- 「自己破産はしたもん勝ちってホント?」
- 「自己破産の手続き方法やデメリットが知りたい」
自己破産は国が認めた借金解決方法で、免責を受けられれば借金をゼロにすることが可能です。そのため「借金返済できなくなっても自己破産さえすれば大丈夫」などと考える人が一定数います。しかし本当に「自己破産はしたもん勝ち」なのでしょうか。
そこでこちらの記事では、したもん勝ちといわれる理由や自己破産を迷ったときの対処法を紹介。さらに手続き方法についてや自己破産のデメリットについても解説するので、自己破産すべきかの参考にしましょう。自己破産はメリットもあればデメリットもある手続きです。しっかりとした知識を身に着け、後悔しない道を選びましょう。
自己破産が「したもん勝ち」と言われる理由
自己破産は本当に「したもん勝ち」な手続きなのでしょうか。このように考える人の中には、破産した人にお金を貸してしまい、結局お金を返してもらえなかったというケースもあります。特定の立場の人による意見に惑わされず、なぜ自己破産が「したもん勝ち」と言われるかについて考えていきましょう。
借金がゼロになる
自己破産が「したもん勝ち」と言われる大きな理由に、借金がゼロになるということがあげられます。自己破産すると、一定以上の財産を手放す代わりに、銀行や消費者金融など債権者に対する借金の返済義務が免除(免責)されます。借金が100万円だろうと1億円だろうと、免責が認められると借金を返済しなくてもよくなります。
逆にお金を貸した債権者にしてみれば、貸したお金が1円も返ってこなくなるので大きな損失です。自己破産の手続きが開始されると、その人には一切取り立てができなくなってしまいます。お金を貸した側からするとたまったものではありません。まさに自己破産はしたもん勝ちに見えてしまうでしょう。
国が認めた借金整理方法
自己破産がしたもん勝ちといわれる理由には、日本の法律が認めた借金解決方法ということもあります。いわば国のお墨付きの元で、借金をゼロにする方法といえるでしょう。自己破産は「破産法」という法律に基づいて手続きが進められます。このような意味では、自己破産することに対して何ら後ろ暗い思いを持つ必要はありません。
自己破産と行為自体は同じものに「借金の踏み倒し」があります。自己破産も踏み倒しもどちらも借金を返済しないという点では同じですが、借金を踏み倒した場合は、その後の社会的な立場は一切保証されません。完済するまでしつこく取り立てをされたり、裁判を起こされて財産を差し押さえられる可能性も少なくありません。
しかし自己破産は、借金の返済が不可能になった人を救済するための方法。借金を返済できずに最悪の選択をしてしまわないよう、日本の法律で認められている手続きです。破産後も最低限の生活が保障されるので、「自己破産すると人生が終わる」という心配がありません。
国の借金救済制度について詳しくは、こちらの記事を参考にしましょう。
「国の『借金救済制度』は信頼できる?債務整理の特徴と依頼手順、その他の解決方法を解説」
借金によるストレスからの解放
自己破産がしたもん勝ちといわれる理由に、借金返済によるストレスから解放されるという点も無視できません。今まで毎月の返済に頭を悩ませ、胃が痛くなるような思いをしてきた場合でも、自己破産して借金の返済義務がなくなることで、精神的ストレスから解放されて心身ともに健康になるでしょう。
実際にこのような思いをした人の中には「ある意味自己破産はしたもん勝ちだな」と感じる人もいます。
最悪の事態を回避するために必要
自己破産は借金を返済できなくなった結果として、悲惨な状況や最悪の事態を回避するために必要な措置。もしも自己破産という手続きがなければ、借金が返済できないほどに膨れ上がり、その人は逃げ道を失った結果、自ら命を絶つというケースが考えられます。実際経済的な理由から自殺を選ぶという人も少なくありません。
借金が返済できなくなった理由が事故や病気、会社の倒産や災害など、本人だけではどうしようもないやむを得ない事情だった人もいるでしょう。そのような人にとって自己破産は「したもん勝ち」というものではなく、その人の命を守るためになくてはならない制度といえます。
自己破産は「ズルい」というのは誤解
