- 「FXのロストカットを失敗してマイナスになった…」
- 「FXの失敗でできた借金は自己破産できる?」
FXは少ない資金で多額の取引ができることから、気軽に始められ大きな利益が期待できると人気の投資です。しかし知識がないまま始めてしまうと、大きな損失を抱えてしまうことも。ハイリスクハイリターンになりがちなFXで、知らないうちに借金が増えてしまったという人もいるのではないでしょうか?
こちらの記事では、FXによる借金の特徴や自己破産の可否を詳しく解説。さらに自己破産ができないケースや、手続きするときの注意点も紹介していきます。FXを始めたはいいものの、借金が膨らんで自己破産を考えている方は参考にしましょう。
FXによる借金の特徴と自己破産を考えるわけ
まずはFXによる借金の特徴や現状と、自己破産を考えるケースについて解説してきます。前提としてFXとは、「外国為替証拠金取引(Foreign Exchange)」の略称です。日本円と米ドルなど、二つの国の通貨を売ったり買ったりするときに生ずる差額によって利益を狙う取引。為替レートが上がるか下がるかの予想が必要で、取引方法によっては初心者にとって高リスクな投資でもあります。
気軽に始められることから失敗する人が増加
FXは気軽に始められるというメリットがある一方で、失敗する人が増えたという側面があります。かつて株取引やFXを行うためには、証券会社に赴いて口座開設などの契約が必要でした。しかし最近ではインターネットの発達やスマホの機能拡充などにより、自宅に居ながらいつでも手軽に口座を開設し、取引ができるようになりました。
間口が広がった分、十分に勉強をしないままに取引を始めるケースが増え、結果としてFXで失敗してしまうという訳です。FXは他の投資と異なり、次のようなリスクがあると考えられます。
- 外国為替相場の変動リスク
- 証拠金として入金した以上の損失が生じるリスク
- 金利変動のリスク
- レバレッジ効果によるリスク
- 売りたいときに売れないリスク
- 両建てによるリスク
レバレッジとは、FX会社に預けた証拠金以上の取引ができるFXならではの仕組みのこと。日本のFX会社を通して行う場合、個人名義の口座では、最大25倍までのレバレッジを利用して投資ができます。つまり10万円の資金で、最大250万円分の取引ができるという訳です。
両建てとは、同じ日本円-米ドルのペアで、売りと買いの両方を行う取引のこと。取引には手数料というコストの他に、スワップと呼ばれる金利差調整分が発生します。両建てを長期間続けると、手数料がかかるうえにスワップポイントを支払い続けなければならないリスクが生じます。
短期間で多額の損失になる可能性
FXは気軽に始められるというメリットがあるものの、短期間で多額の損失が発生する可能性が高い取引でもあります。上で紹介したように、最大25倍のレバレッジをかけられるということが理由です。成功すれば高額な利益を得られる一方で、失敗してしまうと多額な損失を出してしまう恐れも。
FXの失敗による損失が数百万~1000万円以上という人も珍しくなく、働いて借金を返そうと思っても返済が追いつかないケースもよく見られます。FXは資力以上の身の丈に合わない取引ができてしまうということで、失敗すると短期間に多額の損失を抱えてしまう可能性が高いでしょう。
FXでマイナス分を取り返すのは困難
FXで損失を抱えていても、FXで儲けられれば負け分を取り返せるのでは?と考える人がいるかもしれません。しかしそれは危険な「ギャンブラー思考」といわざるを得ません。FXで多額の借金を抱えるような状態では、手元資金もほとんどないのが通常。
働いたお金でFXをしようと思っても、少ない元手からでは損失をプラスにするまで膨大な時間がかかります。さらにその間は勝ち続けなければならないことを忘れずに。勝ち続けられる可能性はゼロではありませんが、きわめて低いということは一目瞭然です。
さらに一発逆転を狙うということは、FXをギャンブルとして見ているということに他なりません。儲けたときの快感が忘れられず、「次はきっと勝てるはず」と借金をしてまでFXをしてしまう…。このような人はそもそもFXに向いていないということを自覚した方がいいでしょう。
FXで自己破産を検討するケース
前出の通り、FXには様々なリスクがあります。その中でも自己破産を検討するまでに至るのは、次のようなケースが多いでしょう。
ロストカットによる損失
損失が増える一つ目は、ロストカットによるもの。FXは証拠金と呼ばれる元手を口座に入金し、レバレッジをかけて証拠金よりも大きな金額で取引できます。そして相場には激しい変動があり、大きな損失を抱えたままロストカットしてしまう可能性があるという訳です。
FXでは未確定の損失(含み損)が一定水準に達すると、FX会社が自動的に決済する「強制ロスカット」という仕組みがあります。しかし乱高下する相場では、強制ロストカットが間に合わず証拠金を大きく超えた値段で決済される場合があり、このときに損失額が多くなりがちです。
資金調達のための借金
また、FXの資金を調達するために借金をするケースもあります。当初の証拠金を調達する目的で借金する人もいれば、ロストカットを避ける目的で証拠金を上乗せするために借金する人もいます。手軽に借りられるからと、クレジットカードのキャッシングや消費者金融のカードローンを利用すると、15~18%という高い金利になることも珍しくありません。
それで利益を出せればいいのですが、負けが込んでくるとさらに資金を調達するために借金をするという悪循環に。気が付いたら数百万の借金を抱えてしまったという人もいるでしょう。
FXの失敗で作った借金は自己破産できる?
