- 「国の借金救済制度って怪しくない?」
- 「債務整理の流れや依頼する場合の手順が知りたい」
借金をどうにかしたいとインターネットを検索していると、「国が認めた借金救済制度」などという文言を目にすることがよくあります。果たしてこれは信頼してもいい情報なのでしょうか?そこでこちらの記事では、借金救済制度の信ぴょう性や情報を提供しているサイトの種類などを詳しく紹介していきます。
メリットだけでなくデメリットも確認して、よりリスクの少ない方法を探すのがポイント。さらに借金救済制度の種類ごとの特徴や流れ、期間や費用なども解説します。自分の借金総額や状況などから、どのような方法が適しているかチェックしてみましょう。
国の借金救済制度とは?
国が行っている「借金救済制度」とは、具体的にどのような手段なのでしょうか。
借金を減免できる「債務整理」
国が行っている借金救済制度とは、借金を減免できる「債務整理」のことを指します。債務整理とは日本の法律によって定められている制度。年齢や性別はもちろん、職業や家族構成がどうであれ、過去の経歴を問わずに利用できます。
借金の「減免」というのは、借金の総額を減らせる「減額」と、借金を支払う責任を負わない「免責(免除)」の二つの意味を持っています。債務整理の手続き方法によって、借金を減額したり免責したりすることが可能になるという訳です。
借金返済を助けるなんて怪しくない?
「国が認めた制度といえ、どうして勝手に作った借金を減免してくれるの?」と怪しく思う方がいても当然でしょう。しかし病気や失業などやむを得ない理由で、借金を返済できなくなることは誰にでも起こりうることです。借金で失敗した人への救済措置が全くないと、生活を立て直したり新たに何かに挑戦しなおすということができなくなってしまいます。
また憲法第25条で国民は「健康で文化的な最低限度の生活」を送る権利があると定められています。このような理由からも、債務整理は民事再生法や破産法などの法律によって、ある一定の条件のもとで借金を減免できる救済制度として準備されています。
債務整理は3種類ある
債務整理は主に「任意整理」「個人再生」「自己破産」という3つの種類があり、借金の金額や生活、状況などに応じて選べるようになっています。
債権者と直接交渉「任意整理」
任意整理とは、あなた(債務者)とあなたにお金を貸した法人や個人(債権者)との間で、借金の減額交渉を行う手続きです。裁判所など国の機関を通さずに債務者と債権者とが直接交渉する手続きなので、厳密には「国が認めた」借金救済制度とはいえませんが、実際に借金の負担を軽くできる見込みは高いです。
任意整理では、次のようなことが可能になります。
- 滞納中の利息のカット
- 将来利息のカット
- 滞納による遅延損害金のカット
- 返済期限の延長
減額交渉によって、利息や遅延損害金をカットでき、返済計画の見直しも可能になります。結果として、通常は3年、最長でも5年間かけて無理のない範囲で返済を続けられるようになるでしょう。
大幅に減額可能な「個人再生」
民事再生法に基づく個人再生は、現状のままでは借金返済が難しいことを裁判所に申立て、借金の総額を大幅に減額できる手続きです。民事再生法は、経済的に困窮している法人の事業や個人の生活を再建するための法律です。個人再生では利用条件が異なる「小規模個人再生」と「給与所得者再生」の2種類があります。
さらに個人再生では、ローン返済中のマイホームを手放さずに済む「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」があります。本来なら借金返済のために手放さなければならないマイホームですが、以前と同じように住宅ローンを返済しながらなら、手放さずに済み続けられるという制度です。
個人再生の「住宅ローン特則」について詳しい内容は、こちらの記事を参考にして下さい。
「個人再生で住宅ローンはどうなる?特則適用の条件・巻き戻し・手続き後のローンについて」
借金を免責(ゼロに)できる「自己破産」
自己破産は破産法に基づく救済制度で、債務者が抱えているすべての借金を免責(ゼロに)するという手続きです。債務整理方法の中では最も強力な手続きで、裁判所から免責許可決定が出れば、以降は借金を返済する必要がなくなります。
自己破産には財産を持たない人が利用できる「同時事件」と、破産管財人が選任される「管財事件(少額管財)」の2種類があります。自己破産は借金の返済義務がなくなる手続きということで、債権者側が大きな損害を被ることに。そのため自己破産には、他の債務整理方法にはない厳しい条件や制限が課せられることになります。
