- 「任意整理の和解って何?」
- 「返済できず再和解になりそう…成功するコツが知りたい」
任意整理を考えたとき、ポイントになるのは債権者と和解できるかどうかです。和解できなければ他の債務整理を検討せざるを得なくなります。こちらの記事では任意整理の「和解」について、ポイントや失敗しない秘訣を詳しく解説していきます。
また返済できなくなったときの再和解に関するコツや、再和解が難しいときの対処方法も紹介。任意整理が成功するかどうかは和解できるかにかかっています。手続きをするからには必ず和解できる準備を整え、再和解しなくてもいいような対策を立てましょう。
任意整理の「和解」とは?
まずは任意整理の「和解」について、決める内容や和解までの流れについて解説していきます。
和解ができるのは任意整理だけ
前提として、和解ができるのは任意整理だけです。国が認めた借金解決方法である債務整理には、任意整理の他に個人再生と自己破産があります、しかし債権者と和解できるのは任意整理のみ。他の方法は裁判所に申し立てて、裁判所の判断のもとに借金を減免できるという点で異なります。
債権者と「任意」で交渉し借金を整理し和解を目指すということから、任意整理という名前が付きました。裁判所を通さずに手続きできるので、他の方法と比較してデメリットや制限が少なく、周囲に知られることなく手続きできるのも任意整理の特徴です。正式な人数は不明ですが、年間約200万人の人が任意整理を利用して売るとみられます。
債権者と交渉し条件を認めてもらうこと
上で少し説明しましたが、任意整理とは借金を抱えた債務者と貸金業者である債権者が交渉して、さまざまな条件を認めてもらう手続きです。その手続きにおいて無理のない返済計画を組みなおして、返済計画通りに支払っていくということを債権者が認めることを「和解」といいます。
交渉する内容はいくつかありますが、主に次のようなことを認めてもらう形になります。
- 債権者が本来回収できたはずの金額を、債務者が返済しきれないこと
- 当初の契約とは異なる方法で返済していくこと
- 利息や遅延損害金のカット、返済期間の延長により返済が可能になること
まずは債権者に、今のままでは本来の貸付金を回収できないことを認めてもらい、そのうえで当初の契約とは異なる方法で返済していく流れとなります。和解後は合意した返済計画通りに、原則3年(36回)、最長でも5年(60回)かけて完済を目指します。
和解も「和解契約」という契約の一種です。債権者、債務者の双方が合意できなければ契約を締結することはできません。和解契約は、互いに歩み寄り譲歩して合意内容をすり合わせる契約。双方が自分の権利ばかりを主張し続けているといつまでも和解できないので、互いがある程度譲歩することも必要です。
債権者が和解に応じる理由
ではどうして債権者は、従来よりも条件の悪い内容で和解するのでしょうか。実際問題として、任意整理で和解しないと債権者にとってさらに条件が悪化する可能性が高いからです。和解しない場合、債務者が残りの借金を支払わないと裁判を起こして取り立てしなければなりません。そのためには手間も時間もかかるでしょう。
また債務者が自己破産を選択すれば、貸付金の回収は不可能になります。「自己破産されるよりはいくらかでも回収できる任意整理の方がいい」と債権者が考えるのであれば、和解交渉に応じてもらえます。
決めた内容は和解契約書にする
和解交渉で決めた内容は、「和解契約書」という書面を作成し双方が保管します。和解契約は、法的には口約束でも成立します。しかし口約束だけだと、後日「言った」「言わない」のトラブルになる可能性が。後々の条件等で問題が起きないために、和解契約書を取り交わすという訳です。
和解契約書には決まったひな形がある訳でなく、債権者や依頼した弁護士事務所によって書式はまちまちです。しかしある程度記載内容は決まっています。どのような内容を決めて、どういう契約を意味しているのか知っておく必要があるでしょう。
和解交渉決める内容
和解交渉では、以下のような内容について双方が話し合い、決定した内容を和解契約書に記載していきます。
- 返済総額
- 返済期間
- 返済の開始時期・返済方法
- 期限の利益喪失約款
- 遅延損害金
- 懈怠(けたい)約款
- 清算条項
- その他の条項
後になって「やっぱりこの内容だと返済できない」となっても、1度合意した内容は原則として覆ることはありません。完済を目指すためにも、和解内容を詰める段階で問題なく支払えそうかチェックしておきましょう。では和解交渉で何をどのように決めるかや、和解契約書にどのように記載するかについて見ていきましょう。
