奨学金、払わないまま放置するとどうなる?払えない理由と対処法、債務整理するときのポイントとは

奨学金、払わないまま放置するとどうなる?払えない理由と対処法、債務整理するときのポイントとは
奨学金、払わないまま放置するとどうなる?払えない理由と対処法、債務整理するときのポイントとは
  • 「奨学金を払わないままにするとどのような影響が出るか知りたい」
  • 「奨学金を払えないときに取れる対処法は?」

奨学金を利用して進学する人は少なくありません。では払わないまま放置するとどのようなことが起きるのでしょうか。こちらでは、今の日本における奨学金の支払いに関する実態と、放置するリスクについて詳しく紹介。払えない理由には様々あり、将来に深刻な影響を及ぼす可能性も。

奨学金を払えないときには、早めの対処が必要です。貸与元の機関に相談したうえで、適切な対処を取っておきましょう。債務整理の他にも借金を抱えている方は、債務整理を検討した方がいいでしょう。注意点やポイントをおさえた上で、専門家の手を借りて借金問題を解決していきましょう。

 

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奨学金の支払いに関する実態

奨学金の支払いができずにお悩みの方は少なくありません。まずは奨学金の利用や支払いに関する実態と、奨学金を払えなくなる理由について解説していきます。

奨学金の利用状況

労働者福祉中央協議会が実施した奨学金に関するアンケート調査によると、奨学金制度を利用していた人の割合は31.2%、大学卒に限ると利用率は45.2%と上昇します。全ての奨学金利用者のうち、日本学生支援機構の貸与型奨学金の借入総額は平均で344.9万円、中央値は312.1万円と、過去の調査と比べていずれの金額も最高額となっています。

参考:高等教育費や奨学金負担に関するアンケート調査(2024年6月調査)|労働者福祉中央協議会

毎月の返済額

では奨学金利用者の毎月の返済額はいくらぐらいになるのでしょうか。こちらは日本学生支援機構が集計した、39歳以下の奨学金利用者のアンケート結果をもとにした毎月の返済額の割合です。

毎月の返済額 割合
5,000円未満 1.7%
5,000~10,000円未満 11.9%
10,000~15,000円未満 33.5%
15,000~20,000円未満 22.3%
20,000~25,000円未満 11.0%
25,000~30,000円未満 5.0%
30,000~35,000円未満 4.2%
35,000円以上 4.3%
わからない・無回答 6.1%

毎月1万~3万円の返済が全体の70%以上を占めていて、平均値が16,880円、中央値が16,880.2円という結果です。

返済期間の平均

では奨学金の返済期間はどのくらいになるのでしょうか。日本学生支援機構の奨学金は、最長で20年の返済期間と決められています。4年制大学では、4年生の卒業月(3月)が貸与終了月となっていて、そこから半年間の待機期間を経て7カ月目から返済が始まります。こちらは奨学金利用者の返済期間についての割合です。

返済期間 割合
5年未満 7.8%
5~10年未満 9.3%
10~15年未満 24.8%
15~20年 33.5%
20年超 15.0%
わからない・無回答 9.6%

返済期間は平均値で14.7年、中央値で15.5年となります。22歳で4年制大学を卒業すると考えると36~38歳で返済を終える計算に。奨学金を600万円借りた場合の返済期間は、最長の20年に設定する人が多いため、返済が終わるのが40代前半になる人も。

払えないでいる人の割合

では奨学金を払えないでいる人はどのくらいいるのでしょうか?日本学生支援機構が行った実態調査によると、2019年度末時点で延滞をせずに返済している人が411万人いるのに対して、3カ月以上の滞納をしている人は15.2万人とおよそ3%の人が延滞中であるという結果に。

奨学金の返済は大学時代からメインで使っていた口座から自動的に口座振替によって返済されるので、本来は延滞は難しいはず。それを考えると3%という割合は高いといえます。

参考:令和元年度奨学事業に関する実態調査|日本学生支援機構

大学生におすすめの借金解決方法は、こちらの記事を参考にしてください。

「大学生におすすめ借金解決方法を解説|目的別の返済のコツと親にバレない注意点とは」

自己破産に至った人も

奨学金が支払えずに、自己破産に至った人も少なくありません。日本では、1年間で十万件を超える個人の自己破産申立件数があります。2000年に入ると件数が急増し、直近の令和6年は約166,000件の申立てがありました。

