- 「借金救済措置のデメリットが知りたい」
- 「自分に向いている方法を選ぶにはどうしたらいい?」
借金の返済に困っているときによく目に付く「借金救済制度」。どのような制度なのか分からず怪しい…と思っている方もいるのではないでしょうか。そこでこちらの記事では、借金救済制度とはどのような制度かという点を中心に、デメリットやメリットを詳しく紹介。
さらにそれぞれの方法に向いている人についても解説するので、自分はどの制度を選ぶべきか分かるはず。借金救済制度にはメリットもあればデメリットもあります。事前によく調べておいて、「こんなはずじゃなかった」などと後悔しないようにしましょう。
借金救済措置とは?
では「借金救済措置」とはどのような方法なのでしょうか。まずは「借金救済措置」について解説していきます。
借金を減額・免除できる手続き
借金救済措置とは、借金の返済が困難になったときに利用すれば、借金額を減額できたり免除できる制度。SNSやWebの広告でもよく目にすることがあると思いますが、多くは詐欺や怪しい広告ではありません。「借金返済がきつい」「もう返済できない」と追い込まれている人を助けるために、この制度が設けられています。
少なくとも弁護士事務所や司法書士事務所が運営している広告であれば、詐欺に遭う心配はないでしょう。ただ一部では期待以上の効果があると想像させる表現や、最近できたばかりの画期的な制度のように見せる表現が用いられていることも事実。制度について正しく認識する必要があるでしょう。
「国が認めた」制度とは
借金救済措置についての広告の中には、「国が認めた」という言葉を使っているケースがあります。これは一部は正しいですが、一部では間違っている恐れがあります。日本で利用できる借金救済制度は、主に次の種類があります。
- 任意整理
- 個人再生
- 自己破産
- 特定調停
- 過払い金返還請求
任意整理から特定調停までは「債務整理」と呼ばれる制度で、文字通り借金を減免することで整理できる手続き。そして過払い金返還請求は、債務整理の手続きの一環で行われる「引き直し計算」によって可能な手続きです。個人再生と自己破産、特定調停は、地方裁判所に申し立てて行う制度で法律でも定められている制度なので、文字通り「国が認めた」といえます。
一方で任意整理は、裁判所に申し立てずに債権者(お金を貸している側)と直接交渉する手続きのため、厳密には「国が認めた」制度ではありません。それぞれの詳細は以下の通りです。
手続きの種類 | 関連する法律 | 手続き方法 |
---|---|---|
任意整理 | 利息制限法・出資法 | 左記法律に基づいて利息を計算し直し(引き直し計算)、債権者と直接交渉することで借金を減額および返済期間の延長を目指す手続き |
個人再生 | 民事再生法 | 裁判所に申立てることで、借金総額を大幅減額する手続き |
自己破産 | 破産法 | 裁判所に申立てることで、借金の返済義務を免除(免責)できる手続き |
特定調停 | 特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律 | 裁判所の調停を利用して、債権者との間で話し合いをする手続き |
過払い金返還請求 | 利息制限法・出資法 | 引き直し計算によって払い過ぎた利息がある場合に、債権者に直接返還もしくは返済金との相殺を求める手続き |
国の借金救済制度に関しては、こちらの記事を参考にしてください。
「国の『借金救済制度』は信頼できる?債務整理の特徴と依頼手順、その他の解決方法を解説」
借金救済措置がある理由
ではなぜ日本の法律では、借金救済措置を定めているのでしょうか。そこには債務者を救済することで、ゆくゆくは社会全体を安定させることにつながるという理由があるため。例えば借金苦によって自殺者や犯罪が増えると、社会への悪影響になることが予想されます。
また会社倒産や自殺に追い込まれるほどに苦しい状況になった場合には、債権者側にも何らかの要因がある可能性も。一見すると債務者にしかメリットがないように見える借金救済制度ですが、視野を広げて見てみると日本社会全体に対する救済にもなっていると考えられます。
借金救済措置の種類と借金が減免できる仕組み
こちらではより詳しく借金救済措置について見ていきましょう。上に挙げた方法ごとに、借金を減免できる仕組みや手続きの種類などを解説していきます。
任意整理
