個人事業主(自営業)の借金地獄でお金回らない…選択できる回避方法と借金問題解決方法とは?

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  • 「個人事業主が借金地獄に陥るとどうなる?」
  • 「自営業の借金問題を解決する方法が知りたい」

個人事業主や自営業者が借金地獄に陥るのはどのような理由からで、お金が回らなくなるとどうなるのかご存じですか?こちらの記事では個人事業主や自営業者の借金問題について、未然に防ぐ方法や解決する方法を詳しく解説。個人のケースとは異なる点についても紹介していきます。

個人事業主や自営業では、その後の事業をどうするかによって取れる手段が異なります。現在の経営状況やこれからどうしていきたいのかについてしっかりと考え、ときには専門家の力を借りながら、一日も早く再起できる方法を取っていきましょう。

 

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目次

個人事業主が借金地獄に陥る理由&起こること

個人事業主や自営業者が借金地獄に陥るのは、どのような理由からなのでしょうか。借金地獄に陥った後に起こることと共に解説していきます。

個人事業主が借金地獄に陥る理由

個人事業主や自営業者が借金地獄に陥るのは、主に次のような理由があるからと考えます。場合によっては複合的に組み合わさって借金地獄に陥る人も少なくありません。

事業資金借入のため

個人事業主や自営業者が借金地獄に陥るのは、事業資金借入のためという理由があります。事業を始めるにあたり必要な備品や仕入れを行うには、まとまったお金が必要です。借入限度額は事業規模や借りての信用によって変わるものの、銀行によっては数千万円~1億円まで可能というケースも。

特に事業資金の場合、個人の貸金業者からの借金とは異なり「総量規制」のような制限がありません。1回の借入金額が大きくなったり、金額が少額でも借り入れ本数が多くなるとそれだけ返済総額が増えてしまいます。いつしか返済しきれないほどの借金を抱えてしまう羽目になりかねません。

収入が安定しない

個人事業主や自営業の収入は、会社員など給与所得者のように安定していません。毎月売り上げに波があるのはもちろんのこと、予想外の費用が発生したり、取引先が倒産して売掛金が回収できないなど想定できないケースも十分に起こり得ます。

また借り入れした後であっても、売り上げが伸びないという理由で収入が増加しないと借金返済のために経営はさらに苦しくなります。借金返済のために借り入れを繰り返していると、いずれは自転車操業状態に。

出費が多い

個人事業主や自営業では、事業をするために次のような様々な出費があります。

  • 賃料
  • 什器、備品の費用
  • 仕入等の費用
  • 従業員の人件費

2021年の新規開業実態調査によると、個人事業主の開業時の平均費用金額は941万円。開業費用500万円未満の割合が42.1%と最多になっていることを考えたとしても、500万円前後の開業資金が必要です。

参考:2021年度新規開業実態調査|日本政策金融公庫

時代の変化によるもの

時代の変化や社会情勢によって、個人事業主や自営業者が借金を抱えるというケースも少なくありません。よりコストの安い海外製にお客が流れてしまい、起死回生を願って費用をかけて新製品を開発したものの売り上げが思うように伸びない、コロナ禍でやむなく休業を強いられてしまったという場合です。

個人の努力や事業の改革ではどうすることもできない事情が生じたとき、大企業に比べて体力のない個人事業主や自営業者は真っ先に立ち行かなくなります。

事業失敗による借金の返済義務の有無は、こちらの記事を参考にしましょう。

「事業失敗による借金|返済義務の有無を知り、最適な借金解消の手段&解決方法を取ろう」

借金地獄の末に起こること

では上で紹介したいような理由から借金地獄に陥った場合、どのようなことが起こるのでしょうか。

税金が支払えなくなる

借金が増え続けると、事業者として支払うべき税金が払えなくなります。個人事業主や自営業者が支払う税金には次のようなものがあります。

  • 所得税
  • 住民税
  • 個人事業税
  • 消費税
  • 国民健康保険税
  • 固定資産税・都市計画税

これらの税金を支払えないと、納付期限の翌日から延滞税が加算されます。とくに住民税や個人事業税などの地方税は、納付期限から1カ月以上経過すると延滞税の利率が高くなり、税金の種類に応じた期限内に督促状が送付されることが法律で規定されています。

最終的には財産差し押さえなどの手続きが取られることに。自治体や税金の種類によって差し押さえのタイミングが異なるものの、差し押さえが行われると不動産や預貯金、保険などの財産が処分もしくは換価されます。