返済総額
任意整理の大きな目的は、返済総額の減額です。和解交渉では減額後の返済総額を決めていきます。具体的には次のような利息等の減額を目指して交渉します。
減額項目 | 内容 |
---|---|
経過利息 | 任意整理を開始してから債権者との和解日までに発生する利息 |
将来利息 | 和解日以降、完済するまでに発生する予定の利息 |
法律の上限を超えた利息 (過払い金) |
2010年6月以前に発生した、利息制限法の上限金利を超えた利息 過払い金として引き直し計算をして金額を決定 |
遅延損害金 | 最終返済日から和解日までの損害賠償金 |
和解契約書には次のように記載されます。
和解交渉により合意した返済総額は「和解金」と記載するのが通常です。借入金などと記載すると、借金扱いとなり利息や遅延損害金などの項目に影響し、争いが起きる可能性があるためです。
返済期間
任意整理の和解交渉では、支払期間の延長を交渉内容とすることもあります。通常は任意整理後3年以内の完済を目指すことが多いですが、3年だと毎月の支払金額が上がって生活が苦しいという場合には5年程度にまで延長可能です。5年を超える分割払いでの和解は大変難しいのが現状ですが、次のような場合があれば7年や10年などに延長できるケースもあります。
- 延滞がないなど長期間良好な取引をしていた
- 時間がかかっても完済したいという意思を伝えた
- 債権者が大手の信販会社やクレジットカード会社である
合意した返済期間は和解契約書に記載され、手続き後はこの内容に基づいて支払いを行います。途中で返済期間の延長を求めることは許されないため、しっかり確実に毎月支払える金額や期間を設定してください。
返済の開始時期・返済方法
和解契約書には、返済の開始時期や返済方法も記すことになります。返済の開始時期については、債権者の運用が反映されやすいです。和解契約自体を早くまとめたがる一方で返済の開始時期は数カ月先でもいいという債権者もいれば、和解の翌日から返済を開始してもらわないと和解に応じないという債権者もいます。
いずれの開始時期になったとしても困らないよう、債務者はあらかじめ返済できる分を確保しておきましょう。返済方法は銀行振込になるケースがほとんどですが、自分で債権者の指定口座に振り込む方法と、弁護士事務所の代理返済を利用する方法の二種類があります。振込先が複数ある場合は、振り込み忘れや振込間違いが起きる可能性も。間違いなく遅延なく支払いできるよう、代理返済を利用するのがおすすめです。
期限の利益喪失約款
期限の利益喪失約款とは、滞納により期限の利益を失うという内容の取引条項のことをいいます。債務者には元々借りた借金を分割払いで支払うことができる「期限の利益」があります。しかし借金を滞納したことで期限の利益を失い、残りの借金を一括払いで支払わなければなりません。
これは任意整理後の返済についても当てはまり、通常は2回の滞納によって期限の利益を失います。和解契約書に記された内容通りの返済ができなくなった場合、債権者が残りの借金総額を一括払いで支払うよう請求できるという旨を記載することができます。債権者にとって有利な条件となりますが、実際の和解契約書では「債権者が請求しない限り期限の利益を失うことはない」という文言が付け加えられています。
遅延損害金
和解後の返済を滞納した場合に発生する遅延損害金についても、和解交渉で決められます。通常は期限の利益を喪失すると、喪失日の翌日から一括で完済するまでの期間、1日ごとに遅延損害金が発生します。和解契約書には「和解金の残額に対して〇%の割合による遅延損害金を支払う」などと記載されます。遅延損害金の年利は、双方の話し合いの内容にもよりますが、年利10%前後で決めるケースが多いでしょう。
懈怠(けたい)約款
任意性の和解では、「懈怠(けたい)約款」として滞納後の期限の利益喪失や遅延損害金について盛り込まれることがあります。難しい言葉なので戸惑う人もいるでしょうが、和解内容通りの返済が行われなかったときに債務者が負う責任についての取り決めということを覚えておきましょう。
清算条項
清算条項は、手続き後のトラブルを防ぐために記載される項目です。具体的には、任意整理後に任意整理した以外の借金が見つかったので支払って欲しいというトラブルを防ぐためにこの条項が入れられます。和解契約書では「この和解書に記されている借金以外は債権義務がありません」という確認のための記載となります。
仮に後から別の借金が見つかったとしても、清算条項を入れていれば和解書に記載される借金について返済義務がなくなります。これは債権者が全額回収したい借金を故意に隠して、後から債務者に請求するのを防ぐ目的があります。
