- 「開業しようと思っているが、借金あるから融資申し込みに通るか心配」
- 「事業資金の融資を申し込むときの注意点は?」
運転資金や開業のための事業資金を借りたいと思っている方の中には、すでに借金があるから審査に通るか不安に思っている方もいるのではないでしょうか?実は借金があっても事業資金を借りられる場合があります。こちらの記事では、借金がある場合の融資の可否や判断の基準について詳しく解説。
さらに借金があっても利用できる融資の種類や、利用するときの注意点も紹介していきます。融資を受けられなかった場合でも、融資以外の方法が取れるかもしれません。事業資金の借金を返済できないときには、弁護士に相談したうえで適切な借金問題解決方法を選択していきましょう。
借金があっても事業資金が借りられる?
借金があっても事業資金の融資が受けられるのか心配な方は多いのではないでしょうか?まずは一番気になる「借金があっても借りられるか」という点について解説してきます。
事業資金とは
事業資金という言葉は一般的に使われていますが、どのような用途に用いる費用が該当するのかご存じですか?事業資金は大きく分けて、「設備資金」と「運転資金」に分類できます。それぞれの用途は以下の通りです。
| 設備資金 | 新規事業の立ち上げや開業に伴う、事業に必要な設備投資に使われる資金
事務所や店舗などの不動産購入費用・内装工事費用・機械、工具、車両購入費用・OA機器購入費用・Webサイト制作費など |
| 運転資金 | 事業を継続させるために必要な資金
従業員の給与・家賃・仕入代金・水道光熱費・製造加工費用・広告宣伝費など |
設備資金は業種や事業規模によって必要な金額が異なります。そのため、事前に予算を立てておくことが必須です。また運転資金は、売上を立ててから入金されるためのタイムラグを埋めるための立替資金を指します。売掛金の入金サイトが60日や90日の場合は、実際に入金されるまでの期間にかかる事業資金が必要です。
事業資金が借りられるかは借金の種類による
事業資金の融資が受けられるかどうかは、借金の種類によります。一般的に次のような個人的な借金の場合は、事業資金の借入への影響が少ないとされています。
- 奨学金
- 自動車ローン
- 住宅ローン
- 教育ローン
上記のような借金は借入目的が明確で、金利が低く設定されています。計画通りに返済している限りは、事業資金借入審査への影響は少ないと考えます。しかしクレジットカードのキャッシングや消費者金融のカードローンの借金があり、その返済を延滞している場合は事業資金を借りられない可能性があります。
融資の可否は総合的に判断される
借金の種類以外にも、次のような項目によって融資の可否は総合的に判断されます。
- 借入希望額に対する自己資金の割合
- 返済能力
- 資金の用途
- 過去の延滞の有無
- 信用情報
- 借入目的
- 借入総額
- 返済期間
- 事業計画
上記の項目に対して、金融機関が返済能力を懸念した場合には事業資金の融資が受けられない可能性があります。判断基準は金融機関ごとに異なります。詳しくは融資を希望する金融機関までお問い合わせください。
個人事業主でも条件次第で融資を受けられる
事業融資は法人が利用するものというイメージがありますが、個人事業主であっても条件次第で事業資金の融資が受けられます。しかし個人事業主の場合も、資金を借りるには審査に通らなければなりません。審査に通るためには、最低限次のような条件を満たす必要があります。
条件①開業届けを提出している
条件の一つ目は、「開業届」を出しているかという点です。開業届とは、税務署に対して提出するもので「個人が新たに事業を開始した」ことを申告する書類。融資はあくまでも事業に対する貸付となるので、自分が事業主であることを開業届をもとに証明しなければなりません。
法律上は事業開始から1カ月以内の提出が義務付けられています。提出方法は、税務署窓口に直接持参するほかに、郵送やe-TAX経由で提出する方法があります。開業届を提出すると、最大65万円の控除が受けられる青色申告の申請が可能で、屋号付きの銀行口座を開設できるといったメリットがあります。
条件②確定申告をしている
事業資金を借りる条件の2番目は、確定申告をしているということ。確定申告で過去の事業売上や経費、所得金額をチェックします。それをもとにして事業の安定性や収益性、将来性などを金融機関評価し、融資申込者の返済能力の有無を判断します。
仮に確定申告をしていないと過去の実績が分からないという理由で審査できずに、事業資金を調達できない可能性があります。
条件③事業計画書・資金繰り表の作成