自己破産が「したもん勝ち」「ズルい」と思われる原因は、自己破産に関する知識が浸透していないための誤解にあります。自己破産というと「手続きさえすれば借金が帳消しになる」「貸し損になる」というイメージを持たれやすいためです。
しかし自己破産には破産法に基づいた条件やルールが設けられています。借金の理由によっては、免責されない場合があることも法律内で規定されます。さらに養育費や慰謝料、税金などは自己破産しても返済義務がなくなりません。
自己破産は借金を返済できない債務者の方に有利というイメージがありますが、あくまでも破産者の経済的更生が目的。債権者による異議申し立て手続きが認められていたり、債務者に財産がある場合は資産の分配を受けられます。決して債権者をないがしろにするようなルールとはなっていません。
自己破産とは?手続方法や申立条件
では自己破産は、実際のところどのような手続きで、申立条件はどうなっているのでしょうか。
自己破産は借金解決の最終手段
前出の通り、自己破産は借金解決のための最終手段です。国が認めた借金解決方法には、他に任意整理や個人再生という方法があります。しかしこれらの方法は、手続き後も返済すべき借金が残るため、現在返済能力が全くないという人には適しません。
一方で自己破産ができるのは、借金が返済不能状態に陥っていると判断された場合のみ。返済を継続できるだけの収入がない方や、収入に対して返済額が大きすぎる方に適した手続きとなっています。破産法では、破産債権について次のように規定しています。
第二百五十三条
破産者は、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。
自己破産によって債務者が裁判所から免責を許可されると、その後の借金(破産債権)の返済義務がなくなると規定されています
申立の条件
自己破産は借金解決の最終手段であるものの、借金返済ができないからといって簡単に免責が認められるわけではありません。破産法では、自己破産を申立てる条件として、次のように定めています。
- 支払不能状態であること(収入や資産がない、あっても完済が不可能)
- 借金が非免責債権だけでない
- 免責不許可事由に該当しない
非免責債権とは、自己破産の手続きをしても支払い義務がなくならない借金のこと。また免責不許可事由とは、自己破産で免責が認められない事情のことを指します。これらについては、下で詳しく解説してきます。自己破産で免責が認められるためには、非免責債権を除く借金が返済不能もしくは完済の見込みがなく、免責不許可事由に該当しないという条件が付きます。
自己破産ができない9のケースについては、こちらの記事を参考にしましょう。
「自己破産ができない9つのケースとは?対処方法や自己破産に適さない人について解説」
申立する人に多い経済的背景
自己破産を申立てる人に多い経済背景として、次のような状況をうかがうことができます。つまりこのような状況に該当する人は、自己破産を検討した方がいいと考えられます。
- 安定した収入がない・無職である
- 任意整理や個人再生では完済の見込みがない
- 借金返済に充てられる財産がない
- 借金総額が大きい
- 借金を返済するために借入を繰り返している
- やむを得ない事情で借金した
自己破産を選択する人の共通点として、極端に借金が増大してしまうか、極端に収入が少なくなるというケースが見られます。またやむを得ない事情があり借金したものの、自分の意思に反して返済できなくなった方も自己破産に向いています。
手続き方法
自己破産には破産手続開始決定と同時に破産事件を廃止する「同時廃止」と、免責不許可事由や財産があったときに破産管財人が選任される「管財事件」の二種類があります。それぞれの手続き方法について、詳しく解説していきます。
同時廃止
同時廃止とは、破産者の財産が20万円未満(現金は33万円未満)で、かつ免責不許可事由がない個人の破産に適用される、費用・時間がかからない簡便な自己破産の手続き。期間は4カ月~半年ほどで、費用も弁護士費用を含めて20万~40万円ほどです。同時廃止の手続きは、次のような流れで進められます。
- 弁護士に相談・依頼
- 弁護士より受任通知を送付・取引履歴の開示請求
