家賃滞納を無視するリスク|強制退去を回避する方法と新たに家を借りるポイントとは

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  • 「家賃が支払えない…このまま滞納し続けるとどうなる?」
  • 「強制退去を回避する方法が知りたい」

賃貸物件に住んでいる人の中には、ついうっかりしてや急な出費があって家賃を支払えなくなったという事態に陥ることが少なくありません。ではそのまま家賃を滞納し、督促を無視し続けていると、どのようなリスクが生じるのでしょうか。

本記事では、家賃滞納を無視すると起きることとデメリット、強制退去を回避する方法を詳しく解説。さらに新しく家を借りるときに注意するポイントについても紹介していきます。家賃だけでなく公共料金の支払いや借金返済もままならないときには、抜本的な解決が必要です。こちらを参考にして、できることから始めていきましょう。

 

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家賃滞納を無視し続けるとどうなる?

家賃滞納を無視し続けると、様々なリスクが生じます。こちらでは時系列に沿って、どのようなことが起きるのか解説していきます。

支払督促を受ける

家賃の滞納が発生すると、賃貸借契約書で決められている家賃の支払日(引き落とし日)の翌日からおおむね一週間程度で、賃借人や管理会社、仲介した不動産会社から支払いの督促を受けます。督促の方法は電話・文書・訪問などで、改めて設定された期日までに滞納した家賃を支払うように催促されます。

最初の1カ月程度は電話などによる連絡が入り、これに加えて家賃滞納に関する督促状が数回送付されるのが一般的。この時点ではまだ法的な手続きには着手していないので、交渉の余地があります。滞納している方は、早急に対応した方がいいでしょう。

連帯保証人への督促

物件を契約するときに連帯保証人を立てた場合、家賃滞納1カ月程度で連帯保証人に対して督促の連絡が入ります。連帯保証人は賃借人(契約者)が家賃を滞納したときに、代わりに返済する義務を負っています。そのため賃借人と同様に、督促を受けるという訳です。

督促の方法は電話や文書によるものが一般的で、文書の場合は内容証明郵便で送られるケースも。ここまでくると問題はより深刻化し始めます。連帯保証人に家賃滞納を知られたくない、迷惑をかけたくないという場合には迅速な対応が必要です。

家賃保証会社から督促が来る

連帯保証人の代わりに家賃保証会社を利用した場合、今度は保証会社から督促を受けることになります。多くの場合、滞納後1カ月前後で家賃保証会社から賃貸人に対して立て替え払いが実行されることに。これを「代位弁済」といいます。代位弁済が行われると、今度は保証会社に対して滞納分の返済義務が発生します。

この前後から賃貸人や保証会社から督促が行われ、それでも滞納が解消されない場合には、着実に法的手段を取ってきます。

債権譲渡通知書が届いたときの対処法は、こちらの記事を参考にしてください。

「債権譲渡通知書が届いたときの対処法|詐欺の見分け方と注意点とは?」

契約解除通知が届く

家賃滞納から3カ月を超えると、内容証明郵便で「契約解除通知」が届きます。このまま滞納が続けば賃貸借契約が解除され、退去を余儀なくされることを意味しています。また同じタイミングで、裁判所へ明け渡し訴訟の申立てが実行される場合もあります。

契約解除通知には支払期日が明記されており、この期限までに滞納分を支払えば契約は解除されません。最後通告だと考え、何らかの方法で滞納を解消するようにしましょう。

明渡し訴訟

契約解除通知を送っても支払いがない場合や、賃借人が自主的に退去しないときには、賃貸人が裁判所に明渡し訴訟を起こす可能性があります。ほとんどのケースで賃貸人の主張が認められ、裁判所から明渡しを命じる判決が出ます。同時に、賃借人は指定された期日までに住居を退去するように命じられます。

家賃滞納によって裁判所から呼び出しが来たときには、こちらの記事を参考にしましょう。

「家賃滞納による裁判所への呼び出し|裁判の流れと和解するためのポイント、滞納家賃の対処法を徹底解説」

強制退去

裁判で明渡しを命じる判決が出た後も、賃借人が自主的に退去しないときには、賃貸人から強制執行を申し立てられる可能性があります。強制執行の申し立てを受けた裁判所は、執行官を現地に派遣して明渡しの期限を伝える「明渡し催告」を行います。