任意整理は、裁判所を通さずに債権者と交渉し借金を減額したり支払い期間の延長を求める手続き。債権者との話し合いで和解が成立すれば、それ以降は和解した金額を分割払いしていくことになります。任意整理で減額できるのは、次の3種類です。
将来利息 | 任意整理の和解成立後から完済までの間に、元金に対して発生する予定の利息 |
経過利息 | 最終返済日から和解交渉が成立するまでの間に発生した利息 |
遅延損害金 | 返済を延滞している未払いの借金に対して発生する損害金 |
債権者との協議で上記の利息や遅延損害金の減額で和解成立すれば、その後は原則3年最長でも5年かけて分割払いしていきます。返済予定期間が3年未満の方は、任意整理をすることで返済期間を延長でき、毎月の返済の負担を減らすことが可能です。
また任意整理では交渉する債権者を選べるので、利息の高いクレジットカードのキャッシングや消費者金融のカードローンを対象にし、保証人のついている借金や引きあげられる恐れのある住宅ローン、車のローンなどを対象から外すことが可能。
任意整理で減額可能な将来利息については、こちらの記事を参考にしてください。
「任意整理で減額できる『将来利息』とは?カットできる条件や金額、事例を解説」
個人再生
個人再生とは民事再生法に基づいた手続きで、裁判所に申し立てて借金を大幅減額できる制度。減額後の借金は、原則3年、最大で5年かけて分割払いしていきます。任意整理よりも大幅に減額できるというメリットがある一方で、手続きが複雑で時間がかかるというデメリットも。対象となる借金総額は100万円以上、5000万円以下です。
個人再生では手続き後の返済や生活について作成し「再生計画案」を、裁判所に認めてもらう必要があります。また裁判所によっては、手続き後にきちんと返済が継続できるかを見る「履行テスト」が6カ月間行われます。個人再生でいくら減額できるかや流れ、要件については、手続きの種類によって次のように異なります。
小規模個人再生
小規模個人再生は自営業や個人事業者など毎月の収入が不安定な方の他、次の要件を満たせば給与所得者も手続き可能です。
- 債権者の半数以上が再生計画案に同意している
- 反対した債権者が貸した金額が、借金総額の1/2以下である
- 計画弁済額が最低弁済額以上である
手続き後に返済すべき借金は「最低弁済額」といい小規模個人再生では次の2項目のうち、金額の多い方となります。
① 最低弁済基準 | 債務者の借金総額に応じて算出される最低弁済額のこと
再生手続開始前の利息や遅延損害金も含む 「住宅ローン特則」を利用する場合は、住宅ローン残債を除いた金額で計算する |
② 清算価値保障基準 | 債務者が保有している財産を債権者に配当する場合の価値(清算価値)に応じて算出される最低弁済額のこと
民事再生法では、清算価値よりも最低弁済額の方が高額でなければならない原則がある |
最低弁済額基準では、借金総額によって次のように最低弁済額が変わります。
基準債権額 | 最低弁済額 |
---|---|
100万円未満 | 借金総額の全額 |
100万円以上500万円未満 | 100万円 |
500万円以上1500万円未満 | 基準債権額の1/5 |
1500万円以上3000万円未満 | 300万 |
3000万円以上5000万円未満 | 基準債権額の1/10 |
清算価値基準で対象となる財産の種類は、以下の通りです。
- 99万円を超える現金
- 20万円を超える部分の預貯金・生命保険の解約返戻金・有価証券など
- 不動産
- その他20万円以上の価値があるとされる財産
一方で、20万円未満の価値の財産は清算価値に含まれません。また住宅ローンが残っている場合、ローン残額よりも住宅の清算価値の方が高いと、清算価値として加算されます。
給与所得等再生
給与所得者等再生は、会社員や公務員といった安定した収入が確実に入る予定の方が利用できる手続き。民事再生法では毎月の収入額の変動幅が、年間20%以下と定めています。また小規模個人再生と異なり、債権syによる決議が不要。
一方で最低弁済額の計算が複雑で、小規模個人再生と比較すると高額になる可能性があります。給与所得sy等再生の最低弁済額は、次の①~③のうち最も金額の高いものが採用されます。
- 最低弁済基準
- 清算価値保障基準
- 可処分所得基準
1と2の計算方法は前出の通りです。3の可処分所得基準は、次のように計算されます。
本人と被扶養家族の最低生活費については、お住いの自治体ごとに定めている「生活保護基準」に基づいて算出されます。