確定申告は過去の実績を見るために必要ですが、将来的な計画を説明するためには事業計画書や資金繰り表の提出も求められます。こちらをもとに融資した金額を期日通りに返済できるかチェックします。審査の結果次第では融資を受けられない可能性があるため、丁寧に作成したうえで事業の将来性を示して返済計画を具体的に説明してください。
事業資金を借りられないケース
借金があり事業資金を借りられないのは、主に次のようなケースです。
ブラックリスト状態になっている
過去に借金を延滞していたり債務整理していてブラックリスト状態になっていると、審査に通りにくくなります。ブラックリスト状態とは、個人信用情報機関にある信用情報に事故情報として登録されること。主に次のような理由で、事故情報が登録されます。
- 3カ月以上の長期延滞・延滞解消
- 保証会社による代位弁済
- 債務整理(過払い金返還以外の任意整理・個人再生・自己破産)
登録される期間は5年以内、個人再生や自己破産の場合は最大で10年以内です。信用情報機関は日本に3つあり、それぞれで登録期間にバラツキがありますが、それぞれの機関は情報の共有を行っているため、いずれか一つの機関で事故情報が登録されていると、どの信用情報機関を参照してもブラックリスト扱いとなる点に注意が必要です。
ブラックリストの情報はいつ消えるのか知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
「ブラックリストはいつ消える?消し方は?個人信用情報をきれいにする方法」
貸金業者からの借金がある
消費者金融やクレジットカードのキャッシングなど、貸金業者からの借金がある方は事業資金の融資を受けられない可能性が高いです。自動車ローンや住宅ローンと違い、返済能力が低いと判断されるため。
自動車ローンや住宅ローンの審査は、銀行が収入や財産の有無をチェックして返済能力があると判断された場合に低い金利で利用できます。一方の貸金業者の審査は一般的な銀行よりも緩いため、返済能力の信用度が低いとみなされます。
返済能力を超えた借金をしている
返済能力を超えた借金を抱えている方は、事業資金の融資を受けられない可能性が高いです。融資をするとその資金を借金返済に充てる恐れがあるため。住宅ローンや自動車ローン以外に多額の借入がある場合や、返済が滞っている場合には、返済能力がないと判断されて融資審査に落ちるケースが多いです。
税金を滞納している
住民税や所得税、国民年金や国民健康保険料などを滞納している方は、事業資金の審査に落ちてしまうでしょう。税金には他の借金よりも優先的に回収できる権利(租税債権)があります。仮に税金の滞納分の支払いを求められた場合には、手元資金から優先的に回収されたり財産が強制的に差し押さえられます。
結果的に融資した分の回収可能性が低くなってしまうという訳です。事業資金の融資を受ける場合には、税金や保険料の滞納がないか事前にチェックしてください。
住民税を滞納するとどうなるか知りたい方は、こちらの記事を参考にしましょう。
「住民税を滞納するとどうなる?滞納のリスクと適切な対処法、借金問題解決方法を徹底解説」
事業計画が不十分
事業計画が不十分だと、融資審査に落ちる可能性があります。事業計画は事業内容や戦略、収益の見込みなどを説明する書類です。融資された資金をどのように使って利益を得るのか説明できないと、金融機関に信用されずに融資審査に通りません。
具体的な事業計画の内容については次項で詳しく説明しますが、計画自体に不備があったり詰めが甘かったりすると、審査に通らなくなります。とくに日本政策公庫の「新創業融資制度」への申請は1度きりなので、十分に練った事業計画書の作成が必須です。
自己資金が少ない
自己資金が少なすぎる場合も、融資審査に落ちる可能性があります。日本政策公庫の「新創業融資制度」では、融資希望金額の1/10以上の自己資金がないと、審査に通りません。それ以外の融資でも、自己資金要件がある場合には、条件に該当しないと融資の対象外となってしまいます。
借金があっても事業資金の融資を受けられる条件&注意点
借金があっても事業資金の融資が受けられるのは、次のような条件に当てはまる場合です。融資を受けるときの注意点と併せて解説してきます。
自己資金が十分にある
自己資金が十分にあると、返済可能性が高いとして融資審査に通る可能性が高まります。自己資金として認められる資金の具体例は以下の通りです。
- 普通預金
- 定期預金
- 退職金
- 資本金
- 資産の売却代金
一方でタンス預金や返済義務がある資金、出所が分からない資金などは自己資金として認められない場合があります。借金があり融資審査に通るか不安だという方は、上記のような自己資金を増やすと審査に通りやすくなります。
事業計画が明確である