その他の事項
上記の他に何か特別な事項がある場合に記載されます。ほとんどありませんが、借金の保証人を外す場合や、不動産の抵当権を外す場合などにこちらに記されます。
和解までの流れ
任意整理の和解までは、次のような流れで進んでいきます。注意点やポイントもあわせてみていきましょう。
① 弁護士に相談 | 任意整理をするときには弁護士に依頼するのが一般的。 債権者との交渉で不利になったり引き直し計算で間違うリスクがあるので自分で進めるのはリスクがある。初回の無料相談を実施している事務所があるので、借金問題に強い弁護士に相談するのがおすすめ。 |
② 委任契約 | 依頼する弁護士が決まったら委任契約を結ぶ。
このとき着手金が必要になる場合があるので、相談時にいつどのような費用が発生するのか聞いておく。 |
③ 受任通知送付 | 弁護士が任意整理の手続きを受任したことを債権者に通知する書面を送付する。
以後は債権者からの取り立てがストップされ、返済の必要がなくなる。 |
④ 取引履歴の開示請求 | 弁護士が債権者に取引履歴の開示請求の開示請求を行い、契約開始から現在に至るまですべての取引履歴を取り寄せる。 |
⑤ 引き直し計算 | 取り寄せた取引履歴をもとに、利息制限法に基づいた利息へと計算し直し、返済すべき謝金総額が決定。
ここで過払い金が発生しているかが明らかになり、過払い金がある場合は過払い器返還請求を行う手続きに入る。 |
⑥ 返済計画の作成 | 債務者の収支をもとに3年~5年にわたる返済計画を作成し、債権者へ送付する。 |
⑦ 和解案作成・和解交渉 | 返済計画に基づいた和解案を作成し、債権者と和解交渉を実施。 |
⑧ 和解契約の成立・和解契約書の作成 | 債権者と合意ができたら和解契約が成立。
合意内容をもとに和解契約書を作成する。 |
⑨ 支払再開 | 和解契約書の内容通りに支払を再開する。 |
支払再開後は、滞納しないように完済まで継続して支払いをしましょう。一般的に弁護士への相談から和解が成立するまでの期間は、3カ月から6カ月ほどです。
任意整理の流れや必要書類については、こちらの記事を参考にしましょう。
「任意整理の流れと必要書類を徹底解説!手続き期間や書類の準備方法とは?」
任意整理で和解が難しいケースと対処方法
任意整理で和解を目指したものの、次のようなことがあるときには和解が難しくなります。和解ができないときの対処方法も含めて解説していきます。
返済できる見込みがない
任意整理で利息や遅延損害金を減額しても返済できる見込みがないときには、和解することが難しいでしょう。和解交渉では債務者の収入や借金の総額を含めて和解が可能かを決めていきます。例えば減額後の借金が600万円のこっていたとすると、5年払いにしたとしても毎月の支払いは10万円です。
債務者の収入に対して毎月の支払いが大きすぎると、返済できる見通しが立たないとして和解は難しいでしょう。債権者に「継続して返済できる」という根拠を示すことができないからです。もし5年以内の完済が難しいようなら、初めから任意整理ではなく個人再生や自己破産を考えた方がいいでしょう。
借入期間が短く返済実績がほとんどない
借入期間が短く、返済実績がほとんどない場合も、債権者は和解交渉に応じません。例えば借りてから1回も返済していないようなケースです。このような場合は「初めから返済する気がなかったのでは」と疑われても仕方がないでしょう。
債権者からすると、借入期間が短いと利息の回収もできず全く利益になりません。交渉以前から債務者の印象が悪く、和解に応じてくれない可能性が高まります。何回返済すれば和解できるかという明確な目安はないものの、少なくとも半年以上の返済実績を作っておくことをおすすめします。
任意整理しない方がいい14のケースに関しては、こちらの記事を参考にしましょう。
「任意整理をしない方がいい14のケースとありがち誤解とは?悩んだときの解決方法も解説」
債権に担保が付いている
債権に担保が付いていると、任意整理の和解が厳しくなります。担保が付いている債権には住宅ローンやカーローンがあります。このような借金は、たとえば債務者が住宅ローンを滞納すると、担保を設定している銀行は住宅を競売にかけて売却し、本来回収できるはずに返済額を取り戻せる可能性が高いでしょう。
一方で任意整理に応じると、利息や遅延損害金をカットされた金額しか回収することができません。担保が付いた債権では、わざわざ任意整理の和解に応じるよりも、担保権を行使して売却した方がメリットがあるという訳です。
貸金業者の方針
