借金滞納後に裁判に行けない場合の対処法|状況別8の方法と弁護士に依頼するメリットとは

NO IMAGE
  • 「借金滞納で裁判を起こされたときに裁判所に行けないとどうなる?
  • 「民事訴訟を起こされて裁判所に行けないときの対処法が知りたい」

借金を相当期間滞納し続けていると、債権者によって法的措置が取られます。裁判は原則平日の日中に開かれ、場合によっては遠方の裁判所となる可能性があるので、必ずしも裁判に行けるとは限りません。そこでこちらの記事では、状況別に裁判に行けないときの対処法を紹介。

裁判に行かないとどのような結果になってしまうかや裁判所に呼び出される可能性があるケースについても解説していきます。裁判を乗り切るには、法律の知識を持つ専門家の協力が欠かせません。弁護士に依頼するメリットをよく理解し、適切な方法で今起きている事態を乗り切りましょう。

 

 無料相談

借金のお悩みを無料で弁護士に相談できます!

当サイトでは債務整理や借金問題に強い弁護士のみを掲載! 無料相談・土日祝日・オンライン面談可能など、あなたの希望に合った弁護士事務所を探せます。まずはお気軽にご相談ください。

目次

借金滞納で裁判を起こされた場合どうなる?

そもそも借金滞納で裁判を起こされた場合、どのような書類が届き裁判所に呼び出されるのはどのようなケースなのでしょうか。そして結果的に裁判に勝訴・敗訴すると、どうなるのかご存じですか?こちらでは、借金滞納で裁判を起こされた場合について解説していきます。

裁判所から書類が届く

借金滞納で債権者に裁判を起こされると、突然裁判所から書類が届きます。こちらでは裁判所から届く書類の種類から、いまどのような手続きが行われているかについて見ていきます。

支払督促

裁判所から「支払督促申立書」という書類が届いた場合、債権者は簡易裁判所に支払督促の申立てをしたことが分かります。支払督促とは債権者から提出された書類をもとに裁判所で審理が行われる法的手続き。支払督促は借金の返済だけでなく、次のような金銭の支払い・請求や有価証券、もしくは代替物の引き渡しを求める手続き。

  • 売買代金
  • 給与や報酬
  • 請負代金や修理代金
  • 地代や家賃
  • 敷金や保証金

支払督促に限度額はなく、通常の裁判とは異なり審理のために裁判所に出向く必要はありません。とはいえそのまま放置しておくと、債権者は債務者の財産を差し押さえることができるようになります。差し押さえを回避するには支払督促が届いた2週間以内に、同封された異議申立書を作成して裁判所に送付する必要があります。支払督促の内容に間違いがなければ、異議申立書に分割払いをしたい旨を記載して返送してください。

訴状

支払督促で異議申し立てをした場合は、通常の裁判に移行します。また支払督促を経由せずにいきなり債権者が裁判を提起した場合にも、自宅に訴状が届きます。訴状には「○月○日に口頭弁論が開かれるので、裁判所に出頭するように」との内容が記されています。

同封された証拠書類をよく確認し、「答弁書」を必ず期日までに提出してください。答弁書を期日までに提出せず期日にも出頭しないと、相手方の主張を全面的に認めたとみなされて欠席のまま裁判が終了します。弁護士に依頼しない場合は、自分で期日に出頭する必要があります。

裁判所から訴状が届いたときの対処法は、こちらの記事を参考にしましょう。

「裁判所から訴状が届いた…どうすればいい?適切な対処法&借金解決方法とは」

裁判所からの書類は受け取り拒否できる?