融資審査に通るためには、明確な事業計画が必須です。既存の借入がある場合には、新たな融資の返済を含めた事業計画を立てて、返済能力があるということを証明しましょう。創業融資を受けたい方は、具体的には次のような項目で事業計画を立てるといいでしょう。
| 創業の動機 |
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| 経営者の経歴 |
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| 提供する商品やサービス |
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| 事業の見通し |
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| 取引先・取引関係 |
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| 借入の状況 |
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| 資金について |
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事業(創業)計画書をどのように記載したらいいか知りたい方は、日本政策公庫の公式サイトにある「各種書式ダウンロード」をチェックしてください。業種別の記載例が掲載されているので、参考になるでしょう。
事業資金を申し込む場合の注意点
事業資金の融資を申し込む場合、次のような点に注意してください。
借金があることを隠すのはNG
事業資金の融資を受けたいからといって、借金があることを隠すのはおすすめできません。隠したところで審査時に信用情報をチェックされて発覚するからです。むしろ虚偽の申請を行ったとして、審査に落ちる可能性が高まります。借金があった場合でも、決して隠さずに申告してください。
本来の使途目的以外のことに使わない
事業資金を使って、他の借金の返済に充てることはできません。また事業資金として借りたお金を、プライベートな生活費に充てるのはNGです。もしも本来の目的以外の用途で使ってしまうと、借入金の一括返済を求められてしまう場合も。そればかりか今後の融資も受けられなくなります。
上で説明した設備資金・運転資金の使用目的に応じた使い方をしてください。
個人事業主が借金を重ねてお金が回らないときの解決方法は、こちらの記事を参考にしてください。
「個人事業主(自営業)の借金地獄でお金回らない…選択できる回避方法と借金問題解決方法とは?」
借金があっても利用可能な融資の種類
借金があっても、上の条件をクリアしている場合には融資を受ける可能性があります。こちらでは借入があっても利用可能な融資の種類を紹介していきます。
日本政策公庫の融資
事業資金の借入で多くの人が最初に検討するのが、日本政策公庫の融資です。日本政策公庫は日本政府が全額出資している金融機関で、民間の銀行が融資しにくい小規模事業者や創業時の個人事業主に対して、事業資金を提供する役割があります。まずは日本政策公庫の融資が受けられないか検討してみましょう。
新規創業・スタートアップ支援資金
こちらは幅広い層の創業やスタートアップを支援する目的で設けられた支援資金制度。新たに事業を始める予定の方、または事業開始後7年以内の方を対象に、設備資金及び運転資金の融資を行っています。融資限度額は7,200万円で据置期間5年以内の後、設備資金は20年、運転資金は10年以内で返済していきます。
利率は融資を受ける方によって変動します。詳しくは日本政策公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」をご参照ください。
女性、若者/シニア起業家支援資金
新規創業・スタートアップ支援資金の中でも、女性や若者、シニア起業家を対象とした支援資金制度もあります。新たに事業を始める予定の方、または事業開始後7年以内の方のうち、女性の方や35歳未満の方、55歳以上の方を対象に、年利3.00~4.60%(税務申告を2期終えている場合)で融資を受けられます(2026年5月1日現在)。
担保・保証人は必須でなく併用できる特例制度もあるので、上記の条件に該当する方は「新規開業・スタートアップ支援資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)の概要」をご確認ください。
銀行・信用金庫・信用組合のビジネスローン
日本政策公庫以外の銀行や信用金庫、信用組合にも事業資金として利用できるローン商品があります。「ビジネスローン」と謳っている商品がそれに該当します。それぞれの概要やメリットとデメリットは以下の通りです。