住民税の滞納で財産が差し押さえられるまでの経緯は、こちらの記事を参考にしてください。

「住民税の滞納で差し押さえられるまで|滞納リスクと流れを理解し、差し押さえを回避」

取引先に迷惑がかかる

借金地獄に陥ると、これまで懇意にしていた取引先への支払いができなくなり迷惑がかかります。取引先は事業を継続するにあたってとても大切な存在です。そのような取引先に迷惑をかけることになると、今後の取引継続が難しくなる恐れも。

個人の借金であれば返済できずに迷惑をかけるのは銀行や消費者金融、カード会社など、個人的な付き合いのない会社のみです。しかし事業者が借金地獄に陥ると、取引先に迷惑がかかるだけでなく、借金地獄から回復したとしても、関係の再構築は難しくなる可能性があります。

従業員に給与が支払えなくなる

借金地獄に陥ると、従業員に給与が支払えなくなる可能性が高いです。個人事業主の場合は雇っている従業員がいないものの、自営業者の場合は従業員を雇って会社を経営しているケースが少なくありません。会社を経営するということは、従業員やその家族の生活も背負っているということ。

借金地獄の末に従業員への給料まで支払うことができなくなると、従業員とその家族が路頭に迷う可能性が。自営業者の場合は、従業員にまで大きな影響があるということを覚えておきましょう。

廃業せざるを得なくなる

場合によっては、事業を廃業せざるを得なくなります。店舗を構えるタイプの事業の場合、家賃を滞納していると立ち退きを要求されてしまいます。自宅を店舗代わりにしている場合でも、固定資産税を支払わなければ差し押さえの対象に。

店舗を持たない事業であっても、仕入れが必要な事業では、資金繰りの悪化とともに仕入が難しくなるでしょう。「パソコンさえあれば仕入がないから大丈夫」と思っていても、電気料や通信費を滞納すれば、いずれ電気やインターネットが使えなくなります。このように事業継続に必要な支払いを滞納していると、いずれ事業の継続が難しくなり廃業せざるを得なくなるという訳です。

法的措置を取られる

様々な支払いを滞納していると、債権者は最終的に裁判所を通じた法的措置を行います。差し押さえの対象になるのは不動産や銀行口座だけでなく、売掛金や自営業者個人の財産にまで及びます。売掛金を差し押さえられると、売掛金の相手にそのことが知られてしまいます。

また銀行口座が差し押さえられると、債務と同額の残高が返済に充てられ、資金繰りに影響が出る可能性が高いです。事業の継続に必要な備品や商品が差し押さえられると、事業の継続が困難に。

債権者によっては滞納後3カ月程度で法的措置を取ってくる場合があるので、「まだ大丈夫」と返済しないでいると、大変な目にあう恐れがあります。

裁判所から訴状が届いたときの対処法は、こちらの記事を参考にしてください。

「裁判所から訴状が届いた…どうすればいい?適切な対処法&借金解決方法とは」

個人事業主(自営業)の借金地獄を防ぐ方法

個人事業主や自営業の借金地獄を未然に防ぐには、次のような方法や対処法を取っていきましょう。

現状のお金の流れを整理する

自営業を続けるうちに借金まみれになっていると分かった時点で、まずは現状のお金の流れを整理してください。具体的には次の4つの項目について、月ごとに整理する必要があります。

  1. 売上
  2. 経費
  3. 生活費
  4. 借金返済

まずは自営業でいくら利益を上げているか計算するために、経費などを引く前の「売上」がいくらあるか月ごとに計算してください。次の「経費」は、誰が見ても何にいくらかかっているか分かるよう、可能な限り具体的に項目を分けて整理するのがポイント。

次に自分や家族にかかっている1カ月の生活費を算出してください。経費と被っている項目があるときには、どちらかに含めれば問題ありません。最後に現在いくら借金を返済しているか整理しましょう。具体的に借り入れ先の金融機関やローン名称ごとに、一カ月の返済額や借金残額を書き出してください。

上記の4項目について、最低でも3カ月分の内容を洗い出してエクセルなどで表を作成し金額を入れると、事業の現状や借金の内容についてかなり明確に把握できるはずです。

借金の返済を借金でしない

借金地獄に陥らないためには、借金の返済を借金で賄わないことが重要です。このようなことをすると返済額は右肩上がりに増え、せっかくの利益を食いつぶしてしまうため。例えば毎月3万円の借入金返済のため、新たに30万円借入した場合、最初の10カ月は借入金からの返済ができます。