自己破産と個人再生の違いや切り替え方法については、こちらの記事を参考にしましょう。
「個人再生と自己破産の違いとは?手続き・条件の比較や切り替え方法を教えます!」
「借金の救済制度」をうたうサイトの種類
インターネットの広告等で「国が認めた借金の救済制度」とあるのは、ほとんど弁護士事務所や司法書士事務所が出しているものです。債務整理は債権者との交渉や法的手続きが必要で、個人で手続きするのは容易でないため、必然的に弁護士や司法書士に依頼する必要があります。
広告をクリックすると、借入件数や借入額を入力するページに飛び、最後は自分の連絡先を入力するよう求められるため「怪しいのでは?」と疑ってしまう場合もあるでしょう。しかし弁護士や司法書士はどちらも法律事務全般を取り扱っているので基本的には安心で、何か他の用途に利用される心配もありません。
しかし安易に個人情報を入力してしまうと、弁護士や司法書士の事務所から連絡が来ます。ほんの軽い気持ちで入力しただけなら、きちんと断れば問題はありません。ここでは、弁護士事務所と司法書士事務所について見ていきましょう。
弁護士事務所
債務整理の広告を出しているのは、弁護士事務所が多いです。債務整理は交渉や法的手続きが主となるため、弁護士や司法書士などの独壇場です。ただ一口に弁護士といっても、得意とする分野は様々です。離婚問題を得意とする弁護士事務所もあれば、企業法務などを専門とする事務所もあります。
債務整理を依頼する場合は、必ず借金問題に強く債務整理の手続き実績が豊富な弁護士にお願いしましょう。に弁護士は債権者との交渉から書類作成、裁判所とのやり取りなどを総合的に任せられます。また様々な背景から、あなたに最適な借金解決方法をアドバイスしてもらえるはずです。
司法書士事務所
司法書士事務所でも、債務整理の広告を出していることがあります。司法書士とは行政機関に提出する書類の作成や、簡易裁判所への訴訟の代理を主な業務にしています。司法書士も法律事務ができるため、債務整理を請け負えるとしています。司法書士は、弁護士よりも手続きにかかる費用が割安なのが大きな魅力です。
ただ司法書士に依頼できるのは裁判所に提出する書類の作成や、140万円以下の過払い金返還請求および債務整理に限られます。高額な過払い金が発生する可能性があるケースや、債権者1件につき140万円を超えるような場合には、司法書士に手続きを依頼できません。
債務整理は弁護士に依頼するのがおすすめ
上のような理由から、債務整理できる金額に上限がない弁護士に依頼するのがおすすめです。さらに弁護士に債務整理を依頼すると、次のようなメリットがあります。
- 過払い金の調査を依頼できる
- 受任通知により取り立てがすぐにストップする
- 複雑な書類作成を任せられる
- 債権者との交渉がスムーズに進みやすい
- 自分で手続きするよりも大幅に減額可能
- 債務整理していることを周囲に知られにくい
- 自己破産の「即日面接制度」が利用できる
- 自己破産の「少額管財」が利用できる
自己破産の「即日面接制度」とは、東京地方裁判所など一部の地方裁判所で採用している制度。破産申立てから面接まで通常は1週間程度かかるものが、最短1~2日で面接ができるので、手続き期間を大幅に短縮できます。また「少額管財」は、裁判所に納める予納金を半額以上に減額できる手続きです。
このように弁護士が債務整理の手続きを代行してくれると、時間や費用を大幅に節約できる可能性があります。
債務整理の種類ごとの特徴
こちらでは3種類の債務整理それぞれの、メリット・デメリットや手続きの流れ、条件や費用相場などについて解説していきます。
メリット・デメリット
債務整理には借金を減免できるという大きなメリットがありますが、一方で様々なデメリットもあります。
前提として3種類ある債務整理方法に共通するデメリットに、「個人信用情報に事故情報として掲載される」ということがあります。個人信用情報とは、金融機関が加盟している信用情報機関が管理している個人の取引事実を登録した情報のこと。クレジットやローンの契約や申し込み、返済や延滞などが登録されています。
いわゆる「ブラックリストに載った」という状態のことで、新たにローンや分割払いを申し込むときに、個人信用情報をチェックされるので、債務整理以降5~10年間はこのような取引ができなくなることに。ブラックリスト以外のデメリットやメリットは、債務整理の方法ごとに次のように異なります