そして日本学生支援機構によると、破産者の7割近くが奨学金の返済を延滞していたということが分かっています。もちろん破産の原因がすべて奨学金という訳ではないものの、奨学金の返済ができないままに自己破産を選択せざるを得なくなった人も少なからずいます。

参考:奨学金返還者の自己破産に関する報道について|日本学生支援機構・個人の自己破産申立件数の年別推移|金融庁

奨学金を払えなくなる理由

奨学金はそもそも、大学卒業後に安定した収入を得られることを前提とした制度。しかし今の日本では、大学を卒業したからといって必ずしも安定した職を得られるとは限りません。こちらでは、奨学金を払えなくなる理由について紹介していきます。

給与が低い

大学卒業後に奨学金の返済が苦しいと感じる理由の一つに、卒業後の給料が低いという点が挙げられます。こちらは学歴別・性別で示した2023年の初任給の平均額です。

初任給の平均額 男性 女性 全体
大学院修士課程修了 283,200円 260,800円 276,000円
大学卒 240,300円 234,300円 237,300円
高専・短大卒 222,800円 211,700円 214,600円

参考:令和5年賃金構造基本統計調査 結果の概況|厚生労働省

一時期よりは初任給金額が上がったものの、女性の平均は235,600円と男性の248,767円に比べて13,000円も低いのが実情です。とくに高専や短大卒では初任給が20万円を少し超える程度で、毎月2~3万円の奨学金返済が大きな負担になっています。

非正規になる可能性

大学卒業後に正社員になれず、非正規になる可能性もあります。非正規になれば給料も低く抑えられ、不安定な立場とならざるを得ません。文部科学省が令和7年度に行った「学校基本調査」によると、大学全体の在学者数は297.2万人と過去最高を記録したものの、大学卒業者に占める就職者の割合は77.0%という結果に。

大学院等に進学した人や研修医を除外すると、およそ8.6%の人が有期雇用労働者(契約社員・嘱託社員・アルバイト・パート)もしくは定職につけていません。定職につけていない人は、アルバイト等の非正規雇用になる可能性が高いでしょう。

非正規雇用では、毎月の給料が20万円を下回るケースが多く、奨学金の返済どころか日々の生活を維持していくのも大変に。このような現状は奨学金を返済できなくなる大きな理由となっています。

参考:学校基本調査-令和7年度 結果の概要-|文部科学省

借金生活から抜け出したいフリーターの方は、こちらの記事を参考にして相談先や回避術を知りましょう。

「借金生活から抜け出したいフリーター必見!3つの方法・相談先・回避術をくわしく解説」

就職しても続かない

大学を卒業して正社員になったものの、様々な理由からすぐに辞めるという人が少なくありません。令和3年3月卒業者の3年以内の離職率を見てみると、大卒就職者で34.9%(前年度比2.6%増加)、高卒就職者で38.4%(前年度比1.4%増加)と、3人に1人以上が3年以内に離職していることに。

第二新卒としてすぐに正社員の職に就ければいいのですが、そうでないとアルバイトや派遣労働者を選択せざるを得ません。企業側も第二新卒を積極的に採用しようとする傾向があるものの、従来の日本の「終身雇用制度」や「年功序列」といった働き方が主流でなくなり、より不安定な働き方を選択せざるを得ない人が増えています。

参考:新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)を公表します|厚生労働省

奨学金を払わないまま放置するリスク

では奨学金を払わないまま放置していると、どのようなリスクが生じるのでしょうか。こちらでは時系列に沿って紹介していきます。

督促を受ける

日本学生支援機構の奨学金を払わないまま放置していると、電話や文書で督促を受けます。1回分の引き落としができないまま放置していると、まずは督促の電話が来ます。次に振替不能の通知が郵便で届き、個人信用情報機関への登録に関するショートメッセージが届くことも。

この間に口座に引き落とし分を入金しておくと、次回引き落とし日に2カ月分がまとめて引き落とされます。督促をするときに本人と直接連絡が取る方法がない場合、勤務先に電話が来る場合も。要件は本人が電話口に出た場合にのみ伝えられるので、勤務先の人に奨学金の滞納が知られる心配はないでしょう。

延滞金の発生

日本学生支援機構の奨学金を滞納していると、滞納分に対して年利1.5~10.0%の延滞金が発生します。延滞金の利率は貸与時期や奨学金の種類によって以下のように異なります。なお延滞金の利率は、延滞時に届く「振替不能のお知らせ」で確認が可能です。