| 種類 | 概要 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|
| 銀行 | 営利法人 | プロパー融資により限度額の上限なしで融資を受けられる | 審査が厳しく売上や返済能力を厳密に評価される |
| 信用金庫 | 会員の出資によって運営される非営利法人 | 地域繁栄のための相互扶助を目的としており、売上が少なくても審査に通る可能性がある | 銀行よりも融資限度額が低め |
| 信用組合 | 組合員の出資によって運営される非営利法人 |
多少審査が厳しくても大きな金額の事業資金を希望する場合は銀行に、必要な金額は多くなく確実に審査に通りたい場合は信用金庫や信用組合を利用するなど使い分けるといいでしょう。
地方自治体の融資制度
事業をしている場所の自治体によっては、企業や個人事業主向けの融資制度を設けている場合があります。特定の条件を満たせば低い金利で借り入れでき、返済金額を抑えられる点が大きなメリット。
例えば東京都では、東京都産業労働局が「東京都中小企業制度融資」を設けています。次のような条件を持たせば、数百万円~の融資を受けられます。
- 都内に事業所又は住居がある
- 保証協会の保証対象となり事業を営んでいる
- 税金その他租税の未申告・滞納がない
- 許可・認可・登録・届出が必要な業種にあって、当該許認可を受けている
- 暴力団関係者でない
- 規定する中小企業者または組合である
ノンバンクのローン
クレジットカード会社や消費者金融などのノンバンクでも、事業資金を借入できます。審査基準が比較的緩く、入金までがスピーディーというメリットがある一方で、金利が3〜18%と高め(銀行は年利1~3%)で返済総額が多くなりやすいという点がデメリット。
すぐにまとまった現金が欲しい場合に限り、返済総額や返済期間の計算をしたうえで、無理のない範囲で返済できるか検討してから借りるようにしましょう。
融資が受けられなかったときの対処方法
事業資金の融資が受けられなかったときでも、次のような対処法が取れる可能性があります。いくつもの手段を併用できるので、借金があって審査に不安がある方は、融資申し込みの準備をしつつも以下の方法を組み合わせることを検討しましょう。
融資の再申請する
一度金融機関の審査に落ちても、再審査を申請することができます。再審査を申請するときには、審査に落ちた理由を分析した上で事業計画の見直しが必須です。できれば税理士などの専門家のアドバイスを受けながら、審査で指摘された点を改善したり返済計画案の見直しを行ってください。
また借入額の減額や返済期間の見直しで、無理なく返済できるようにするのもポイント。とはいえ、審査に落ちてすぐ再申請しても融資が受けられる確率は高まりません。最低でも半年程度は間隔を空けるようにしてください。
クラウドファンディングの活用
クラウドファンディングを活用して、複数の支援者から創業資金を集める方法があります。クラウドファンディングとは、インターネットを通じて立ち上げたプロジェクトに共感した支援者から少額ずつの支援金を受け取れる仕組みのもの。群衆を表す「Crowd」と資金調達「Funding」を組み合わせた造語です。
支援者は、プロジェクトにより完成した商品やサービスの提供のほか、体験などのお礼が受け取れます。ネット上にはクラウドファンディング専用のサイトがあるので、気軽に募集が可能です。借金があって融資が受けられない方でも、資金調達ができます。
自己資金のみでやりくりする
融資が受けられないときには、自己資金のみでやりくりする方法がおすすめ。自己資金の範囲内で初期投資を最小限に抑え、事業を段階的に拡大していく方向で事業計画を見直してみましょう。ある程度、安定した売り上げが見込めるようになったら、事業拡大を目的とした融資の再審査を受けてみましょう。
ファクタリングの利用
事業資金の調達方法の一つに、ファクタリングがあります。ファクタリングとは、売上により生じた売掛金を売掛債権としてファクタリング会社に売却し、通常の支払期日よりも早く現金化できる仕組みです。借金があって融資審査に落ちた方でも、自己資金のみで起業して、売掛金が発生したらファクタリングの活用によって、必要に応じた資金調達が可能になります。
ただし架空の売掛債権を売却して資金を得ようとするのは詐欺罪に該当します。またファクタリング会社が悪徳業者だったりすると、法外な手数料を要求されるファクタリング詐欺にあう可能性も。ファクタリングを利用するときには、十分に注意したうえで利用するようにしてください。
事業資金の借金が返せないとどうなる?