任意整理
任意整理のメリット・デメリットはこちらです。
メリット | デメリット |
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任意整理は裁判所を通さずに減額できるので、費用や時間を節約できます。また交渉する債権者を選べるので、保証人がついている借金や住宅ローンを除外することが可能です。ただ元本以上の減額はできず、債権者の同意が得られないと減額はできません。
任意整理のメリット・デメリットについてより詳しい内容を知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
「任意整理のメリット・デメリット|整理後の生活への影響を最小限にする方法とは?」
個人再生
個人再生のメリット・デメリットは、次のような内容になっています。
メリット | デメリット |
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個人再生は借金総額5000万円以下という条件の下で、金額に応じて100万円~1/10まで減額が可能です。また借金の原因が問われないのもメリットです。しかし収入に条件が設けられていて、国の機関誌である「官報」に合計3回氏名や住所が記載されます。
個人再生のメリット・デメリットや注意点については、こちらの記事を参考にしましょう。
「個人再生のメリット・デメリットを徹底分析!注意点・利用条件・他の債務整理との違いは?」
自己破産
自己破産のメリットやデメリットはこちらです。
メリット | デメリット |
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自己破産の大きなメリットは借金がゼロになるということ。一方で財産を持っている場合は、一定以上の財産は処分されて借金返済に充てられます。また破産申立ての手続き中は、特定の資格や職業に制限がかかるので、仕事に支障が出ます。また手続した本人は借金がゼロになる代わりに、保証人に返済義務が移るのもデメリットです。
自己破産には免責を受けられない「免責不許可事由」があり、ギャンブルや浪費、投機などでできた借金は免責されない原則があります。ただし裁判所が破産した経緯や事情を考慮して免責を許可する「裁量免責」を受けられる場合があります。
自己破産の状況別デメリットについては、こちらの記事を参考にしましょう。
「自己破産のデメリットを状況別に解説!誤解や嘘を解決して最適な選択へ」
利用条件
国の借金救済制度である債務整理は、基本的に日本国内に住所がある人なら、全ての人が手続き可能です。しかしそれぞれの債務整理ごとに細かな条件が設けられているため、利用するにはその条件に当てはまる必要があります。
任意整理
任意整理の利用条件は、「完済するまで支払いを続けられる能力があるか」です。支払いを続けられる能力がなければ手続きできません。任意整理後も減額された借金を3年かけて返済し続けなければならないためです。毎月の返済金額によっては、パートやアルバイトでも手続きできますが、毎月安定した収入があるのが最低条件です。
無職だと任意整理できない…と諦めている方は、こちらの記事を参考にして対処方法を知りましょう。
「無職でも任意整理は可能?任意整理できないと言われた時の対処法を紹介」
個人再生
個人再生は、手続き方法によって次のように条件が異なります。
小規模個人再生 | 給与所得者再生 |
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自己破産
自己破産の利用条件は、免責不許可事由に該当していないことです。破産法第252条では免責不許可事由が11項目定められています。
- 債権者に被害を与える目的で財産を処分する行為
- 破産手続きを遅らせる目的の不当な債務負担行為
- 特定の債権者の利益になるような行為
- 浪費やとばくが原因の借金
- 嘘をついて信用取引すること
- 破産申立ての書類・帳簿の隠滅および偽造
- 嘘の債権者名簿の提出
- 裁判所に虚偽の説明をしたり説明を拒絶する行為
- 管財行為を妨害すること
- 7年以内に免責を受けたことがある
- 破産法上の義務違反行為
また自己破産には、「非免責債権」というものがあり、これらは破産手続しても免責できないので気を付けましょう。
- 租税公課(税金)
- 国民年金・国民健康保険料
- 下水道料金
- 悪意で加えた不法行為および故意または重大な過失で与えた不法行為による損害賠償請求