しかし10カ月目以降には、2本分の借入金だけが残り、結果的に毎月に返済額は高額になり借金地獄の始まりになります。どんなに返済が苦しくても、借金の返済を借金でしないようにしましょう。

赤字になったら経営改善のチャンス

赤字になったときは、安易に借入に頼るのではなく、赤字の原因を分析して経営改善を行うようにしましょう。不況やコロナ禍のような社会的要因であれば、短期的に公的支援制度などを頼ることも検討してください。

しかし事業における構造的な問題があるのなら、赤字の問題を分析して経営改善を行うことで、借金に頼らない経営が可能に。赤字を乗り越えられれば、再び事業が軌道に乗るチャンスも大いにあります。

公的支援制度を利用

借金地獄から立ち直るために、公的支援制度を上手に利用しましょう。国や自治体では、事業者向けのさまざまな支援制度を設けています。それらを利用して、借金地獄や生活苦を載る超える助けにしてください。

セーフティネット貸付

セーフティネット貸付は「経営環境変化対応資金」とも呼ばれている貸付制度。社会や経済の変化により、一時的に業績が悪化しているものの中期的に業績が回復して発展が見込める中小企業を対象に、経営基盤の強化を図る融資制度です。借りたお金は設備資金や運転資金に充てられます。

セーフティネット貸付には次の2種類があり、限度額等は以下の通りです。

事業名 融資限度額 利率 返済期間
国民生活事業 4,800万円 日本政策金融公庫の基準利率 設備資金:15年以内

運転資金:8年以内

中小企業事業 7億2千万円 上限2.5%(長期運転資金に限る) 設備資金:15年以内

運転資金:8年以内

参考:経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)|日本政策金融公庫

経営セーフティ共済

小規模企業共済に加入している方を対象に、取引先が倒産したときなどに無担保・無保証人で8,000万円を上限として、掛け金の10倍まで借入できる制度があります。掛け金は5,000円~20万円まで選べ、損金(法人の場合)や必要経費(個人事業主の場合)に算入できるのもメリット。

共済契約を解約した場合も、解約手当金を受け取れ、自己都合であっても12カ月以上納めていれば掛け金総額の8割以上が戻ります。

参考:共済制度|中小機構

マル経融資

マル経融資は「小規模事業者経営改善資金」の略称で、商工会議所や商工会から経営指導を受けている小規模事業者を対象に、経営改善に必要な資金を最大で2,000万円融資してもらえる制度。基本的に無担保・無保証人で利用でき、1~2年の据置期間ののちに7年~10年以内に返済すればOKです。

参考:マル経融資(小規模事業者経営改善資金)|日本政策金融公庫

衛生環境激変特別貸付

衛生環境激変特別貸付は、感染症または食中毒の発生による衛生環境の変化が原因で一時的な経営難に陥ったり、衛生水準の維持向上に著しい支障を期待している生活環境関係営業者の経営を安定させることを目的とした貸付制度。主に次のような事業者が該当します。

  • 飲食店
  • 食肉販売業
  • 理美容店
  • 旅館業
  • クリーニング業
  • 公衆浴場
  • 興行場
  • 氷雪販売業

融資限度額は、衛生環境の激変事由ごとに別枠で1,000万円。据置期間3年以内ののちに15年以内の返済期間が設けられています。関係省庁から適用開始の宣言がされたとき以外は利用できないものの、金利が低いので利用できれば大きな効果が期待できるでしょう。

参考:衛生環境激変特別貸付<特別貸付>|日本政策金融公庫

新形コロナ関連支援制度

一時期よりも数が減ったものの、新形コロナ関連の支援制度があります。

制度の名称 新形コロナウイルス感染症特別貸付 生活衛生新型コロナウイルス感染症特別貸付
融資限度額 国民生活事業:8,000万円(別枠)

中小企業事業:6億円

8,000万円(別枠)