「裁判所から書類が届いても、受け取らなければいいのでは?」と考える人がいるかもしれませんが、裁判所からの書類は基本的に受け取り拒否ができません。訴状などは「特別送達」という郵送方法で送られます。この特別送達は正当な理由なく受け取りを拒否できず、もし名宛人が受け取りを拒否すると、郵便局員が郵便物をその場に差し置くことで受け取ったものとみなされます。

また本人以外の家族や職場などに届いた場合は、受け取った人が誰でも配達されたとみなされます。さらに受け取り日時は裁判所に報告されるので、郵便物が届いたのに届いていないと嘘をつくことができません。

誰も受け取らず訴状などが裁判所に差し戻された場合、債権者は「付郵便送達」という制度を用いる可能性があります。付郵便送達とは、裁判所が改めて書類を書留郵便で送り、受け取っていなくても郵便物が配達されたとみなされる郵送方法。

付郵便送達で訴状等の配達が完了すれば、債務者がそれを受け取っていなくても欠席裁判という形で裁判が進行されます。最終的には異議がないとみなされて、債権者に有利な判決が下りてしまうでしょう。

借金滞納で裁判所に呼び出されるケース

借金滞納で裁判所に呼び出されるのは、次のようなケースです。

簡易裁判所での裁判

借金滞納で裁判所に呼び出されるのは、簡易裁判所での裁判です。裁判所法という法律には各裁判所で扱う事件の種類が決められています。簡易裁判所については行政事件訴訟に係る請求を除いて、訴訟の目的の価額が140万円を超えない請求となっています。

呼び出される可能性がある状況

呼び出される可能性があるのは、次のような状況にあり問題となっている金額が140万円以下のケースが該当します。

  • キャッシングやクレジットカードの支払いを滞納した場合
  • スマホ通信料や本体分割払いを滞納したとき
  • 給与や家賃の支払いを滞納した場合
  • 貸したお金を返して欲しいなどの個人間の紛争があったとき
  • 売掛代金に関する会社間の紛争があった場合

その他に、窃盗や横領など比較的軽微な罪を犯した場合や罰金以下の刑に該当する罪を犯した場合なども簡易裁判所からの呼び出しを受ける可能性があります。ただしこのようなケースは刑事裁判に該当し、同じ簡易裁判所でも厳格さや手順も全く異なります。

家賃滞納で裁判所から呼び出しがあった場合は、こちらの記事を参考にしてください。

「家賃滞納による裁判所への呼び出し|裁判の流れと和解するためのポイント、滞納家賃の対処法を徹底解説」

簡易裁判所における民事裁判の流れ

簡易裁判所での民事裁判の場合、原則として1回の審理で済む少額訴訟が基本です。まず自宅に、裁判所から次のような書類が届きます。

  • 訴状
  • 第一回口頭弁論期日呼出状及び答弁書催告状
  • 少額訴訟手続きの内容を説明した書面
  • 証拠書類
  • 裁判所地図等

簡易裁判所で少額訴訟を起こされた場合は、記載されている期日に出頭するか最初の期日の前までに答弁書を提出する必要があります。届いた書類すべてに目を通して、何をしなければならないか確認しておきましょう。

簡易裁判所での裁判の結果

簡易裁判所であっても、通常の裁判と同様に判決が出ます。

裁判で敗訴する

自分が作った借金の裁判で敗訴すると、判決で認められた金額を速やかに支払う法律上の義務が発生します。敗訴後にも判決通りの支払いを行わないと、給与や預貯金など所有している財産の強制執行が裁判所によって行われます。

裁判で勝訴する

自分が借りた借金の裁判であっても、次のようなケースでは裁判に勝訴する可能性があります。

消滅時効が完成しているとき

消滅時効が完成していると、裁判に勝訴する可能性があります。消滅時効とは債権者が一定期間権利を行使しないことにより、債権そのものが消滅すること。民法第166条では、次のようなケースで債権は時効によって消滅するとしています。

  1. 債権者が権利を行使することができると知ったときから5年間行使しないとき
  2. 権利を行使することができるときから10年間行使しないとき

借金の消滅時効に関しては、最後に返済した日の翌日から5年経過すると、時効が成立します。実際の返済義務を失くすには「時効援用」という手続きが必要です。時効援用通知書という書面を作成し、債権者に内容証明郵便を送ると時効援用となります。時効が成立しているかの判断や時効援用の方法は、専門的な法律の知識が必要です。弁護士などの専門家に手続きを依頼しましょう。