事業資金として借りた借金が返せなくなった場合、経営者に返済義務があるのでしょうか。こちらでは、借金返済ができなくなった後の流れを紹介していきます。
借金の返済義務について
事業資金として借りた借金の返済義務は、法人の場合と個人事業主の場合で異なります。
法人の場合
法人の場合、会社としての借金の返済義務は会社が負うのが基本です。会社は「法人」ともいい、法律上は権利や義務の主体である人格があると定義されています。そのため、経営者個人には会社の借金の返済義務はありません。
しかし会社の借金の連帯保証人になっている方や、合名会社・合資会社の無限責任社員になっている場合には、経営者個人にも借金の返済義務があります。
個人事業主の場合
個人事業主の場合、事業資金として借りた借金の返済義務は本人が負います。事業が失敗して返済できない借金が残ったときには、経営者本人の生活に直接大きな影響を及ぼします。そのため借金の返済管理は慎重に行う必要があります。
金融機関から督促を受ける
借金返済が予定通りできなくなると、借りた金融機関(債権者)から電話や郵便で督促が行われます。経営者が会社の借金の保証人になっているときには、経営者個人にも督促が行われます。個人の携帯電話に督促の連絡が入ったり、自宅宛てに督促状が届くので、そのストレスを感じる場面が増えてしまうでしょう。
借金の総額が膨大になる
個人の借金と違い、事業資金として借りた借金の総額は大きくなりがち。1,000万円を超えるケースは珍しくなく、中には借金総額が1億円にも上るケースも。借金の返済期限は業績の良し悪しに関係なく毎月訪れます。業績が悪い期間が長期に及ぶにつれ、返済すべき借金総額が雪だるま式に増えていってしまうでしょう。
会社の財産を差し押さえされる
事業資金の借金を返せないでいると、最終的に会社の財産を差し押さえられてしまいます。取引先からの売掛金や会社名義の銀行口座などです。売掛金が差し押さえ対象となると取引先にその情報が行くので、取引上の信用が失われてしまいます。
また事業の継続に必要な機械や道具、仕入た商品などを差し押さえられてしまうと、営業の継続にも影響が出ます。金融機関によっては、延滞から3カ月程度で法的措置を取る可能性も。「まだ大丈夫だろう」と延滞を続けていると、ある日突然裁判所から通知が届くかもしれません。
自宅や預貯金など個人の財産を差し押さえられる
経営者が保証人になっている場合には、個人の財産も差し押さえられる可能性があります。会社から支払われる予定の役員報酬や個人名義の預貯金、自宅の土地や不動産などの財産を差し押さえられます。生活の基盤となる財産が差し押さえられてしまうと、経営者本人はもちろん家族の生活にも深刻な影響が出ることは避けられません。
借金を放置して裁判所も無視するとどうなるか知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
「借金放置して裁判所も無視するとどうなる?放置後に起こることを知り、適切な解決方法を選択しよう」
ブラックリスト状態になる
経営者が保証人となっていて会社の借金を返済できないでいると、経営者の個人信用情報がブラックリスト状態になります。ブラックリスト状態になると、一定期間は次のようなデメリットが生じます。
- 新たにクレジットカードが作れなくなる
- 今まで使えていたクレジットカードが更新のタイミングで使えなくなる
- ローン審査に落ちる
- 信販会社を通じた分割払いが利用できない
- 子どもの奨学金などの保証人になれない
- 保証会社による保証が必要な賃貸物件を借りられなくなる
ブラックリスト状態になる期間は、延滞が解消されてから5年経過するまでです。債務整理した場合はさらにその期間が延びるので、かなり長期間にわたってブラックリスト状態になるデメリットを受け入れなければならないでしょう。
廃業せざるを得なくなる
事業資金の借金を延滞し続けると、最終的には廃業せざるを得なくなります。仕入れた商品や事業継続に必要な機械・設備を差し押さえられてしまうと、事業そのものが立ち行かなくなります。また店舗や事務所として借りている家賃を払えないでいると、そのうち立ち退き請求を受けてしまうでしょう。
自宅を住居兼事業所にしている場合には、税金の滞納で差し押さえを受けるかもしれません。「パソコンさえあれば仕事ができる」というケースでも、電気代や通信費を支払えないでいると最終的に電気やネットが使えなくなります。
