- 「奨学金を借りたのに返せない…これって甘え?」
- 「奨学金が返せなくなったときの対処法が知りたい」
今の日本では、半数以上の若者が大学に進学しています。一方で奨学金の貸与率も増加の一途。それに伴い、借りた奨学金を返せなくなっている人も増えています。こちらの記事を読んでいる方の中には、奨学金を返せなくなって困っているという人もいるのではないでしょうか。
そこで「奨学金を返せないのは甘えなのか」という疑問を解決しながら、返せなくなったときに起こることや周囲への影響について解説。さらに返せなくなったときの対処法や対策までご紹介します。奨学金を返したいけど返せないという方は参考にしましょう。
奨学金が返せないのは甘え?
借りた奨学金を返せないことは果たして「甘え」なのでしょうか?奨学金についての現状を紹介しながら、こちらの疑問について解説していきます。
誰でも起こり得ることで甘えではない
結論から申し上げると、借りた奨学金を返せなくなることは誰でも起こりえること。決して甘えなどではありません。ネット掲示板などを見ると「奨学金を返せないなんて計画性がない」「甘えているに違いない」などの、辛辣な言葉を目にすることがあります。
しかし実際に奨学金を返せなくなった人の経験談を見てみると、次のようなやむを得ない事情がある場合も。
- 突然の事故や病気で休職せざるを得なくなった
- 突然会社が倒産して失業した
- 給与がいつまでたっても上がらずに、生活するのに精いっぱい
- 友人の保証人になり借金を抱えてしまった
- 両親の介護のため働きたくても働けない
このような本人の意思だけではいかんともしがたい理由で、奨学金を返せなくなっているケースがあります。逆に返済を忘れていたり、あえて返済しないという人はごくわずかです。このような事情があることか多いという理由から、奨学金を返せないからといって決して甘えとは言えない状況です。
奨学金を返せないからといって、自分を責めたり卑屈になり、1人でこの問題を抱え込んだりするのはやめましょう。
奨学金の貸与率が増加
奨学金制度は昔からあったものの、この30年ほどで奨学金の貸与率が増加しています。およそ8割の利用者がいる奨学金事業最大手の日本学生支援機構(JASSO)によると、令和2年度の奨学金受給割合は以下の通りです。
高等教育機関の種類 | 割合 |
---|---|
大学(昼間部) | 49.6% |
短期大学(昼間部) | 56.9% |
大学院修士課程 | 49.5% |
大学院博士課程 | 52.2% |
この表から分かる通り、およそ半数の大学・短大・大学院生が、日本学生支援機構をはじめとする何らかの奨学金を受給していることが分かります。さらに同機構が発足した2004年以降、奨学金の利用者は右肩上がりで増加しています。
かつて奨学金というと一部の苦学生が利用するものという認識でしたが、今や奨学金を利用するのが決して珍しいものではないということが分かります。
奨学金を借りる人が増えた理由
ではなぜ奨学金を借りる人が増えたのでしょうか?その理由は一つではなく、次のようなさまざまな理由が複合的に結びついていることがほとんどです。
- 大学進学率の増加
- 学費は年々増額傾向
- 親の収入が減少
近年の教育をめぐる状況を見ると、大学(学部)への進学率は男子57.5%、女子50.9%(短期大学もあわせると58.6%)といずれも半数を超えています。そして大学の学費は国立、私立大学共に増額の傾向に。
一方で親の収入はなかなか増えずほぼ横ばいという状況で、収入に占める教育費の割合が右肩上がり。このような理由から奨学金を借りる人が増えたと考えられます。
借りている奨学金の総額
では、一体いくらの奨学金を借りているのでしょうか。日本学生支援機構がまとめた資料によると、学生一人当たりの奨学金の平均貸与額(平成29年3月に貸与が終了)は、無利子の第一種奨学金で241万円、有利子の第二種奨学金では343万円となっています。