- 婚姻費用
- 養育費
- 個人事業主から従業員に支払う給与
自己破産の免責不許可事由についてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしましょう。
「自己破産の免責不許可事由の11項目を解説!免責が下りなかったときの対処法とは?」
かかる費用の相場
債務整理にかかる費用は、手続きの費用によって異なります。任意整理の場合は弁護士や司法書士に支払う手数料のみですが、個人再生や自己破産ではそれに裁判所に支払う費用が追加されます。手続きの方法によって相場が異なってくるため、おおよそどのくらいの費用がかかるかあらかじめ確認しておきましょう。
債務整理の種類 | 費用相場 |
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任意整理 | 手続き費用(1社あたり):着手金3万~5万円+減額報酬(減額できた金額の10~20%)
過払い金返還請求:成功報酬(返還された金額の15~25%) |
個人再生 | 通常の個人再生:弁護士費用40万円~+裁判所費用18万~28万円
住宅ローン特則を利用した場合:弁護士費用60万円~+裁判所費用18万~28万円 |
自己破産 | 同時廃止:弁護士費用20万~35万円+裁判所費用2万~3万円
管財事件:弁護士費用30万~50万円+裁判所費用(予納金)52万円~ 少額管財:弁護士費用30万~50万円+裁判所費用(予納金)52万~72万円 |
自己破産にかかる費用の相場や内訳、安く抑えるポイントにつてはこちらの記事を参考にしてください。
「自己破産にかかる費用相場・内訳を解説!安く抑えるコツや払えないときの対処法も紹介」
手続きの流れ・期間
債務整理を進める上では、手続の流れや期間についても重要です。どのような順序で進んでいくのか、前もって知っておきましょう。
任意整理
任意整理は次のような流れで進んでいきます。
- 弁護士に手続きを依頼
- 受任通知の発送および取引履歴の開示請求
- 引き直し計算による債務・利息額の再計算
- 和解案の作成
- 債権者との交渉
- 和解契約締結
- 返済再開(返済期間:3年~5年)
実際に任意整理を依頼する弁護士を探すことから始めると、最低でも3カ月~6カ月程度かかります。手続きの途中で過払い金があることが分かり、債権者と裁判になったときは6カ月~12カ月ほどかかる可能性があります。
任意整理の流れと期間について詳しくは、こちらの記事を参考にしてください。
「任意整理の流れと必要書類を徹底解説!手続き期間や書類の準備方法とは?」
個人再生
個人再生の手続きは、弁護士に手続きを依頼してから引き直し計算までは任意整理と同じ流れで進みます。引き直し計算以降の流れは以下の通りです。
- 個人再生申立て書類の作成・添付資料の準備
- 個人再生申立て
- 個人再生委員の選出および面談
- 履行テスト開始
- 再生手続き開始
- 債権届出書・債権認否一覧表の提出
- 再生計画案の提出
- 意見聴取(給与所得者再生のみ)
- 書面による決議
- 再生計画の認可・不認可の決定
- 再生計画案に基づく返済の再開
東京地方裁判所で手続きした場合、申立てから再生計画案の認可まで6カ月ほどの期間がかかります。ただし個人再生委員の選任がない裁判所では4~5カ月に短縮される場合も。弁護士事務所を探すところからと考えると、トータルで8カ月から12カ月ほどかかると見ておきましょう。
個人再生の手続きにかかる期間や返済までの流れは、こちらの記事を参考にしましょう。
「個人再生にかかる期間はどれくらい?申立から再生手続開始決定、返済までの流れと注意点」
自己破産
自己破産では、管財事件と同時廃止で手続きの流れが異なります。こちらでは自己破産する人の7割以上が手続きを行う同時廃止の流れについて紹介します。弁護士に依頼してから引き直し計算までは同じです。
- 破産申立て書類の作成・添付書類の準備
- 自己破産の申立て
- 裁判所での面談
- 破産手続開始・同時廃止決定
- 免責審尋
- 免責許可決定
- 免責許可決定確定
申立て書類や添付書類に不備がなければ、裁判所による面談後すぐに破産手続開始・同時廃止決定となります。同時廃止では4~5カ月ほど、管財事件では7~12カ月の手続き期間がかかります。
自己破産に関する様々な期間については、こちらの記事を参考にしましょう
「自己破産にまつわる期間を徹底解説!手続き・制限解除にかかる期間&短くする方法とは?