個人再生の最低弁済額は、こちらの記事を参考にしてください。
「個人再生の最低弁済額が知りたい!手続き別の計算方法や減額できないケース、滞納後の対処方法」
自己破産
自己破産は、借金の返済不能状態であることを裁判所に申し立てて、借金の返済義務を免除してもらう手続き。金融機関の借金はすべてゼロになるので、その後の借金返済はなくなります。一方で、一定以上の財産は処分されて債権者へ平等に分配されます。
また手続きしても借金を免責できない「免責不許可事由」があるのも、自己破産ならでは。自己破産には次の3つの種類があり、それぞれに要件が異なります。
管財事件
法人が破産する場合や一定上の財産を持っている個人、免責不許可事由に該当するケースでこちらの手続きとなります。裁判所によって破産管財人が選任され、破産管財人が財産の調査・処分・分配を行ったり、免責不許可事由について調べます。
手続きにかかる期間が最短でも半年、長いと1年以上かかる場合も少なくなく、破産管財人に協力する義務が生じることで、次のような制限があります。
- 郵便物が転送される
- 引っ越しに事前の許可がいる
- 長期の旅行ができない
また破産管財人に支払う報酬が必要になるため、同時廃止と比べて裁判所費用が50万円近く追加でかかります。
破産管財人はどこまで調べるかについては、こちらの記事を参考にしてください。
「破産管財人はどこまで調べる?自己破産の管財事件での調査内容・方法と財産隠しについて」
少額管財
少額管財とは本来管財事件として扱うべき場合であっても、裁判所費用を20万円程度と通常の管財事件の1/2以下に抑えられる手続きです。ただしすべての裁判所で手続きできる訳でないので、お住いの住所地を管轄する地方裁判所で、少額管財の制度があるか調べなければなりません。
また弁護士による申立てが必須です。というのも本来破産管財人が行う財産調査を、申立て段階で代理人弁護士がある程度行っていることが前提となるためです。
自己破産にかかる費用は、こちらの記事を参考にしましょう。
「自己破産にかかる費用相場・内訳を解説!安く抑えるコツや払えないときの対処法も紹介」
同時廃止
同時廃止は処分する財産がなく、免責不許可事由にも該当しない場合に利用できる手続き。管財事件や少額管財と比べて裁判所費用は数万円程度で済み、破産手続き開始と同時に破産手続が廃止されるため、手続きにかかる期間も3~4カ月ほどで終了します。
個人の破産においては、直近の全国平均で約65%が同時廃止で自己破産しています。会社経営者や個人事業主を除いたサラリーマンやパート、アルバイトの方に限定すると、約8割程度が同時廃止で手続きしています。
参照:司法統計|裁判所
自己破産に関する期間について詳しくは、こちらの記事を参考にしてください。
「自己破産にまつわる期間を徹底解説!手続き・制限解除にかかる期間&短くする方法とは?」
特定調停
特定調停は、裁判所の調停を利用して債務者と債権者が返済方法について話し合う手続きです。原則として弁護士などの専門家に依頼せず自分一人で手続きするので、弁護士費用は掛かりません。ただし書類の準備から裁判所への出頭まですべて自分で行わなければならないので、手続きに時間や手間がかかることも。
利息や遅延損害金の減額を求めるのが一般的ですが、どれだけ債権者が応じてくれるかは相手次第です。また調停の基準が、管轄の簡易裁判所ごとに異なる点も注意したいところです。特定調停は国が手助けしてくれる救済措置であるものの、民事的解決となるということを忘れずに。
過払い金返還請求
債務整理の過程で、または専門家に調査依頼することで、過払い金が発生しているかどうかをチェックできます。過払い金とはかつての「利息制限法」と「出資法」で定める上限金利の間にあった「グレーゾーン金利」によるもの。2010年以前は、これら2つの法律の上限金利には次のような開きがありました。
利息に関する法律 | 2010年以前の上限金利 |
---|---|
利息制限法 | 100万円以上…15.0%
10万円以上100万円未満…18.0% 10万円未満…20.0% |
出資法 | 29.2% |
貸金業者にはどちらの金利を適用すべきかという明確な線引きがなされておらず、グレーゾーン金利で貸し付けても処罰の対象とならなかったため、多くの貸金業者は出資法の上限金利ギリギリで貸し付けを行っていました。