第一種と第二種でおよそ100万円の開きがあるものの、平均して300万円ほどの奨学金を借りています。この奨学金は必ず返さなければならないもので、完済するまでは大学を卒業してからおよそ15年かかります。22歳で大学を卒業したとすると、奨学金を返し終わるのは37歳ということに。
返済生活が長引くにつれ、負担に感じたりやむを得ない事情で返せなくなる人も少なからずいるはずです。
参照:奨学金事業への理解を深めていただくために|日本学生支援機構
奨学金の返済を滞納している人も増加
奨学金を利用する人が増え借りている奨学金も300万円近くにのぼる一方で、さまざまな理由から奨学金の返済を滞納している人も増加傾向にあります。日本学生支援機構によると、貸与終了者に占める滞納3カ月以上の人の割合は、平成30年度末貸与終了の場合、以下の通りです。
高等教育機関の種類 | 滞納割合 |
---|---|
全学校種別 | 1.6% |
大学(学部) | 1.4% |
短期大学 | 1.3% |
専修学校 | 2.5% |
そして最新のデータ(令和2年度奨学金の返還者に関する属性調査結果|日本学生支援機構)によると、3カ月以上の延滞者の人数は132,000人となっています。滞納者がピークだった平成21年度の211,000人に比べると減っているものの、それでもなお13万人以上の人が奨学金を滞納していることが分かります。
奨学金が返せなくなる理由
ではどうして奨学金が返せなくなってしまうのでしょうか?こちらでは一般的に奨学金が返せなくなる理由について見ていきます。
奨学金に対する認識の甘さ
奨学金といえども借金です。安易に奨学金を借りてしまうと、後になって返せなくなるというケースがあります。「周りの友だちが借りているから」「延滞しても返せばいいんでしょ?」と安易な気持ちで、有利子の奨学金を必要以上に借りてしまうと、返すときになって苦しむ結果に。
実際、34歳以下の奨学金利用者にアンケートを取った結果をみると、返還条件や滞納リスクに関する理解度が甘いことが分かります。奨学金を滞納したときのリスクを知らずに借りてしまうと、奨学金が返せなくなるという状況に陥りがちです。
返還条件や滞納リスクなどの理解度 | 割合 |
---|---|
よく理解していたと思う | 15.2% |
ある程度理解していたと思う | 41.9% |
あまり理解していなかったと思う | 32.9% |
全く理解していなかったと思う | 8.2% |
給与が上がりにくい
奨学金に対する認識がしっかりしている人でも、給料がなかなか上がらないという理由から、奨学金を返せなくなる恐れがあります。国税庁が公表している「民間給与実態統計調査」によると、令和2年の1年を通じて勤務した給与所得者の1人あたりの平均給与額は443万円となっています。金額がピークだった1997年の467万円にくらべると、24万円のマイナスです。
平均給与の男女別は、男性が545万円に対して女性が302万円と、女性の方がより給与が低くなっています。短期大学もあわせると女性の方が進学率が高く、それに比例して奨学金利用者もいることを考えると、女性の方が奨学金返済を滞納してしまうリスクが高いといえます。
また大学に進学する人が珍しくなく、大学を出たからといっていい会社に就職できるとは限りません。また親世帯の収入が上がらないことから、親からの支援も期待できないでしょう。このように将来の収入が見通せないまま奨学金を借りてしまうことが、返済が辛くなる原因の一つになるでしょう。
非正規雇用の増加
収入が上がらない原因に、非正雇用の増加があります。1994年に全体の20%ほどだった非正規雇用の割合は、令和2年の割合で38.3%(男性22.2%・女性54.4%)と増加しています。上で取り上げた国税庁の「民間給与実態統計調査」によると、正社員の平均給与が508万円に対して、正社員以外の平均給与は198万円。
給与が低い非正規雇用が増加しているという現状を見るだけでも、生活費以外に奨学金を返済するのが困難な人が増えていることは容易に想像できます。