明渡し催告から一カ月以降も無視して住み続けた場合には、執行官によって強制執行が行われます。強制執行では、鍵の交換や荷物の運び出しが行われ、強制的に部屋から退去させられます。

家賃滞納によるデメリット

家賃を滞納し続けると最終的に部屋から追い出されてしまいますが、それ以外にも次のようなデメリットが生じる可能性があります。

信用情報に影響する

家賃を滞納し続けると、信用情報機関に登録されている個人信用情報に事故情報(異動情報)が登録されます。これがいわゆる「ブラックリスト状態」といい、クレジットやローンの契約・申し込み等の審査に落ちる可能性があります。とくに家賃滞納が半年を超えると、信用情報機関に最大5年間登録されます。

家賃滞納で信用情報に影響するのは、次のようなケースです。

  • 信販系の保証会社を利用している
  • 家賃支払いをクレジットカードでしている
  • 「LICC(一般社団法人全国賃貸保証業協会)」に加盟している保証会社を利用している

信販系やLICCに加盟している保証会社を利用している場合には、家賃滞納によって異動情報が登録される場合があります。また家賃支払いをクレジットカード払いにしている方は、口座残高不足などでクレジットカードの支払いができないと、こちらも異動情報が記録される可能性があります。

クレジットカードの支払いができずに困っている方は、こちらの記事を参考にしましょう。

「クレジットカードの支払いができない…分割交渉できる?注意点やその他の対処法を紹介」

延滞損害金が発生する

家賃滞納をすると、延滞損害金が発生する恐れがあります。延滞損害金の利率は、通常賃貸契約書に明記されていますが、法律では上限金利を年率14.6%以下としています。賃貸契約書に明記されていないときには、年率5%の法定金利が適用されます。

ほとんどのケースで上限金利一杯の14.6%で設定されています。これはクレジットカードのショッピングや金融機関のカードローンの金利と同じくらいの利率です。いかにに延滞損害金の利率が高いのか、分かるのではないでしょうか。

住民票を異動しにくくなる

家賃滞納を放置していると、住民票を異動しにくくなるというデメリットが生じます。とくに滞納したまま夜逃げなどすると、住民票を異動させれば新たな住所が特定されてしまい、滞納分の請求や連絡が行くことに。一方で住民票を異動しないと、次のような支障が出てきます。

  • 住民票の写しや印鑑証明書などが発行できなくなる
  • 公的な通知が届かなくなる
  • 運転免許の更新ができない
  • 本人確認郵便を受け取れない
  • 福祉サービスや公共施設の利用ができなくなる
  • 確定申告ができなくなる
  • 選挙権を行使できなくなる

このように様々な公的手続きで不都合が生じるので、日常生活にも支障をきたすことは間違いありません。

家財道具は処分される

家賃を滞納し続けた結果、強制執行を受けて何もしないでいると家財道具は処分されてしまいます。強制執行が行われると、執行官の指示の元ですべての荷物が部屋から運び出されます。運び出された荷物のうち、廃品として認定されたもの以外は、執行官が指定した保管場所(民間倉庫など)に一時的に保管されます。

保管には期限があり、その期限内に荷物の引き取りができないときには、廃棄や売却によって処分されてしまいます。荷物の保管期限は1カ月程度となっていて、期限内に本人もしくは親族が引き取りに行かなければなりません。期限までに新たに家を借りたり、保管場所を確保したりしないと、家財道具は処分されてしまうので気を付けましょう。

新たな賃貸物件を借りられなくなる

家賃滞納を放置していると、新たな賃貸物件を借りられなくなるというリスクが生じます。というのも家賃滞納で信用情報機関に異動情報として登録されると、審査に通らなくなる可能性があるためです。

信販系の保証会社や大手の保証業協会に加盟している保証会社では、新規の入居者を審査するときに、その人の信用情報をチェックします。この過程で過去に家賃滞納の記録があると、新たに賃貸借契約を結ぶことが難しくなります。