しかし2007年に貸金業法が改正、2010年に改正貸金業法が完全施行されると、グレーゾーン金利は撤廃される結果に。2010年の完全施行以前に借入を開始した借金のうち、グレーゾーン金利で借り入れした場合に限り、払い過ぎた利息を取り戻す過払い金返還請求が可能という訳です。
すでに借金を完済している場合は、過払い金返還請求を行い払い過ぎていた利息を返金してもらえます。また現在も返済し続けている方は、返済する分に充てることが可能です。いずれの場合でも専門家による手続きが必要なため、過払い金返還請求を希望する方は、弁護士などに相談することをおすすめします。
過払い金返還請求の仕組みや請求方法について詳しくは、こちらの記事を参考にしましょう。
「過払い金が受け取れる仕組みと請求方法|受け取れる可能性が高い・低い借金の種類と注意点とは?」
借金救済制度の範囲
債務整理の対象となるのは、次のような借金です。
- 銀行や信用金庫のローン・借入
- 銀行系カードローン
- 消費者金融からの借入・カードローン
- クレジットカードのキャッシング・ショッピング(分割・リボ払い含む)
- 携帯電話などの分割払い
- 奨学金の返済
- 個人からの借金
一方で過払い金返還請求の対象となるのは、主に消費者金融からの借金となります。
借金救済措置の対象外
借金救済措置(債務整理)の対象から外れるのは、次のような借金です。
- 税金(国税・都道府県税・市区町村税)
- 国民年金保険料・国民健康保険料
- 養育費
- 婚姻費用
- 悪意で加えた不法行による損害賠償請求権(慰謝料)
- 故意または重過失により加えた、人の生命または死体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権
- 雇用関係に基づいた使用人への給料や預り金
税金や国民年金、子どもへの養育費などは、たとえ自己破産しても支払い義務が免除されません。そのため貸金業者からの借金よりも税金等の未納の方が多い場合、借金救済制度の効果は限定的です。そして過払い金発生の可能性が低いのは、次のような借金です。
- 2010年以降に取引開始した借入
- クレジットカードのショッピングリボ払い
- 住宅ローン
- 自動車ローン
- 奨学金など公的機関からの借入
- 債権回収会社からの請求分
クレジットカードのショッピングリボ払いに発生するのは、利息ではなく手数料。そのため利息制限法の適用範囲外です。また銀行や信用金庫などでは、2007年以前から利息制限法の上限金利を適用していたため、グレーゾーン金利に充てはありません。
また年利が極端に低い奨学金や公共機関からの借入にも、過払い金は発生していないでしょう。
借金救済措置のデメリットとメリット
では、借金救済措置には種類ごとにどのようなデメリットがあるのでしょうか。メリットも併せて解説していきます。
全てに共通するデメリット
債務整理すべてに共通するデメリットは、以下の通りです。
- 個人信用情報に事故情報(いわゆるブラックリスト)が登録される
- 手続きした業者からは再度借金できない
事故情報が登録される
債務整理すべてに共通するデメリットとして、個人信用情報に事故情報が登録されるという点があります。登録機関は手続きによって異なるものの、およそ5年~10年の間は次のようなことができなくなります。
- クレジットカードの継続利用・更新・新規申し込み
- ローンやキャッシングを利用できない
- 分割購入ができない
- 保証人・連帯保証人になれない
- 賃貸物件を契約できない可能性
個人信用情報には、金融取引の契約や支払い状況、債務整理の有無などの取引事実が登録されているので、ブラックリストに登録された以降は、クレジットカードの利用ができなくなったりローンを申し込んでも審査に落とされる可能性が高いです。また家賃保証会社に信販系の保証会社が付いている場合、審査時に個人情報をチェックされるため、賃貸契約ができない恐れが出てきます。
ブラックリストがいつ消えるかやきれいにする方法に関しては、こちらの記事を参考にしましょう。
「ブラックリストはいつ消える?消し方は?個人信用情報をきれいにする方法」
債務整理した業者からは再度借金できない
債務整理すべてに共通するデメリットの二つ目は、過去に債務整理した業者からは再び借入ができません。ブラックリストに登録されている間はもちろんのこと、登録情報が削除された後も、同じ金融機関やそのグループ会社からのローンや分割払いはできないと覚えておきましょう。