借金の時効援用の方法や、失敗しないためのポイントは、こちらの記事を参考にしてください。

「借金の時効に関する基礎知識|時効までの期間と時効援用の方法、失敗しないためのポイントとは」

債権者が闇金業者のとき

借金をした相手が闇金業者の場合、借金が残っていても返済の義務はありません。というのも平成20年6月に最高裁判所で出た判決では、闇金業者が著しく高金利で貸付を行った場合に、利息分だけでなく支払った元本の全額を損害として請求できるとしています。つまり闇金側から借主に対して、借金の返済を求めることができないという訳です。

参考:最高裁判所平成20年6月10日判決の概要| 金融庁

闇金が借金を完済させてくれない理由や対処法は、こちらの記事を参考にしてください。

「闇金が借金を完済させてくれない…どうすればいい?その理由と手口、適切な対処方法とは」

期限の利益を失っていないとき

期限の利益を喪失していないとき、裁判を起こされたとしても勝訴する可能性があります。期限の利益とは返済期日まで借金返済を待ってもらえるという権利のこと。期限の利益を喪失していないと証明できれば、相手が起こした裁判に勝訴できるという訳です。

ただし次のようなケースでは、期限の利益を喪失するため裁判に負ける可能性が高いでしょう。

  • 返済期日までに返済しなかった
  • 契約違反があった
  • 債務整理をした
  • 契約時の年収をごまかすなど虚偽の申請をした

何度も滞納を繰り返すなどした場合、期限の利益を喪失したとして一括請求されます。

裁判所の呼び出しを無視するとどうなる?

簡易裁判所から呼び出しがあったのに、出頭できないもしくは出頭する意志がない場合でも、無視するのは絶対にNGです。やむを得ない事情があるときはもちろんのこと、裁判の内容に身に覚えがなくても、無視せずに対応するようにしましょう。こちらでは、裁判所の呼び出しを無視するとどうなるかについて解説していきます。

差し押さえまでの期間が早まる

債権者からの督促や裁判所からの通知を無視していると、差し押さえまでの期間が早まるのは確実です。書類の内容が事実だからと何もアクションを起こさないと、債権者が請求した通りの金額が認められて裁判が敗訴に終わります。そのまま強制執行されて財産を差し押さえられるのは時間の問題です。

差し押さえまでの時間が早まるので、返済の準備すらできません。そうならないために裁判所から訴状が届いたら、まずは弁護士に相談するなどして適切な対応を取りましょう。

住民税の滞納で差し押さえされるまでの流れと回避方法については、こちらの記事を参考にしましょう。

「住民税の滞納で差し押さえられるまで|滞納リスクと流れを理解し、差し押さえを回避」

有利な条件で和解できなくなる

裁判を起こされるまで債権者からの連絡を無視し続けていると、有利な条件での和解ができなくなります。借金を滞納している段階でも、誠実に対応し返済への意思を示し双方の条件が合えば和解できる可能性があります。一時的な返済の猶予や、毎月の返済額の変更などに応じてもらえるという訳です。

しかし裁判を起こされるまで放置し続け、裁判所からの呼び出しまで無視していると、債権者と和解するのが困難に。とくに債権者としてもかかった裁判費用や借金を何としても回収したいと考えているため、和解は相当難しいといわざるを得ません。このようなことからも、借金への対応は早期に行うのが鉄則です。

判決等が出て強制執行となる

裁判所からの呼び出しを無視し続けていると、最終的に判決が出て財産を差し押さえられてしまいます。差し押さえ対象となる財産は、次のようなものです。

  • 給与や賞与(手取りの1/4もしくは33万円を超える部分)
  • 預貯金(債務相当額)
  • 車やバイク
  • 株などの有価証券
  • 土地や建物
  • 生命保険の解約返戻金
  • その他換価できる一定以上の財産