ではFXの失敗でできた借金は、自己破産できるのでしょうか。
自己破産は「免責」を裁判所に認めてもらう手続き
自己破産とは、裁判所に申し立てて借金が支払い不能だと認めてもらうことで、借金の返済義務を免除(免責)してもらう手続きです。債務整理の中でも、最終的かつ最も強力な借金解決方法となっています。一定以上の財産を債権者に配当する代わりに、原則としてすべての借金がゼロになります。
借金がなくなるということで、もう一度ゼロから生活を立て直すことができるのがメリット。自己破産は「破産法」という法律に基づいて手続きが進められます。自分で裁判所に申し立てすることも不可能ではありませんが、多くの場合は弁護士に依頼したうえで、手続きを進めていくことになります。
FXは「免責不許可事由」に該当
自己破産について定めた破産法には「免責不許可事由」があり、これに該当すると破産を申し立てても免責を受けることができません。破産法第252条1項の4には免責不許可事由として「消費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。」とあります。
浪費やギャンブル、偶然の利益を目的とした行為などでできた借金は、免責が認められないという意味です。FXや株式投資などへの不適切な投資は、典型的なギャンブルではないものの、ハイリスクハイリターンな投資方法であることから「その他の射幸行為」とみなされます。
その他の射幸行為には、先物取引や為替取引方法の一種であるバイナリーオプション取引、暗号資産取引も該当。FX取引を含むこれらの投資は、法的に自己破産しても免責が受けられない「免責不許可事由」に当たります。
その他の免責不許可事由
上で紹介した免責不許可事由の他に、次のようなケースも当てはまります。
- 不当に財産を減少させる行為(財産隠し)
- 不当に債務を負担する行為
- 特定の債権者にのみ返済する偏頗弁済
- 相手をだまして信用取引をする行為
- 自己破産において帳簿など必要書類を隠す行為
- 虚偽の債権者名簿を裁判所に提出する行為
- 裁判所や破産管財人への妨害行為
- 過去7年以内に免責を受けたことがある
- その他破産法上の義務違反行為
このようなことが発覚すると、自己破産しても免責が受けられず借金がゼロにならないので気を付けましょう。
裁量免責が認められる可能性
上記のような免責不許可事由がある場合でも、裁判所が破産に至った経緯や反省の度合いなどを考慮して免責を許可することがあります。これを「裁量免責」といい、破産法第252条でもこれを認めています。法的にはFXは射幸行為とみなされ免責を受けることができませんが、裁量免責が認められれば借金をゼロにできるという訳です。
裁量免責の判断基準
裁判所では裁量免責を出すかどうかの判断基準として、次のような事情をチェックします。
- 借金などの金額が増えた経緯
- 自己破産の申立てに至った経緯
- FXに使った金額
- FXをしていた期間
- FXで借金を抱えたことについて反省しているか
- 誠実に自己破産の手続きを進めているか
- 生活を立て直すために真剣に努力しているか
- 生活再建の見込みがあるか
- その他免責の必要が認められるか
たとえFXで多額の借金を抱えた人でも、FXをキッパリやめて誠実な態度で臨めば、裁量免責を受けられる可能性は高いでしょう。
裁量免責を受けられる条件や注意点は、こちらの記事を参考にしてください。
「ギャンブルが理由の借金は自己破産できない?裁量免責を受けられる条件・注意点を解説」
裁量免責を受けるためには?