これは債務整理したという情報が、金融機関が独自に保有している「社内ブラック」に登録されるため。社内ブラックの情報は半永久的に削除されないため、過去に滞納したことのある貸金業者や、債務整理の対象となった金融機関では、個人信用情報の登録期間が終了しても審査に通りません。またグループ会社内で社内ブラックを共有しているケースがあるので、グループ会社でも同様に審査に通らない可能性があります。
任意整理のメリット・デメリット
任意整理には、主に次のようなデメリットがあります。
- 債権者が交渉に応じない可能性がある
- 無職や収入が少なすぎると手続きできない
- 借金が高額過ぎると効果が限定的
任意整理で減額できるのは利息や遅延損害金程度なので、借金金額が大きすぎると焼け石に水です。また手続き後も3~5年は返済が続くので、無職や極端に収入が少ない方は、債権者が交渉に応じてくれない可能性が高いでしょう。対して、任意整理のメリットはこちらです。
- 手続きが比較的簡単で時間がかからない
- 財産を処分せずに済む
- 整理対象の借金を選べる
- 家族や周囲に知られにくい
- 保証人や連帯保証人に迷惑が掛からない
任意整理は裁判所を通さずにできる借金救済措置なので、手続きが比較的簡単で時間や費用がかかりません。また対象の借金を選べるので、保証人が付いた借金を外せば迷惑をかける心配もないでしょう。
任意整理のメリット・デメリットについて詳しくは、こちらの記事を参考にしましょう。
「任意整理のメリット・デメリット|整理後の生活への影響を最小限にする方法とは?」
個人再生のメリット・デメリット
裁判所で手続きを行う個人再生では、次のようなデメリットがあります。
- 手続きが複雑で費用や時間がかかる
- 保証人や連帯保証人に返済義務が移る
- 官報に掲載される
- 収入等に条件がある
個人再生は他の借金救済措置と比べても手続きが複雑で費用もかかります。また申請条件に「安定した収入がある」「借金総額が5000万円以下」などの条件があります。借金を大幅減額できるものの、減額できた分に関して保証人や連帯保証人に返済義務が移ることもデメリットです。裁判所を通じて行う手続きのため、国が発行する「官報」に氏名や住所などの個人情報が掲載されます。
個人再生のメリットには、次のようなものがあります。
- 借金を大幅に減額できる
- 「住宅ローン特則」を利用すれば、ローン返済中の自宅を残せる
- 借金の理由を問われない
- 財産を処分されない
- 資格や職業に制限が課されない
個人再生のメリット・デメリットについては、こちらの記事を参考にしましょう。
「個人再生のメリット・デメリットを徹底分析!注意点・利用条件・他の債務整理との違いは?」
自己破産のメリット・デメリット
自己破産は借金すべての返済義務がなくなるという大きなメリットがあるものの、次のような少なくないデメリットが生じます。
- 一定以上の財産が処分される
- 官報に掲載される
- 資格・職業の制限がある
- 免責不許可事由がある
- 保証人、連帯保証人に返済義務が移る
- 郵便物が転送される
- 引っ越しや長期の旅行など、移動の制限がある
自己破産では99万円以上の現金や20万円以上の価値のある財産など、一定以上の資産が処分されて債権者への返済に充てられます。また免責が認められない免責不許可事由があるのも自己破産ならでは。破産管財人が選任される管財事件では、通信の秘密や移動に制限が生じます。
一方で自己破産には次のようなメリットがあります。
- 返済すべき借金がない生活を一から始められる
- 借金の取り立てがなくなる
- 必要最低限のお金は手元に残せる
- 無職や生活保護受給中でも手続きできる
自己破産は返済不能状態を裁判所に認めてもらう手続きなので、無職や生活保護受給中の人でも手続き可能です。また生活に必要な現金や生活必需品は手元に残せるので、自己破産後に生活できなくなるという心配がありません。
自己破産の状況別のデメリットは、こちらの記事を参考にしましょう。
「自己破産のデメリットを状況別に解説!誤解や嘘を解決して最適な選択へ」
特定調停のメリット・デメリット
特定調停は他の債務整理と違い、弁護士などの専門家に依頼せずに行う借金解決方法。そのため次のようなデメリットがあります。
- 自分で書類作成や裁判所に行く必要がある
- 督促が止むまで時間がかかる
- 債権者からの同意が得られない可能性がある
- 過払い金返還請求は別途必要
- 調停が失敗するリスクがある