延滞期間 第一種奨学金 第二種奨学金
平成26年3月27日まで 5% 10%
平成26年3月28日~令和2年3月27日 2.5% 5%
令和2年3月28日~ 1.5% 3%

※割合は全て1年あたりの数字

金融機関からの借金の場合、返済期日の翌日から遅延損害金が発生します。しかし奨学金の場合は、1カ月以内の延滞であれば延滞金は発生しません。2回目の延滞から加算されるので、早めに延滞を解消するようにしましょう。

連帯保証人に請求が行く

奨学金を払わないまま放置していると、連帯保証人に支払の請求が行きます。2カ月連続で引き落としができなかった場合には連帯保証人に、3カ月連続の場合は連帯保証人だけでなく保証人にも督促の文書が届く可能性があります。なお奨学金で連帯保証人・保証人となるのは、次のような関係の人です。

連帯保証人 原則として保護者
保証人 原則として父母を除く4親等以内の親族(おじ・おば・兄弟姉妹など)で、本人および連帯保証人と別生計の方

連帯保証人は親や保護者がなりますが、保証人は親戚の人に依頼したという人も多いのでは?奨学金を放置し続けると、親だけでなく親戚にも迷惑をかけてしまうでしょう。

代位弁済が行われると遅延損害金が発生する

保証人を立てずに機関保証を利用した場合、延滞し続けると代位弁済が行われ、遅延損害金が発生する恐れがあります。日本学生支援機構の奨学金を借りる場合、親や親戚などに保証人になってもらう「人的保証」以外に、保証機関に毎月保証料を支払う「機関保証」も利用できます。

このうち機関保証を利用した方は、奨学金を支払わないまま放置していると、保証機関が本人の代わりに代位弁済を行います。今度は保証機関に延滞分を支払う必要が出てきますが、そのときには遅延損害金が発生する恐れがあるので気を付けてください。

代位弁済の書類が届いたときの対処法は、こちらの記事を参考にしてください。

「『代位弁済』の書類が届いたときの対処法|放置してはダメな理由とその後起こる事とは?」

ブラックリストに登録される

奨学金の滞納が3カ月以上続くと、信用情報機関に事故情報として登録されます。いわゆる「ブラックリスト状態」です。情報の種類と登録される内容は以下の通りです。

情報の種類 登録される主な内容
本人情報 氏名・生年月日・住所・電話番号・お勤め先など
契約内容 貸与金額・最終返済日など
返済状況 延滞・代位弁済・強制回収手続・完了など

登録されるタイミングは、ショートメッセージや文書などが届くので、そちらを参考にしてください。ブラックリスト状態になると、次のような不都合が出てきます。

  • 新規でクレジットカードを作成できない
  • 今まで使えていたクレジットカードは更新のタイミングで使えなくなる
  • 住宅ローンや車のローンの審査に落ちる
  • 携帯電話などの分割払いができない
  • 保証人になれない
  • 保証会社との契約が必須な賃貸物件を借りられない場合がある

ブラックリスト状態が継続するのは、奨学金の返還が終了してから5年間です。延滞が解消されてから5年ではないので気を付けてください。つまりあと10年間返還が続く予定の人は、10年+5年の計15年ブラックリスト状態になるという訳です。

参考:個人信用情報機関への個人情報・個人信用情報の登録|日本学生支援機構

ブラックリストに載るとどうなるのかについては、以下のページでまとめています。
債務整理するとブラックリストにのる?気になる「ブラックリスト」についてすべてお答えします!

一括返済を請求される

支払い能力があるとみなされた場合、奨学金の返還を著しく怠ったと判断されると、未返還の奨学金全額と利息、延滞金の全額を一括で返済するように請求されます。一括返済を請求されると、数百万円もの大金を一度に返還しなければなりません。

なお日本学生支援機構「令和6年度業務実績等報告書」によると、令和6年度では14,317件の一括返還請求が行われています。なお代位弁済請求に基づく一括請求の件数は、令和7年度で18,826件です。

借金を滞納し、一括返済するように請求された方は、こちらの記事を参考にしてください。

「奨学金を一括返済するよう請求された!無視した場合のリスクと対処法を解説」

法的措置を取られる

奨学金を払わないまま放置していると、最終的に法的措置を取られます。日本学生支援機構「令和7年度業務実績等報告書」によると、令和7年度に法的措置を行った件数の詳細は以下の通りです。