FXの失敗でできた借金について確実に裁量免責を受けるためには、次のような項目に注意しましょう。
誠実に対応する
裁量免責を受けるためには、裁判所や破産管財人に対して誠実に対応することが基本です。裁判所や管財人からの呼び出しや問い合わせには、極力素早く対応し、誠実に回答するようにしましょう。聞かれたことに対しては必ず正確な情報を伝え、嘘をつかないのが原則となります。
求められた資料を提出
裁判所や管財人に求められた資料を指示通り提出することも、裁量免責を受けるためには大切です。自己破産の申立時には、財産や借金、居住地に関する証明書などさまざまな資料の提出を求められます。FXで借金を作った場合は、損失を出したFX口座はもちろん、所有しているすべてのFX口座の取引履歴が必要です。
取引履歴については過去2年分程度を要求されることがあるので、求められた資料はすべて提出するようにしましょう。裁判所や管財人は本人の態度だけでなく、「都合の悪いことを隠していないか」「他の調査との整合性がとれているか」などをチェックしています。都合の悪い資料を隠したり、他の調査と整合性が取れなかったりすると、そのこと自体が免責不許可事由になる可能性があります。
反省の態度を示す
反省の態度を言動で示すことも重要です。裁判所や管財人から反省文の提出を求められたときは、誠意ある対応をし、速やかに提出してください。また裁判所に赴いて破産管財人との面接や裁判官が免責をするべきか判断する「免責審尋」を受ける機会があります。
そのようなときに「今後どのようなことに気を付けて生活するか?」「同じ過ちを繰り返さないとなぜ言えるのか?」などの質問にスムーズに答えられるよう準備しておきましょう。
弁護士に依頼する
裁量免責を受けるためには、弁護士に依頼することが必須です。FXや株取引の失敗で自己破産を申し立て、裁量免責を受けるためには、慎重な対応が求められます。専門家に頼まずに自分で手続きしたり対応したりすると、書類の不備や適切な対応が取れずに免責を受けられない恐れがあるでしょう。
自己破産は提出書類や準備する資料が多く、手続きも複雑です。弁護士に依頼すれば書類の準備に関するアドバイスが受けられ、手続きを代行してもらうこともできます。さらに各裁判所で異なる裁量免責の運用について熟知しているため、裁量免責を受けられる可能性が高まります。
そして弁護士に依頼すると「受任通知」が債権者に送られた時点で、督促がストップし以後の返済をしなくて済みます。弁護士には事務所によって得意不得意があるため、必ず債務整理や借金問題に強いところに依頼するようにしましょう。
自己破産は可能だが費用が高くなる
FXが原因の借金は、裁量免責でゼロにすることが可能です。しかし手続きにかかる費用が、自己破産のもう一つの方法「同時廃止」よりも高額になることを覚悟しましょう。
管財事件になるから
FXは免責不許可事由に該当すると説明しましたが、自己破産で免責不許可事由に当てはまる場合はほとんど「管財事件」となります。管財事件とは、裁判所に選任された破産管財人が、破産者の財産や破産理由を調査し、没収した財産を現金化して債権者へ配当する手続きのこと。
自己破産を申し立てた段階では、管財事件か同時廃止かを自分で選ぶことができません。同時廃止になると破産管財人が選任されず、破産手続が始まると同時に終わり、免責が許可されます。一方の管財事件では、破産者が反省文を提出したり裁判所に月一回呼び出されて面接が行われます。手続きに時間がかかるのはもちろんのこと、破産管財人に支払う「引継予納金」という費用がプラスでかかることを覚えておきましょう。
管財事件の費用相場
管財事件の費用相場は、大きく分けて裁判所費用と弁護士費用に分けられます。それぞれの費用相場は以下の通りです。
裁判所費用 | 弁護士費用 | ||
申立手数料 | 1,500円 | 着手金 | 100,000円~500,000円 |
引継予納金 | 500,000円~ | 報酬金 | 0円~300,000円 |
郵便切手代 | 3,000円~15,000円 | 実費 | 数千円~ |
官報広告費 | 15,000円~20,000円 | – | – |
合計金額 | 519,500円~ | 合計金額 | 300,000円~500,000円 |
裁判所費用は申し立てする管轄裁判所によって多少の変動があるものの、およそ50万円ほど。弁護士費用は料金体系などにより幅が大きいです。着手金を高めに設定している事務所は、免責が認められた後に支払う成功報酬がなかったりします。逆のパターンもあるため、弁護士に自己破産を依頼する前にきちんと料金についても確認しておきましょう。