- 取引履歴をもとに、引き直し計算による利息の再計算
- 裁判所に自己破産の申立
- 裁判所での面談(裁判官・本人・弁護士)
- 破産手続開始・同時廃止決定
- 免責審尋
- 免責許可決定
- 免責許可決定確定
管財事件
管財事件とは、裁判所より選任された破産管財人が、免責不許可事由がある場合や、一定以上の財産がある場合に、それらを調査し財産を債権者に分配、免責を認めるかどうか判断が必要な手続きです。手続きにかかる期間は7カ月~1年以上必要なケースがあり、費用も破産管財人に支払う予納金が50万円ほど必要なため、トータルで100万円近くかかることも。管財事件は次のような流れで進められます。
- 弁護士に相談・依頼
- 弁護士より受任通知を送付・取引履歴の開示請求
- 取引履歴をもとに、引き直し計算による利息の再計算
- 裁判所に自己破産の申立
- 裁判官との面接(即日面接・開始前尋問)
- 破産管財人候補者との面接
- 破産手続開始決定
- 破産管財人が選任・予納金の支払い
- 破産管財人による財産の調査・処分
- 債権者集会
- 破産手続の終結及び廃止
- 免責審尋
- 債権者への配当
- 免責許可決定
- 免責許可決定確定
「したもん勝ち」とは言えないデメリットも…
自己破産は「したもん勝ち」とは決していえないデメリットや注意点があります。これから自己破産しようかと考えている人は、自己破産のデメリットについてもしっかりと頭に入れておきましょう。
借金がゼロにならない「免責不許可事由」がある
自己破産には、申し立てしても免責が受けられない「免責不許可事由」が11項目あります。免責不許可事由は破産法第252条1項に次のように規定されています。
- 債権者を害する目的で財産を処分する行為
- 手続きを遅らせる目的での不当な債務負担行為
- 特定の債権者の利益になるような支払いをする行為
- 浪費や賭博が原因の借金
- 詐術による信用取引
- 帳簿や書類の隠滅、偽造など
- 虚偽の債権者名簿の提出
- 裁判所へ嘘の説明をしたり拒絶したりする行為
- 管財業務への妨害行為
- 過去7年以内に免責を受けたことがある
- 破産法上の義務違反行為
とくにギャンブルや浪費での借金や、申立前に財産隠しを行った場合、もう返済できないと分かっていたのに借金を繰り返したというケースが多く見られます。自己破産を申立てる場合は、裁判所を通じて借金の内容や借金を繰り返した経緯を徹底的に調べられます。ですからギャンブルや浪費など身勝手な理由で借金を作り、自己破産で借り逃げするというのは原則として不可能です。
ただし、「今後は絶対にギャンブルをしない」「生活態度を改めて借金体質を改善する」という態度が認められれば、裁判所の判断(裁量免責)で免責を受けられる可能性があります。この場合は管財事件扱いとなり、破産管財人によって借金の経緯を詳しく調査されたり、反省文や家計簿の提出が求められます。手続きに費用や時間もかかることを覚悟しておきましょう。
自己破産の免責不許可事由については、こちらの記事を参考にしてください。
「自己破産の免責不許可事由の11項目を解説!免責が下りなかったときの対処法とは?」
何度も自己破産できない
自己破産はそう何度も借金をゼロにできる手続きではありません。破産法では免責不許可事由として「過去7年以内に免責を受けたことがある」と定めています。つまり1回目の自己破産から7年以内は、2回目の自己破産が認められないということです。
たとえ7年以上経過した場合でも、2回目以降の自己破産は大変厳しくなるでしょう。法律の規定では自己破産に回数の上限はありません。しかし同じ理由で2度も自己破産を申立てると「前回から反省していない」とみなされ、免責が認められない可能性が高いからです。さらに2回目以降の自己破産は管財事件となります。気軽に何度も手続きできるというものではなく「借金に困ったら何度でも自己破産すればいい」と考えるのは間違いです。
自己破産できないときの対処法や解決方法は、こちらの記事を参考にしましょう。
「自己破産できないと言われた!その具体的原因と対処法・解決方法とは」
免責できない借金(債務)がある