区分 件数(債権数)
支払督促申立予告 10,936
支払督促申立 4,801
仮執行宣言の申立 1,219
強制執行予告 3,759
強制執行申立 529
強制執行 315
和解 3,265

支払督促申立てとは、債権者(ここでは日本学生支援機構)が奨学金の返還を求める相手への申立てに基づいて、簡易裁判所が支払を命じる略式の法的手続き。仮執行宣言とは、判決が確定する前であっても強制執行を認める裁判所からの宣言のことです。強制執行の申立てがなされると、いよいよ財産の差し押さえが可能になります。

令和7年度は、支払督促申立予告の件数が1万件以上、最終的に強制執行が時効されたのは315件です。

財産を差し押さえられる

奨学金を支払わないでいると、最終的に財産を差し押さえられます。預貯金や車などの財産はもちろん、給与所得者の場合は給料が真っ先に差し押さえ対象となります。給料が差し押さえ対象になると、勤務先に裁判所から通知が届くので、奨学金を延滞していたことが職場にバレてしまいます。

一緒に暮らしている家族がいる方は、家族にもバレる可能性が。とはいえ、給料全額を差し押さえてしまうと生活が成り立たなくなります。法律では、手取り月収に応じた差し押さえ金額が以下のように決められています。

手取り月収 差し押さえ金額
44万以下 4分の1まで
44万超え 33万を超えた全額

給料差し押さえは無視できるのか知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。

「給料差し押さえは無視できる?差し押さえまでの流れや期間、回避方法について解説!」

将来の結婚に影響する可能性

奨学金を払わないまま放置していると、将来の結婚に影響する可能性があります。上で紹介したように、奨学金の支払いは最長で20年続きます。支払いが終わらない段階で、結婚を考える人も少なくありません。令和3年の平均初婚年齢は、厚生労働省の調査によると男性で31.0歳、女性で29.5歳となっています。

順調にいっても40代前半で奨学金の支払いが終わると考えると、結婚後10年前後は返済が続く計算に。結婚しても毎月2~3万円の返済が続くため、相手の負担を考えて結婚を躊躇する人も少なくありません。

将来の人生プランに差し支える

結婚後も奨学金の支払いが続くと、出産・子育て・子どもの進学・マイホーム購入などライフステージごとの出費と重なり、将来の人生プランに差し支えます。通常は結婚前よりも結婚後の方がお金がかかります。とくに子どもの年齢が上がるにつれて、教育費の負担は重くなります。

子どもが小さいうちは共働きが難しく、奨学金の支払いが家計に響く可能性も。奨学金の支払いが終わるまでの間は、結婚後の人生プランに変更や影響が出る可能性があります。

奨学金が払えないときの対処法

毎月の奨学金が支払えない場合、次のような対処法があります。

無視せず払えない理由を説明する

奨学金を払えないからといって、放置せず払えない理由を早めに説明してください。無視すればするほど状況は悪化して、残りの奨学金を一括請求されたり財産を差し押さえられるリスクが高くなります。またブラックリスト状態になるリスクも無視できません。放置したままでいると返還完了から5年という長期間、クレジットやローンなどに影響が出ます。

奨学金を払えなくなった時点で理由を説明すると、利用できる減免制度を紹介してもらえます。また必要な手続きを通して、信用情報がブラックリスト状態になることを防げるというメリットも。奨学金を払えなくなった方は、無視せずに早めに連絡を入れて理由を説明しましょう。

減額返還制度

日本学生支援機構の奨学金を利用している方は、減額返還制度を利用して毎月の返済負担を減らせます。利用できるのは災害や傷病、その他経済的理由で返済が難しい人、延滞金がないことが利用条件です。一度の申請で1年間適用され、最大で15年まで延長可能。毎月の返済額を減額できますが、支払総額が減額される訳ではありません。

減額返還制度を利用するためには、次のような条件を満たす必要があります。

  • 月賦返還であること
  • 口座振替(リレー口座)加入者であること
  • 願出および審査の時点で延滞していないこと
  • 年収の目安(会社員等:325万円以下、自営業者等:収入-経費が225万円以下)

減額返還制度の詳しい内容については、日本学生支援機構のHPを参考にしましょう。

返還期限猶予制度(一般猶予)