給与や賞与などは差し押さえに一定の制限があるものの、預貯金などは債務相当額に到達するまで徴収されます。最終的に残高がゼロになる可能性もあります。

差し押さえは家に来るのか知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。

「差し押さえは家に来る?家に来る理由・対象財産・差し押さえ回避法を解説」

勤務先などにバレる

給与が差し押さえになった場合、勤務先に借金を滞納していることがバレてしまうでしょう。というのも裁判所から勤務先に給与の差し押さえ命令が届くため。勤務先の給与計算担当者は、給与の一部を分けて債権者に支払う手続きが必要となり、給与明細にもその旨が記載されます。

勤務先の担当者や上司、代表者に知られる可能性が高いでしょう。また給与明細を見た家族にも、給与が差し押さえされたことを知られてしまいます。このように裁判を無視し続けていると、周囲に知られる可能性が高まるということを覚えておきましょう。

借金を放置して裁判所も無視するとどうなるかについては、こちらの記事を参考にしてください。

「借金放置して裁判所も無視するとどうなる?放置後に起こることを知り、適切な解決方法を選択しよう」

債務整理が難しくなる

裁判所からの呼び出しを無視していると、最終的に債務整理ができなくなります。というのも財産が差し押さえられるということは、債務者にその気がなくても債権者に返済していることになります。それが債務整理に不利になる可能性があるからです。

個人再生や自己破産といった債務整理では、特定の債権者にのみ返済する行為を「偏頗弁済(へんぱべんさい)」として、返済額が上乗せされたり免責を受けられない免責不許可事由に該当します。こちらが希望した訳でないものの、強制執行による差し押さえが偏頗弁済とみなされると、債務整理ができなくなる可能性があります。

そのため他の債権者からの借金があり、それらを債務整理しようと考えている場合には、偏頗弁済に該当する行為がないよう、特に気を付けなければなりません。

偏頗弁済がバレた後で起きることや回避方法は、こちらの記事を参考にしましょう。

「偏頗弁済はバレる?個人再生・自己破産でやりがちな例とバレた後で起こること、回避術とは」

【ケース別】どうしても裁判に行けないときの8つの対処法

どうしても裁判所に行けないとき、どのような対応をすべきなのでしょうか。こちらでは、ケース別の対処法を紹介していきます。

出頭するのが原則

借金滞納後に裁判所から呼び出しを受けたら、万難を排して出頭するのが原則。裁判所では、裁判を起こした債権者だけでなく、債務者の言い分も公平に聞いて判断する必要があるからです。とくに債権者の主張に不服がある場合、裁判所に行かないと不利な判断が下ってしまう可能性があります。

とはいえ、やむを得ない事情で裁判所に出頭するのが難しい場合もあるでしょう。そのようなときは、事情に応じて次のような対処をすべきです。

①答弁書を期日までに提出

出頭できる場合でもできない場合でも、答弁書を期日までに裁判所に提出するのを忘れずに。答弁書とは裁判で訴えられた被告が、訴状に対する自分の言い分を書いて裁判所に提出する書面のことです。訴状に書かれている内容のどこが間違っていてどこが正しいのかをはっきり書いたうえで、言い分があるときにはそれも書いてください。

また若いしたい場合には「分割払いで和解したい」など、具体的な和解案を記載して裁判所に提出しましょう。答弁書を提出せず最初の期日にも出席しないと、訴状に書かれている内容を認めたとみなされて、債権者の請求をそのまま認める判決が出る可能性が高いです。

答弁書の書式・様式

多くの裁判所では、答弁書を訴状と一緒に送っています。同封されている答弁書を使用しない場合は、自分で用紙を準備して、次のような書式で作成することをおすすめします。

  • A4用紙を縦長に使用する
  • 横書きで片面に記載する
  • 左端を3㎝ほど余白を開ける
  • 手書き・パソコンどちらでも作成可能
  • 作成年月日・連絡先(電話番号)・署名(又は記名)・押印

答弁書に書ききれない言い分があるときには、答弁書と同じ書式で「準備書面」という表題の用紙を作成して、答弁書と一緒に提出してください。尚、答弁書の詳しい書き方や書式は、裁判所のHPにも記載しているので参考にしましょう。