債務整理を依頼する弁護士を見つける手順
債務整理をしようと思ったら、弁護士に依頼するのがベストな選択です。こちらでは、債務整理を依頼する弁護士の見つけ方について、順を追ってポイントを解説していきます。
債務整理に強い弁護士事務所を探す
債務整理を依頼するには、債務整理の実績が豊富な弁護士事務所を探しましょう。上で説明した通り、弁護士といっても専門や得意とする分野がそれぞれ異なるからです。まずはホームページをチェックして、債務整理という文言があるかや、過払い金請求の実績が豊富かを確認しましょう。
確認する場合は、「相談件数」よりも「解決件数」が具体的な数字で掲載してある事務所がベター。また事務所の場所も重要で、自宅や裁判所からの距離が近い事務所を選ぶといいでしょう。自宅からの距離があると事務所にいくまでの交通費がかさみます。また裁判所から遠い事務所だと、弁護士の日当や実費が余計にかかる可能性があります。
電話やメールで無料相談の予約
良さそうな弁護士事務所を数件ピックアップしたら、電話やメールで初回相談の予約をしましょう。アポイント方法は様々なので、ホームページを確認して予約を取ってください。借金に困っている方のために、多くの弁護士事務所では初回の相談を無料にしています。
「相談にお金がかかったらどうしよう」と心配する必要はありません。積極的に無料相談を利用しましょう。
無料相談に持参するものを準備
無料相談をするときには、本人確認のために身分証明書や印鑑が必要になります。またより具体的なアドバイスがもらえるように、次のような書類を持参することをおすすめします。
- 借入先が分かる書類(契約書・クレジットカードなど)
- 借金額や返済額が分かる書類(取引明細書・領収書など)
- 過去及び現在の取引状況が分かる書類
- 収入が分かる書類(給与明細・源泉徴収票・確定申告書など)
債権者一覧(債権者名や借金額をメモしたもの)を作成しておくとさらに相談しやすいです。いくら無料といえ、相談時間は限られています。なるべく一目で借金や収入の状況が分かるよう、このような書類を準備しておくといいでしょう。
相談当日までに聞きたいことをまとめる
書類を準備するのと同時進行で、弁護士に聞きたいことを紙にまとめておくと相談がスムーズに進みます。まずは最低限次のようなことを確認するといいでしょう。
- 自分に適した債務整理方法は何か
- 法テラスは利用できるか
- 費用の相場
- 費用を支払うタイミング
- 債務整理の手続きが延びる可能性があるか
法テラスとは、国が運営している法律相談窓口です。生活に困窮している方を対象に、弁護士費用の立て替えや免除を受けられる制度があります。依頼予定の弁護士事務所が法テラス利用での事件を扱っていれば、弁護士が依頼者の代わりに法テラスの申し込みをしてくれます。
法テラスの審査で必要な書類や期間、落ちたときの対処方法についてはこちらの記事を参考にしましょう。
「法テラスの審査は落ちることもある!審査基準や落ちた時の対処法を解説」
相談当日のチェックポイント
無料相談の当日は、弁護士との相性をチェックしましょう。借金問題は非常にデリケートな問題で、債務整理はあなたの人生を大きく左右します。手続きを終えるまで何度も顔を合わせたり連絡を取る必要があるため、あなたとの相性が悪かったりすると、連絡を取るのも苦痛に感じられ、信頼して任せようという気になりません。
具体的には、次のようなことを確認するようにしましょう。
- 親身になって話を聞いてくれるか
- 話しやすく質問しやすい雰囲気か
- 費用についての説明は明確か
- 初歩的なことや不利な点も丁寧に教えてくれるか
- 対応の速さや丁寧さ
- 自分との相性は良さそうか
- 契約をせかしたりしないか