事業資金の借金が返せないときの対処法
事業資金の借金が返せないときには、次のような対処法を検討しましょう。
税金の猶予制度
税金を滞納していて期限通りに支払うのが難しい方は、徴収機関の窓口に税金の猶予が受けられないか相談してみましょう。理由次第では一定期間納税の猶予が受けられる可能性があります。例えば所得税などの国税が期限通りに納められない場合には、「換価の猶予(延滞税軽減)」や「納税の猶予(延滞税免除または軽減)」が受けられるかもしれません。詳しくは「国税の納税の猶予制度 FAQ」をご参照ください。
住民税の滞納で差し押さえを受けるまでの流れについては、こちらの記事を参考にしましょう。
「住民税の滞納で差し押さえられるまで|滞納リスクと流れを理解し、差し押さえを回避」
公的支援制度の利用
国や自治体が設けている公的支援制度を利用すれば、現状を乗り越えられるようになるかもしれません。利用できる制度があるかをチェックしてみましょう。
| 制度の名称 | 内容 |
|---|---|
| セーフティーネット貸付(経営環境変化対応資金) | 社会環境や経済の変化により一時的に業績が悪化しているが、中期的に回復する見込みがある中小企業を対象とする融資制度 貸し付けの種類によって限度額や利率が異なる【国民生活事業】融資限度額:4,800万円 【中小企業事業】融資限度額:7億2,000万円 |
| 小規模事業者経営改善資金(マル経融資) | 商工会議所や商工会から経営指導を受けている小規模事業者が対象 経営改善に必要な資金を最大で2,000万円融資してもらえる制度 無担保・無保証人で利用でき、1~2年の据置期間ののちに7年~10年以内に返済する |
| 衛生環境激変特別貸付 | 感染症や食中毒などの衛生環境の著しい変化が原因で一時的な経営難に陥った生活衛生関係営業者の経営を安定させるための貸付制度 衛生環境が変わった理由ごとに1,000万円の融資が受けられる |
共済加入者向けの貸付制度
すでに共済に加入している方は、共済の貸付制度を利用できる可能性があります。こちらは主な共済の貸付制度です。
| 制度の名称 | 内容 |
|---|---|
| 小規模企業共済の貸付制度 | 経済環境の変化が原因で一時的に売上が減少し、資金繰りが難しくなった場合に低金利で借り入れができる制度 借りられる金額は掛金の範囲内で50万~1,000万円 |
| 経営セーフティ共済の貸付制度 | 取引先が倒産した場合に、無担保・無保証人で掛金の10倍まで借入ができる制度 |
銀行からの借入が返せないときの解決方法は、こちらの記事を参考にしましょう。
「銀行からの借り入れが返せない…返済できない場合に起こること【種類別】解決方法とは?」
債務整理を検討する
事業資金として借りた借金の返済が難しく、今後も経営が安定する見込みがない場合は債務整理を検討してください。債務整理をすると、債権者との交渉や裁判所手続きにより借金を減額・免除できます。
債務整理をすべきかの判断基準
債務整理した方が良いか判断に迷う人がいるかもしれません。「もう少し続けていれば返済できるようになるかもしれない」「何とかこのまま事業を継続したい」と考える人もいるでしょう。しかしすでに次のような状況になっている方は、債務整理をして借金そのものや事業自体を整理した方が賢明です。
- 必要な支払い(給与・家賃・水道光熱費・仕入れ代金・税金など)ができていない
- 数カ月~数年にわたって赤字続きで回復の見込みがない
- 金融機関から融資を断られた
- 自分の給与(役員報酬)を払えてない
- 家族や親族から借金している
事業失敗による債務整理の種類
事業失敗による債務整理には、次の3種類があります。それぞれに手続き方法や借金の減免割合が異なるので、最適な方法を選択するのが成功のポイントです。
私的整理
私的整理とは裁判所を通さずに銀行などの金融機関と直接交渉して、借金の減額や支払猶予、返済期間の変更などを求める手続き。私的整理には再生実務家協会の事業再生ADRや中小企業活性化協議会が運営する再生支援手続など、第三者機関の助けを借りながら手続きする方法もあります。
手続きの相手を選べるため、金融機関のみを対象とすれば取引先への影響を抑えられます。また手続きの情報は非公開とされるので、ネガティブなイメージが付きにくいのもメリット。しかしながら全債権者の合意が必要だったり、債権者間に不平等が生じる可能性があります。合意が得られなければ、私的整理で借金問題を解決するのは難しくなります。