答弁書の提出方法

答弁書は同じものを3部作成し、1部は自分の控えとして持っておき、2部を裁判所用と原告用として裁判所に提出します。提出方法は、持参・郵送・ファックスのいずれの方法でも構いません。提出期限は裁判所からの書面に記載されているので、期限厳守で提出しましょう。

郵送する場合は、呼出状に書かれている担当書記官充てに送ります。裁判所によっては原告に答弁書を郵送するための郵便切手が必要な場合もあるので、訴状と一緒に送られてきた書面をよく確認してください。

②担当書記官に連絡する

期日に裁判所に行けそうもないときには、早めに裁判所の担当書記官に連絡してください。言い分を書いた答弁書を事前に提出していれば、最初の期日に限り出席できなくても答弁書の内容を期日で主張したという扱いになる可能性も。

また事情によっては、期日の変更が認められる場合もあります。相談時には変更して欲しい理由を出来るだけ具体的に伝えてください。とはいえ「仕事の都合で」といった理由では、期日の変更が認められない可能性が高いでしょう。裁判所のHPでも、仕事の都合だけで期日を変更することはできないと記載があります。

③擬制陳述をする

どうしても裁判所に行けないときには、擬制陳述(ぎせいちんじゅつ)をするという方法があります。擬制陳述とは、上で少し触れましたが答弁書を事前に提出しておくと裁判に出席したことになる制度です。簡易裁判所の場合は、擬制陳述により一度も裁判所に行かなくても対応することが可能です。

ただし注意したいのは、借金の滞納や軽犯罪により呼び出しを受けた場合は、原告の請求通りに判決が下ってしまいます。そのため「分割払いでの和解」を希望する場合は、事前に原告と話し合いをして合意している必要があります。合意が得られたケースに限り、和解案を示した答弁書や上申書を提出していれば、和解案通りの支払いを命じる判決が下ります。

④【移動自体が難しい場合】ウェブ会議システムを利用

入院中や妊娠中などで裁判所への移動が難しい場合、裁判所が遠方にあるなどの場合は、ウェブ会議システムを利用するという方法がとれます。ウェブ会議システムは、令和6年3月から利用できる方法で、新形コロナ禍船対策や司法手続きのデジタル化を推進する目的で始まりました。

インターネットを通じて裁判所と当事者および代理人がビデオ通話でやり取りすることで、裁判所に出向くことなく自宅や弁護士事務所から裁判に参加可能です。

ウェブ会議に参加するにはあらかじめウェブ会議システムに登録する必要があり、裁判所が認めた場合に利用が可能です。とはいえ本人確認の問題で代理人弁護士がいる場合以外認められない裁判所があり、そもそも管轄裁判所に設備があるかという問題もあるため、ウェブ会議システムを利用したい場合は、事前に担当書記官に確認するようにしましょう。

参考:民事訴訟の口頭弁論にウェブ会議で参加できるようになります|法務省

⑤【一括請求可能な場合】債権者に直接連絡

もし請求金額の一括返済が可能な場合は、裁判所ではなく債権者に直接連絡して一括返済したい旨を伝え、返済してしまうのが最も早い方法です。訴状に書かれている債権者の連絡先に問い合わせ、支払方法を確認してください。念のため、一括返済が完了すれば訴えを取り下げてもらえるかも確認するといいでしょう。

ただしいくら訴えを取り下げて欲しいからといっても、他の金融機関から借りて返済するのはおすすめできません。借金問題の根本解決とはならず、さらに返済の負担を増やすだけだからです。どうしても一括返済したいときには、信頼できる親族などを頼るようにしてください。

⑥【裁判所が遠方の場合】移送申し立てをする

出頭する簡易裁判所が遠方の場合は、裁判所に「移送申し立て」をするという方法があります。申し立てが認められれば、申し立てた側の住所地にある簡易裁判所で裁判ができる可能性があります。

移送申し立てが認められるケース

移送申し立てをすれば、全てで移送が認められる訳ではありません。移送申し立てが認められるケースは決して多くないため、次のような理由を具体的に記載する必要があるでしょう。