*新形コロナウイルス感染症特別貸付との併用が可能

利率(年) 基準利率 基準利率
返済期間 20年以内(うち据置期間5年以内) 20年以内(うち据置期間5年以内)
担保・保証 担保:無担保

保証:希望に応じて要相談

担保:無担保

保証:希望に応じて要相談

借金問題を根本から解決するには…

すでに増え続けている借金を根本的に解決するには、次のような点に注意して、最適な方法を選択しましょう。

事業継続を希望するかがポイントに

個人事業主や自営業の借金問題を解決するためには、事業継続を希望するかがポイントになります。希望する・しないによって、最適な方法が異なるため。売上とかかる費用・生活費を計算したうえで、利益が出るという結論が出れば事業継続が可能な場合があるので、まずは事業継続が可能か計算してみましょう。

逆に売上よりも経費+生活費が多く、マイナスになることが確実な場合は、借金がなくなったとしても事業を継続するのが難しいでしょう。そのようなときには廃業を選択して、別の仕事で収入を得ることを考えた方がいいかもしれません。

自営業者で借金返済が苦しい人の対処法は、こちらの記事を参考にしてください。

「自営業で借金返済が苦しい。会社の事業継続・廃業それぞれに向けたベストな対処法とは」

事業継続を希望する場合

事業継続を希望する場合、次のような方法を選択できます。

金融機関に交渉する

金融機関から事業資金を借りている場合は、交渉して次のようなリスケジュールをお願いするといいでしょう。

元本返済の据置
  • 一定期間、元金の返済を行わずに利息の支払いだけしていく方法
  • 期間は月~年単位で設定でき、その間に経営の改善を図ることができる
  • コロナ禍など社会的な不況が要因のときに活用可能な方法
返済期間の延長
  • 最終返済日を延長することで、毎月の返済負担を軽減できる方法
  • 経営改善を行っても現在の返済が難しいときに活用可能

個人再生

個人事業主の借金問題を解決したいなら、債務整理の中でも個人再生が適しています。借金総額に応じて大幅に減額可能で、事業継続する場合でも支障が少ないため。個人再生では自己破産のように財産を処分する必要がないので、事業継続のための備品や設備、仕入れた商品などをこれまで通り持ち続けられます。

手続き後に残った借金は原則3年、最長5年で分割返済していくことになります。自己破産のように借金がすべてなくなる訳ではないものの、大幅に減額できれば返済可能な方も増えるのではないでしょうか。

また自己破産とは違い資格や職業への制限もないため、役員を降りる必要がなく資格を使った仕事もこれまで通りすることができます。また個人再生には「住宅ローン特則」があるのも大きなメリット。住宅ローンが残っていて抵当権が設定されている住宅でも、ローン返済を継続することを条件にマイホームに住み続けられます。個人再生には次の2種類があり、それぞれに適した人や最低弁済額が異なります。

個人再生で家計簿を提出する時のポイントについては、こちらの記事を参考にしましょう。

「個人再生で家計簿の提出が必要?理由と重視ポイントを知って手続きを成功させよう」

小規模個人再生

小規模個人再生は、小規模に展開する事業主が利用することを想定した制度なので、個人事業主や自営業者が利用しやすい手続きです。継続的または反復して収入を得る見込みがある場合を条件に、借金の総額が5,000万円を超えない範囲でおこなわれる民事再生制度。民事再生法の規定に従って行われる、法的手続きです。

小規模個人再生では、借金総額から算出する「最低弁済額基準」と保有する財産から算出される「清算価値喜寿」とを比較して、金額が高い方が最低弁済額となります。

借金の総額 最低限返済しなければならない金額(最低弁済基準額)
100万円未満 全額
100万円~500万円未満 100万円
500万円~1500万円未満 借金総額の1/5
1500万円~3000万円未満 300万円
3000万円~5000万円まで 借金総額の1/10

清算価値とは返済のために処分可能な財産、つまり自己破産したときに差押えの対象となる財産のことを言います。個人再生では自己破産よりも不利な条件を債権者に強いるのは不公平とされるため、このような制限を設けています。

個人再生の最低弁済額について詳しくは、こちらの記事を参考にしてください。

「個人再生の最低弁済額が知りたい!手続き別の計算方法や減額できないケース、滞納後の対処方法」

 給与所得者等再生

給与所得者等再生とは、給与やこれに類する収入を得ていて収入の変動幅が少ないと見込まれるような場合に、民事再生法大13条の規定に基づいて行われる民事再生手続きのこと。個人事業主や自営業者であっても、固定の取引先から安定した売り上げが得られる場合に利用可能です。

給与所得者等再生では上記の「最低弁済額基準」と「清算価値基準」の他に、「可処分所得基準」を比較して最も高い金額以上を最低弁済額としなければなりません。可処分所得は2年分で、年間の収入から所得税・住民税・社会保険料・標準生計費を引いて算出します。