家賃滞納による強制退去を回避する方法

家賃滞納が理由で賃貸人から退去や契約解除を求められると、生活に大きなダメージが出ます。強制退去にならないためには、次に紹介する方法を実践していきましょう。

正当な手続きに基づいているか確認

賃貸人から退去を求められた場合、まずは正当な手続きに基づいているものか確認してください。入居者を強制的に退去させるには、裁判所の判断が必須です。法的な手続きなしに、賃貸人の独断で退去させることはできません。たとえ家賃滞納という非があったとしても、強制的に退去させようとする行為は違法です。

具体的には次のような行為が違法とみなされます。

違法となる行為 罪名
合鍵を使って勝手に部屋に入る

部屋に入って居座る

住居侵入罪(刑法第130条)
部屋の鍵を付け替える 不動産侵奪罪(刑法第235条)
部屋にある荷物を勝手に運び出す 窃盗罪(刑法第235条)
家賃を支払うよう脅す 脅迫罪(刑法第222条・223条)
家賃の督促を連帯保証人以外の人にした

職場や学校に連絡した

名誉棄損罪(刑法第230条)

プライバシー侵害

恐喝罪(刑法第249条)

一日に何度も電話で督促する

早朝や深夜(午後9時~午前8時)の訪問や電話による督促

貸金業法第21条違反

賃貸人が上記のような違法行為を行ったときには、不法行為にも届く損害賠償を請求できる可能性があります。不当な実力行使によって被害を受けたときには、警察や弁護士に相談してください。

家賃を支払う意思があることを伝える

家賃滞納による強制執行を回避するには、なるべく早い段階で賃貸人や管理会社に連絡し、滞納している理由を伝え、滞納は一時的なもので家賃を支払う意思があることを伝えてください。一括で支払えないときには、具体的な支払い計画を提示すると、相手の理解が得られやすいでしょう。

間違っても督促を無視したり、横柄な言動を取ることは控えてください。相手の心証を損ねるだけで逆効果です。連絡したときには「○月○日まで期限を延ばして欲しい」「〇回の分割で支払いしたい」など、具体的な相談を心がけてください。

家族や連帯保証人に相談

家族に協力してもらえそうなら、相談して滞納分を借りる方法があります。家族に借りるときにも、具体的な金額や返済方法、返済期日を伝えて誠意をもって協力を仰ぎましょう。

また連帯保証人を立てている場合は、事前に相談して滞納分を立て替えてもらうのも一つの手です。このまま滞納が続くと、遅かれ早かれ連帯保証人に督促が行きます。しかし事前に連帯保証人に相談してお金を借りられれば、賃貸人の心証を損なわずに済むでしょう。

連帯保証人の支払い義務について詳しくは、こちらの記事を参考にしましょう。

「連帯保証人は支払い拒否できる?種類・状況ごとの対処法を知って差し押さえを回避しよう」

滞納分をねん出する

1~2カ月程度の滞納であれば、家賃分をアルバイトなどで稼ぐという方法もあります。副業が認められている正社員の場合は、休日や終業後に日払いバイトや時間制アルバイトなどで稼ぐことができます。また不用品などをフリマサイトやオークションサイトで売るという方法も。

ただし消費者金融やクレジットカードのキャッシングなどで滞納分をねん出する方法は、あまりお勧めできません。家賃滞納は解消されたとしても、今度は借入分の返済が発生します。このような借入には利息が付き、返済できないと借入先から督促を受けるように。返済先が変わっただけで、状況はさらに悪化するのは目に見えています。

早期に退去することを条件に家賃を免除してもう

どうしても滞納分を準備できないときには、早期に退去する代わりに滞納分を免除してもらえないか交渉する方法があります。家賃を滞納したまま居座られるよりも、免除してでも退去してもらって別の入居者を募集したいという賃貸人もいるからです。

