機構
奨学金返済が免除になる制度については、こちらの記事を参考にしましょう。
「奨学金返済が免除になる制度はある?免除が受けられないときの支援制度や注意点を解説」
返還期限猶予制度
傷病や生活保護受給中など様々な事情により返済が難しい場合、期間を先延ばし(猶予)してもらう制度があります。「返還期限猶予制度」といい、通算10年(120カ月)を上限として、奨学金の返済を先送りできます。すでに延滞している人も利用可能で、返済をストップしている間は利息や延滞金が発生しません。また信用情報機関に登録される心配もありません。
ただし返済すべき奨学金の総額や利息が免除される訳でなく、1階の申請で1年間の猶予となります。申請理由によって年収などの条件等が異なるので、詳しくは日本学生支援機構のホームページを参考にしてください。
減額返還制度
災害や傷病、経済的理由などにより奨学金の返済が難しい方の中で、奨学金を減額すれば返済可能な方を対象とした「減額返還制度」があります。1回あたりの返済月額を1/2、1/3、1/4、2/3に減額可能で、適用期間に応じて返済期間を延長して返済を継続します。
適用期間は最長で15年(180カ月)です。給与所得者の場合年間収入が400万円以下、給与所得以外の所得を含む場合は年間所得金額300万円以下が条件です。被扶養者の有無や扶養している子どもの人数によって、所得の目安が変わります。こちらは、すでに返済を延滞している場合は利用できません。
参照:月々の返還額を少なくする(減額返還制度)|日本学生支援機構
所得連動返還方式への変更
収入が少なく奨学金を払えないときには、所得連動返還方式に変更するという方法があります。所得連動返還方式とは、卒業後の年収に応じて毎年の返済額が決まるという返済方法。収入が少ない期間でも、無理なく返済できる制度となっています。
2007年度(平成29年度)以降に第一種奨学金を受けた人のみ利用可能で、次のような条件があります。
- 個人番号を提出している
- 奨学金の返済を滞納していない
- 口座振替で支払っている
- 定額返還方式で算出した月額の半額が2,000円以上ある
月額は年収に応じて次のようになります。
年収 | 返還月額 |
---|---|
100万円 | 2,000円 |
200万円 | 4,700円 |
300万円 | 8,900円 |
400万円 | 13,500円 |
500万円 | 18,500円 |
詳しくは、日本学生支援機構の「所得連動返還方式のご案内」を参考にしてください。
奨学金の返済に困ったときの裏技については、こちらの記事を参考にしてください。
「【裏技5選】奨学金の返済に困ったら…注意点や最終手段も詳しく解説!」
他の借金を任意整理する
自己破産以外にも、任意整理・個人再生などの債務整理方法があります。このうち任意整理は、手続きする借金を選べるので、奨学金以外の借金について減額が可能です。減額できるのは今後発生する将来利息や、滞納したことによる遅延損害金など。また返済期間を3~年に延長できるので、毎月の負担を減らすことも可能です。
奨学金も任意整理すればいいのでは?と思われる方がいるかもしれませんが、日本学生支援機構では奨学金の利息カットには原則として応じていません。また奨学金の利息は他の借金に比べると圧倒的に低く(2024年1月に貸与を終了した場合:年利1.005%)任意整理してもそれほど減額効果が得られません。そのため奨学金以外のカードローンやクレジットカードのキャッシングを任意整理して、家計を見直すことで、奨学金が返済できるようにするのが効果的。
任意整理と債務整理の違いについて知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
「任意整理と債務整理の違いは何?メリット・デメリット、任意整理に向いてる人を解説」
弁護士に相談
奨学金やその他の借金の返済が苦しいときには、借金問題に詳しい弁護士に相談しましょう。個人では債務整理をすべきか判断がつかないことがほとんど。しかし弁護士に相談できれば、奨学金の返済状況やそのほかの借金の状況、現在の収入などを踏まえた上で、債務整理が必要か、必要だとしたらどの方法が適切か判断可能です。
奨学金以外の借金がある場合は、奨学金の救済措置と任意整理を併用するなどして返済負担を減らすことができます。奨学金が返済できなくても、自己破産以外に多くの方法があります。まずは弁護士に相談して、あなたの状況にあった解決方法を見つけましょう。
まとめ
奨学金の自己破産割合は、全体から見てもとくに多いという訳ではありませんが、大学授業料の上昇や卒業後の給与が上がらないこと、非正規雇用増加などによりその割合は増加傾向です。奨学金の返済を滞納していると、信用情報機関に登録されたり債権回収会社から督促が届いたりして、最終的には裁判所に支払督促申立てがなされます。
奨学金の返済ができずに自己破産すると、本人の返済義務はなくなります。財産の処分や資格制限があるほか、
保証人に一括請求が行きます。保証人に返済能力がないと、保証人も自己破産しなければならないことに。自己破産には軽くない影響があるので、慎重に検討しましょう。
自己破産以外の救済方法として、返還期限猶予制度や減額返還制度、所得連動返還方式への変更などの方法が有効です。また奨学金以外の借金がある場合は、それらを任意整理で減額する方法もおすすめ。まずは弁護士に相談して、どのような方法が自分に適しているのかチェックしてもらいましょう。