個人再生で住宅ローンがどうなるかについては、こちらの記事を参考にしましょう。

「個人再生で住宅ローンはどうなる?特則適用の条件・巻き戻し・手続き後のローンについて」

任意整理

事業継続を希望する場合、個人再生以外に任意整理という方法があります。任意整理とは裁判所を通さずに、直接債権者と交渉して利息を減額したり、支払期間を3年~5年に延長する手続き。裁判所を介さないので、債務整理の中では最も手間や時間がかからない方法です。

ただしあくまでも任意の交渉であるため、債権者が同意しないと減額は不可能。また個人再生と比べると減額効果はそれほど大きくありません。とくに日本政策金融公庫からの借入は金利が0.55~3.90%と低く返済期間が長期のため、任意整理しようとするとかえって負担が増える可能性も。

任意整理で効果を実感できるのは、消費者金融など金利が高い借金があり、借金総額200万~300万円ある方です。生活費の不足を補うためカードローンを利用する回数が増えたという場合で「このままでは運営に支障をきたす恐れがある」という方は、任意整理を検討してみましょう。

任意整理で借金がどれくらい減額できるかや向いている人については、こちらの記事を参考にしてください。

「任意整理で借金どれくらい減る?減額できる仕組みと向いている人、減額割合をシミュレーション」

自己破産

個人事業主や自営業者の中でもフリーランスの職人などは、自己破産しても事業を継続できる可能性が高いです。また高額の事業用資産を有していない方や、自己破産で職業・資格制限を受けない職業の方も自己破産に向いています。ちなみに自己破産の手続き中に制限を受ける資格や職業は以下の通りです。

  • 士業(弁護士・税理士・行政書士・司法書士・公認会計士・社会保険労務士・宅地建物取引士・不動産鑑定士など)
  • 警備員・警備業者
  • 質屋営業の許可
  • 貸金業の登録
  • 旅行業の登録
  • 生命保険外交員(募集人)
  • 委員(教育委員・公安審査委員会・国家公安委員会)
  • 役員等(銀行・信用金庫等)

事業継続を希望しない場合

事業継続を希望しない場合、次のような解決方法があります。

廃業

個人事業主や自営業者が事業の継続を希望しない場合、廃業という方法があります。廃業は倒産とは異なり、自分の意思で事業の継続を断念するということ。廃業時点で借入金が残っている場合には、商品在庫や備品などを売却して返済に充てることになります。

それでもなお返済すべき借入金が残っているときには、個人の資産で支払う必要が。そのような資産を売却してもなお借入を完済できないケースも珍しくなく、廃業したからといって借金がゼロにならないことを覚えておきましょう。

廃業の方法

個人事業主が廃業するには、管轄の税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出します。廃業届には期限が設けられていて、廃業後1カ月以内に提出する必要があります。また青色申告承認申請書を提出している場合には、「所得税の青色申告取りやめ届出書」も併せて提出しましょう。こちらは取りやめを希望する年の翌年3月15日まで税務署に提出します。

消費税の課税事業者だった方は、「事業廃止届出書」も税務署に提出する必要が。こちらの提出期限は具体的に設定されていないものの、上記の書類と一緒に提出することで、手続きを一度に終わらせられます。従業員を雇って給与を支払っていた場合は「給与支払い事務所等の廃止届」、所得税額が一定以上かつ予定納税を行っていた場合は「予定納税額の減額申請」も併せて行ってください。

廃業にかかる費用

上で示した書類提出に関しては、自分で行う限り費用は発生しません。ただし在庫商品や備品の処分に費用がかかったり、従業員の給与や退職金の支払いが発生する可能性があります。場合によってはかなりの金額になる恐れも。

ちなみに小規模企業共済では、廃業にかかる費用を借りられる「廃業準備貸付」という制度があります。小規模企業共済に加入している会員に限り、掛け金の範囲内で50万~1,000万円の借入が可能です。小規模企業共済に加入している場合は、この制度を利用してみてはいかがでしょうか。

自己破産

廃業後も返済すべき借入金が残っている場合は、自己破産を検討すべきでしょう。自己破産手続およびそれに伴う免責手続では、破産者の財産を処分して借入金の返済に充て、それでも残った借金の返済義務を免除(免責)できます。裁判所を通す手続きで、全ての借金が免責の対象です。