もっともこのような交渉は、法的手続きにまで発展した場合は受け入れてもらえません。すでに手続き費用がかかっているので、何としてでも滞納分を回収したいと考えているためです。こうした条件で和解したいのであれば、なるべく早い段階か弁護士に依頼したうえで弁護士経由で交渉するようにしましょう。

支援制度の利用を検討する

やむを得ない事情があるときには、公的支援制度を利用して滞納家賃を支払うという方法があります。具体的には次のような制度です。

住居確保給付金制度

解雇や退職、やむを得ない事情による休業によって家賃の支払いができないときには、「住居確保給付金」制度の利用を検討しましょう。この制度は、住居を失う可能性がある方に対して、家賃分を支給して安定した住居の確保および就労による自立を図るためのものです。この制度を利用できるのは、次のような条件に該当する方です。

  • 主たる生計維持者が、離職・廃業後2年以内もしくは個人の責任や都合によらず給与が離職・廃業と同程度まで減少している
  • 直近の世帯収入が一定以下である(住民税の均等割りが非課税になる額の1/12と家賃の合計額を超えない)
  • 世帯の預貯金合計額が自治体が定める額を超えていない
  • ハローワーク等に申し込むなど、誠実かつ熱心に求職活動を行うこと

住宅確保給付金は、世帯の人数に応じた自治体ごとに定める金額を、原則3カ月、最大で9カ月受給できます。これらの条件を満たす方は、お住まいの地域の自立相談支援機関にお問い合わせください。

参考:住居確保給付金|厚生労働省

傷病手当金

健康保険の被保険者で、病気やけがにより仕事ができずに収入がゼロになった方は、「傷病手当金」の受給を検討してください。支給開始日から通算で1年6カ月まで支給され、支給額は直近12カ月の標準報酬月額の平均額の2/3を日割りにした金額です。

ただしこちらは業務外の理由による病気やケガで休業している期間の生活保障を行う制度なので、給与が支払われている期間は傷病手当金を受給できません。傷病手当金を受給するには、加入している健康保険組合や協会けんぽへの請求が必要です。

参考:病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)|全国健康保険協会

生活保護

働きたくても働けない方、強制退去によって住む家を失った方は、生活保護の申請を検討すべきでしょう。生活保護は健康で文化的な最低限度の生活を保障し、自立を助ける制度です。困窮の度合いによって必要な保護が受けられます。

生活保護にはアパート等の家賃を支給してもらえる「住宅扶助」もあります。また公営住宅によっては、生活保護受給者を対象に、優先入居制度を設けている場合も。生活保護の申請は、お住いの地域の福祉事務所の生活保護窓口です。預貯金や財産、親族等の援助の有無などの条件に該当する方は、まずは生活保護を受けられないか相談してみましょう。

参考:生活保護制度|厚生労働省

生活保護を受けている人の債務整理について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしましょう。

「生活保護を受けている人の債務整理|気になる手続き費用と自己破産するときの注意点とは」

弁護士に相談

家賃滞納によりすでに裁判を起こされているときには、早急に弁護士に相談してください。少しでも有利な条件で和解できるよう、具体的なアドバイスが受けられます。また代理人として裁判に出席し、相手方と交渉してくれるなど、裁判をスムーズに進める上でのメリットがあります。

弁護士費用を捻出できないときには「法テラス」の利用がおすすめ。法テラスは経済的に困窮している方でも、法的サービスが受けられるようにと設立された機関で、弁護士への無料相談や弁護士費用の立て替え払いや分割払いなどに対応しています。こちらも収入や資産に基準が設けられているので、ホームページを参考にして事前に確認してください。

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債務整理を検討する

家賃だけでなく借金や税金なども滞納している方、家賃が支払えずに強制退去させられそうなほど生活に困窮している方は、弁護士に相談したうえで債務整理を検討すべきでしょう。債務整理には、主に次の3つの方法があり、それぞれ手続き方法や借金の減免割合が変わってきます。