複数の事務所を比較して決定
債務整理を依頼する弁護士を選ぶ場合は、なるべく複数の事務所に相談に行って、対応や費用を比較したうえで一つに絞りましょう。1か所にしか相談にいかないと、提示された弁護士費用が妥当か分からず、対応や相性についても判断ができないからです。
初期の段階では弁護士費用を明確に提示できない可能性もありますが、「概算でいいので」といって見積金額を出してもらうようにしましょう。費用面はもちろんですが、見積もりを出してもらうまでの対応や全体的な雰囲気などを総合的に見て、どの事務所が一番自分に合っているか決めてください。
債務整理を依頼する弁護士の探し方について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしましょう。
「【相談前・相談時】債務整理を依頼する弁護士の選び方を解説!失敗しない6つの注意点も紹介」
債務整理以外の借金救済制度
債務整理以外にも、公的もしくはそれに準ずる借金救済制度があります。借金の返済が大変だからといって、安易に闇金などから借金したりせず、債務整理や次に紹介する制度を利用して、問題を解決していきましょう。
過払い金返還請求
過払い金返還請求とは、法定金利を超えて支払った利息を債権者から返還してもらう手続きのこと。債務整理を依頼すると、その途中で行う引き直し計算で、過払い金があるかが明らかになります。現在返済中の借金がない方は、債務整理をしなくても過払い金返還請求だけを専門家に依頼することができます。
過払い金が発生するかの判断基準は、2008年以前に消費者金融から借金をしていたかどうか。2008年に上限金利を定めた利息制限法が改正されたため、それ以前の上限金利を超えた利息を支払っていた方は、返還請求をすると、払い過ぎた金利が戻ってくる可能性があります。
ただし過払い金返還請求が可能な期間は、完済後(最終取引日)から10年以内となっています。2008年以前に消費者金融から借金していて、最終取引日からまだ10年たっている場合は、過払い金が発生していないか弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。
消滅時効の援用
長い間返済が滞っている借金がある場合は、消滅時効の援用ができるかもしれません。消滅時効の援用とは、時効が完成した借金の返済義務を免れるための手続きのこと。借金には、次のように法律で定められた時効があります。
【取引開始日が2020年4月1日以前】 | 【取引開始日が2020年4月1日以降】 |
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貸金業者からの借金・・・5年 個人間の借金・・・10年 |
貸金業者・個人に関わらず10年 |
取引開始日が2020年4月以降の消費者金融からの借金の場合、最後に返済した日の翌日から10年経過すれば時効が成立します。ただし時効が到来する前に、債務者が借金があることを承認したり、債権者が裁判上の手続きを行ってしまうと時効は更新(中断)され、またゼロからのカウントになります。
時効を援用するには、債務者側から「時効援用通知書」を配達証明付き内容証明郵便で郵送する必要が。ただし下手に債権者に連絡してしまうと時効が更新してしまう可能性があるうえ、そもそも時効が到来していない恐れがあるため、時効を援用する場合は弁護士に相談することをおすすめします。
借金の時効援用が失敗するケースとその対処方法については、こちらの記事を参考にしてください。
「借金の時効援用が失敗するケースを解説|失敗を防ぐ確認方法と失敗したときの対処法」
緊急小口資金