個人事業主や自営業者が自己破産する場合、事業で必要な什器や在庫なども経済的価値があるとみなされれば破産財団に組み込まれ処分の対象に。その後の事業継続は難しくなる可能性があります。その他99万円以上の現金や20万円以上の評価額がある財産も処分されます。

また、個人事業主や自営業者が自己破産する場合、次のようなデメリットも発生する可能性があります。

自己破産の状況別デメリットは、こちらの記事を参考にしましょう。

「自己破産のデメリットを状況別に解説!誤解や嘘を解決して最適な選択へ」

会社の役員は退任しなければならない

法人を設立して事業を行っている自営業者の場合、取締役や代表社員など法人の役員に就任しているのが一般的。会社役員が自己破産した場合、破産手続の開始決定までに役員を退任する必要があります。そもそも会社と役員の間の関係は、委任契約を結んでいるというのが法律上の建前です。

民法第653条では、この委任契約が自己破産によって終了すると規定されています。そのため役員の退任が必要となるという訳です。

事業の借金と個人の借金を区別できない

個人事業主や自営業者が自己破産する場合、事業の借金と個人の借金を区別できないというデメリットがあります。通常の会社・法人と取締役や代表者といった個人は別人格とみなされるため、通常は会社が破産しても個人の資産が取られることはありません。

しかし個人事業主や自営業者の場合は、自己破産すると個人の資産にも影響が出てしまうのは避けられません。また法人であっても代表者が個人保証をしている場合(自宅を抵当に入れる)などには、自己破産によって自宅が競売にかけられ、最終的には自宅を手放さなければならなくなります。

管財事件になる可能性

自営業者が自己破産する場合、自己破産のうちでも「管財事件」という手続き方法となります。というのも個人事業主は会社員などと比べると個人事業として様々な財産を扱っているため。また経理処理を通じて違法に財産を隠している可能性があるため、慎重に自己破産手続を行う必要があります。

そのため、裁判所が破産管財人を選任して詳しい調査を行う管財事件として扱われます。財産等を持たない一般の個人がする「同時廃止」とは手続き方法が異なり、かかる費用や期間も変わってきます。

自己破産の種類 管財事件 同時廃止
振り分け基準 一定以上の財産を保有しているとき

個人事業主の場合

免責不許可事由がある場合

管財事件に該当する要件がない場合
手続きにかかる期間 6カ月~1年 3~4カ月
手続きにかかる費用 弁護士費用+予納金(裁判所費用)数万円 弁護士費用+予納金(約20~50万円)

破産管財人がどこまで調べるかについては、こちらの記事を参考にしましょう。

「破産管財人はどこまで調べる?自己破産の管財事件での調査内容・方法と財産隠しについて」

従業員への給与支払い義務は残る

自己破産すると借入金などの借金の返済義務は免除できますが、従業員への給与支払い義務は免除できません。税金や損害賠償請求権、養育費や従業員への給与支払い義務は、「非免責債権」といい、自己破産しても免責できない債権であると破産法で定められているため。

これは従業員が家族であっても同様です。とくに家族への給与については、破産手続き中に厳重に調査されます。もし家族への給与が不当に高額だったり、労働の実態がないのに支払われている場合には、「財産隠し」とみなされる可能性が。財産隠しは不法行為として、免責が認められないだけでなく罪に問われる恐れがあるので注意してください。

自己破産できないケースの対処法は、こちらの記事を参考にしてください。

「自己破産ができない9つのケースとは?対処方法や自己破産に適さない人について解説

債務整理は弁護士に相談

債務整理を検討したときに相談すべきなのは、法律の専門家である弁護士です。債務整理には種類があり、適している人や事業継続が可能かも異なります。とくに事業に影響するほど借金が増えている方は、早めの相談がベスト。事業継続が可能なうちに任意整理や個人再生を行えば、手続き後の生活の見通しが立ちやすくなります。

債務整理を弁護士に依頼すると、債権者に受任通知を送付することで取り立てや督促をストップできます。また手続き自体も一任できるので、適切な処理によって高い減免効果が期待できるのもメリット。債務整理はいずれも、専門的な法律の知識や交渉能力がないと失敗する可能性があります。債務整理を検討する場合は、弁護士に依頼するのが不可欠と考えた方がいいでしょう。