貸金業者の会社方針によって、任意整理の和解に応じない場合もあります。和解に応じるかどうかはあくまで債権者の判断次第で、和解を強制することはできません。訴訟を起こして回収する方がいいと考える債権者がいると、初めから和解に応じてもらえる可能性は低いでしょう。
裁判所を介する個人再生や自己破産と違い、法的な強制力がない任意整理では、和解を拒否する債権者が一定数いるということを覚えておきましょう。
2回目の任意整理
2回目の任意整理の場合も、和解に持ち込むのは難しいでしょう。すでに和解してもらったにもかかわらず、和解通りに返済ができずに2度目の和解を持ち掛けるような場合です。約束を破ったとみなされて「信用できない」、「また以前のように滞納するのでは」と思われてしまうからです。同じ債権者相手に2度目の任意整理を行う場合は、より慎重な対応が必要になります。
2回目の任意整理は可能かについては、こちらの記事を参考にしてください。
「2回目の任意整理はできる?失敗しないための注意点、成功のコツを解説」
すでに差し押さえ手続きが進んでいる
すでに財産を差し押さえする手続きが進んでいるときには、任意整理しても和解に応じてくれないでしょう。このまま差し押さえ手続きをすすめれば、借金を減額しなくても回収できる可能性が高いからです。任意整理に応じる理由に、差し押さえよりも債権を回収するのが楽だからということがあります。
しかしすでに手間と費用を費やして、裁判所に申し立てて差し押さえの手続きを進めている場合には、任意整理で和解するメリットはほぼありません。差し押さえをストップするには、個人再生や自己破産などの法的手続きを選択せざるを得ないでしょう。
給料の差し押さえの回避方法については、こちらの記事を参考にしてください。
「給料差し押さえは無視できる?差し押さえまでの流れや期間、回避方法について解説!」
債権者に裁判を起こされている
差し押さえまで進んでいなくても、すでに債権者に裁判を起こされている場合は、任意整理で和解に応じてくれない可能性が高いでしょう。裁判を起こしているということは費用や手間をかけてでも、なるべく多くの残債を回収したいと考えているからです。
とはいえ、返済が滞ったからといっていきなり裁判を起こされるわけではありません。再三の債権者からの請求や連絡を無視し続けた結果、ある程度の期間があって行われます。ここまで行くと任意整理で対応するのは困難です。できれば裁判を起こされる前に、なるべく早く弁護士に相談することをおすすめします。
裁判所から訴状が届いたときの対処法は、こちらの記事を参考にしてください。
「裁判所から訴状が届いた…どうすればいい?適切な対処法&借金解決方法とは」
和解成立後支払えなくなったときのポイント
任意整理の和解後、必ずしも全員が完済できるとは限りません。何か突発的な事情やトラブルがあって、和解契約通りに返済できなくなったという人もいるでしょう。こちらでは、和解成立後に和解金を支払えなくなったときの対処法を解説していきます。
すぐに弁護士に相談
どうしても返済に困ったら、まずは任意整理を依頼した弁護士にすぐに相談しましょう。弁護士の方から債権者に交渉してもらえる余地があります。自分の判断で勝手に債権者に連絡をせず、和解交渉を担当してくれた弁護士に相談することをおすすめします。
滞納は1回までにとどめる
どんなに返済に困っても、滞納は1回までにとどめることを心がけましょう。任意整理の和解では、通常2回の滞納で期限の利益を失うからです。期限の利益を失えば、以後は分割払いを続けることができず、債権者から一括請求を受けます。さらに滞納日の翌日から遅延損害金が発生します。任意整理後はくれぐれも滞納しないよう、無理のない返済計画を立て、余裕をもった内容で和解するようにしましょう。
再和解は条件が厳しくなる
期限の利益を失った後でまた分割払いをしたい場合には、債権者に対して任意整理の再和解を行わなければなりません。しかし任意整理の再和解は、相手の態度が硬化することが避けられません。一度目の任意整理で譲歩して合意したにもかかわらず、債務者の滞納によってその約束が破られたことになるからです。再和解を申し出るときには、条件が厳しくなることを覚悟しましょう。
再和解までの期間が短いと裁判を起こされる可能性
再和解までの期間があまりにも短いと、再和解に応じてくれないばかりか裁判を起こされる可能性があります。最初の和解後数回しか返済していないのに、すぐに滞納し再和解となったような場合です。債権者に交渉の余地がないと判断されると裁判を起こされ、最悪の場合には給与や預貯金が差し押さえられてしまいます。
任意整理の再和解は可能?