参照:年齢階級別非正規雇用労働者の割合の推移|男女共同参画局
一人暮らしのコストが増加
実家暮らしよりも一人暮らしの人の方が、生活費にコストがかかるため奨学金を返せなくなりがちです。コスト増の原因は景気の悪化や物価の高騰など様々ですが、とくに大学を卒業したてだと正社員でも給与が安く、一人暮らしにかかる住居費や光熱費、食費や日用品費の負担は大きくなりがちです。
奨学金の毎月の返済額の平均が17,000円、中央値が15,000円となっていますが、毎月2万円弱でも一人暮らしだとより返済が厳しくなるでしょう。
他に借金がある
奨学金の他に借金があると、奨学金の返済が負担になるのは当然といえるでしょう。在学中に遊ぶためや生活のために学生ローンを利用していたという人がいるかもしれません。また卒業してからの出費や生活費をねん出するために消費者金融から借金したという人もいるでしょう。
こうしたカードローンはおおむね高金利で、金利の支払いだけでも負担になります。借金を返すために他からお金を借りてしまう「多重債務」に陥ると、そこから抜け出すことは容易ではありません。奨学金の他にも借金があり、これらの返済が滞っているという方は、自力での返済は困難といえます。
奨学金が返せなくなると起こること
奨学金を返済できなくなったとしても「払えるときに払えばいいんじゃない?」「今払えなくてもなんとかなる」という考えでいるのは大変危険です。繰り返しになりますが、奨学金といえども借金です。借りた奨学金を返せなくなると、どのようなリスクが起こるのか時系列とともに詳しく解説していきます。
電話等で催促される
奨学金の返済を決められた期日までに行わないと、自宅等に督促の電話が入ります。自宅や携帯につながらなかった場合は、勤務先や保証人にも連絡が行くことがあります。職場に奨学金を滞納していることを知られる可能性があることを覚えておきましょう。
延滞金が発生する
奨学金の返済を滞納すると、利子にプラスして延滞金が発生します。延滞金の年利は奨学金の種類(第一種・第二種)によって変わってきますが、2.5~5%前後です。1度だけの返済遅れでは発生しないものの、2回以上返済が遅れると、延滞金が発生するので注意が必要です。
延滞金は延滞している割賦金(分割返済の各返済金)に対して加算されるため、延滞金の金額が高額になり、延滞期間が長くなる程、トータルで返済すべき奨学金が多くなってしまいます。また奨学金を借りた時期や採用年度、返済方法によって延滞金の率が異なります。まずは自分が延滞した場合の延滞金がいくらになるのか確認してみましょう。
ブラックリストに登録される
3カ月以上奨学金の返済を延滞すると、個人信用情報機関に事故情報として登録されます。いわゆるブラックリストに載るという状態で、普通の借金の延滞と同じです。日本学生支援機構は信用情報機関の一つ、KSC(全国銀行協会)に加入しているので、KSCのデータベースに延滞の事実が「金融事故情報」として登録されることに。
ブラックリストに登録される期間は、完済から5年となっています。つまり奨学金を完済して5年経過しない限り、この情報は残り続けるという訳です。
ブラックリストがいつ消えるかや確認方法については、こちらの記事を参考にしましょう。
「ブラックリストはいつ消える?消し方は?個人信用情報をきれいにする方法」
ブラックになることで審査に落ちる
信用情報機関に事故情報として登録されることで、さまざまなデメリットが生じます。社会人として生活する場合に、次のような小さくない影響が出てしまうことをしっかり頭に入れておきましょう。
- クレジットカードが新規で作れない
- 車やマイホームの購入でローンを組めない
- スマホ本体の分割払いが利用できない
- 保証人になれない
- 賃貸物件を契約できない場合がある
キャッシュレス決済が主流の今の日本で、クレジットカードが作れないのは大きな打撃です。また通勤で必要な車や結婚で新居を購入するときにもローンが組めず、こうした高額な買い物でも一括で購入するしかなくなります。また細かいようですが、スマホや携帯電話の本体分割払いが利用できないのも忘れてはいけません。