債務整理を依頼する弁護士の選び方は、こちらの記事を参考にしてください。

「【相談前・相談時】債務整理を依頼する弁護士の選び方を解説!失敗しない6つの注意点も紹介」

税金が支払えないときの解決方法

債務整理をしてもなお、税金の支払い義務はなくなりません。当然借入金の支払いもままならない状態では、消費税や所得税、住民税などの税金を滞納している人も多いのではないでしょうか。こちらでは税金が支払えないときの解決方法を解説していきます。

税務署に相談

納付期限までに税金を納められない場合は、支払ができないと分かった時点で速やかに税務署に相談してください。その場合には税金を払う意思があることをきちんと伝え、なぜ支払いができないのかといつ頃までなら支払いができそうなのかを明確にしましょう。

納税に対して誠実な態度を示せれば、猶予を設けるなど柔軟な対応をしてもらえる可能性があります。

個人事業主が利用できる制度

こちらでは税金を支払えなくなったときに、個人事業主が利用できる制度について紹介していきます。

振替納税制度

振替納税制度とは、指定した金融機関の口座から税金を自動的に引き落としする手続き。この手続きをしておくと、銀行や税務署に行かなくても税金を納められるというメリットがあります。

通常納税期限は、確定申告の申告期限である3月15日です。1日でも過ぎてしまうと延滞税が発生してしまいます。しかし振替納税制度を利用すると、税金が引き落とされるまで1カ月ほどの猶予があります。つまり税金を支払うお金を工面する期間が1カ月程度増えるという訳です。

減免制度

税金の減免制度は、納付が困難な人を対象とした制度。申請して要件を満たせば、事情に応じて税金の軽減や免除が可能になります。減免制度は税金の種類に応じて国や自治体が定めているものなので、あらかじめ利用できるか確認する必要があります。

減免制度が利用できるのは、災害や収入が激減したことで生活が困難になった人など。例えば個人事業税では、事業用資産や住宅について災害等により損害を受けた場合は、損害の程度により減免されます。固定資産税や住民税なども同様です。詳しくは税務署やお住いの自治体役場の納税担当課までお問い合わせください。

延納制度

延納制度とは、主に所得税で認められているもので、期日までの支払いが難しいときに納税期限を延長できる制度です。延納制度を利用すると2回に分けて分納でき、1回の負担が軽減できます。

延納制度を利用するには、申告期限までに届け出を提出し、所得税の半分以上を期限までに支払う必要があります。また利子税が課されるため、本来納めるべき税額から増える点も注意が必要です。ただし手続きをしないまま放置していると、延滞税が課されてしまうのでできる手続きはするようにしましょう。

納税の猶予

納付期限までに納めるのが困難な場合には、国税の猶予制度があります。申請により税務署長の許可を得ると、原則として1年以内に限り分納が可能になる制度です。猶予制度が利用できるのは、次のような事実に該当する場合です。

  • 震災や風水害、火災などの災害を受けて著しい損失が生じたとき
  • 納税者又は生計を一にする親族が病気やケガをしたとき
  • 納税者が事業を廃止または休止したとき
  • 納税者が行っている事業で著しい損失を受けたとき
  • 納税者に災害、盗難、病気、負傷などがあったとき

参考:納税の猶予|国税庁

換価の猶予

換価の猶予とは、税金を滞納した結果差し押さえの対象となり、滞納処分手続きまで至った場合に財産の換価(処分)を待ってもらえる制度。例えばすでに差し押さえが行われている自宅の公売延期や、生活に支障をきたす財産の差し押さえの延期など。

納税の猶予と同様に、最大1年の猶予が認められています。ただし換価の猶予を受けるには、次のような条件があります。

  • 納税に対する誠実な意思があると認められる
  • 納付期限から6カ月以内に換価猶予申請を提出している
  • 国税の納税猶予を受けていない
  • 申請する税金以外の国税の滞納がない
  • 申請する税金に相当する担保の提供ができる

個人事業主の借金問題を解決するときの注意点

個人事業主の借金問題を解決するには、次のような注意点があります。

個人再生には条件がある

個人事業主や自営業者が事業を継続しながら債務整理をするには、個人再生が最も適しています。しかし借金を抱えたすべての個人事業主が個人再生できるとは限りません。というのも、個人事業主が個人再生を利用するためには、次のような条件を満たす必要があるからです。