自己破産で免責が認められても、支払義務がなくならない「非免責債権」というものがあります。自己破産は消費者金融からの借金やクレジットカードの支払い、銀行からのローンや個人からの借金返済を免除できる手続きですが、次のあげるような「非免責債権」の支払い義務はなくなりません。
もしこのような借金を抱えている方は、放置して支払わないでいると、裁判所から差し押さえられる可能性があるでしょう。
税金や社会保険料
住民税などの税金や国民年金保険・国民健康保険などの社会保険料は、自己破産しても免除されません。借金返済が難しくなると、税金の支払いや社会保険料を滞納しがちです。「自己破産すれば全部の借金がなくなる」と安心していても、税金や社会保険料の支払い義務はなくならないので注意が必要です。
これらの支払いは、滞納し続けると金額が大きくなりがちです。支払いが難しいときには、税務署や自治体役場に相談すると、支払猶予や分割納付ができる場合があります。まずは担当窓口に相談してみましょう。
慰謝料や養育費
慰謝料や子どもへの養育費も、自己破産しても支払い義務がなくなりません。また別居時に支払う婚姻費用や重過失にともなう損害賠償請求権も支払い義務が残ったままです。非免責債権は特定の債権者を保護したり、公共の利益のために免責を認めないと法律で決められています。
また罰金や過料などの支払いも非免責債権に該当するので、このような債権の未払いがある方は、自己破産後も確実に支払うようにしましょう。
闇金からの借金
非免責債権ではないのですが、闇金からの借金も自己破産で免除することができません。そもそも闇金からの借金は、法律で認められている借金でないからです。闇金は違法な高金利で貸し付けを行っている業者です。利息制限法以上の金利を設定し、貸金業者としての登録がない場合がほとんど。
自己破産は法律で定められた範囲の借金に限って、免責が許可される手続きです。数々の法律違反をしている闇金からの借金は、自己破産手続の対象外となり、自己破産をしてもその効果が及びません。闇金からの借金がほとんどという方は、自己破産以外の解決方法を取るべきでしょう。
個人信用情報にキズが付く
自己破産のデメリットに、信用情報機関にある信用情報にキズが付くという点があります。信用情報機関には個人のクレジットやローンの申込、契約や利用情報などが記録されています。自己破産するとここに「事故情報」として、5年~10年掲載されてしまうという訳です。
いわゆる「ブラックリスト状態」や「信用情報にキズが付く」という状態になります。この期間は、次のような申し込みや取引ができません。
- 新規でクレジットカードを作れない
- 持っていたクレジットカードが使えない
- 新規でローンが組めない
- 携帯やスマホの分割購入ができない
- 保証人になれない
- 家賃保証会社を利用して賃貸住宅を契約できない
とくに現代はキャッシュレス社会。クレジットカードが持てないと、次のような影響が出てきます。
- ETCカードが使えない
- 公共料金や家賃のカード支払いができない
- ネットショッピングがしにくい
- 海外旅行が不便
自己破産すると借金問題は解決できますが、信用情報には最大10年間事故情報が残ります。この期間はクレジットカードが持てない、ローンが組めないなどのデメリットがあるので、就職や結婚など、その後の人生にも影響が出る場合があります。
ブラックリストについて詳しくは、こちらの記事を参考にしましょう。
「債務整理するとブラックリストにのる?気になる『ブラックリスト』についてすべてお答えします!」
一定以上の財産は手放さなければならない
自己破産しても最低限の生活はできますが、一定以上の財産を手放さなければなりません。破産管財人によって現金に換えられ、債権者への返済に充てられるからです。基本的に20万円以上の価値があるとみなされる、次のような財産を手放す必要があるでしょう。
- 99万円以下の現金
- 不動産
- 車やバイク
- 株などの有価証券
- FXや暗号資産
- 貸付金や売掛金などの債権
- 貴金属やブランド品
- 一部の退職金
- 生命保険や個人年金の解約返戻金
今までマイホームに住み高価な車を乗り回していたような方は、自己破産後は全く以前と違った生活になるはずです。しかし処分できる財産がすでにないという方は、生活に必要な財産を自由財産として持ち続けられるので、破産後もそれほど生活に影響を及ぼすことはないでしょう。