- 成功率が低く時間やお金が無駄になる可能性
債権者との交渉がうまくいかないと、借金を減額できずに調停が失敗に終わる場合が。時間やお金を無駄にしただけになる可能性があります。また他の債務整理では弁護士に依頼した時点で債権者からの督促がストップできますが、特定調停では裁判所に申し立てを行い、裁判所から通知書が送られるまで取り立ては継続されます。
また過払い金がある場合は、別途過払い金返還請求を行う必要が出てきます。特定調停で利息の減額に応じた債権者でも、過払い金返還請求に応じてくれる可能性は低いのが現状です。
デメリットが多い特定調停ですが、次のようなメリットがあります。
- 自分で手続きするので費用を抑えられる
- 手続きする債権者を選べる
- 直接債権者と交渉せずに済む
- 信用情報への影響が少ない
特定調停では、裁判所の調停員があなたと債権者との間にはいるため、直接交渉する必要がありません。個人信用情報への影響が少ないのもメリット。特定調停以外の債務整理では、5年~10年間はブラックリスト状態となりますが、特定調停では申立日もしくは調停で決められた返済期間から5年経過すれば、事故情報が削除されます。
特定調停のメリット・デメリット、他の債務整理との違いについては、こちらの記事を参考にしてください。
「特定調停のデメリットとメリット|他の債務整理との違いを知り、本当に有効な借金解決方法を知ろう」
過払い金返還請求のデメリット
過払い金返還請求は、2010年以前に払い過ぎた利息を取り戻せる手続きですが、次のようなデメリットがあります。
- 自分で手続きするのは困難
- 過払い金返還請求してもなお借金が残る場合は、事故情報として登録される
- 請求した債権者からの借入はできない
- 10年の時効が過ぎると手続きできない
過払い金があるかどうか調査する引き直し計算は、専門的な知識が必要なので自分だけで手続きするのは失敗のもと。また過払い金には10年の時効があるので、時効が過ぎていると返還請求を行うことができません。
完済した借金の過払い金返還請求を行う分には問題ありませんが、現在返済中の借金の請求を行い、過払い金を充当してもなお返済すべき借金が残る場合は事故情報として登録され、他の債務整理と同様に一定期間ローンが組めません。
借金救済措置の選び方とは
借金救済措置は、種類ごとに手続き方法が違い、デメリットも異なります。こちらでは、救済措置の選れ微肩について解説していきます。
任意整理に向いている人
借金救済措置のうち、任意整理に向いているのは次のような人です。
- 安定した収入がある(パート・アルバイトでも可)
- 連帯保証人が付いた借金がある
- 3~5年の返済期間があれば完済可能
- ある程度の期間は返済している
安定した収入があり毎月決まった金額が返済できる方は、任意整理が向いています。またある程度の期間返済している実績がないと、債権者が減額に応じてくれない可能性があるので、1度も返済実績がない人や2回目の債務整理をしようとしている人は注意が必要です。
個人再生に向いている人
個人再生が適しているのは、次のような人です。
- 任意整理による減額では返済が難しい
- 安定した一定以上の収入があり、継続的な返済が可能
- 自己破産の職業・資格制限を受ける仕事をしている
- 住宅ローン返済中のマイホームを手放したくない
- 借金総額が100万円以上、5000万円以下
一方で安定した収入がなく毎月返済を継続するのが難しい人やいつ失業してしまうか分からない人、現在無職だったり生活保護を受給中の方は向いていません。個人再生よりも自己破産が向いている可能性が高いでしょう。
個人再生の成功率や失敗したときの対処法は、こちらの記事を参考にしてください。
「個人再生の成功率はどのくらい?失敗する理由と成功の秘訣、失敗したときの対処法を解説」
自己破産に向いている人
借金救済措置の中で、自己破産が向いているのは次のような人です。
- 返済能力がない状態である
- 収入が少ない・全くない状態で返済を継続できない
- 借金が非免責債権に該当しない
- 免責不許可事由がない
逆に次のような人は自己破産に向いていないので、自己破産以外の救済措置を選択すべきでしょう。
- 保証人、連帯保証人への請求を避けたい
- 財産を手放したくない
- 職業制限にあうと困る仕事をしている
- 借金の多くが非免責債権
自己破産ができないケースや適さない人に関しては、こちらの記事を参考にしましょう。