任意整理
  • 債権者との交渉で利息や遅延損害金を減額し、支払期間を3年~5年に延長できる手続き
  • 利息の高い借金や遅延損害金が加算された借金に向いている
  • 手続き後も返済が続くので、安定した収入が必要になる
  • 減額割合が少ないので、借金額が多い人には効果が薄い
個人再生
  • 裁判所に申し立てたうえで、借金総額に応じて大幅に減額で来る手続き
  • 減額分は連帯保証人に併催義務が移る
  • 税金や年金、罰金や養育費などの非免責債権は減額できない
  • 毎月安定した一定以上の収入が無いと、再生計画案が認められない
自己破産
  • 非免責債権を除くすべての借金の返済義務を免除できる手続き
  • 一定以上の財産は没収されて、債権者への返済に充てられる
  • 手続き完了まで一定の資格・職業に制限が出る

滞納家賃を手続きの対象に含めることは可能ですが、対象にすると賃貸人から立ち退きを求められる可能性が高いです。今住んでいるところに住み続けたい場合は、任意整理を選択したうえで手続きの対象から外すようにしましょう。

どのような手続きを選択したらいいかは、個々のケースによって異なります。まずは債務整理に詳しい弁護士に相談してみましょう。

自己破産中にやってはいけないことに関して知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。

「自己破産申請中の生活|制限されること・されないこととやってはいけないこととは?」

時効が来れば滞納家賃はなくなる?

時効が来れば滞納家賃は支払わなくてもよくなるのでは?と考える人がいるかもしれません。確かに滞納家賃の請求権にも(消滅)時効があります。ただし単に家賃を滞納し続けて待てばよいという訳でなく、時効成立には一定の要件を満たす必要があります。

消滅時効の要件

賃貸借契約における家賃は、民法上の「定期給付債権」に該当し、定期給付債権の時効は5年です。契約で決められた毎月の家賃の支払期日から5年を経過するごとに、消滅時効によって滞納分を請求できなくなります。消滅時効とは、一定期間内に権利を行使しなかったことにより権利が消滅する制度のことです。

家賃を5年以上払っておらず、滞納から5年以上経過しているときに滞納家賃の消滅時効となります。また保証会社による代位弁済があった場合の消滅時効も5年で、時効の起算日は代位弁済があった日です。

とはいえ滞納家賃のすべてが一気に時効にかかるという訳ではありません。支払期日から5年を経過した家賃から1か月分ごとに時効となり、その後発生した5年を経過していない家賃は時効とならない点に注意が必要です。

時効援用の方法

滞納家賃の消滅時効を経過していても、「時効援用」の手続きをしないと、法的に時効は成立しません。時効援用とは、債権者(ここでは賃貸人)に対して、時効を迎えたことについての権利を行使することを指します。時効の成立で利益を得る側(ここでは賃借人)が、債権者に時効の完成を主張してはじめて、時効が成立します。

時効の援用には、債権者に対して内容証明郵便で「時効援用通知書」を送るという方法があります。一方で内容証明郵便の書式にミスがあったり、送るタイミングを間違ったりすると、時効が成立しないばかりか、債権者に時効が到来していることを知らせることになってしまいます。

時効援用するときには、弁護士などの法律の専門家に相談したうえで、手続きについても依頼するようにしましょう。

借金の時効援用が失敗するケースについては、こちらの記事を参考にしてください。

「借金の時効援用が失敗するケースを解説|失敗を防ぐ確認方法と失敗したときの対処法」

時効の中断事由

時効が到来する5年までの間に、次のようなことがあると時効が中断されてしまいます。時効が中断となると、時効のカウントはゼロに戻り、また一からのカウントとなります。時効の援用をするときには、下記のような時効の中断事由がなかったか十分に確認するようにしましょう。

支払い義務を承認したとき 1円でも滞納家賃を支払った

家賃の支払いを要求され、「分割払いにしてください」「滞納分の〇円を○日までに支払います」「給料が入ったら支払うので待ってください」「家賃を減額して欲しい」などの交渉で支払うことを認めたとき

支払督促・訴訟手続きがなされたとき 賃貸人によって滞納家賃の支払督促や訴訟手続きが行われたとき

裁判所によって支払い義務が認められたときは、時効期間が10年に延長される

内容証明郵便による督促がなされたとき 内容証明郵便で催告書などが届いたとき
財産を差し押さえられたとき 裁判所に強制執行を申し立てられ、実際に財産を差し押さえられたとき

多くの場合、賃貸人や管理会社、保証会社では、消滅時効の完成を避けるために、様々な法的手段を取ってきます。そのため、時効を成立させるのは不可能に近いと考えた方がいいでしょう。

借金の時効についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしましょう。

「借金の時効に関する基礎知識|時効までの期間と時効援用の方法、失敗しないためのポイントとは」

強制退去させられた後に家を借りるには?