  • 被告側だけ移動や交通費の負担が極端に大きい
  • 病気やケガなどの身体的な事情により、遠方の裁判所に出頭できない
  • 出産したばかりで、生後間もない子どもの預け先がない
  • そもそも契約したのが被告の住所地にある営業所だった

病気やケガなどが理由のときには、証拠資料として診断書などを提出するといいでしょう。

移送申し立てのタイミング

移送申し立てを希望する場合は、答弁書を提出するよりも前に裁判所に「移送申立書」を提出してください。移送申立書より先に答弁書を提出してしまうと、移送が認められない可能性があるからです。移送申立書のひな形は、簡易裁判所のHPからダウンロードして作成するか、できない場合は自分で作成しても構いません。

管轄裁判所に関する規定がある場合

金銭消費貸借契約に、管轄裁判所に関する規定がある場合には移送申し立てが認められやすくなります。金融機関では契約書上で「東京地方裁判所を管轄する裁判所のみを第一審の専属的合意管轄裁判所とする」などと、専属的合意管轄を定めていることが多いです。

このような場合に裁判所が必要と判断すると、移送申し立てが認められる可能性が高いでしょう。

⑦判断能力がない場合】成年後見人を立てる

裁判所に呼び出された本人が認知症や知的障害などにより判断能力に乏しく、指定された裁判所まで行けない場合は、成年後見制度を利用することで本人の代わりに裁判手続きを進められます。成年後見人は、知的障害・精神障害・認知症などにより一人で判断するのが難しい場合に、契約や財産管理などの法的行為をサポートする人のこと。

成年後見人を選任するには、本人の住民票がある住所地を管轄する家庭裁判所で「後見開始の審判の申立て」を行う必要があります。事前に市区町村の相談窓口で必要な書類や利用手続きを相談できるので、まずは本人が済んでいる自治体役場や地域包括支援センター、社会福祉協議会などに問い合わせてください。

⑧弁護士に代理人になってもらう

弁護士に代理人になってもらうことで、本人が裁判所に出頭できないケースでも裁判をすすめられます。弁護士が代理人として裁判の対応をしてくれるので、一方的に有利な判決が出る心配がありません。裁判所への出頭をお願いできるだけでなく、弁護士に依頼することで様々なメリットがあります。

また本人が拘留中や服役中で刑務所にいる場合でも、弁護士に依頼するのがベストです。本人に代わって家族が弁護士に相談したうえで、刑務所長を通して本人と書面でのやり取りをしながら裁判への対応を検討します。

刑務所に入ったら借金はどうなるかについては、こちらの記事を参考にしましょう。

「刑務所に入ったら借金はどうなる?残された家族の対処法と時効援用の方法を解説」

裁判所に行けないと分かったら…弁護士に依頼

借金滞納により訴状が届いたが裁判所に行けないと分かったら、なるべく早めに弁護士に相談してください。裁判所に行けない場合に一人だけで対応するのが難しく、対応を間違ってしまうと不参加とみなされて裁判に負けてしまう可能性も。

やむを得ない事情で行けない場合にも、こちらに不利な判決が出ないために法律の専門家に相談の上、依頼してください。弁護士に依頼すると、次のようなことを行ってくれます。

裁判所に提出する答弁書等の作成

弁護士に訴訟代理人になってもらったら、裁判所に提出する答弁書の作成を依頼できます。司法書士や弁護士は裁判所に提出するすべての書類を作成できるので、作成を依頼しても問題ありません。専門家が作成することで、裁判所や原告にこちらの言い分を聞き入れてもらいやすくなるというメリットも。

訴訟代理人になってもらえる

弁護士に依頼すると、訴訟代理人になってもらえます。訴訟代理人とは本人に代わって訴訟追行を行う人をいいます。原告の訴えに不服がある場合や交渉したい場合に、本人に代わって対応してもらえます。