管財事件で手続きする場合、裁判所費用と弁護士費用をトータルすると80万円~100万円前後となります。同時廃止でかかる費用が裁判所費用で2万~3万円、弁護士費用が20万~35万前後と比較すると、随分高額になることが分かるのではないでしょうか。
自己破産にかかる費用について詳しくは、こちらの記事を参考にしましょう。
「自己破産にかかる費用相場・内訳を解説!安く抑えるコツや払えないときの対処法も紹介」
弁護士に依頼すると費用を減額できる可能性
上で説明した通り、FXの失敗で自己破産するときには、費用がかかる管財事件になります。ただし弁護士に依頼すると、場所によっては費用を抑えることが可能です。というのも東京地方裁判所など一部の裁判所では「少額管財」という制度が運用され、少額管財で手続きすると通常の管財事件よりも少額の費用で済みます。
東京地方裁判所を一例にすると、管財事件にかかる裁判所費用は50万円~ですが、少額管財では20万円~と大きく減額できます。ただし少額管財を申し立てるには、弁護士を代理人にすることという条件があります。少しでも費用を抑えたい場合は、弁護士に手続きを依頼するのが一つの方法です。
FXで自己破産ができないケース
裁量免責などにより、自己破産を申し立てた人のおよそ98%が免責許可を受けているという現状があります。もちろんFXの失敗でできた借金についても同様です。しかしながら破産申立てをした2%の人は、免責を受けることができません。そこでこちらでは、免責を受けられないケースについて解説していきます。
手続き中にFXを再開した
自己破産を申し立てた後にFXを再開してしまうと、免責を受けられない可能性が高いでしょう。通常破産手続開始後に受け取った給与などは、「新得財産」といい、債権者の分配に充てられません。破産者が自由に使うことができる訳ですが、そのお金をまたFXなどの投資やギャンブルにつぎ込むようなことをしてしまうと、反省の態度が見られないとして裁量免責を受けることができません。
「こっそりやれば分からないのでは?」と考える人がいるかもしれませんが、手続き中の行為を破産管財人に隠し続けることはできません。また破産管財人に嘘をつくこと自体が免責不許可事由に当たるため、発覚した時点で自己破産が失敗すると考えた方がいいでしょう。
FX以外に免責不許可事由がある
FX以外に免責不許可事由があると、裁量免責を受けることは難しいでしょう。FXの他にギャンブルなどの借金があると、悪質であるとみなされて免責が許可されない可能性があります。またその他にも、次のような行為を免責不許可事由と知らずに行っているケースがあるため注意が必要です。
免責不許可事由 | 内容 |
---|---|
偏頗弁済(へんぱべんさい) | 複数いる債権者のうち、特定の債権者にのみ偏って返済する行為
例えば担保のある住宅ローンや友人からの借金だけを返済するなど 債権者平等の原則に反するとして、免責不許可事由となる |
詐害行為 | FXによる借金を穴埋めするために、自分名義の財産を安く売ったり譲ったりする行為 |
財産隠し | 手続きの過程で没収されないために、故意に自分名義の財産を隠す行為
預金残高を他人の銀行口座に送金する・不動産の名義を親族に変えるなど |
クレジットカードの現金化 | クレジットカードのショッピング枠を使って購入した物を、質屋などに安く売る行為
信用取引による商品買い入れで、これを著しく不利益な条件で処分したとみなされて免責不許可事由に該当 |
免責不許可事由全11項目については、こちらの記事を参考にしてください。
「自己破産の免責不許可事由の11項目を解説!免責が下りなかったときの対処法とは?」
過去にも自己破産したことがある
申立て以前、7年以内に自己破産をしていると、それだけで免責不許可事由となります。ましてや前回も投資で失敗して自己破産したともなれば、反省していないとみなされるのは当然で免責が受けられない可能性が高いでしょう。7年のカウントがスタートするのは、「以前の免責許可の決定が確定した日」からとなります。
ちなみに7年以上前に自己破産した場合は、免責不許可事由に該当しません。しかしながらまた自己破産を申し立てたことにより、裁判所からの目は相当厳しくなると覚悟した方がいいでしょう。
自己破産できないと言われたときの対処法や解決方法は、こちらの記事を参考にしてください。