家賃を滞納し強制退去させられた後、新たに家を借りなければならない人も多いはずです。こちらでは、強制退去後の家を借りる方法やポイントについて解説していきます。

生活水準に応じた物件を見つける

新たな家賃滞納を防ぐには、自分の生活水準に合った物件を見つける必要があります。月収に占める家賃の目安は1/3以下、割合にすると30%程度が目安です。とはいえ最近の物価高騰により、3割程度では高いという見方も。できれば2割程度に抑えると、生活にゆとりが生まれやすいでしょう。

このとき注意したいのは、給与の額面金額でなく、税金や社会保険料を差し引いた後の手取り収入を基準で考えること。額面金額が25万円の場合、手取りは20万円前後で、適正な家賃は4万円~6万円です。過去に家賃滞納の経験がある方や、使っていない部屋が余っているという方は、より低い家賃の家への引っ越しを検討した方がいいでしょう。

保証会社をチェックする

新しく家を借りるときには、申込の前に保証会社をチェックすることを忘れずに。信用情報機関に加盟している信販系やLICCに加盟している保証会社だと、過去の信用情報をチェックされ、審査に落ちる可能性があります。物件を紹介してもらうタイミングで、不動産会社に保証会社との契約の要不要や、保証会社の名前などを聞いて確認しましょう。

保証会社との契約が必須の場合でも、独自の審査基準で家賃保証を行う独立系の保証会社では、信用情報をチェックしません。家賃滞納で強制退去の経験がある方は、独立系の保証会社が付いた物件を探すといいでしょう。

信用力の高い連帯保証人を立てる

保証会社との契約か連帯保証人を立てるかを選べる場合には、信用力高い連帯保証人を立てることで、入居審査に通りやすくなるでしょう。連帯保証人に求められる条件として一般的なものは以下の通りです。

  • 日本国内に居住している
  • 賃借人との関係が3親等以内の親族である
  • 安定した仕事に就いている

中でも公務員等の安定した職業や高収入、信用情報に問題がない連帯保証人を立てられれば、家賃滞納の経験があっても入居審査に通りやすくなります。

家族名義で契約する

家族や親族などに頼んで、家族名義で家を借りるという方法もあります。家賃滞納の経験がなく、安定した収入のある家族がいれば、過去の滞納歴がネックとなって審査に落ちてしまう人でも、入居できる可能性が高まります。

ただし実際に住む人と賃貸借契約を結ぶ人が異なるケースは、原則として違法です。契約解除や違約金を請求される可能性も。最悪の場合、詐欺罪等に問われる可能性があるので、事前に他人名義での賃貸借契約が可能かどうかを確認したうえで申し込みを行ってください。

まとめ

家賃滞納を無視していると、督促を受け契約解除通知が届くようになり、最終的に強制退去させられます。それ以外にもブラックリストに載ることによる影響、住民票の異動ができない、新たな物件を借りられないといったリスクが生じます。

強制退去を防ぐためにも、滞納の恐れがあるときは早めに賃貸人に相談し家賃を払う意思があることを伝えましょう。また親族や連帯保証人に立て替えてもらう方法もあります。利用できる公的支援制度がないかチェックし、他に借金があるときには弁護士に相談したうえで債務整理を検討しましょう。

滞納家賃の請求権には時効があるものの、時効が到来する前に様々な時効の中断事由を取られるので、ハードルはかなり高いと考えてください。新しく家を借りるときには、生活水準に応じた家賃の物件を探し、保証会社をチェックしたうえで家族名義で契約する方法が有効です。

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