1度目の任意整理の和解後に、再和解することはできるのでしょうか。結論からいうと、債権者からの合意が得られるなら何回でも再和解は可能ということになります。とはいえ、どのようなケースでも再和解に応じてもらえるわけではありません。
こちらでは再和解に応じてもらいやすいケースや再和解を成功させるコツ、再和解が難しいときの対応について解説してきます。
再和解に応じてもらいやすいケース
任意整理はあくまで債権者と任意で交渉する手続きなので、債権者が「再和解もやむを得ないだろう」「再和解で条件変更すればキチンと返済してもらえそうだ」と判断すれば、再和解に応じてくれる可能性があります。
やむを得ない突発的な事情があった
任意整理の和解後に、債務者の責任ではないやむを得ない突発的な事情があったときには、再和解に応じてもらいやすいでしょう。例えば次のような事情によって、返済を継続できなくなったような場合です。
- 突然のリストラで失業した
- 災害によって働く場所を失った
- 重い病気やケガにより働けなくなった
- 事故を起こして賠償金を支払わなければならなくなった
このような事情がある場合には、債権者も「無理をいってもしかたない」と考え再和解による条件変更に応じる可能性が高いでしょう。
将来返済を増額できる予定がある
今は和解内容通りの返済が難しくても、将来的に返済額を増額できる予定があるときには、再和解に応じてくれる可能性があります。例えば次のようなケースです。
- あと1年で子どもが学校を卒業するので学費がかからなくなる
- あと半年で保険の満期を迎える
- 以前にはないボーナスが支給される会社に就職した
このように収入が増える予定だけでなく支出が減る予定も、返済資金を増額できる事情として債権者に説明することができます。ただしこれらの予定は確実なものに限られます。「仕事を頑張るのでこれからきっと収入が上がるはず」という根拠のない希望的観測のみでは、再和解を勝ち取ることは難しいでしょう。
今まで滞納なく返済できていた実績
再和解で返済額変更に応じてもらうためには、今まで滞納なく返済できていた実績も重要です。これまでまじめに返済できていたのであれば、「突発的な事情があったんだろうな」と債権者も理解してくれるでしょう。しかし度々滞納していたり、滞納を解消できていない状態では「再和解してもまた滞納されるのでは」と思われても仕方ありません。
これまでの返済実績に誠実さが認められる場合ほど、債権者の理解も得られやすく、条件変更に応じてもらいやすくなるはずです。
再和解を成功させるコツ
では任意整理後の再和解を成功させるには、どのような点に気を付けるべきなのでしょうか。
返済できなくなった事情を説明
まずは債権者に対して、誠実に返済できなくなった事情を説明しましょう。通常の任意整理では、債権者は返済できない理由について特に尋ねることはありません。単に返済金額や条件等を交渉するだけで和解するのが通常です。しかし再和解ともなると、なぜ返済できなかったのかという事情を尋ねてきます。
そこで債権者を納得させられるような事情を、具体的かつ詳細に説明することが求められます。リストラにあった場合や病気やケガで働けなくなった場合には、解雇通知書や診断書などの資料を準備して、それに至った経緯や現在の状況、今後の見通しなどを説明しましょう。
そのうえで毎月いくらなら返済可能かを提案するのがポイント。電話や対面で話すのが難しいときには、詳細な事情や希望する和解案を記載した書面を作り、債権者へ送付するようにしましょう。
家計の収支と今後の収入見込みを開示
希望する和解案を提示するときには、毎月いくら払えるかの根拠として、家計の収支や今後の収入見込みを開示して説明した方が、債権者の理解を得られやすいでしょう。家計の収支は1か月分の収入と支出をまとめた家計表を作成するといいでしょう。
収入の見込みを示す資料として、次のような書面を準備することをおすすめします。
- 給与明細
- 就業規則
- 賃金支給規定
- 昇格通知書
- 生命保険の満期が分かる保険証券や書類
他社との和解案をもとに交渉
他社と合意した和解案をもとに交渉するという方法もあります。再和解で返済額の変更を求める場合でも、債権者と交渉をすることになるので、ある程度の駆け引きが必要です。その駆け引きの材料として、他社との和解内容を提示することが有効になる場合があります。