「自己破産できないと言われた!その具体的原因と対処法・解決方法とは」
自己破産ができないときは、他の債務整理を検討
上記のような理由があり自己破産できないときには、別の債務整理に切り替えることをおすすめします。自己破産以外の債務整理では、借金の理由が問われないからです。自己破産以外には主に次の2つの方法があり、それぞれの特徴は以下の通りです。
個人再生
個人再生は自己破産と同様、裁判所に申し立てて借金を大幅に減額できる手続きです。借金総額に応じて次のように最低弁済額が変動し、残った借金は原則3年、最長でも5年以内で完済を目指します。
債務総額 | 最低弁済額 |
---|---|
100万円未満 | 債務総額と同じ |
100万円~500万円未満 | 100万円 |
500万円~1,500万円未満 | 債務総額の1/5 |
1,500万円~3,000万円未満 | 300万円 |
3,000万円~5,000万円未満 | 債務総額の1/10 |
財産の有無や手続き方法によって最低弁済額の計算方法が異なるものの、大幅に借金額を減らせるのがメリット。また個人再生は自己破産のように免責不許可事由がないので、どのような理由の借金でも減額が可能です。住宅ローン返済中のマイホームをお持ちの方は、ローン返済を継続しながら家に住み続けられる「住宅ローン特則」があるのも特徴。
一方で、借金がすべてゼロになる自己破産と比べると、生活再建までに時間がかかります。手続き後も返済が続くため、ある程度の安定した収入がないと減額が認められません。
個人再生の最低弁済額の詳しい計算方法は、こちらの記事を参考にしましょう。
「個人再生の最低弁済額が知りたい!手続き別の計算方法や減額できないケース、滞納後の対処方法」
任意整理
任意整理は、裁判所を通さずに債権者と直接交渉して利息や遅延損害金のカット、返済期間の延長を目指す手続きです。手続きの過程で払い過ぎた利息があれば「過払い金」として返還請求が可能です。また交渉する債権者を選べるので、住宅ローンやカーローン、保証人に迷惑がかかる借金を除外できます。
しかし自己破産と比べると、FXで多額の借金を抱えた方にとって効果は限定的。借金の総額や種類によっては、個人再生を選択した方がいいケースもあるでしょう。自分にはどの債務整理方法が適しているか分からないという方は、謝金問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。
任意整理のメリットとデメリットについて詳しくは、こちらの記事を参考にしましょう。
「任意整理のメリット・デメリット|整理後の生活への影響を最小限にする方法とは?」
FXによる借金を自己破産するときの注意点
FXの失敗による借金を自己破産する場合、次のようなデメリットや注意点があります。
自己破産を成功させるにはキッパリとやめること
自己破産を成功させたいと思ったら、FXをはじめとする投資やギャンブルはキッパリとやめることが鉄則です。FXによる借金でも、裁量免責によって免責が許可される可能性が高いですが、手続き中に再開してしまうと反省の態度が見られないとして、免責が許可されない場合があるため。
破産者の中には、「やめたいけどついFXをしたくなってしまう」「自己破産を決めた後もFXしてしまった」という人もいます。このような場合、依存症に近い状態になっていると考えられます。自分一人の力や家族の協力だけでは解決できないこともあるため、依存症専門の医療機関や専門家によるカウンセリングを受けながら、依存症克服も目指すべきでしょう。
破産後のFX口座について
自己破産後のFX口座はどうなるの?と疑問に思われる方がいるかもしれません。FX口座は裁判所によって解約される可能性が高いでしょう。また証券会社の口座に残高が残っている場合は、破産管財人によって解約されて債権者に分配されることになります。
自己破産したことによってFX会社の判断で口座が凍結されたり解約されることはないものの、長期間取引がない口座や短期間でも集中取引などの約款違反があった場合は、口座を凍結・解約されるケースもあります。
自己破産後は、新規で証券口座やFX口座を開設することができます。しかし自己破産は、借金をゼロにすることにより破産者の経済的な更生や安定した生活を取り戻すための手続き。今後同じことを繰り返さないためには、新たなFX口座を作らない、残っている口座を解約することをおすすめします。
自己破産すると財産を処分される