自己破産すると財産がどうなるかに関しては、こちらの記事を参考にしてください。
「自己破産すると財産はどうなる?処分される・されない財産と財産隠しについて」
手続きにまとまったお金が必要
自己破産のみならず、債務整理にはある程度まとまったお金が必要です。こちらはそれぞれの債務整理にかかる費用の相場です。
債務整理方法 | 弁護士費用 | 裁判所費用 |
---|---|---|
任意整理 | 債権者1件当たり5万~10万円 | – |
個人再生 | 40万~60万円 | 20万~30万円 |
自己破産 | 20万~50万円 | 2万円~60万円 |
裁判所を通さない任意整理は、債権者1件当たりの費用によって相場が変わってきます。一方で個人再生や自己破産はそれぞれの種類や使う特則によって、弁護士費用と裁判所費用が異なります。債務整理の費用がどうしてもねん出できない場合は「法テラス」に相談すると、弁護士費用を立て替えてもらえる可能性があります。
手続き中に制限が課せられる可能性
自己破産手続き中は、次のような制限が課せられる可能性があります。
資格・職業の制限
自己破産申立から免責許可決定が出るまでの一定期間は、特定の職業に就くことができない「資格・職業の制限」があります。例えば次のような職種や職業の人が該当します。
- 士業(弁護士・弁理士・司法書士・行政書士・税理士・公認会計士・不動産鑑定士など)
- 生命保険募集人
- 貸金業
- 質屋
- 警備員
- 宅地建物取引主任者
- 旅行業務取扱管理者など
これらの職業に就いている人が自己破産した場合、団体の規定により資格の一時的な停止処分や業務停止命令を受ける可能性があります。自己破産手続きが終わればこの制限も解除されますが、一定期間は休職や部署異動などが必要になるケースが考えられます。
公務員が自己破産するとクビになるかどうかについては、こちらの記事を参考にしてください。
「公務員が自己破産するとクビになる?バレるケースとバレない対処法を解説」
移動の制限
破産手続き中は引っ越しや海外旅行など、移動の制限が課せられます。破産法第37条に次のように規定されているからです。
(破産者の居住に係る制限)
第三十七条 破産者は、その申立てにより裁判所の許可を得なければ、その居住地を離れることができない。
引用元:e-GOV法令検索|破産法
とはいえ、全く移動ができないという訳でなく、弁護士や破産管財人を通して裁判所に許可を取れば、引っ越しや旅行は可能です。
自己破産中の引っ越しについては、こちらの記事を参考にしてください。
「自己破産中の引っ越しは許可が必要?破産手続き中や自己破産前後に引っ越す際の注意点を解説」
官報に住所や氏名が掲載される
自己破産すると、「官報」に住所や氏名が掲載されるというデメリットもあります。官報とは、国が発行している機関誌で、紙媒体で購入できるほか、インターネットで閲覧も可能。次のタイミングで債務者の住所や氏名、破産手続についてや日時が掲載されます。
- 破産手続開始決定時
- 破産手続廃止決定または終結決定時
- 免責許可決定時
官報に個人情報が掲載されるのは、決して罰のためなどでなく、自己破産のことを知らない債権者や自己破産について反対意見を募るためという目的があります。官報は一般の人が目にする機会はほとんどなく、金融機関やごく限られた職業の人が見るに限られます。そのため官報が原因で自己破産のことが職場や周囲の人にバレる可能性は、限りなく低いでしょう。
自己破産すると載る官報については、こちらの記事を参考にしてください。
「自己破産すると載る官報について解説!掲載のタイミングや確認方法、バレる可能性とは」
保証人に迷惑がかかる
自己破産すると、保証人や連帯保証人に迷惑がかかる可能性が高いでしょう。例えば親が保証人になっていることが多い奨学金では、自己破産すると借りた本人の返済義務がなくなります。しかし本人の代わりに、今度は親に支払い請求が行くことになります。