さらに保証人になれない、契約できない賃貸物件があるということも覚えておきましょう。賃貸物件に関しては、信販系の保証会社との契約が必須の場合や、家賃支払いがクレジットカードのみの場合に限られます。いずれにしてもブラックリストに登録されると、社会人としての生活に大きな影響が出ることは間違いありません。
保証人に請求がいく
奨学金の返済をしないでいると、延滞分の請求が連帯保証人もしくは保証人に行きます。奨学金を借りるときには、機関保証を利用するか保証人を設定しなければなりません。機関保証は毎月保証料がかかるため、親や4親等以内の親せきに保証人になってもらっている人も多いでしょう。
(連帯)保証人は、主契約者のあなたが返済できなくなったときのためにいます。いくら奨学金をすべて自分で返すと約束していても実際に返済できていなければ、(連帯)保証人に請求が行ってしまうでしょう。請求が行くのは本人→連帯保証人→保証人という順番になります。
とくに連帯保証人は、全額を一括で返済しなければなりません。奨学金を返せないでいると、保証人にも重い負担が生じるということを覚えておきましょう。
連帯保証人は支払い拒否できるかについては、こちらの記事を参考にしましょう。
「連帯保証人は支払い拒否できる?種類・状況ごとの対処法を知って差し押さえを回避しよう」
一括請求される
(連帯)保証人も奨学金を返せない場合、全額を一括で返済するように求める「一括請求」を受けることになります。平均的な貸与額だとしても、利息や延滞金を含めた300万円以上の大金を一括で支払わなければなりません。大学を卒業して間もない場合は、300万円以上を一括で返済できないという人がほとんどではないでしょうか。
奨学金が返せないというときには、間違っても放置せずに、早めに根本的な解決をしておいた方がいいでしょう。
奨学金を一括返済するように請求されたときの対処法は、こちらの記事を参考にしましょう。
「奨学金を一括返済するよう請求された!無視した場合のリスクと対処法を解説」
給与や預貯金の差し押さえ
奨学金の返済をしないでいると、最終的には法的措置をとられ、給与や預貯金などの財産が差し押さえられてしまうでしょう。日本学生支援機構では、9カ月以上の延滞があると、顧問弁護士名義の期限付き督促状を送るようになっています。この督促状を無視していると、裁判所に訴訟を起こされ、強制執行となるでしょう。
強制執行は裁判所の許可を得て行われるため、これを拒否することはできません。給与を差し押さえられると、勤務先にまで奨学金を延滞していたことがバレてしまいます。自分で自分の首を絞める羽目になるので、奨学金を延滞し続けることは絶対にやめましょう。
奨学金を延滞したときの流れについて詳しくは、こちらの記事を参考にしてください。
「奨学金400万円は返済するまで何年かかる?奨学金を延滞した時の流れや対処法、減額方法について調査」
奨学金を返せないときにできる対策
奨学金を返せなくなることは、誰に身にも起こりえること。しかしその後の対応次第では、影響を最小限に抑えることができます。こちらでは、奨学金を返せなくなったときにできる対策や対応について解説していきます。
専用窓口に相談
奨学金の返済が難しくなったときには、奨学金を借りているところにまずは相談しましょう。日本学生支援機構では、奨学金の返済に関して困っている方のために、専用の「奨学金相談センター」を設置しています。電話での相談も受け付けているので、ナビダイヤル(0570-666-301)まで相談してみてはいかがでしょうか。
相談センターでは、現在の支払い状況やあなたの現状をみて、最適なアドバイスをしてくれるはず。支払期限を過ぎてからでは、次に紹介する減免制度を受けられない可能性が出てきます。また延滞金が付くなど、返済が不利になるので、実際の返済期限前までに余裕をもって相談するようにしましょう。
返還免除制度