経済的理由で奨学金の支払い自体が難しいときには、返還期限猶予制度を利用して一定期間支払いをストップできます。1度の申請で1年間の猶予が得られ、猶予期間は最大で10年。猶予期間中は利息や延滞金がかかりません。収入の目安は会社員で給与所得325万円以下、自営業者で所得225万円以下の方。

返還期限猶予制度が利用できる事由と必要書類は以下の通りです。

事由 必要書類
ケガ・病気 発行2カ月以内の診断書
失業 雇用保険受給資格者証、離職票、被保険者資格喪失確認通知書の写しのいずれか
経済困難 最新の所得証明書、市県民税(所得・課税)証明書、住民税非課税証明書
マイナンバーを提出すれば証明書提出は不要
生活保護 生活保護受給証明書
災害 「経済困難」と同様、もしくは罹災証明書
育児休業 「経済困難」と同様、もしくは休業証明書

上記の事由に該当しない方でも、次のような理由で奨学金の支払いが厳しい状況にある方は、融通を聞かせてもらえる可能性があります。

  • 産休・育休が必要
  • 入学準備中
  • 病気やケガ
  • 生活保護受給中
  • 失業中
  • 災害に遭遇した
  • 海外派遣または海外で研究中である

生活保護受給者や産休・育休が必要な人、学校に在学中の人などは、その期間に限り無制限で返還期限を猶予できる場合があるので、早めに相談してみましょう。

奨学金400万円を滞納したときの対処法については、こちらの記事を参考にしてください。

「奨学金400万円は返済するまで何年かかる?奨学金を延滞した時の流れや対処法、減額方法について調査」

所得連動返還型無利子奨学金の返還期限猶予制度

日本学生支援機構の奨学金には、2012年にスタートした所得連動返還型無利子奨学金の返還期限猶予制度があります。こちらは無利子の第一種奨学金を受けている人が利用できる制度で、奨学金を借りた本人の収入が、一定以上になるまで返済期限を待ってもらえる制度。第一種奨学金を受けている人以外の条件は、上の一般猶予と同様です。

在学猶予制度

奨学金の貸与期間終了後に、次のような教育機関に在学する場合には、在学猶予制度が受けられます。

  • 大学
  • 大学院
  • 高等専門学校
  • 専修学校の高等課程・専門課程

適用期間は最長で10年、1年次入学の方はその時点から正規の最短修業記までの期間が適用対象となります。また休業等で卒業が延期になった場合は、その延びた期間も猶予期間に含まれます。基本的に毎年の届出が必要になるので、忘れずに手続きするようにしましょう。

なお研究生や聴講生は、在学猶予制度の対象外です。申請は「スカラネット・パーソナル」の利用が便利です。詳しくは日本学生支援機構のHPを参考にしましょう。

600万円の奨学金の返済プランやいざというときの対処法については、こちらの記事を参考にしましょう。

「600万円の奨学金は返済可能?返済プランの算出方法やいざというときの対処法、債務整理の可否を解説」

自治体の支援制度

お住いの自治体や就業先の自治体の中には、一定の条件を満たす人に奨学金の支払いを支援してくれる制度があります。その地域への一定期間の定住や、その地域にある企業に就職するなどの条件があるので、就職希望地域にこのような制度があるか調べてみましょう。

例えば東京都では、公立学校教員や幼稚園教諭のために奨学金返還支援事業を行っています。採用後1年間勤務するなどの条件がありますが、支払いが難しい人の大きな助けになるでしょう。日本学生支援機構のHPでは、都道府県ごとの支援制度を紹介しています。こちらもご参照ください。

就職先の支援制度

就職した会社が、奨学金の支援制度を設けている可能性があります。令和8年7月1日時点で、返還支援を行っている企業の数は2,281社に上っています。日本学生支援機構のHPから地域や業種、企業名を絞った検索が可能なので、就職後の奨学金支払いが心配な方は、支援制度を実施している企業を考慮しながら就職活動を行うといいでしょう。

支援団体に相談

大学を卒業した後に奨学金の支払いができない方は、支援団体に相談するという方法があります。例えばNPO法人の「POSSE(ポッセ)」では、奨学金問題をはじめとする若い人の労働問題、貧困問題の解決を目指す活動を行っています。奨学金に関する各種制度申請のサポートも行っているので、1人でお悩みの方はぜひ相談してみてください。