しかも保証人に返済義務が移った場合、法的には奨学金の残額が一括請求となるため、親への負担は大変重いものに。一括で返済できないときには、親もろとも自己破産を選択せざるを得ません。もしも保証人や連帯保証人が付いた借金を自己破産する場合は、必ず事前に自己破産するつもりだということを相談するようにしましょう。
自己破産すると連帯保証人がどうなるかに関しては、こちらの記事を参考にしましょう。
「自己破産すると連帯保証人はどうなる?借金の前と後&パターン別の対処法」
結婚や仕事への影響
自己破産した後の結婚や仕事への影響を心配する人もいます。一般的に自己破産が原因で解雇されることはありません。ただし業種や立場によっては、信用度の低下により再就職が難しくなる恐れも。とくに次のような職種は、個人信用情報に大きく左右されるため、場合によっては雇用の継続や再就職が難しくなるでしょう。
- 銀行員
- 証券会社の社員
- 保険会社の代理店
- 法律関係の職種
- 会社の経営者や役員
また結婚に関しては、結婚相手のみならずお相手の親族からの反対や差し障りがあることも考えられるでしょう。とくに結婚後に自己破産の事実が判明すると、相手との信頼関係にもヒビが入る可能性が。自己破産後に結婚する場合は、必ず結婚前に相談したり伝えたりすることをおすすめします。
周囲の人からの信頼を失う可能性
自己破産すると、周囲の人からの信頼を失う可能性もあるでしょう。事故情報が掲載されることによる社会的信用を失う可能性も無視できませんが、家族からの信頼を失って辛い思いをする人もいます。信用情報機関に登録される事故情報は、時期が来ると消えて社会的信用を回復させられます。
しかし家族からの信頼を取り戻すには、もっと多くの時間がかかる恐れが。とくに自己破産は同居家族に少なからず影響を及ぼします。家族の信頼までも失わないためには、自己破産のデメリットについてよく調べ、家族に借金のことを隠さず打ち明け、そのうえで自己破産しようと思っていることを伝えましょう。場合によっては他の債務整理ができないか、専門家に相談するのも有効です。
自己破産すると家族にバレるのかについては、こちらの記事を参考にしましょう。
「自己破産すると家族にバレる?バレる8つのケースと対処法を紹介!」
自己破産に迷ったら・自己破産を後悔しないために
自己破産しようか迷ったり、自己破産後に「やっぱりしなければよかった」と後悔しないためには、次に紹介するようなことを考え検討したうえで、専門家の意見を聞きましょう。
自己破産以外の解決方法がないか検討
自己破産はあくまでも最終手段として、それ以外の解決方法がないか検討しましょう。自己破産以外の借金解決方法には、任意整理や個人再生などの債務整理があります。これらの方法は債権者と直接交渉したり、裁判所に申し立てることで返済可能な金額にまで減額可能。
任意整理は利息や遅延損害金の減額、個人再生は借金総額に応じた減額割合が決められていますが、どちらも完済を目的とした債務整理方法です。これらの債務整理によって完済が可能なのか、借金総額と現在の収入を照らし合わせて検討してみましょう。
手続きや条件をしっかり理解する
自己破産の手続きやかかる費用、条件についてしっかり理解した上で選択しましょう。自己破産は借金の返済が不能となった個人が、自ら裁判所に申立てることで返済義務から解放される制度。しかし免責を受けるにはいくつかの条件があり、裁判所に認められないと免責が許可されません。
そもそも免責できない非免責債権がほとんどの人や免責不許可事由がある人、返済能力がある人などは自己破産が認められません。自分は自己破産の条件に当てはまるのか、きっちりチェックしましょう。
破産後の生活についての情報収集
自己破産を後悔しないためには、破産後の生活について情報を集めることも必須です。とくに家族がいる方は、家族へ影響が出ることもあり得ます。なるべく破産前と変わらず生活できるよう、次のようなことについて情報収集したり考えていきましょう。
- 1カ月の生活費の見積もりを立てる
- 非免責債権の返済計画を立てる
- 収入減を確保する
- マイホームを処分される人は住む場所を考える
- 家族への影響を考慮する
- 家族に自己破産することを打ち明けるタイミング
- 生活ができないときには生活保護を検討