日本学生支援機構では、奨学金の返還を免除できる制度があります。次の二つの制度があるので、該当するかどうか確認してみましょう。
本人に返還できない理由があるとき
奨学金を借りた本人が死亡したり、精神もしくは身体の障害によって働けなくなったときに返還を免除できる制度があります。奨学金を借りた当事者が、次の3つの条件に当てはまる場合にこの制度が受けられます。
- 死亡した場合
- 精神もしくは身体の障害により労働能力が失われた場合
- 精神もしくは身体の障害によって労働能力に高度な制限があるため返還ができなくなった場合
こちらの制度で奨学金を免除にするには、かなりのハードルです。ほとんどの場合は免除になることはなく、返済義務がなくならないことを理解しましょう。とはいえ、こちらの制度が利用できるのは本人に不幸な出来事があったときといえます。できれば条件に該当しない人生を送るのが望ましいでしょう。
学業で特に優秀な成績をおさめたとき
もう一つの条件は、在学中の学業で特に優秀な成績を収めたときです。この「特に優秀な成績」というのは、具体的に基準がないものの、次のような評価基準に基づいて各大学が総合的な評価を出します。
- 学位論文やその他の研究論文
- 大学院設置基準に定められている研究や試験の結果
- 著書、データベースなどの著作物
- 発明
- 芸術の発表会の成績
- スポーツ競技の成績
- ボランティア活動など社会貢献活動の実績
- その他日本学生支援機構が定める業績
このような条件を満たした場合、奨学金の一部または全部が免除となります。
参考:特に優れた業績による返還免除の手続き|日本学生支援機構
奨学金が免除になる制度について詳しくは、こちらの記事を参考にしましょう。
「奨学金返済が免除になる制度はある?免除が受けられないときの支援制度や注意点を解説」
返還期限猶予制度
災害や傷病、失業や経済的事情によって返済ができなくなった場合には、返還期限の猶予を申し出ることで、最大10年間返済期日を延ばすことができます。この制度を利用すれば、支払期限を過ぎたからといって督促をされたりブラックリストに登録されることがありません。また延長した分の利子や延滞金も発生しません。
返還期限の猶予制度には、一般猶予・在学猶予・猶予年限特例又は所得連動返還型無利子奨学金の返還期限猶予の3種類があります。それぞれ利用できる条件や内容が異なるので、詳しくは日本学生支援機構の「返還を待ってもらう(返還期限猶予)」を参考にしましょう。
減額返還制度
災害や傷病、その他経済的な事情により奨学金の返済が難しい方を対象に、奨学金を利用するときに決めた毎月の返済額を一定期間半額に減らし、その分返済期間を延長できる減額返還制度があります。返済総額が減額できる訳でないものの、最大で15年まで延長が可能です。
1回の申請につき適用期間が1年なので、毎年申請する必要があります。減額返還制度を利用できるのは、次のような条件を満たす人です。
- 月賦返還である
- 口座振替加入者である
- 申請および審査の時点で延滞していない
- 収入の目安が会社員等:325万円以下、自営業者等:収入-経費が225万円以下である
詳しくは、日本学生支援機構の「減額返還制度の概要」を参考にしましょう。
奨学金の返済に困ったときの裏技については、こちらの記事を参考にしてください。
「【裏技5選】奨学金の返済に困ったら…注意点や最終手段も詳しく解説!」
債務整理
上で紹介した各種制度を利用しても返済が難しい方や、そもそも条件に該当しないという方は、「債務整理」という方法があります。債務整理とは、法律などで認められた借金解決方法。債権者と直接交渉したり裁判所に申立てることで、借金を減額したり免除できる手続き。次の3つの種類があるので、その特徴や効果を確認しましょう。
任意整理
任意整理とは、債権者と直接交渉して利息や遅延損害金の減額、支払期間の延長を求める手続きです。減額できた借金は、通常3年~5年かけて返済していきます。利息の高いカードローンやリボ払いの借金などに有効ですが、元々利息が低く返済期間が長い奨学金は任意整理に向いていません。