債務整理による減免

奨学金以外に返済できない借金がある、様々な事情で働けず奨学金の支払いができず上記のような支援制度も利用できないという場合は、債務整理を検討してください。債務整理には主に任意整理・個人再生・自己破産の3種類があり、債権者と直接交渉したり裁判手続きを経て借金を減免できます。

手続きの方法や債務整理の効果については、以下の通りです。

任意整理

任意整理は債権者との直接交渉によって、(経過・将来)利息・遅延損害金の減額、支払期間(3~5年)の延長を求める手続きです。任意整理のメリット・デメリットは以下の通りです。

メリット デメリット
  • 債権者からの督促や返済の要求がなくなる
  • 借金の返済をストップできる
  • 今後支払う利息分がカットできる
  • 保証人に迷惑をかけない
  • 手続きに手間や時間がかからない
  • 整理の対象となる借金を選べる
  • 職業や資格の制限がない
  • 財産(住宅・車など)の没収を防げる
  • 勤め先や家族に知られる可能性が低い
  • 個人信用情報に事故情報(ブラックリスト)として登録される
  • 希望通りの減額にならない可能性がある
  • 債権者が同意しないと手続きできない
  • 大幅な減額はできない
  • 同じ債権者からは借り入れできない

そして任意整理に向いているのは、次のような人です。

  • どうしても残したい財産がある
  • 保証人に迷惑をかけたくない
  • 手続きに時間や手間をかけたくない
  • 周囲に内緒で手続きをしたい
  • 少しでも毎月の返済額を減らしたい
  • 安定した収入が見込める

任意整理で減額されない理由について詳しくは、こちらの記事を参考にしましょう。

「任意整理で減額されない原因と理由|減額できないときの対処法とは?」

個人再生

個人再生は、裁判所に申し立てて借金総額を大幅に減額できる手続きです。個人再生のメリットとデメリットはこちらです。

メリット デメリット
  • 債権者からの督促や取り立てが止む
  • 借金を大幅に減額できる
  • ローン返済中のマイホームを残せる
  • 借金の原因を問われない
  • 資格や職業に制限がかからない
  • 返済しなければならない借金が残る
  • 収入などに条件がある
  • 官報に公告される
  • ブラックリストに載る
  • 費用や時間がかかる
  • 連帯保証人に返済の義務が移る

個人再生に適しているのは、次のような人です。

  • 借金総額が300万円以上~5000万円以下
  • 車やマイホームを残したい
  • ギャンブルや浪費が原因で借金をした
  • 制限のかかる資格や職業に就いている
  • 安定した収入がある

詳しい個人再生のメリット・デメリットが知りたい方は、こちらの記事を参考にしましょう。

「個人再生のメリット・デメリットを徹底分析!注意点・利用条件・他の債務整理との違いは?」

自己破産

自己破産は裁判所に申し立てた上で、返済不能と認めてもらうことで原則としてすべての借金の返済義務を免除(免責)できる手続き。主なメリットとデメリットはこちらです。

メリット デメリット
  • 借金が免責される
  • 収入がなくても手続きできる
  • 高額な財産は没収される
  • 保証人に債務が移る
  • 官報に公告される
  • 特定の資格や職業に制限がかかる
  • 旅行や引っ越しに制限がかかる
  • 郵便物が転送される
  • 免責が認められない可能性がある

自己破産に向いているのは、次のような人です。

  • 借金総額が5000万円以上ある
  • 持ち家や車などの財産がない
  • 借金を減額しても完済する見込みがない
  • 生活保護受給中や失業中で減額しても返済が難しい

個人再生と自己破産の違いについてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。

「個人再生と自己破産の違いとは?手続き・条件の比較や切り替え方法を教えます!」

奨学金を債務整理するときのポイント

奨学金の債務整理を検討している方は、次のようなポイントに注意してください。

任意整理は奨学金に向かない

上で紹介した通り、任意整理は利息や遅延損害金の減額、支払期限の延長を求める手続きです。利息や延滞金の利息が低く、返済期間も長期に設定できる奨学金の場合、任意整理してもあまり効果が得られない可能性が高いです。

奨学金を任意整理するよりは、利息の高いクレジットカードのキャッシングや消費者金融のカードローンなどを手続きするのが効果的。主な借金が奨学金しかない方は、個人再生か自己破産を選択した方がいいでしょう。