任意整理をしない方がいいケースについて詳しくは、こちらの記事を参考にしてください。
「任意整理をしない方がいい14のケースとありがち誤解とは?悩んだときの解決方法も解説」
民事再生
民事再生は、民事再生法に基づいて裁判所手続きを通じて借金を減額できる手続きです。減額後は裁判所の認可を受けた再生計画案に基づいて、数年かけて完済を目指します。破産とは異なり事業を継続しながら手続きができ、現在の経営陣はそのまま経営に携わることが可能です。
ただし官報に会社名などが掲載されるので取引先や金融機関に知られた結果、一時的な信用低下を招く恐れがあります。また手続きが複雑で、債権者や議決権の過半数の同意がないと減額が認められません。また担保権が設定されている不動産があると、その財産は引き上げられてしまいます。
個人再生のメリットとデメリットが知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
「個人再生のメリット・デメリットを徹底分析!注意点・利用条件・他の債務整理との違いは?」
法人破産
法人破産は、会社の財産を処分して債権者への配当に充てた後、法人格を消滅させる手続き。事業が立ち行かず再建の見通しが立たない場合に選択される方法で、会社名義の借金や税金がすべてゼロになる点が特徴です。経営者が会社の借金の保証人になっている場合には、会社と経営者の破産を同じタイミングで申し立てるのが一般的。
ただし法人破産すると、会社の法人格が消滅するため今の会社で事業を継続することはできません。また従業員全員を解雇せざるを得なくなります。
個人事業主は個人版債務整理が利用できる
個人事業主の場合は上で説明したような法人対象の債務整理を選択できません。その代わり、個人版の債務整理(任意整理・個人再生・自己破産)が利用できます。任意整理は私的整理の手続きの一部で、弁護士が代理人となって消費者金融などと交渉する手続き。
個人再生は民事再生の個人版で、収入が安定している給与所得者に適した手続き。5,000万円までの借金に適用され、債権者の同意は原則として不要です。自己破産は借金の返済義務を免除して、破産後の生活を立て直す手続きです。一定以上の価値がある財産は処分の対象となりますが、生活に最低限必要な財産は「自由財産」として手元に残しておけます。
債務整理それぞれのデメリットについては、こちらの記事を参考にしてください。
「債務整理したらどうなる?デメリットや影響を把握して、後悔しない借金解決方法を!」
弁護士に相談
自営業者や個人事業主が資金繰りに行き詰った場合、借金問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。事業継続の可能性が分かるだけでなく、経営に関するアドバイスも受けられます。債務整理を検討している方にとっては、次のようなメリットがあります。
- 最適な債務整理の方法が分かる
- 受任通知の送付により債権者からの取り立てが止まる
- 債権者との交渉や裁判手続きを任せられる
- 生活や経営再建のためのアドバイスが受けられる
- 債務整理の成功率が高まる
事業失敗による借金を放置していると、経営者はもちろんのことその家族や取引先、従業員にも深刻な影響が出ます。周囲への影響を最小限にするためにも、早い段階で弁護士に相談してください。
まとめ
借金があっても事業資金が借りられるかどうかは、借金の種類や信用情報、返済計画などを総合的に判断されます。借金があって審査に通るか不安な場合は、自己資金を増やす、事業計画を詳細に立てるなどの工夫が必要です。間違っても借金があることを隠したり、本来の用途以外には使わないようにしましょう。
貸金業者の借金があり延滞の履歴によりブラックリスト状態だと、融資審査に落ちる可能性が高いです。また税金滞納をしている、事業計画が十分でない、自己資金が少ないなどの理由によって、融資が受けられない可能性も。そのようなときには再審査を検討するか、クラウドファンディングやファクタリングで資金を調達できます。
事業資金として借りた借金の返済が難しいときには、債務整理を検討してください。法人でも個人事業主でも利用できる債務整理があります。弁護士に相談したうえで、最適な方法についてアドバイスをもらってください。まずは無料相談を利用して、お近くの弁護士事務所で相談してみましょう。