自己破産は借金をすべてゼロにするという大きなメリットがある一方で、一定以上の財産を処分されるというデメリットがあります。自己破産では、生活に必要な財産以外は破産管財人によって処分、換価されて債権者に配当されるため。主に20万円以上の価値があるとされる、次のような財産が処分対象となります。
- 不動産
- 車やバイク
- 有価証券
- FX口座の残高
- 債権(貸付金・売掛金)
- 解約返戻金(生命保険・個人年金)
- 退職金の一部
- 貴金属・骨とう品・ブランド品
尚20万円以上という基準は、東京地方裁判所をはじめとする多くの裁判所で採用されていますが、全ての裁判所の基準という訳ではありません。詳細は手続きを依頼する弁護士に確認しましょう。
没収されない財産や財産隠しについて詳しくは、こちらの記事を参考にしてください。
「自己破産すると財産はどうなる?処分される・されない財産と財産隠しについて」
職業や資格が制限される
自己破産のデメリットとして、特定の職業や資格が制限されるということがあります。とはいえ、自己破産後ずっとという訳ではなく、自己破産の手続きを開始してから免責が決定するまでの間です。管財事件では6カ月~1年かかるケースもありますが、免責が決定されると制限が解除されます。
制限がかかるのは、主に次のような資格や職業の人です。
- 士業(弁護士・税理士・司法書士・行政書士・公認会計士など)
- 生命保険募集人
- 証券会社外務員
- 警備員
- 質業
- 宅地建物取引業者
- 旅行業者
- 建設業者
このほかにも会社の取締役になっている人は、破産手続が始まると法律上、強制解任となります。上記のような資格が制限されると、一度は登録削除となりますが、免責決定後にまた登録し直せば、仕事を再開することが可能です。
公務員が自己破産するとバレるか心配な方は、こちらの記事を参考にしてください。
「公務員が自己破産するとクビになる?バレるケースとバレない対処法を解説」
保証人が一括請求される
自己破産や個人再生など手続きする債権者を選べない債務整理では、申立人の借金が減免できます。一方で保証人や連帯保証人が付いている借金については、これらの手続きをすることで(連帯)保証人となっている人に残額の一括請求がされます。
親に借金の保証人になってもらっている、妻が住宅ローンの連帯保証人だという方は、自己破産を検討した段階で相談すべきでしょう。保証人が残額を一括で返済できればいいのですが、そうでないと保証人も自己破産を検討する必要が出てくるためです。
自己破産すると連帯保証人がどうなるかについては、こちらの記事を参考にしてください。
「自己破産すると連帯保証人はどうなる?借金の前と後&パターン別の対処法」
ブラックリストになることのデメリット
自己破産を含むすべての債務整理をすると、信用情報機関に登録してある個人の信用情報にそのことが登録されます。いわゆる「ブラックリスト状態」となりますが、ブラックリストとして登録されてしまうと、次のようなことができなくなることを覚えておきましょう。
- クレジットカードが使えない・新規で作れない
- ローンを組めない
- 分割払いで買い物ができない
- 保証人になれない
- 信販系の保証会社との契約が必須な賃貸物件を借りられない
ブラックリストに登録される期間は、信用情報機関によって異なるものの5年~10年間です。
自己破産のデメリットをもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしましょう。
「自己破産のデメリットを状況別に解説!誤解や嘘を解決して最適な選択へ」
まとめ
手軽にFX口座を作成したり取引できるようになった昨今では、FXの失敗で多額の借金を抱え、自己破産する人が増えました。法律上、FXの失敗による借金は免責不許可事由となるため免責が受けられませんが、裁量免責により裁判所に自己破産を申し立てた人の約97%が免責を受けられるようになっています。
ただしFX以外に財産隠しや偏頗弁済などの免責不許可事由がある場合は、裁量免責を受けられない可能性が高いです。また手続き中にFXを再開してしまった人も、反省の態度が見られないとして免責を受けられないでしょう。
FXで自己破産をする場合は、すぐにFXを止めるのが鉄則。裁判所や破産管財人からの問い合わせには誠実に対応し、心からの反省を示しましょう。また自己破産を失敗しないためには、弁護士に依頼することもポイント。万が一自己破産ができない場合でも、適した債務整理方法を提案してくれるはずです。