債務整理を依頼できる

弁護士に訴訟代理人になってもらうと、裁判を取下げられる方法として債務整理の手続きを依頼できます。債務整理には主に3種類あり、その中でも個人再生と自己破産は裁判所を通す手続きです。どちらも申立てから手続き完了まで時間がかかるため、その間に借金滞納の裁判が終わる可能性が高いです。しかし判決が出たとしても債権者からの差し押さえはできなくなります。

よって債務者から個人再生や自己破産の申し立てがなされた時点で、差し押さえは難しいと判断し、借金滞納の裁判を取下げてもらえる可能性が高いという訳です。では具体的に、個人再生や自己破産がどのような手続きなのか見ていきましょう。

個人再生

個人再生は借金総額の1/5~1/10にまで減額できる手続きで、減額後の借金は原則3年、最長でも5年で完済を目指す手続き。返済計画を「再生計画案」として作成し、債権者の意見を聞いたうえで裁判所が認めれば、計画通りの返済を継続することにより残りの借金が免除される借金解決方法です。

借金総額が5000万円以下であることや、将来にわたって継続的な収入を得られる見込みがあることなどが条件です。また「住宅ローン特則」を利用すると、ローン返済中の住宅を手放さずに済みます。手続きにかかる期間は6カ月~1年前後。

借金滞納による裁判を起こされた場合は、弁護士が債権者の請求に対して争う姿勢を見せつつ、緩やかに裁判を進行させ、その間に個人再生の準備を進めるのが一般的。裁判所に個人再生の申立てを行い、再生手続開始決定が出ると、ほとんどの債権者がその時点で裁判を取下げます。

個人再生の流れや必要書類は、こちらの記事を参考にしてください。

「個人再生の流れと必要書類とは?手続きにかかる期間と書類の入手方法も解説!」

自己破産

自己破産も個人再生と同様に、裁判所に申し立てて認められれば借金の返済義務を全額免除できる手続き。自己破産には同時廃止と管財事件の2種類があり、同時廃止の場合は借金滞納の裁判が中断することはありません。しかし自己破産が完了すれば借金が免除されるので、手続きを始めた時点で債権者は早めに訴えを取り下げる可能性が高いでしょう。一方で管財事件になると、裁判自体が中断します。

どちらの方法を取っても、借金滞納の裁判により差し押さえが実行される心配がなくなります。ただし自己破産では一定以上の財産を持っていると、処分されて債権者に分配されるため注意が必要です。とはいえ複数の借金を抱えている場合は全ての借金がゼロになるので、債権者一社から裁判を起こされているケースと比べても自己破産した方がメリットが大きいと考えます。

自己破産すると家族に迷惑がかかるのでは?と心配な方は、こちらの記事を参考にしましょう。

「自己破産すると家族はどうなる?影響が出ること・出ないことと迷惑をかけないポイントとは」

まとめ

借金滞納の裁判を起こされて訴状が届いたものの、裁判所に行けないからと放置していると、裁判に敗訴して給与や預貯金が差し押さえられるのは時間の問題。裁判所から通知が届いた時点で、内容を確認して適切な対処が必要です。

一括返済が可能なときには債権者に直接連絡しても構いません。どうしても裁判に行けないときには、担当書記官に連絡して答弁書を期日までに提出したうえで、擬制陳述やウェブ会議システムが利用できないか相談しましょう。場合によっては移送申し立てが認められたり、成年後見人を立てることで対応できる可能性があります。

訴状が届いたがどうしたらいいか分からない、裁判に行けそうもないというときには、弁護士に依頼するのがベストです。裁判所とのやり取りは、専門的な法律の知識が必須です。裁判をストップするために債務整理が有効な場合もあります。それらすべてを弁護士に依頼できれば、裁判の問題も借金問題も一度に解決可能です。

お住まいの地域で、債務整理に強い弁護士を見つける>>

債務整理の相談なら専門家にお任せください!

  • 借金で首が回らない
  • 人生を一からやり直したい
  • 自己破産のメリット、デメリットが知りたい
人生はいつからでもやり直せます。弁護士はあなたの味方です。

借金解決の基礎知識カテゴリの最新記事

PAGE TOP