新型コロナウイルス感染症の影響で、一時的に生活が困難になってしまった方を対象に「緊急小口資金」という公的制度があります。主に休業や休職により収入が減少した方を対象として、貸付上限額20万円を無利子・保証人なしで借りることができます。
貸付してから返済開始までの期間は1年以内で、分割して返済する場合の期限は最長2年までです。とりあえず近々の生活費が足りないという方は、厚生労働省のホームページやお住いの自治体の社会福祉協議会で申込書を入手できます。
総合支援資金
総合支援資金は緊急小口資金同様、新型コロナウイルス感染症の影響で失業などにより、日常生活の維持が難しくなった場合に利用できます。貸付上限額は2人以上の世帯で月20万円、単身世帯で月15万円です。貸付期間は原則として3カ月以内ですが、こちらも無利子・保証人なしで借りられます。
貸付から返済開始までの期間は、最後の貸し付けから1年以内。分割して返済する場合は、最長で10年と期間が区切られています。
奨学金の減免・猶予制度
進学のために奨学金を借りていた方で、何らかのやむを得ない事情で奨学金の返還が困難になった方は、奨学金の減免・猶予制度を利用してみては?最も奨学金の利用者が多い日本学生支援機構では、次のような奨学金の減免及び返還猶予制度を実施しています。
減免制度の種類 | 内容 |
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減額返還請求 | 当初の返済額の1/2まで減額(第1種奨学金を受けている場合は1/3まで)
適用期間は12カ月、最大で15年まで延長可能 災害や傷病、求職や失業などが原因で奨学金を返還できない人が対象 減額すれば完済できる人が利用できる すでに奨学金を延滞している人は利用不可 |
返還期限猶予制度 | 奨学金の返還を猶予できる制度(減額は不可)
適用期間は1年間で、毎年申請すれば最大10年まで延長可能 やむを得ない事情で奨学金の返還が難しい人が利用可能 |
在学猶予制度 | 奨学金を利用している人が学校へ通っている期間は返還を猶予できる制度
猶予期間中は延滞金が課されない(第2種奨学金を受けている場合は利息免除) 学生でいる間は最大で10年間毎月の返還を延期できる(減額は不可) 在学届を毎年提出する必要がある |
奨学金といえども借金の一種です。黙って延滞してしまうと、ブラックリストに載ったり一括請求される可能性があります。最悪の場合には強制執行が実行され、給与や財産が差し押さえられてしまうことも。払えなくなりそうだな…と思ったら、早めに日本学生支援機構に連絡して、上記制度を利用できないか問い合わせてみましょう。
奨学金の返済に困った方は、次の記事を参考にして詳しい対処法を知りましょう。
「【裏技5選】奨学金の返済に困ったら…注意点や最終手段も詳しく解説!」
まとめ
国の借金救済制度とは債務整理のことで、借金が返済できなくなった後も生活を立て直すために法律で定められている制度です。債務整理には3種類あり、それぞれに減免割合や手続き方法、期間やかかる費用が異なります。債権者との交渉や法的手続きが必要になるため、弁護士・司法書士といった専門家に依頼するのが通常です。
中でも弁護士は債権額や過払い金請求額に上限がなく、少額管財や即日面接制度などが利用できるので、手続きにかかる費用や時間を抑えられます。また過払い金返還請求をしたいときや、借金の消滅時効を援用する場合にも弁護士に相談するといいでしょう。
弁護士とはその後長い付き合いになります。信頼して任せられる弁護士を見つけられるかが、債務整理の成功をも左右します。実際に依頼する弁護士を探すには、事務所の場所が遠くなく債務整理の実績が豊富なところを複数見つけ、無料相談で相性や対応をチェックしましょう。