自己破産後は収入が減少する可能性があります。借金返済の必要がなくなったものの、1カ月の生活費にいくら必要か試算しておきましょう。また十分な収入が得られないときには、生活保護を含む公的支援制度の利用を検討しましょう。
日常生活における不便の解消
自己破産後は、信用情報機関に事故情報が掲載されることから日常生活に不便をきたす可能性があります。5年~10年といわれるこの掲載期間に、なるべく不便をきたさないような工夫が必要です。とくにクレジットカードが持てないことによる不便や不都合が考えられます。次のようなサービスやカードを利用することで、不便が解消できる可能性が高いでしょう。
カードやサービスの種類 | 内容 |
---|---|
デビットカード | 買い物時に利用すると、あらかじめ紐づけておいた銀行口座から利用金額が引き落とされる。
ブラックリスト状態の人でも作れ、デパートや量販店、コンビニなどで使用可能。 |
プリペイドカード | あらかじめカードに電子マネーを入金し、残高の範囲内で利用可能。
各種店舗やネットショップでも利用できるが、高速道路やガソリンスタンド、一部のホテルでは利用できない。 |
家族カード | 破産者以外の同居家族名義のクレジットカードがある場合は、家族カードを発行してもらうことでクレジットカードの利用ができる。 |
ETCパーソナルカード | あらかじめデポジット(保証金)を入金しておくことで、ETCカードと同じように利用できるカード。
利用料金は、契約時に指定した銀行口座から引き落とされる。 |
電子マネー | 専用のカードに入金して利用するものなら、ブラックリスト状態でも利用可能。
SUICA・PASMO・nanaco・WAONなどの種類がある。 |
スマホ決済 | スマホにアプリをインストールし、QRコードなどを使って代金購入決済を行うサービスのこと。
PayPay・LINEPay・auPay・楽天ペイなどがある。 |
子どもの奨学金の保証人になれない場合は、保証人を立てるという「人的保証」を使わずに「機関保証」を利用するという方法があります。また賃貸物件を借りる場合も、信販系の保証会社を避けると、ブラックリスト状態でも契約できる可能性があります。
自己破産後にできることとできないこと、周囲への影響については、こちらの記事を参考にしましょう。
「自己破産後の人生は真っ暗?できること・できないことと周囲への影響について」
弁護士に相談
自己破産しようか迷った方や、自己破産後に公開したくないという方は、借金問題や債務整理についての知識が豊富な弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に相談できると、次のようなことが分かります、
- 他の債務整理が適しているか
- 自己破産のメリット、デメリット
- 手続きに必要な費用
- 免責許可を受けられるかの判断をしてもらえる
- 手続きの流れや期間
できれば借入時の書類など、借金について詳細が分かる資料を持参しましょう。相談するタイミングは早いに越したことはありません。借金が返済できず手遅れになる前に相談できれば、自己破産以外の方法が選択できる可能性も。また借金返済を放置すればするほど、遅延損害金が増えるなど状況が悪化します。
「借金返済がヤバイ」と思ったら、なるべく早期に弁護士に相談しましょう。
まとめ
自己破産がしたもん勝ちというのは、お金を貸した側の言葉という可能性が高いですが、借金の返済義務がなくなることや国が認めた借金解決方法であることという理由が考えられます。しかし自己破産は最悪の事態を回避するための手段で、決してズルい方法ではありません。
自己破産は「破産法」という法律に則って行われる手続きで、破産が認められる条件や少なくないデメリットがあります。これらをよく理解しないままでいると、自己破産に迷ったり、自己破産したことを後悔する結果に。
また破産後の生活設計について検討したり、なるべく不便にならない工夫も必要でしょう。
自己破産について少しでも不安がある方は、弁護士に相談するのがベストです。自分に最適な借金解決方法をアドバイスしてもらえる他、実際の手続きを任せられます。自己破産は「したもん勝ち」な方法ではありませんが、内容をしっかり理解したうえで選択すれば、借金まみれの人生をやり直せる機会になるでしょう。