借金総額が5,000万円以内か

個人再生を利用できるのは、住宅ローン残高を除く借金の総額が5,000万円以内に限られます。総額が5,000万円を超える場合で再生手続きを利用したいときには、通常の民事再生を申立てる必要が。通常の民事再生は個人再生よりも手続きが複雑で高額な費用が必要になるため、本当に選択すべきかよく考えるようにしましょう。

手続き後も安定収入が得られる見込みがあるか

個人再生において再生計画案が認められるには、将来的に継続または反復して収入を得る見込みがあることが求められます。具体的には減額後の借金を原則3年、最長でも5年の分割返済で完済できる安定した収入がないと、認められません。

個人事業主の場合には、前年度の確定申告書の控えや帳簿などを提出して収支を明らかにしたうえで、分割返済ができると裁判所に判断してもらう必要が。減額後の借金がいくらになるかと毎月の返済可能額を比較したうえで、手続きを進めていきましょう。

再生手続きに反対する債権者がいないか

小規模個人再生では、債権者の多数が再生計画案に反対した場合、裁判所で再生手続きが廃止されます。つまり借金を大幅減額できないということに。具体的には次のような場合に、再生計画案が否決となります。

  • 債権者総数の半数以上が不同意したとき
  • 不同意した債権者が有する債権の合計額が、借金総額の1/2を超えるとき

個人事業主の個人再生では、金融機関からの借入の他に買掛先や給与未払いの従業員も債権者となります。そのため個人再生を申立てる前には、取引先や従業員に事情を説明し、個人再生の手続きや事業継続への協力を依頼すべきでしょう。

個人再生のメリット・デメリットは、こちらの記事を参考にしましょう。

「個人再生のメリット・デメリットを徹底分析!注意点・利用条件・他の債務整理との違いは?」

債務整理するとリース物件が引きあげられる

債務整理の種類にかかわらず、未払いのリース料がある契約を債務整理すると、リースしている機械や車、コピー機などを引きあげられるので注意が必要です。ただ個人再生では、そのリース物件が事業の継続に不可欠と認められれば「別除権協定」をリース会社と結んだ上で、一定のリース料を払い続けることを条件に使用継続が可能です。

とはいえリース会社が別除権協定に応じるかどうかは未知数で、支払うリース料などの条件によっては許可されない場合も。リース物件は引きあげてもらい、代わりに安価な中古を購入する方がトータルコストが節約できることもあるため、よりコストパフォーマンスの高い選択をするようにしましょう。

個人再生すると車が引きあげられるかについては、こちらの記事を参考にしてください。

「個人再生すると車は引き上げられる?【ケース別】車の扱いや残す方法、注意点とは」

保証人に迷惑がかかる可能性

保証人を立てて借入した場合、債務整理すると保証人に迷惑がかかる可能性が高いでしょう。保証人がいる借金を個人再生すると、減額された金額について保証人が一括請求を受けます。自己破産では免責された借金全額分を請求されるという訳です。

個人再生や自己破産では「債権者平等の原則」が適用されるため、保証人がいる借金だけを除外して手続きすることができません。また迷惑をかけられないからと手続き前に保証人がいる借金のみを完済すると、「偏頗弁済」となり、個人再生や自己破産が認められません。保証人が一括で支払えない場合には、保証人自身にも債務整理を検討してもらう必要があります。

任意整理・個人再生後は融資を受けずに事業継続が必須

任意整理と個人再生では、手続き後は融資を受けずに事業継続することが求められます。債務整理後は5年~10年間、信用情報機関にある個人信用情報に債務整理したことが事故情報として掲載されます。いわゆるブラックリストに載るという状態です。この間はクレジットカードが使用できなかったり、ローンや融資を受けることができません。

自営業を続けたまま債務整理後の返済をする場合、返済期間中の資金繰りが苦しくなる人もいるかもしれません。しかし債務整理後はしばらくの期間融資を受けられないので、不足分は副業するなどの工夫が必要です。

まとめ

個人事業主や自営業者は収入が不安定で、社会情勢により売り上げが下がったり、事業のために借入をするケースが少なくありません。思うように返済できないと、いつの間にか借金地獄に陥る可能性も。このような状況を回避するにはお金の流れを整理して経営改善を行いましょう。場合によっては公的支援制度を利用するのもおすすめです。

すでにお金が回らないほど借金が多い場合は、事業継続を希望する・しないに応じた債務整理を選択してください。それぞれの手続きで条件が異なり、借金が増えるほど選択肢が狭まります。そのためなるべく早めに弁護士に相談して、債務整理を依頼しましょう。

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