任意整理の具体的なメリットやデメリット、どれくらい減額できるかについては、以下の記事に詳しくまとめています。
任意整理と債務整理の違いは何?メリット・デメリット、任意整理に向いてる人を解説

個人再生・自己破産では保証人に返済が移る

奨学金を個人再生や自己破産することは可能ですが、人的保証を付けている場合には減免された分は連帯保証人に一括で請求が行くので注意が必要です。連帯保証人の状況にもよりますが、何らかの影響が出るのは避けられないでしょう。

奨学金の金額や保証人の経済状況によっては、連帯保証人の債務整理も必要なケースが。そのため保証人には、事前に奨学金を債務整理することを伝えておくのがおすすめです。

連帯保証人は支払い拒否できるかについては、こちらの記事を参考にしましょう。

「連帯保証人は支払い拒否できる?種類・状況ごとの対処法を知って差し押さえを回避しよう」

法的措置を取られているときに有効

奨学金の支払いを長期間放置していて、すでに法的措置を取られている場合にも債務整理は有効です。とくに仮執行宣言付の支払督促がなされている場合、いつ強制執行が実施されてもおかしくありません。できるだけ早く強制執行を止めるためにも、個人再生や自己破産の手続きを行いましょう。

個人再生の場合

個人再生を裁判所に申し立てると、開始後に強制執行を取り消すことができます。ただし通常、個人再生には申立てから開始手続きまでに1カ月ほどの時間がかかります。日数的に余裕がない場合は、次のいずれかの方法で強制執行を止められる可能性があります。

  • 債権者側(日本学生支援機構)に個人再生を行う旨を伝え、強制執行を取り消してもらう
  • 個人再生申立と同時に裁判所に強制執行停止の申立てを行う

すでに一括返済の請求を受けている場合は、日本学生支援機構に直接伝えて、強制執行を取り消してもらう方法が有効。個人再生を依頼する弁護士に伝えた上で、早急に手続きを進めてもらってください。

自己破産の場合

自己破産の場合は、同時廃止・管財事件のどちらの手続きを選択されるかによって、強制執行の取り消し方法が変わります。高額な財産がある場合や免責不許可事由に該当するときに選ばれる管財事件では、破産手続開始決定の時点で、強制執行が取り消されます。

めぼしい財産や免責不許可事由がないときに選択される同時廃止の場合は、自己破産を申し立てる裁判所と強制執行を許可する裁判所が別なため、自己破産の申し立てをした後で強制執行を行い裁判所に上申書を提出した上で、強制執行の取り消し手続きを行います。

自己破産のデメリットが気になる方は、以下の記事も併せてお読みください。
自己破産のデメリットを状況別に解説!誤解や嘘を解決して最適な選択へ

弁護士に相談

奨学金やその他の借金の返済で困っている方は、なるべく早い段階で借金問題に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。とくに各種支援制度を利用しても返済が不可能な方やすでに一括返済を請求されている方、法的措置を取られている方は、早急に弁護士にアドバイスをもらってください。

また債務整理の中でもどの方法が自分に一番適しているか分からない方も、法律の専門家である弁護士に相談してみましょう。そのまま実際の手続きも依頼できるので、面倒な書類の作成や裁判所とのやり取り、債権者との交渉を任せられます。

奨学金の債務整理を希望する方は、こちらの記事を参考にして信頼できる弁護士を見つけましょう。

「【相談前・相談時】債務整理を依頼する弁護士の選び方を解説!失敗しない6つの注意点も紹介」

まとめ

奨学金を借りている人は、大学卒に限ると4割以上に上ります。給料が低い、正社員で働いてもすぐに辞めてしまう、非正規の仕事しかないなどの理由で、奨学金を支払えない人も少なくありません。奨学金を支払えないと保証人に迷惑がかかるだけでなく、一括返済を請求されたり法的措置を取られるというリスクも。

奨学金の支払いができないときには、決して無視したりせず早めに相談したうえで、利用できる支援制度は積極的に利用していきましょう。また自治体や企業が実施している支援制度を利用するのもおすすめ。奨学金を払えない人は、他の借金と共に債務整理の検討も視野に入れてください。

債務整理を検討する場合、専門家の助けが欠かせません。お住まいの地域で、借金問題や債務整理に詳しい弁護士事務所を探し、無料相談を利用して相談してみましょう。

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