そもそも日本学生支援機構では任意整理に応じない可能性が高いので、任意整理する場合は奨学金以外の借金を対象にしましょう。任意整理は手続きする対象の債権者を選べるため、奨学金を対象から外すことが可能です。また保証人がついている借金を除外できるため、保証人に迷惑をかける心配もないでしょう。
任意整理しない方がいいケースや解決方法については、こちらの記事を参考にしてください。
「任意整理をしない方がいい14のケースとありがち誤解とは?悩んだときの解決方法も解説」
個人再生
個人再生は、裁判所に申し立てて「再生計画案」を認めてもらうことで、借金を大幅に減額できる手続き。減額できる金額(最低弁済額)は借金の総額に応じて次のように決まっています。
借金総額 | 最低弁済額 |
---|---|
100万円以下 | 総額とイコール(借金が減額されない) |
100万~500万円 | 100万円 |
500万~1500万円 | 1/5 |
1500万~3000万円 | 300万円 |
3000万円~5000万円 | 1/10 |
300万円の奨学金の返済が残っている場合は、100万円にまで減額できます。ただし減額された分の金額は、奨学金の保証人が負担することになります。また減額後も3年~5年は返済が継続するため、一定上の安定した収入が必要です。
個人再生の最低弁済額については、こちらの記事を参考にしてください。
「個人再生の最低弁済額が知りたい!手続き別の計算方法や減額できないケース、滞納後の対処方法」
自己破産
裁判所に破産を申し立てて、「支払不能」と判断されたときにのみ自己破産が可能です。自己破産すると非免責債権を除くすべての借金の返済義務がなくなります(免責)。また現在収入がなくても手続きできるのも大きなメリット。ただし一定以上の財産が処分され、資格や職業に制限が付きます。
裁判所に申立てる個人再生・自己破産では、国の機関誌「官報」に住所や氏名が載ることに。すべての債務整理に共通するデメリットとして、ブラックリストに登録されるということがあります。
20代の自己破産を後悔しないためのポイントは、こちらの記事を参考にしてください。
「20代の自己破産で後悔しないために|現状とメリット・デメリット、気になるポイントを解説!」
奨学金以外の借金がある人は弁護士に相談
奨学金以外にも借金があり、これらの返済に困った場合は弁護士に相談してください。上で説明した通り、債務整理にはいくつかの方法があり、保証人の有無や借金総額、現在の支払い状況に応じて最適な選択肢は人それぞれ。借金問題に詳しい弁護士に相談できれば、ベストな方法を教えてくれるでしょう。
またそのまま弁護士に債務整理の手続きを依頼することも可能。債務整理を成功させるには、借金や法律に関する知識が不可欠です。債務整理や借金問題の実績が豊富な弁護士に相談し、一日も早くあなたの生活を立て直すことに尽力しましょう。
まとめ
奨学金を返せないのは決して甘えでなどはなく、突発的な不運魔出来事や日本を取り巻く様々な事情、働き方の変化などにより誰にでも起こりえることです。とはいえ奨学金を返せないままでいると、延滞金が加算され保証人に請求が行き、一括請求されて最終的には給与や預貯金が差し押さえられてしまいます。
そうならないためには、なるべく早い段階で専門の相談センターに連絡し、期間を延長したり減額できないか相談しましょう。条件に当てはまれば、十分な収入が得られるまで返済をストップできる可能性も。ただしすでに延滞していると、これらの制度が利用できない恐れがあります。返せなくなってしまう前に手を打つのがポイントです。
それでもどうしても返済が難しかったり、奨学金以外の借金がある方は、弁護士に相談して最適な債務整理方法をアドバイスしてもらいましょう。多くの弁護士事務所では、借金問題の相談を無料で行っています。まずは弁護士に相談し、どのような借金解決方法があるか知ることから始めましょう。