「自己破産ができない9つのケースとは?対処方法や自己破産に適さない人について解説」
特定調停に向いている人
特定調停に向いているのは、次のような人です。
- 債務整理にお金をかけたくない
- 自分で必要書類を作成し、期日に裁判所に行ける
- 減額後の借金を完済できる
特定調停は費用をかけたくない人や返済能力がある人が向いているものの、他の債務整理に比べて申立件数が極端に少なく、成功率も全体の15%にも満たないのが現状です。そのため特定調停を利用したいと思っている方は、デメリットや成功率についてもよく理解するようにしましょう。
債務整理の種類ごとに向いている人や、女性ならではの注意点については、こちらの記事を参考にしてください。
「債務整理は女性でもできる?種類ごとに向いている人と女性ならではの注意点、相談先を解説」
借金救済措置を利用したい人は…弁護士に相談
債務整理を利用して借金を減らしたいとお考えの方は、事前に弁護士に相談することをおすすめします。というのも弁護士に依頼すると、次のようなメリットがあるからです。
最適な借金救済措置がわかる
上で債務整理それぞれに向いている人を紹介しましたが、借金の詳細や生活状況、収入などは人それぞれに異なります。「個人再生が向いているみたいだけど、本当に自分に合っている?」と心配になる方もいるでしょう。そのようなときに弁護士に相談できると、それぞれの状況に応じた最適な借金救済措置が分かります。
債務整理には、法律の専門的な知識や手続きに関する経験が必要です。条件によっては希望する方法に当てはまらなかったり、別の方法の方が最適である場合も。一人で闇雲に判断してしまう前に、弁護士に相談することから始めるようにしましょう。
借金の支払いを止めてもらえる
弁護士に債務整理を依頼すると、借金の支払いをすぐにストップでき、債権者からの督促の電話や取り立てもなくなります。これは依頼後すぐに弁護士が債権者宛てに「受任通知」を送るため。その後の債権者とのやり取りは、すべて弁護士が代理で行ってくれます。
今まで借金返済や支払いの督促がストレスだった方は、精神的負担が軽くなった中で準備を進められます。また一時的に返済がストップしている間は、返済が再開された後の分のお金をためておく期間にできます。
書類作成・正確な作業で時間や労力が短縮できる
弁護士は法律のプロとして、債務整理に必要な書類作成や書類の準備を正確に行ってくれます。そのため不備の心配がなく、時間や労力が短縮できる点が大きなメリットです。
一方ですべての手続きを自分でしようと思うと、膨大な手間や時間が必要に。書類に不備があった場合には、正確な書類を作成するために、さらにたくさんの時間がかかることは想像に難くありません。債務整理の種類によっては、スムーズにいっても半年~1年程度かかる制度もあります。
さらに手続きが長引く可能性が高いので、債務整理は弁護士に依頼するのが賢明です。
失敗するリスクやデメリットを減らせる
失敗するリスクやデメリットを減らせるのも、弁護士に手続きを依頼する大きなメリット。任意整理では、より有利な条件で交渉をまとめるのがポイントです。弁護士に依頼せずに一人でやろうとすると、間違って不利な条件で合意してしまう可能性があります。
また自己破産では、弁護士が代理人であることで利用できる少額管財などの手続きがあり、ギャンブルなど免責不許可事由に該当する場合でも、反省文の書き方や裁判所での振る舞いに関するアドバイスが受けられます。
まとめ
借金救済措置とは、法律で規定されている4種類の債務整理や過払い金返還請求のことをいい、借金を抱えた本人だけでなく、社会全体を救済するためにもある手続きです。方法ごとに借金の減免割合や手続き方法が異なるので、まずはどのような手続き方法があるか知ることから始めましょう。
次にそれぞれの方法ごとのメリット・デメリットをよく調べ、自分がどの手続きに向いているか判断するのがポイント。もし自分に適した救済措置が分からない場合や、手続きをスムーズに進め成功させたい方は、債務整理の実績が豊富な弁護士に相談するのがベストです。
お住いの近くで借金問題や債務整理に詳しい弁護士を探し、無料相談を利用して弁護士のアドバイスを受けましょう。自分の話を親身になって聞いてくれ、安心して手続きを任せられそうな弁護士に出会えた場合は、そのまま手続きを依頼して構いません。借金救済措置はメリットもあればデメリットもあります。デメリットをよく理解した上で、後悔しない選択をしていきましょう。