他社との和解案と家計の収支、今後の収入見込みを開示したうえで「返済額を〇円に減額してもらえれば返済可能です」と交渉すると再和解に応じやすくなります。また和解条件が厳しい相手に対しては「他社はここまで譲歩してくれている」と説明するのにも有効。
ただし他社との和解案の方が厳しい場合には、逆効果になる可能性も。交渉に有利に使えるかどうかを慎重に検討した上で、この方法を採用するようにしましょう。
再和解が難しいときは…
再和解が難しい場合、次のような対処を取ることで借金問題を解決できる可能性が残されています。
除外した借金も任意整理する
最初の任意整理で除外した借金がある場合は、その借金も任意整理することを検討しましょう。そうすることで毎月の返済額を総合的に減らしていければ、再和解なしでも返済ができるようになる可能性があるからです。場合によってはローン返済中の車を手放す必要が出てくるかもしれませんが、借金問題を根本から解決するには有効です。
個人再生を検討する
全ての債権者とすでに任意整理している方は、個人再生の手続きを検討してみてはいかがでしょうか。個人再生とは裁判所に申し立てて再生計画案を認めてもらうことで、借金を大幅に減額できる手続き。総額100万円以上の借金に効果があり、借金額に応じて1/5~1/10まで減額可能。
とくに住宅ローンが残っているマイホームをお持ちの方に、引き続きローンを支払うことで住宅を残せる「住宅ローン特則」があるのが特徴。ただし手続き後は任意整理と同様、3年~5年かけて返済すべき借金が残ります。継続的な安定した収入がない方は、個人再生が利用できないことに気を付けましょう。
個人再生のメリットとデメリットは、こちらの記事を参考にしてください。
「個人再生のメリット・デメリットを徹底分析!注意点・利用条件・他の債務整理との違いは?」
自己破産を検討する
任意整理や個人再生でも返済不可能な借金が残っている方や、継続して返済できる収入がない方は自己破産を検討すべきでしょう。自己破産は裁判所の手続きを通して、一定以上の財産を処分することですべての借金の返済義務を免除(免責)できる手続き。持ち家や20万円以上の価値がある財産は処分しなければいけないものの、生活に必要な最低限の動産や99万円以下の現金は手元に残しておけます。
生活していけないということはないので安心してください。めぼしい財産がない方や、働くことが難しい方は自己破産して借金をゼロにすることに大きなメリットがあります。任意整理後の返済が厳しい方は、自己破産も選択肢の一つとして考えてみてはいかがでしょうか。
自己破産後の人生や周囲への影響については、こちらの記事を参考にしましょう。
「自己破産後の人生は真っ暗?できること・できないことと周囲への影響について」
困ったら弁護士に相談
任意整理後に返済ができそうもないときや再和解をお願いしたいとき、任意整理以外の債務整理を検討している方は、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士にあなたの状況を説明できれば、最善の解決策をアドバイスしてくれるでしょう。
再和解を希望する場合でも、法律の専門家の立場から債権者との間に入ってもらい交渉できます。結果的に返済額変更に応じてもらえる可能性も高まるでしょう。すでに裁判を起こされている場合は、早急に差し押さえを防ぐ手立てを講じられます。
まとめ
任意整理の和解とは、債権者と交渉して返済総額や返済期間、懈怠約款や精査上など新たな返済条件を認めてもらうことです。合意した内容は和解契約書に記載し、和解後はその内容に基づいて返済を再開していきます。債権者が和解に応じるのは裁判や差し押さえよりはローリスクで回収できる可能性があるため。
すでに差し押さえ手続きが始まっていたり、裁判を起こされている場合は和解交渉に応じないでしょう。また担保が付いている債権や返済期間がほとんどないケース、2回目の任意整理の場合も和解が難しくなると考えられます。
和解後の返済ができないときは、再和解で条件変更できないか交渉する必要があります。やむを得ない事情があるときはその根拠となる資料を整えて真摯に説明すれば交渉がまとまる可能性が残されていますが、再和解が難しいときには弁護士にアドバイスを求め、任意整理の範囲を広げたり、他の債務整理を検討するのが賢明です。